今回で原作五巻エピソードが終了です。
夏だ。
E組のボロ校舎にはクーラーがない。
つまりは暑い。
それも物凄く。メチャクチャ暑い。
なぜこんな環境下で勉強しなくてはならないのか。しかも、殺せんせーは放課後、マッハで寒帯へ逃げるらしいし……ずりぃ。すると倉橋が言う。
「でも今日、プール開きだよねっ、体育の時間が待ち遠しい~」
こいつはわかってねーな……
「アホか倉橋。E組にとってはそりゃ地獄だ。プールが本校舎にしかねーから、炎天下の山道歩いて、帰りは泳ぎ疲れながら山登り……カラスのエサになりかねん」
「うー……」
「だから俺は体育の授業は森の日陰で森林浴しながら烏間先生の暗殺訓練を希望する」
「「「いや、それは駄目だろ」」」
クラスの何人かに言われた。
「うー……殺せんせー、俺らを本校舎まで運んでくれよ」
「もー、しょうがないですねぇ。と言いたいところですが、それは無理です。マッハで解決出来ないこともなるのです」
ま、そうだよな……前に殺せんせーが潮田と赤羽をハワイまで映画見に連れていったりはしたことあるが、俺ら全員を本校舎まで運ぶのはさすがに殺せんせーでも時間がかかる。
「でもまあ気持ちはわかります、仕方ない。全員水着に着替えてついてきなさい。裏山に小さな沢があったでしょう、そこに涼みに行きましょう」
裏山に沢なんかあったのか? しかし、聞くところによると足首まであるかないかの深さしかないらしい。
近くまで行くと殺せんせーは言い出す。
「さて皆さん! さっき先生は言いましたね。マッハ20で出来ないことがあると。そのひとつが君達をプールに連れていくこと、残念ながらそれには1日かかります」
1日? 一時間のまちがいじゃないのか? すると殺せんせーの先には……
自然で作られたプールがあった。
「なにせ小さな沢を塞き止めたので、水がたまるまで20時間! 制作に1日、移動に1分、あとは1秒あれば飛び込めますよ」
それを聞いてクラスの連中は――
『い……やっほう!!』
――次々とプールに飛び込んで行った。本当に殺せんせーはいい教師だよ。
「楽しいけどちょっと憂鬱。泳ぎは苦手だし、水着は体のラインがはっきり出るし」
「大丈夫さ茅野。その体もいつかどこかで需要があるさ」
いや、二枚目面して盗撮カメラ用意している岡島に言われても茅野にとっては意味ないだろ……
「つか、茅野が泳ぎ苦手って、以外だな。家の妹も茅野みたいな体型だがそのお陰で泳ぎは上手いぞ?」
「余計なお世話よ!? 比企谷君!」
フォローのつもりが怒らせたか……なれないことはするもんじゃねえな。
「渚、あんた男なのね」
「今さら!?」
まあ仕方ない。すると……
ピピピピッ!
……殺せんせーが小うるさく注意する。
木村にプールでは走るなとか、原と中村に潜水は溺れたかと心配するからほどほどにだの、岡島のカメラ没収だの、サイドで読書している狭間に泳げだの、杉野や磯貝の筋肉見てハーハー言ってる海老名さんに妄想するなだの、ボディアートを書いてる菅谷に入場禁止だの注意している。
「いるよねー、自分が作ったフィールドの中だと王様気分になっちゃう人」
「うん、ありがたいのにありがたみ薄れちゃうな」
「まあ、ちょうどいいんじゃね? こういうことしてくれて殺しづらい。ってのをこういうやり方で殺意をキープできるし、これで問題なく殺そうと思える。プラマイゼロってわけだ」
「なるほどな……俺も最近殺せんせー殺しづらいとか思ってたが、これで問題なく殺そうと思える」
そして、倉橋が殺せんせーに水をかける。すると……
「きゃんっ!?」
『………………?』
すると今度は赤羽が殺せんせーに近づき、殺せんせーの座っている観察台を揺らして落とそうとする。
すると殺せんせーは必死に抵抗する。
(殺せんせー、まさか!?)
クラス全員、思った。まさか殺せんせーは泳げないのでは? 潮田のメモやシロの情報等で弱点は色々出てきたが一番使える弱点じゃないか?
持ってるビート板もよく見りゃふ菓子だし。
……水殺がこの夏のテーマになりそうだな。
そんなことを考えていると……
「あ、やば、バランスが!?(ドボン!)」
茅野が浮き輪ごとひっくり返った。しかも身長が低いからそこに足がつかねぇ!?
俺も助けに向かうが距離がありすぎる。すると……
「はい、大丈夫だよ茅野さん、すぐ浅いとこいくからね」
もと水泳部、片岡が茅野を助けた。
水殺なら出番だな。
プール回でした。いや、まだ続きますが。
次回、雪ノ下登場!?(予定)