暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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今回は黒幕たちの会話からスタートです。
更新遅くなりました。


四十三時間目 自立の時間

最上階。一人の男がどんぶりにスープをいれている。

「濃厚な魚介だしに、たっぷりのネギと一匙のニンニク……そして銃!」

男はどんぶりに銃を突っ込み、その銃を口に運ぶ。

「つけ銃うめぇ!」

その男の姿を見ていた、もう一人の男が言う。

「ククク、見てるこっちがヒヤヒヤする。実弾入りだろ? その銃」

「ヘマはしねっす。ご安心を、撃つときにも何の支障もありませんし、毎晩我が子のように手入れもしてます。その日一番上手い銃が一番馴染む。経験則ってやつっすよ」

「奇特な奴だ。他の三人もか?」

「そっすね。“スモッグ”の毒は全て自作。洗礼された実用性のあまりに研究室まで作る始末。あとの二人の内、特に“スレッド”の奴は暗殺を行う時の格好をまるでデートに行くかのように準備に時間をかけるんすよ。この作戦もあんたが引率教師に電話をかける3時間くらい前から準備に気を使ってましたし。あいつにとって暗殺はもはや標的とのデートも同然って感じすね」

「ほう、ではのこる“グリップ”も?」

「ええ、やつは――」

 

 

烏間先生がダウンしてしまった。

俺らの最大戦力を失った。

俺らの面子は赤羽、潮田、茅野、寺坂、吉田、菅谷、木村、磯貝、不破、岡野、片岡、千葉、速水、矢田、俺。

ビッチ先生を一階に置いてきて、烏間先生がダウンした上に殺せんせーが身動きが取れない以上、次に敵と遭遇したときには俺らで対処するしかない。

どうするべきか? 一応、手はある。が、しかし――

「いや~。いよいよ『夏休み』って感じですねぇ」

――殺せんせーが呑気な顔で言う。なにがだよ!?

俺らは殺せんせーの発言にムカッと来たので殺せんせーを持っている潮田は振り回す。

「にゅにゃああああああ~!!!?」

殺せんせーは見事に酔った。そして赤羽は……

「よし、寺坂。これねじ込むからパンツ下ろしてケツ開いて」

「死ぬわ!?」

さっきの毒のオッサンつれてくればよかったな……あのオッサンならケツに殺せんせーねじ込んでも問題ない。

「殺せんせー。どうしてこれが『夏休み』?」

潮田が聞くと殺せんせーは具合が悪そうに言う。

「先生と生徒は馴れ合いではありません。比企谷君の時に言ったように、友達の関係でもありません。つまり夏休みとは先生の保護の及ばない所での自立性を養う場でもあるのです。大丈夫です。君たちならクリアできます。この暗殺夏休みを」

殺せんせーはたまに無茶ぶりをするから体育は教えるのは向かないんだよな……しかし、やるしかないのか……

 ……。

 …………。

 ………………。

五階の展望台。ガラス窓の近くに金髪の男性が堂々と構えている。

(おいおい)

(……あの雰囲気)

(ああ、いい加減見分けがつくな)

あの金髪の男性はどう考えても殺し屋だ。しかも道が狭いから奇襲もできねぇ、突破するにはガチバトルしかねえ……すると男性は……

 

ビシッ!

 

素手で窓ガラスにヒビを入れた。

「……つまらぬ、足音を聞く限り……『手強い』と思えるものが一人も居らぬ。精鋭部隊出身の引率教師もいるはずだのぬ……だ。どうやら“スモッグ”のガスにやられたようだぬ。半ば相討ちといったところか。出てこい」

“スモッグ”てのはさっきの毒のオッサンのことだろう。この暑い時期に長袖の服装を見る限り体格を読まれないための布石。つまりこの男性は烏間先生なみの筋肉がありそうだ。しかし、俺らが気になるのはそんなところではない。

怖くて誰も言えないが……その……

「“ぬ”多くね。おじさん?」

言った! 赤羽、言ったよ! すると男性は――

「“ぬ”をつけるとサムライっぽい口調になると小耳に挟んだ。カッコよさそうだから試してみたぬ」

――と言う。誰だよ、そんなテキトー言ったのは! こいつらの黒幕か?

「間違ってるならそれでも良いぬ、この場の全員殺してから“ぬ”を取ればはじにもならぬ」

そんな『ランキングで自分より上の奴を全員殺せば俺が一位だ』みたいな中二染みたこと言われても……いや、この人はマジ殺し屋だから中二染みたじゃ済まねぇ……

「素手……それがあなたの暗殺道具ですか」

「こう見えて需要あるぬ、身体検査に引っ掛からぬ利点は大きい。近づきさま頸椎を一捻り。その気になれば頭蓋骨も握りつぶせるが――」

殺せんせーと男性の会話。確かに身体検査されたら一発で没収される、ナイフや銃と違って効率のいい武器かもしれない。

「――面白いものでぬ、人殺しのために力を鍛えるほど暗殺以外でも試してみたくなるぬ、すなわち闘い、強者との殺し合だぬ」

なら、殺し屋やめてプロレスラーかボクサーにでもなれ!

すると男性は携帯を取り出した。やべぇ、まさか!?

「だが、がっかりぬ、お目当てがこのザマでは試す気が失せた。ボスと仲間を呼んで皆殺しぬ」

 

ビキッ!

 

俺が動こうとした瞬間、赤羽がそこら辺にあった鉢植えでぬの男性の携帯をぶっ飛ばしてガラスにヒビを入れた。

「ねえ、おじさんぬ。意外とプロってフツーなんだね。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ。ていうか、速攻仲間呼んじゃうあたり、中坊とタイマン張るのも怖い人?」

赤羽が挑発する。烏間先生は止めようとするが、その烏間先生を殺せんせーが止めた。

俺も気がつく。赤羽は余裕だったり、相手を見下したりするとアゴをつきだすクセがある。しかし今の赤羽はアゴが引いている。あれは真剣な表情だ。なぜ俺がそんなことがわかるかって? 俺の人間観察の賜物だ。

いいぞ、赤羽。やれ!




次回はカルマ対おじさんぬの対決編です。
更新にまた時間がかかると思いますが、なにとぞ宜しくお願いします。

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