暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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シロと寺坂とイトナの会話からスタートします。
つまりは寺坂目線からのスタートです。


二十九時間目 操りの時間

「ご苦労様。プールの破壊、薬剤散布、薬剤混入。君のおかげで効率よく準備ができた。はい報酬の十万円。また次も頼むよ。何せあのタコは鼻が利く、外部の者が動き回ればすぐに察知してしまう。だから寺坂君、君のような内部の人間に頼んだのさ。イトナの性能をフルに活かす舞台作りを」

……堀部イトナ。あのタコを今までで一番追い詰めた改造人間。なんか目と髪型が変わったな……

聞くところによるとまた色々と改造されたみたいだ。

「寺坂竜馬、私には君の気持ちがよくわかる。あのタコにいらつくあまりに君はクラスで孤立を深めている。だから君に声をかけ協力を頼んだ。安心しなさい、私の計画通り動いてくれれば、すぐにでも奴を殺し奴が来る前のE組に戻してあげよう」

その上、小遣いまでもらえるなんていい話だ。するとイトナは俺に近づき言う。

「お前は……あのクラスの赤髪や腐り目の奴より弱い。馬力も体格も勝るのになぜかわかるか? お前の目にはビジョンがない。勝利への意志も手段も情熱もない。腐り目は腐った目をしてても勝利へのビジョンを写している」

な、なんなんだよこいつは!?

 

 

寺坂がスプレー缶を撒き散らした翌日の昼休み。殺せんせーは涙を流していた。

「なによ、さっきから意味もなく涙流して」

「いいえ。鼻なので鼻水です」

鼻水かよ!? 紛らわしいな、早く鼻を咬め!

「どうも昨日から体の調子が少し変です。夏風邪ですかねぇ……」

「え? 殺せんせーって、風邪ひくの?」

「比企谷君は先生をなんだと思っているんです!?」

「触手地球破壊蛸」

「間違ってはいませんがもう少し何とかなりませんか!?」

すると教室に無断欠席していた寺坂が入ってきた。

「おお、寺坂君! 今日は登校しないかと心配でした!」

そう言って殺せんせーは寺坂に歩み寄る。端から見れば泣きながら帰ってきた生徒に喜ぶ教師だが、鼻水なので台無しだ。しかも寺坂の顔に鼻水がだらだらと付いて行く。汚ねぇ……

「おいタコ。そろそろ本気でブッ殺してやんよ。プールに来い。弱点なんだってな水が……テメーらも全員手伝え! 俺がこいつを水ン中に叩き落としてやっからよ!」

そんな今まで暗殺に手も貸さなかった奴の命令を聞くやつがいるのか? 寺坂はしかも「来たくなかったら来なくてもいい。そのときは賞金百億は俺の独り占めだ」と言って行ってしまった。クラスの連中は……

「私、行かなーい」

「同じく」

「俺も今回はパスかな」

仲の良かった村松、吉田も「ついていけねーわ」と行かない方向だ。

まあ、俺は行くけどな。

「お、おい。比企谷! お前行く気か!?」

「ああ、百億独り占めされるのが嫌ってのもあるが、昨日もいった通り寺坂の行動には俺にも覚えがある。これがきっかけになるかもしれんし」

すると逆に逃げようとしていた生徒を殺せんせーが粘液で足元を固めて動けない用にした。

「行きましょうよぉ、せっかく寺坂君が私を殺る気になったんです。比企谷君の言う通り、これがきっかけで気持ちよく仲直りです」

『まずあんたが気持ち悪い!!』

そりゃそうだ。粘液まみれの顔で言われても……

 

プールに行くと、寺坂が俺らをプールに散らばらせる。

結局、赤羽以外は全員文句言いつも来た。

そして寺坂が殺せんせーに銃を向ける。

(それだけでどうやって殺せんせーをプールに叩き落とすつもりだ?)

何かを殺せんせーに言って寺坂は引き金を引く。俺は寺坂の銃から『ピッ!』と言う音がしたのを聞いた。

……まさか!?

「全員! プールから上がれ!!」

『へ?』

 

ドグァッ!!

 

プールの堰が爆発して俺らは流される。しかもこの先は険しい岩場だ! このままじゃ、俺らは溺れるか落下するかで死んじまう!?

俺は何とかプールのはしご近くに居たため捕まって溺れるのを防いだ。そして水が少なくなり上がる。

爆発音を聞いてか、赤羽も来た。

「寺坂、そういやお前は潮田に自爆テロさせた実行犯だったな……だが、これはやりすぎだろ!」

すると寺坂は慌てた表情で直訴する。

「ち、違う!? 俺はこの発信器でイトナを呼んで突き落とすって聞いてたんだ……」

「ああ!? お前、あの二人と繋がってたのか!?」

そうか、寺坂が考えたにしては残酷過ぎるとも思ったがあの二人が関わっていたのか……

「……なるほどねぇ、まんまとあの二人に操られてたってわけ」

「言っとくが俺のせいじゃねーぞカルマァ! こんな計画やらす方がわりーんだ! 皆が流されてったのも全部やつらが……」

 

ゴッ!

 

寺坂がそこまで言うと赤羽が寺坂を殴った。俺も言う。

「寺坂。殺せんせーがマッハで助かったな。でなきゃ大量殺人犯だぞ? 人のせいにすんのはいいが、今、お前は何がしたい?」

すると殺せんせーが生徒を助け終えた所で堀部とシロが現れる。

どうやら堰の爆弾だけでなくプールの水や寺坂のまいたスプレー缶も寺坂を使って仕込んだものだったらしい。

そのせいか、殺せんせーは全身に水を含んで動きが鈍い。

「それだけじゃねえよ、タコの頭上を見ろ」

そう言われて見たところには殺せんせーに助けられたクラスのぽっちゃり女、原が木の上で落ちそうになっている。なるほど、あれが気になって堀部に集中できないわけか……

「寺坂! おまえひょっとして今回のこと全部奴等に操られてたのかよ!?」

殺せんせーに安全に助けられた前原が寺坂に言う。他の連中もきて寺坂に注目する。

「ふん、あー、そうだよ! 目標もビジョンもねぇ短絡的なやつはあたまの頭の良い奴に操られる運命なんだよ! だからもう、どうしようもねえ、おとなしくあのタコが殺されんのを見てるしか――」

 

ガッ!

