暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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鷹岡対渚。
俺ガイル二期始まりました。


四十九時間目 必殺技の時間

俺らは黒幕の鷹岡に言われるがままに屋上のヘリポートに来た。

「気でも違ったか鷹岡。防衛省から盗んだ金で殺し屋を雇い、生徒達をウイルスで脅すこの凶行……!」

烏間先生が言うと、鷹岡は……

「おいおい、俺は至極まともだぜ! これは地球を救える計画なんだ」

なんだと……続けて鷹岡は言う。

「大人しく二人に賞金首を持ってこさせりゃ、俺の暗殺計画はスムーズに仕上がったんだ」

「……?」

烏間先生は焦りを見せながら鷹岡に疑問を抱く。

「計画ではな、茅野とか言ったっけ女の方。そいつを使う予定だった。部屋のバスタブに対先生弾がたっぷり入れてある。そこに賞金首を抱いて入ってもらう」

鷹岡は嬉しそうな顔?をして言う。

「その上からセメントで生き埋めにする。対先生弾に触れず元の姿に戻るには……生徒ごと爆裂しなきゃいけない寸法さ」

なるほど。殺せんせーは政府との契約上、俺らに加害を加えられない。いや、それ以前に……

「生徒思いの殺せんせーは……そんな酷いことしないだろ? 大人しく溶かされてくれると思ってな」

鷹岡は微笑みながら言う。その姿は俺ら全員の目に悪魔として映った。

殺せんせーが言う。

「許されると思いますか? そんな真似が」

完全防御形態で殺せんせーは怒りの表情を見せる。鷹岡は……

「これでも人道的な方さ、お前らが俺にした非人道的な仕打ちに比べりゃな。中学生との勝負に負けて任務失敗の話が流れて上の評価もダダ下がり。屈辱の目線と騙し討ちで突きつけられたナイフが頭の中チラつく度に頬がかゆくなって夜も眠れなかった」

そして鷹岡は潮田を指差して言う。

「落とした結果は結果で返す。受けた屈辱はそれ以上の屈辱で返す。特に潮田 渚。俺の未来を汚したお前は絶対に許さん!」

背の低い生徒を要求したのは潮田を狙っていたからか……他の奴等も気づいた。これは鷹岡の逆恨みと報復。

「へー、つまり渚君はあんたの恨み晴らすために呼ばれたわけ。その体格差で本気で勝って嬉しいわけ? 俺や比企谷君ならもーちょっと楽しませてやれるけど?」

赤羽が言う。おいこら、俺を巻き込むな!と言いたいが今回は赤羽に賛成だ。

「全くだな。本気のあんたなら、俺と赤羽が加わって3人ががりでも勝てるか怪しいが、そんなに潮田に殺られたのが悔しいのか?」

俺が言うと、寺坂は息を荒げながら言う。

「イカレやがって、テメーが作ったルールの中で渚に負けただけだろーが。言っとくけどな、あの時テメーが勝ってよーが、負けてよーが、俺らはテメーの事大ッ嫌いだからよ」

そうだ。そして、もしあの時潮田が負けていたとしても理事長が鷹岡のやり方を気に入らず解雇通知を出したのは変わりない。

すると鷹岡は……

「ジャリ共の意見なんて聞いてねェ! 俺の指先でジャリ共が半分減るって事、忘れんな!」

クソッ。俺らは何も言えなくなった。

「チビ、お前1人で登ってこい。この上のヘリポートまで」

潮田は茅野に持っていた殺せんせーを渡して行く。

……行ったらダメだ潮田。茅野も止めたが、潮田は治療薬の為にと行く。

ヘリポートに潮田が行くと、鷹岡ははしごを倒して、俺らが登れないようにした。

「足元のナイフで俺のやりたいことはわかるな? この前のリターンマッチだ」

やっぱりそうか……鷹岡は潮田をリンチして屈辱を張らしたいわけだからな……

「……待ってください、鷹岡先生。闘いに来たわけじゃないんです」

「だろうなぁ、この前みたいな卑怯な手はもう通じねぇ。一瞬で俺にやられるのは目に見えてる」

そこは鷹岡が正しい。前とは状況が違う。しかし、鷹岡も烏間先生も殺せんせーも知らない。潮田には新しい隠し技があることを……

「だがな、一瞬で終わっちゃ俺としても気が晴れない。だから闘う前に……やる事やってもらわなくちゃな」

やる事?

「謝罪しろ。土下座だ」

なんだと!? 潮田が何をしたって言うんだ!

「実力が無いから卑怯な手で奇襲した。それについて誠心誠意な」

潮田は最初は正座して『……僕は』と言い始めると、鷹岡がキレて潮田の頭を地面に当てさせた。

「僕は、実力が無いから卑怯な手で奇襲しました。ごめんなさい」

潮田。お前は悪くない。悪いのは卑怯な手で奇襲じゃなきゃ勝てない条件を出した鷹岡だ。

「おう、その後で偉そうな口も叩いたよな「出ていけ」とか」

それは言っていない。潮田は確かしっかりと頭を下げて『出ていってください』とお願いしたハズだ。

「ガキの分際で大人に向かって、生徒が教師に向かってだぞ!」

鷹岡は潮田の頭を足蹴にしながら言う。

「ガキのくせに、生徒のくせに、先生に生意気な口を叩いてしまい、すみませんでした。本当に……ごめんなさい」

潮田。お前は今、俺らの中で一番……勇気がある。俺ならたぶん鷹岡が怖くて噛みまくっていたぜ……

鷹岡は微笑みながら言う。

「……よーし、やっと本心を言ってくれたな。父ちゃんはうれしいぞ。褒美にいいことを教えてやろう」

まだなにかあるのかよ! いい加減治療薬を渡せ!

