暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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八幡と理事長の出会い。
(正確には知り合うきっかけ)


零三時間目(番外編)理事長の時間 強弱

俺が浅野理事長と出会ったのは、2年の体育祭のあとすぐだった。

「やあ、比企谷八幡君」

そのとき、俺は奉仕部室へ向かおうとしていたが、途中の道に理事長がいた。

「少し話そうか。平塚先生と雪ノ下さんには話を通してある」

理事長はそういって俺と外に出た。

一年時浅野息子と共に話したこともあり、理事長の顔は普通に知っていて、いつも笑っているイメージだったが、なにやらこんなに近くで改めて見ると――

 

――嘘臭い笑顔の人だ。

 

「体育祭、驚いたよ。まさか浅野君を負かせられるなんてね」

体育祭で、俺は棒倒しで俺は赤組でハチマキの上に包帯を巻いて浅野率いる白組の棒を見事に倒したが、しかし、ハチマキの偽装で反則負けとなった。

「反則負けですけどね」

「それでもだよ。彼に『負けた』と思わせたのが君と驚いたよ」

「随分と息子さんを買い被ってんですね」

すると理事長は言う。

「そうじゃないよ。浅野君を負かせられる人は居る。でも君だとは思わなかったと言っているんだよ。それほど君は『意外な人物』だと言うことさ」

それは誉めているのか? よくわからん。

「こう言っては失礼だけど、君は浅野君の成長にとって『理想の弱者』になり得そうだったからね」

理想の弱者? なんか本当に失礼だな……

「弱者は強者の踏み台となり、強者をさらに強くする。だけど強者が弱者から得るものもある。強者ではわからないことを弱者の目線から伝える弱者と強者の関係に君達はなれそうだと思っていたのさ……」

つまりは理事長は俺と浅野がコンビを組むと思っていたようだ。失礼な……

「……しかし、君は浅野君を負かせた事で浅野君は君を弱者とは思えなくなった。君は『強者』になる資格を得たのさ、敗北や失敗とは時として『強者』を『弱者』まで突き落とす。そして勝利や成功は時として『弱者』を『強者』にする。君のようにね」

別に俺は強者になりたいわけでは……すると浅野理事長は……

「ちょっと、ついてきなさい」

そういって、俺と理事長は校外に出た。

 ……。

 …………。

 ………………。

歩いていくと、なにやらダンボールの上に座ったホームレスらしき人がいた。

「やぁ、お変わりのないようで何よりだ。君にこれを恵んであげよう」

そういって理事長は懐から一万円札を5、6枚。ホームレスに『拾いなさい』と言わんばかりに落とした。ホームレスは嬉しそうに拾う……

「いいんすか?」

「ふふふ、問題ないさ。彼はね、ギャンブルでしか生きる喜びを感じられぬように教育されたんですよ」

教育された? 誰に?

「比企谷君。もし、浅野君をこのまま君に『負けた』ままにさせておいたら浅野君は君を『こう』するかも知れませんね」

…………………………。

「もうすぐ生徒会選挙だ。結果を楽しみにしていますよ」

そういって、浅野理事長は去っていく。




番外編はこのあと生徒会選挙に入ります。
次回は本編。(予定)

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