 

俺は寺坂を殴った。本気で人を殴ったの始めてかも知れねぇ……

「寺坂。お前が操り人形の人生を選ぼうが俺には関係ねぇ。俺も操り人形の人生は別に悪いとは言わねえ、だがよ。それでも俺は最低限に操られる相手くらいは選びたいと思うぜ? お前は違うのか? 操ってくれりゃどんなやつでもいいのかよ」

すると寺坂は――

「……たりめーだろ……操られる相手ぐらいは選びてぇよ。んで奴等はこりごりだ。賞金持っていかれんのも気にくわねぇ」

寺坂は言いきった。

「なら、俺と赤羽に操られろ。シロたちよりは上手い作戦を与えられる上に完璧に実行出来りゃ原たちを助けられる」

すると寺坂はにやけ顔になり言う。

「やってやんよ。こちとら実績持ってる実行犯だぜ?」

「やる気になって嬉しいがまだ作戦はまとまってねー。赤羽、手伝ってくれ」

「ん、了解」

さて、状況を整理すると原が樹上で落ちそうになっている。殺せんせーは二種類の薬品と水で動きが鈍いが、それでも人間以上の身体能力は使える。堀部は触手をシロによって大幅に強化されている……

「おい二人ともまだか? 作戦は!?」

「ちょっと待て! あ! そうだ!」

「「原(さん)は助けずにほっとこう!」」

俺と赤羽の意見があった。しかし、クラスの連中は最低な者を見る表情。だよな……

「おいお前らふざけてんのか? 原が一番あぶねーだろが! ふとましいから身動きとれねーし、ヘヴィだから枝も折れそうだぞ!」

寺坂にしては正論だ。だが……

「わかってる。だが殺せんせーもそれは気づいているが気づいているのに動けないのは堀部が邪魔しているからだ。堀部が一瞬でもたりとも殺せんせーから目線を外さねえから助けることが出来ねーわけで、逆に言えば堀部が一瞬でも殺せんせーから目線を外せば原が最優先に殺せんせーによって助けられるわけで――」

「だぁぁ!? なげーよ!? つまりどうすりゃいいんだよ!?」

「つまりだな――」

俺らは作戦を実行する。

 

「さぁて、足元の触手も水を吸って動かなくなってきたね。とどめにかかろうイトナ。邪魔な触手を全て落とし、その上で『心臓』を」

「おいシロ! イトナ! よくも俺を騙してくれたな! てめーらは許さねえ! イトナ! 俺とタイマン張りやがれ!」

寺坂は着ていたシャツを盾代わりに堀部に立ち向かう。殺せんせーも止めるが寺坂は聞く耳を持たない。

それでいい。これだけ時間を稼げば……

 

ドッ!

 

寺坂の腹に堀部の触手が直撃。だが、寺坂の体格のおかげで耐えられた。そして……

「ぐしゅんっ!」

堀部はくしゃみをする。

「寺坂のシャツは昨日と同じ。つまりはあの殺せんせーの粘液駄々漏れにした成分を至近距離でたっぷり浴びたシャツってこと。イトナだってただじゃすまないよねぇ?」

赤羽、説明サンキュー。

「んで、こんだけ時間稼げば殺せんせーは原を助けられる。おい! 村松、吉田。他にもプールの飛び込めるやつは飛び込め!」

するとクラスの連中は次々とプールに飛び込む。すると水飛沫で堀部の触手も水を含んで動きが鈍くなる。

「どうする? まだ続けるなら、こっちも全力で水遊びさせてもらうけど?」

クラスの連中はそれぞれ水を構える。

堀部とシロは無理と判断して逃げていった。

ふぅ、何とか作戦は成功か……

「そーいや寺坂君。さっき私の事さんざん言ってたね。ヘヴィだとかふとましいとか」

原が怒り気味で言う。確かにいってたな……

「い、いやあれは状況を客観的に分析してだな」

「言い訳無用! 動けるデブの恐ろしさ見せてあげるわ」

「あーあ、ほんと無神経だよな寺坂は」

「全くだ。そんなんだから手のひらで転がされるんだ」

すると寺坂は流石にキレたようで……

「うるせーカルマ、八幡!! テメーらも見下ろしてんじゃねー!!」

「ぶ!?」

「うご!?」

……足元くらいまでしかないプールに落とされた。ん? そういや寺坂が俺を八幡って呼んだか?

「カルマはサボリ魔のくせにオイシイ場面は持っていきやがるし、八幡は運動能力はトップクラスのくせに肝心なところで先頭に出ねえじゃねえか!」

はあ? 全く……なにいってんだ……俺の運動能力がトップクラス? なわけねぇだろ。するとクラスの連中は……

「あー、それは私も思ってた」

「この機会に二人には泥水たっぷり飲ませよう」

おいこら、やめろ!?

まあシロに操られたことで寺坂もこの暗殺教室に溶け込めたことだし、良しとするか……

 

……ん? なにか、シロが重要そうな情報を言っていたような……まあいいか。




今までで、一番長くなったかもしれません。
ヒッキー&カルマのひねくれ&いたずらコンビでした。寺坂を操ればさらに最強?
次回は期末試験編です。

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