鷹岡は治療薬の入ったスーツケースを持ち上げて言う。

「あのウイルスで死んだ奴がどうなるか“スモッグ”の奴に画像を見せてもらったんだが、笑えるぜ。全身デキモノだらけ。顔面がブドウみたいに腫れ上がってな……見たいだろ? 渚君」

鷹岡はスーツケースを投げつけた。

……まさか!?

「やっ、やめろーッ!!」

 

ドウゥゥゥン!

 

烏間先生が叫ぶが手遅れだった。鷹岡は治療薬を爆破したのだ。俺らは絶望的な顔を浮かべる。

潮田は寺坂を見た。まさか寺坂の奴……!?

鷹岡は……

「あはははははははは!! そう! その顔が見たかった!! 夏休みの観察日記にしたらどうだ? お友だちの顔面がブドウみたいに化けてく様をよ。はははははは」

その後鷹岡は潮田に「お前にだけはウイルスを持ってない」なんて言ったが、潮田は自分で直々に殺ると言う意味だろう……そして潮田は……ナイフを拾った!?

「殺……してやる……」

「ククク、そうだ。そうでなくちゃ」

ヤバい!? 潮田の奴、完璧にキレてる。このリターンマッチで唯一潮田の勝算がキレてちゃ無くなる!?

この状況を何とか出来るのは……

「寺坂――」

 

バゴッ!

 

俺が呼び掛けようとした瞬間、寺坂は自分の持っていたスタンガンをケースごと潮田に投げつけた。

「チョーシこいてんじゃねーぞ渚ァ! 薬が爆破されたときよ、テメー俺を哀れむような目で見ただろ。いっちょ前に他人の気遣いしてんじゃねーぞ、モヤシ野郎! ウイルスなんざ、寝てりゃ余裕で治せんだよ!」

「寺坂……お前!」

やっぱりか……寺坂の奴が妙に汗をかいてると思ったら寺坂もウイルスに感染していたのかよ!?

「そんなクズでも息の根止めりゃ殺人罪だ。テメーはキレるに任せて百億のチャンス手放すのか?」

寺坂はそこまで言うとその場にしりもちついて倒れた。

「寺坂君の言う通りです渚君。その男を殺しても何の価値もない。逆上しても不利になるだけ。そもそも彼に治療薬に関する知識などない。下にいた毒使いの男に聞きましょう。こんな男は気絶程度で充分です」

鷹岡は……

「おいおい、余計な水差すんじゃねえ、本気で殺しに来させなきゃ意味無ぇんだ。このチビの本気の殺意を屈辱的に返り討ちにして、はじめて俺の恥は消し去れる」

俺は潮田に言った。

「潮田! 寺坂のスタンガンを拾え! これでお前の条件が揃う!」

俺が言うと、寺坂は苦しそうに言う。

「……やれ渚。死なねえ範囲でぶっ殺せ」

潮田は上着のシャツを脱ぎ捨て、スタンガンを拾った。しかし、スタンガンは腰にしまった。

「比企谷君。渚、スタンガンしまっちゃったよ」

「…………」

鷹岡は気づいていないだろうか?俺の言葉の意味に……

「ナイフを使う気満々だな。安心したぜ。スタンガンはお友達の義理立てと忠告で拾っただけってことか」

やはり気づいていない。よかった。

そして鷹岡はズボンのポケットからなにかを出す。

「一応言っとくが、薬はここに3回分ほど予備がある。渚クンが本気で殺しに来なかったり、下の奴等が俺の邪魔をしようものなら、こいつも破壊する」

クッ、岡野と千葉が助けに向かおうとしていたのがバレたか……

「作るのに一ヶ月はかかるそうだ。人数分には足りないが最後の希望だぜ?」

俺らは何も出来ない。殺せんせーも烏間先生に危険と判断したら迷わず鷹岡を撃てと指示。無理もない。殺せんせーは潮田の隠し技を知らないからな……

潮田と鷹岡の闘いが始まった。潮田は前と同じようにゆっくり歩くが、鷹岡は蹴りを入れていたぶる。

見ている全員『勝てない』と絶望的な顔をする。

鷹岡もナイフを拾った。

「そういや比企谷。さっきの『条件が揃う』ってどういう意味?」

赤羽が俺に聞く。赤羽は気づいたか……

「潮田も俺と同じようにロヴロさんから技を習った。潮田の技には武器が二つ必要なんだよ……」

すると潮田は……技に入るのか笑顔になる。

前と同じように、しかしどこか違う。

ナイフを持って、鷹岡に近づく。振ればなナイフがギリギリ当たる距離までつめて、潮田はナイフを……

 

……空中に置くように捨てた。

 

そして――

 

パァン!

 

――鷹岡の顔の前で手を叩く。

潮田が習った必殺技。それは簡単に言えば相撲の『ねこだまし』。端から見ればただの大きな音。しかし、鷹岡にとっては町一つが爆発したかのような振動が脳に走る。

そして潮田は、寺坂のスタンガンを素早く抜き、鷹岡の右脇に電流を流した!

 

バチィッ!

 

鷹岡はその場で座り込んだ。

「とどめさせ、渚。首あたりにたっぷり流しゃ気絶する」

潮田は鷹岡の顎にスタンガンを当てる。そして鷹岡は絶望的な顔をする。潮田の表情は――

 

「鷹岡先生。ありがとうございました」

 

――笑っていた。




やっとボス撃破。
長かった。
次回は五十時間目の51話

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