暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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記念すべき百時間目!
長い。そして原作とほとんど変わらない!?


百時間目 接吻の時間

俺達は、茅野の待つすすき野原に来た。

「殺せんせーの名付け親は私だよ? ママが『滅ッ‼』してあげる」

な、なんだ……茅野が雪ノ下なみにこえぇ……(今となっては雪ノ下はそこまで怖くもないが……)

「茅野さん、その触手をこれ以上使うのは危険すぎます。今すぐ抜いて治療しないと命にかかわる」

「え、何が? すこぶる快調だよ、ハッタリで動揺狙うのやめてくれる?」

茅野はあっさりと言う。俺と潮田は言う。

「……触手が命に危険なのは堀部で学習済みだろうが、触手については嘘をついてもバレるぞ?」

「そうだよ茅野。全部演技だったの? 楽しいこと色々したのも、苦しい事を皆で乗り越えたのも」

茅野はあっさりと答える。

「演技だよ、これでも私、役者でさ、渚が鷹岡先生にやられてるとき、じれったくて参戦してやりたくなった。不良にさらわれたり、「死神」に蹴られた時なんかは……ムカついて殺したくなったよ。でも耐えて、ひ弱な女子を演じたよ、殺る前に正体バレたら……お姉ちゃんの仇が討てないからね」

「お姉ちゃん……雪村先生?」

不破のこの発言で茅野の表情が変わる。

「この怪物に殺されてさぞ無念だったろうな。教師の仕事が大好きだった。皆の事もちょっと聞いてたよ」

そうだ。今にして思えば雪村先生はいい教師だった。

インナーやシャツのガラがダサいという欠点はあったが、いつも俺らを熱心に指導してくれた……

「……知ってるよ茅野、2年の3月……2週間ぽっちの付き合いだったけど、熱心ですごく良い先生だった」

「そんな雪村先生を、殺せんせーはいきなり殺すかな? そういう酷いこと……俺らの前で1度もやったことないじゃん」

竹林と杉野が言う。そして倉橋と赤羽が言う。

「……ね、殺せんせーの話だけでも聞いてあげてよカエデちゃん」

「停学中の俺ん家まで訪ねるような先生だったよ……けどさ、本当にこれでいいの? 今、茅野ちゃんがやってることが……殺し屋として最適解だとは俺には思えない」

堀部も言う。

「体が熱くて首もとだけ寒いはずだ。触手の移植者特有の代謝異常だ」

ああ、なるほど。だから堀部は触手を使っていたときいつも薄着にファーを首に巻いてるとかの格好だったのか……

「その状態で戦うのは本気でヤバイ。熱と激痛でコントロールを失い、触手に生命力を吸いとられ、死……」

堀部がここまで言うと――

 

ゴゥッ!

 

――茅野が触手から炎を出した!

「…………うるさいね、部外者達は黙ってて。どんな弱点も欠点も磨きあげれば武器になる。そう教えてくれたのは先生だよ、体が熱くて仕方ないなら……もっともっと熱くして全部触手に集めればいい」

「…………だめだ…………それ以上は……!!」

茅野は炎の触手で炎のリングを作り出した。

殺せんせーの苦手な急激な環境変化だ!

「全身が敏感になってるの、今ならどんなスキでも見逃さない」

その茅野の言葉に潮田が言う。

「やめろ茅野! こんなの違う! 僕も比企谷君も学習したんだよ! 自分の身を犠牲にして殺したって……後には何も残らないって!」

「自分を犠牲にするつもりなんてないよ渚。ただこいつを殺すだけ」

茅野は殺せんせーに飛びかかる。その威力はまるで火山弾。堀部が言うには触手の侵食がもう精神にまで行き始め、殺せんせーを殺せても殺せなくとも戦いが終われば死ぬような状態らしい。

「死んで! 死んで! 死んで!」

そう茅野は叫んではいるが、本人が死にそうになっている……

そんな風に思っていると……

 

殺せんせーの顔だけが空中に現れた。

 

「なんで顔だけ?」

「先生の分身です! 茅野さんの猛攻にあまりに余裕がなさすぎて……顔だけ伸ばして残像を作るのが精一杯です!」

それはそれで器用ですね……

「手伝ってください! 一刻も早く茅野さんの触手を抜かなくては! 彼女の触手の異常な火力は自分の生存を考えていないから出せるものです! このままでは触手に生命力を吸われて死んでしまう」

「だけど、強引に引き抜けば脳に影響があるって堀部の時……」

「はい、イトナ君の時のように時間があれば彼女の殺意と触手の殺意がこもった触手の『根』の癒着を離せますが、今はそんな時間はありません! だから多少強引な方法ですが、戦いながら引き抜きます!」

なんだと!? そんなことができるのか?

「まず、触手の殺意を先生のネクタイの下の心臓に刺させて“殺った”と感じさせ『触手の殺意』を弱らせます。その瞬間に、君たちの誰かが『茅野さんの殺意』を弱まらせる事をしてください!」

俺たちが? どうやって?

