修学旅行から戻り、振替休日も終わると、烏間先生から休日開けに転校生が来ると言うことだ。
この時期に転校生が来ると言うことは、その転校生もビッチ先生のように暗殺者なのだろうか?
俺は同い年でプロの暗殺者なんてマンガみたいな話があるのだろうかと疑問に思ったが、来たのだからいたのだろう。と俺は納得させる。
実際に登校して俺は完全に納得した。
教室の窓際一番後ろに一つの箱……機械が置いてあり、画面に女子の顔が映る。
『みなさん、初めまして、自律思考固定砲台と申します』
そうきたか……人工知能ってここまで進化していたんだな……
「彼女はノルウェーから来た自律思考固定砲台さんだ。彼女はAIだが、れっきとした生徒として登録されている」
烏間先生は眉間にシワを寄せながら申し訳なさそうに紹介する。
つまりは殺せんせーは政府との契約で自律思考固定砲台さんを攻撃できないが、向こうは攻撃し放題ってわけだ。ある意味正攻法だが、反則すれすれじゃないか?
まあ、気にせず授業に入る。すると自律思考固定砲台さんから銃が出てきた。すぐさま発泡。殺せんせーは避ける。すると自律思考固定砲台さんは何やら難しい数字や何やらと数秒語り再び発泡。すると……
ブチャッ!
なんと今度は一発命中!?
『卒業までに殺せる確率90パーセント以上』
す、すげえ。ある意味最強じゃねえか! チートだ。
……そんなことを思ったのもつかのまだった。
ぐちゃあ~
教室中に対先生用BB彈が散らかっていた。
自律思考固定砲台さんは掃除機能とかないのか?
『…………………………』
まるで電源がきれたかのように無視。俺らが掃除すんの? これ……
その日は休み時間になる度に掃除をする羽目となったのだった。
翌日。俺は我慢の限界と思い、自律思考固定砲台さんをガムテープぐるぐる巻きにしてしまう作戦に出た。
「なにしてんだ? お前」
寺坂に聞かれる。
「どう考えても邪魔だろ? 昨日みたいに毎時間掃除をするのはゴメンだ」
「確かにな。俺にもガムテープを寄越せ」
そう言って寺坂と俺は自律思考固定砲台さんをガムテープで固定した。
授業の時間。自律思考固定砲台さんはようやく自分の状況に気が付き、殺せんせーに直訴。
『この拘束はあなたの仕業ですか? 明らかに生徒に対する加害であると判断します』
「安心しろ。それをやったのは寺坂だ」
「てめえもだろが!!」
「てわけだ。加害加えたのが殺せんせーでなけりゃ問題ねえだろ?」
『比企谷さま。何故私の邪魔をするのですか?』
え? わかんないの?
「昨日みたいに毎時間掃除をするのはゴメンだ。つーか、殺せんせーの暗殺するのはいいが、俺らを巻き込むなってことだ。流れ弾とかで怪我したらどうする?」
『……そう言われて理解しました。クラスメイトの利害や安全までは考慮していませんでした』
おお、さすが人工知能。理解が早い。
「ヌルフフフ、比企谷君もわかってきましたね~、そしてあなたも見習うべきです。危害を加えるのは契約違反ですが、性能アップなら問題ありません」
そう言って殺せんせーはなにやら色々な道具を出した。
そして殺せんせーは自律思考固定砲台さんを改造し出した。
さらに翌日。自律思考固定砲台さんは何やら面積が増えていた。そして映ると――
『おはようございます‼ 比企谷さん‼ 今日はすばらしい天気ですね‼ こんな日を皆さんと過ごせて嬉しいです‼』
転校生がおかしな方向へ進化した。
ついでに言うとこの改造で殺せんせーの財布の中身が五円になったらしい。
「たった一晩でえらくキュートになっちゃって……」
全くだ。物凄くあざとくなったな……
「なに騙されてんだよお前ら、全部あのタコが作ったプログラムだろ。愛想よくても機械は機械、どーせまた空気読まずに射撃すんだろポンコツ」
寺坂の言葉に自律思考固定砲台さんは……
『……おっしゃる気持ちわかります。寺坂さん。昨日までの私はそうでした。ポンコツ……そう言われても返す言葉がありません』
しくしくと泣くシーンが写し出される。それをみたクラスメイトは……
「あーあ、泣かせた」
「寺坂君が二次元の女の子泣かせちゃった」
「なんか誤解される言い方やめろ‼」
「誤解じゃねえだろ? 実際にあいつは二次元女子だし」
するとクラスでメガネの竹林が言った。
「いいじゃないか二次元……Dを一つ失うところから女ははじまる」
「「「竹林、それおまえの初ゼリフだぞ、いいのか!?」」」
全くだ。すると海老名さんは言う。
「竹林君。Dを一つ失うところから始まるのは男もよ」
「「「それもそれでおかしくないか!?」」」
ごもっともです。
そんな感じに自律思考固定砲台さんはクラスに溶け込んで行く。
クラスメイトに花を作る約束したり、千葉と将棋をして三局目で勝てなくなったりとハイスペックな転校生となった。
「つーか、自律思考固定砲台さんっていい加減いいずれえな……」
俺はボソッと言うとみんな聞こえていたようで……
「そうね、呼び方決めた方がいいかも」
「じゃあ、自律思考固定砲台から一文字とって……律でどうだ?」
前原が言う。自律思考固定砲台さんは気に入ったらしく、改め律と命名されたのだった。だけど……
「寺坂にはああ、言ったが、結局律のやつは殺せんせーのプログラムだからな……開発者が見たらどうなるか?」
「お、やっぱ比企谷君も思った? 機械事態に意思がある訳じゃないしね~」
俺と赤羽の意見があった。どうなることやら……
さらに翌日。律は元に戻っていた。やっぱりこうなってしまったか……
しかも生徒が危害を加えた場合賠償請求するとまでいってきやがった。
ああ、また毎時間掃除の時間が来るのか……
俺は諦めていると……
『花を作る約束をしていました』
律から花が出てきた?
『殺せんせーの私のボディーに計985点の改良を施しました』
そんなに改造してたの?
『そのほとんどは開発者に削除、撤去、初期化してしまいましたが「協調能力」は暗殺に不可欠な要素と判断し消される前に関連ソフトをメモリの隅に隠しました』
つまり、律自信が開発者に逆らったってことか!?
『こういった行動を“反抗期”と言うのですよね? 律は悪い子でしょうか?』
「とんでもない、中学三年生らしくて大いに結構です」
こうして律は正式に椚ヶ丘中学3ーEの一員になったのだった。
次回は前原回かロヴロ回かどちらにしようか迷っています。どっちがいいでしょうか?