終業式。全校集会と同様にいつもなら他のクラスからウザい声が聞こえるが今回は聞こえなかった。
今回はA組対E組の賭けにも勝利した上にトップ50のほとんどをA組とE組で独占。E組全員とまではいかなかったが、クラスの半分はトップ50に入っている。
「えー、夏休みだからといって怠けず……どこかの誰かさんみたいにならないように……」
いつものE組いじりの校長のことばもウケが悪く、俺らは前を向いていられた。赤羽も珍しくサボらず参加してるし……にせ律も……
(烏間先生! にせ律が気になって式に集中できないすよ!)
(堪えてくれ、律が機械だとバレないための必要な工作だ)
必要なのか? いないなら居ないでもいいような……
聞くところによるとにせ律の正体は烏間先生の直属上司の娘さんらしい。口は堅い上に律本体の授業で成績もあがり上司もご機嫌だそうだ。
まあ菅谷は隣の席だったせいで集中力を削がれてクラス最下位になってしまったらしいが……それでも186人中95位。中位の成績だから全体的に上がったと言っていいだろう。
終業式が終わり、E組校舎に戻ろうとすると出口に俺を待ち伏せている人影が3つ……
「……ヒッキー……」
「……比企谷君……」
「……ごみぃちゃん……」
由比ヶ浜、雪ノ下、小町だ。
「ヒッキー、なんなんさ! 今回の結果!? 狙ったかのようなランク外だし!」
「そうだよ、ごみぃちゃん! そこまでして、結衣さんや雪乃さんよりE組の人たちのほうがいいの!?」
今回俺は総合51位。つまりトップ50に入らなかったため担任の許可があっても本校舎復帰はできない。よって奉仕部にも戻れない。まあ戻るつもりもないが……
「フン、無様ね。まけがや君」
「なんだその負け犬と名前を組み合わせたような悪口は。今回の負け犬はどちらかと言うとそっちだろ? 負け組クラスの二枚看板」
「あら、少なくともあなたには負けていないわ。まけ幡君」
「なんだよそのコンビニの中華まんコーナーに売ってそうな悪口は」
確かに今回は自慢の国語すら神崎と同率順位だったが……まあいい。
「そういや賭けのアレ。浅野納得したのか?」
「ええ、なんなら五教科の中に家庭科をいれてもいいなんて寺坂君たちに言われながら認めることになったわ。家庭科のテストでも負けたなら言い訳も出来ないわね」
ほう、意外なところで寺坂が役だったか。
家庭科のテストは一見、満点1位は五教科よりも簡単に見えるがそうでもない。受験に関係無い分教科担任の趣味で出題されるから、E組の殺せんせーの家庭科授業しか受けてないE組にとっては五教科よりも百点1位は実は難しいのだ。
「ま、敗者の言い訳にしかならんだろうが、次はトップ50どころかトップ10に入ってやるよ。それでも本校舎には戻る気無いがな」
なにこれ? 俺、カッコいい!
由比ヶ浜と小町はひいていた。
E組の校舎に戻ると殺せんせーが教卓と同じくらいの厚さをもつ『夏休みのしおり』を配り始める。
……夏休みのしおりの文字を横書きで書いてもスペースが余るほどの分厚さだ。アコーディオンみたいだな。
何々? 『プールに行って仲睦まじいカップルを見たときの淋しい自分の慰め方』に『海の浜辺でナンパに失敗しないための攻略法』に『夏休み中家族旅行に行く場合の先生が欲しいおみやげリスト』? 何のやくに立つんだよ……てかおみやげリスト、スウィーツばっかだな……
「さて、これより夏休みに入るわけですが、皆さんにはメインイベントがありますねぇ」
「ああ、比企谷が提案して、賭けで奪ったこれのことね」
そう、賭けの戦利品。本来は成績優秀クラス……つまりはA組に与えられるハズだった特典……
夏休み! 椚ヶ丘中学校特別夏期講習! 沖縄離島リゾート二泊三日だ!
触手7本のハンデなんてついでに過ぎん。四方を殺せんせーの苦手な水で囲まれたこの島こそが本当の暗殺の本命だ!
「正直に認めましょう。君たちは侮れない生徒になった。親御さんに見せる通知表は先ほど渡しましたがこれは標的である先生から暗殺者であるあなたたちへの通知表です」
そう言って、殺せんせーは全員分の二重丸の紙をばらまいた。
暗殺教室。基礎の一学期。これにて終業!
余談だが、あの過剰しおりは全員置き去りにしたが、殺せんせーによって配達されたのだった。
一学期終了です。
次回は夏休み編。
沖縄離島編の前に何話かオリジナル入れたいと思ってます。