「方法はなんでも良い、しかし、こればかりは先生にはできません」

だよな、殺意の対象からふざけたことをさせたら逆に殺意が膨らんじまう……

「彼女の殺意を弱まらせればあとはイトナ君の時のように先生が触手を引き抜きます!」

最善策だが……

「その間ずっと殺せんせーの心臓に茅野の触手が? 先生が逆に死ぬんじゃねーの?」

その通りだ。

「上手いこと致死点をずらすつもりですが、先生の生死は五分五分です……でもね、クラス全員が揃って卒業出来ない事は、先生にとって死ぬ事よりも嫌なんです」

そうか……

「うっ!? 分身を保てなくなってきました、一分ほど戦ったら決行します、先生の心臓に触手が刺さったらとびきりのやつをお願いします!」

そう言って殺せんせーの残像は消えた。

おいおい、どうすんだ?あの戦いに乱入して一発芸でもやれってのか? 一発芸って言えば……

「……三村、エアギターやれ、テメーの超絶技を見せてやれや」

「この場面で!? むしろ俺に殺意が向くよ!!」

いや、案外良い案かもしれない……三村のエアギターは奉仕部時代から見たがあれば感動ものだ。

なんて冗談はおいといて……

「殺意の対象を変える………? そうだ! 矢田っち! その胸を強調させて茅野っちに『貧乳ちゃーん、いらっしゃーい』って言えば!」

「怒りの対象かえるだけでしょ!? てかそんな役はビッチ先生の役目でしょ!?」

岡野と矢田がなにか言い合っているがダメだ。良い案が思い付かない……潮田のねこだまし……俺のけたぐり……ダメだ……

すると、潮田がなにか思い付いたようだ。

そして――

 

ズドンッ!

 

――殺せんせーのネクタイの下の心臓に茅野の触手が刺さった。

そして殺せんせーは触手で茅野の動きを封じた。

「君のお姉さん誓ったんです。君たちからこの触手(て)を放さないと」

かつて堀部の暴走の時に言った殺せんせーの台詞。あの言葉を誓ったのはやはり雪村先生だったのか……

そして潮田が茅野の前にたつ。やはり、ねこだましで気絶させる気か?

潮田は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――茅野にキスをした。

………………………はい?

俺は……いや、クラスのみんなが驚いた。岡島、不破は目が飛び出そうな驚き方。神崎、奥田、速水は顔を真っ赤に。千葉、木村は顎が外れそうな勢いで。赤羽、中村は写メを取っていた。

これはビッチ先生直伝のディープキス……茅野は5HITで自分が何をさせたのか気がつき、8HITあたりで潮田を引きはなそうと悶えるが潮田がガッチリと茅野を捕まえる。そして15HITで――

「ぷひゃあ~」

――茅野は気絶した。

「殺せんせー。これでどうかな?」

「満点です渚君! 今なら抜ける!」

殺せんせーはマッハで茅野の触手を繊細に丁寧に抜いた。

そして潮田には、赤羽と中村がいじりに入る。

「王子さま~」

「キスで動きをとめるとはやるじゃないか」

全くだ。よくもまああんな方法を思い付くもんだ。俺だったら今でも昔でもそんな方法は思い付かんぞ?

さらにビッチ先生は――

「キス10秒で15HITまだまだね。この私が強制無差別ディープキスで鍛えたのよ40HITは狙えたはずね」

「うむ、俺なら25は固いぞ」

前原は黙ってろこのリア充。

「……もうやだこの教室。私も20はいくけどさ……」

いくのかよ!? 片岡!? 俺は10もいかないよ!?

いや、それはどうでも良いけど……

そんな呑気な事をやっていると……

「殺せんせー!?」

「……平気です。たださすがに心臓の修復には時間がかかります。聞きたいことはあるでしょうが、もう少しだけ待ってください……」

正直言えば絶好の機会かもしれない。だが……

すると――

 

パンッ!

 

――どこからか攻撃が!? その攻撃をしたのは……

「使えない娘だ。命と引き換えの復讐劇ならもう少し見所があったのに……」

「シロ……!!」

いたのはシロと何やら全身スーツの人?だった。

「大した怪物だ。いったい何人の殺し屋を退けて来たのか? だが、ここに二人残っている」

シロは仮面を外して口から変声機らしきものを外す。

「最後は俺だ。全てを奪ったお前に対し……命を持って償わせよう」

シロの素顔は……ワカメ髪に左目に何やら機械を取り付けた男だった。

「……やはりシロさんの正体は君だったか、柳沢」

どうやら殺せんせーはシロの正体には気がついていたようだ。

「行こう二代目。三月には呪われた命に完璧な死を」

シロ=柳沢?は全身スーツと一緒にどこかへ消えた。

それと同時に茅野が目を覚ました。

「茅野さん、良かった」

茅野は語り出した。

「最初は純粋な殺意だった。けど殺せんせーと過ごすうちに殺意に確信が持てなくなっていった。殺す前に殺せんせーの事情を知るべきじゃないかと思うようになった……けど、その頃には触手の殺意をコントロールできなくなってた。バカだよね。皆が純粋に暗殺を楽しんでたのに私だけ……」

「茅野。茅野にこの髪型教えてもらって僕は長い髪を気にしなくてすむようになった。茅野が思い付いた“殺せんせー”って名前も皆が気に入ったから使ってきた。目的がなんだったとかどうでも良い、茅野はこのクラスを一緒に作り上げた仲間なんだ。一人でどれだけ苦しんでたって全部演技だったなんて言わせないよ」

その通りだ。陽乃さんだって仮面をつけてる状態で全てが全て目的だけのために動いてる訳じゃない、自分の娯楽に使ってる。

「聞こうよ皆で、殺せんせーの事情を」

茅野は嬉し泣きして……

「ありがと……もう演技やめて良いんだ……」

殺せんせーも十分回復した。磯貝が言う。

「茅野はここまでして先生の命を狙いました。並大抵の覚悟や決意じゃ出来ない暗殺だった。そしてこの暗殺には……先生の過去とも雪村先生とも……俺たちとも繋がっている。話してください。どんな過去でも……俺たちは受け入れます」

殺せんせーは言った。




次回は殺せんせー過去編。ちらっと平塚先生は足す予定です。

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