殺せんせーは結局船酔いし、いよいよ暗殺作戦。
場所はホテルの離れにある水上パーティルーム。
「楽しい暗殺」
「まずは映画鑑賞から始めようぜ」
「ぐ腐腐。本当に楽しいね」
三村、岡島、海老名さんと殺せんせーに言う。そして磯貝が説明する。
「まずは三村が編集した動画を楽しんでもらい、その後テストで勝った7人が触手を破壊し、それを合図に皆で一斉に暗殺を始める。それでいいですよね殺せんせー?」
「ヌルフフフ。上等です」
殺せんせーは余裕を見せる。
「三人ともセッティングごくろーさん」
「頑張ったぜ」
「ええ、おかげでディナー食べそこなっちゃった」
本当にご苦労さまでお疲れ様です。
さらに念入りに潮田が殺せんせーが自前の水着を隠し持っていないかチェック。持ってはいないようだ。
「準備はいいですか? 全力の暗殺を期待しています。君たちの知恵と工夫と本気の努力。それを見るのが先生の何よりの楽しみですから」
これから殺されるヒトの台詞とは思えないな。殺されない自信があるからこそか?
しかし……
「遠慮は無用。ドンと来なさい」
岡島が部屋の明かりを消して映像が上映される。
映像のタイトルは『3ーE組が送る とある教師の生態』 。情報提供:潮田渚。撮影:岡島大河。脚本:海老名姫菜。ナレーション・編集:三村航輝。
この映像が流れる間に触手破壊の権利を持つやつ以外は部屋を出たり入ったりを繰り返す。殺せんせーに部屋の人数を把握されないようにするためだ。
『まずは御覧いただこう。我々の担任の恥ずべき姿を』
画面にエロ本を拾い読みするトンボの格好をした殺せんせーが写る。
「にゅやああああ!!!?」
『お分かりいただけただろうか。最近のマイブームは熟女OL、全てこのタコがひとりで集めたエロ本である』
「違っ……ちょっ、岡島君たち、皆に言うなとあれほど……」
『しかもこのタコは最近では「巨乳だけでは刺激が足りない」などと言い出し、マッチョの筋肉のBL本にまで手を出す始末』
「にゅにゃあ!? さらっと嘘まで入れないでください! 海老名さーん!?」
これは俺のアイディア。殺せんせーは恥ずかしくて仕方ない。しかも言い訳しても無駄だ。
『お次はこれだ。女子限定ケーキバイキングに並ぶ巨影。誰であろう。奴である。バレないはずがない。女装以前に人間じゃないとバレなかっただけ奇跡である』
女装してまでケーキバイキングに並ぶタコ。そんなにケーキ食べたかったのかね?
ほかにも給料日前にただで配ってるティッシュを行列を作ってたくさんもらって、唐揚げにして食べ出したなどと言う、生物としての尊厳があるのかわからないような殺せんせーの黒歴史が流れる。
そして一時間後。
「……死んだ。もう先生死にました。あんなの知られてもう生きていけません……」
虫の息まで弱っていた。
『さて秘蔵映像にお付き合い頂いたが何かお気付きないだろうか殺せんせー?』
「!?」
殺せんせーの足の触手に水が染みている。誰かが水を流したわけではない。昼のうちにこのパーティルームの支柱を短くして、満潮時に水が流れるように仕込んでおいたのだ。
「さあ本番だ。約束だ、避けんなよ」
あとは山の上に千葉と速水がいると殺せんせーが思ってくれれば完璧だ。
パパパンッ!
7人が触手を破壊する。そして――
ミチミチッ! パキッ!
パーティルームそのものが壊れて、フライボード(水圧空中機)でクラスの運動能力の高い木村、前原、片岡たちが水圧で檻を作る。倉橋はイルカ笛でイルカに水中を泳がせる。水圧の檻の中から律も現れる。
潮田の情報から殺せんせーは急な環境変化に弱いとあるので木の小屋から水の檻へ変化。そして一斉射撃。
殺せんせーは当たる攻撃には敏感なため、俺らはあえて狙わず殺せんせーの動きを封じる。あとは殺せんせーは山の上から千葉と速水が打ってくると思っているだろうがその二人がいるのは……水中だ!
((もらった!))
ドッ!
その夜。殺せんせーの全身が閃光と共に弾けとんだ!
殺せたか?
作戦の時間
次でいよいよ四十話。しかし、正確には四十一話。なぜなら犠牲の時間を二回やっているから……でも四十話です。