何をしに来た?
読者の予想を外れると思います。
「平塚……先生……!?」
俺の目の前に、椚ヶ丘を退職したはずの平塚先生が現れた……
「ど、どうしてここに!?」
「いや、すまないな。お前たちに何も言わずに辞めてしまってな。奉仕部の顧問はちゃんと引き継がせてから行ったから問題は無いハズだが……」
「そういうことじゃないっすよ!」
すると平塚先生は言う。
「そうだな……あれから色々あってな。ようやく準備が整った。だから明日までにクラス全員に本校舎へ戻る準備をさせておけ」
平塚先生は行ってしまった。
「ねぇ、ヒッキー……今のってどう言うこと?」
確かにどう言うことだ?
準備が整った?
平塚先生は殺せんせーの事を知ってるのか?
だとしたらそれこそなんで?
俺はとにかく由比ヶ浜にはこう答えるしかなかった。
「さあな」
……。
…………。
………………。
「平塚先生が!?」
翌日。俺は登校して磯貝と片岡を中心に平塚先生の事を話した。
「その口ぶりからは平塚先生は殺せんせーを知ってるのか?」
俺もそれは思ったがなぜ知ってる?
すると……
「ねえ、そのヒラツカって誰よ?」
ビッチ先生が聞いてきた。まあ知るわけ無いか。烏間先生は少し知っているようだが……
「この教室が暗殺教室になる前に担任だった雪村あぐり先生のサポートとして副担任をしていた先生です。理事長からは辞めたって聞いてましたけど……」
そう、本来このE組は担任教師は新任が勤め、一人で全科目教えるため、はじめの3月の間だけはそれになれさせるために副担任のサポートがつけられる。4月からは副担任は本校舎へ戻るが雪村先生も平塚先生も4月には辞めていた。最初は殺せんせーが来たから本校舎に戻っただけだと思っていたが……
「しかし平塚先生が殺せんせーを知ってるって事は……」
「そういうことだ」
『『『!?』』』
平塚先生が教室に入ってきた。
「ひ、平塚先生!」
「やあ、諸君。ひさしぶりだな。そしてイリーナ先生ですね? はじめまして」
「え、ええ、はじめまして……」
「で、その殺せんせーは?」
すると……
「はい、はじめまして。比企谷君から話は聞きましたが、E組を解散させるとかなんとか……つまり貴女は私を殺しに来たと言うことですかねぇ?」
殺せんせーは緑と黄色のしましま模様に顔を変えながら言う。
普通に考えたらそうなるだろう。しかし、平塚先生は完璧な素人だ。シェルブリットの威力は烏間先生に匹敵するかも知れない(俺の経験上)が総合的に足元にも及ばないし理事長のように権力で有利な賭けを仕掛けることも出来ない。
「……平塚先生。なんか秘策でもあるンすか? たしかに平塚先生のシェルブリットは凄いけどそれで殺せんせーは殺せないっすよ?」
「シェルブリットって……」
「ヌルフフフ、もちろん私は誰からの挑戦でも受けますがねぇ、私の反撃は手入れですよぉ」
触手をヌルヌルされながら殺せんせーは言うが……平塚先生は――
「何か勘違いしているようだが殺せんせー、私は君を殺しに来たわけではない」
――と言った。
……………え?……………
「ち、違うんですか!?」
「ああ、私はただ、君達に『暗殺を辞めろ』といいに来ただけだ」
「なんだ……って、え!?」
クラスの全員が驚いた。なんだと!?
「あ、暗殺を辞めろって!?」
「どういう意味ですか!?」
潮田と神崎が言う。当然の反応だ。平塚先生は言う。
「そもそも今までがおかしかったんだ。君達中学生にこんなタコ型生物とはいえ『暗殺』をさせると言うことそのものが」
え? 今さら?
「いくら政府が承諾したとはいえ生徒に危険が及ぶ。それに教育上にもよくない。そしてハッキリ言えば――」
平塚先生はハッキリ言った。
「君達にはもう殺せない。確実に」
これを聞いた俺らは何人かから『カチン』と言う怒りの音が聞こえた。赤羽が言う。
「へぇ、随分と偉そうに言うね~、平塚せんせー。俺達の実力も知らないくせにさ~」
「いや、たしかに君達は強くはなっている。それでも殺せんせーは殺せないだろう、なぜなら……」
平塚先生は言った。
「君達に任せた現状が今だ」
平塚先生は教室を指して言う。
「結局のところ、君達は殺せんせーを追い込むことはできても殺すことはできていない。だからここにいる。もう諦め時だと私は言っているんだ」
「諦め時って……」
「君達はこのE組と言う環境からこのような事態が起こっても特に気にせずに過ごしてきた。しかし、彼によって最底辺から打破した。それは殺せんせーのおかげだろう。しかし……いや、だからこそだ。君達は本当に殺せると思っているのか?」
平塚先生の言葉に俺たちは一瞬言葉がでなかったが……
「……殺せます」
俺は平塚先生に言った。
「……比企谷」
俺は続けて言う。
「俺は殺せんせーを殺せると思っています。むしろ俺達以外に殺せるとは思いません。と言うより俺らがここで暗殺を辞めたら誰が地球を守るんですか?」
「たしかに君達に地球存亡がかかっている。だが、殺せんせーを殺すための訓練をしてきたのは君達だけではない。国も彼を倒すために色々動いている。もう君達がする必要はない。諦めても文句は言わない。後は国に任せても地球を救うことはできる可能性はある」
「俺たちは地球を守りたいだけで暗殺をやって来た訳じゃない。同時に賞金が欲しいだけでやって来た訳でもない」
「では、なんのために暗殺をしようとしている?」
俺は言った。
「俺達は、殺せんせーを通じて色々な事を教わりました……勉強、趣味、人との繋がりかた、戦い方、それこそ本当に色々と……俺もです……だからこそ……」
俺は言った。
「殺すことが恩師への恩返しだと、俺達は思っている」
俺の言葉に全員が納得した。平塚先生は……
「返せず地球を滅亡させたらどうする」
「そうさせないと、信じてください」
平塚先生は……
「ふっ、信じてください……か、お前の口からそんな言葉が出るとはな……」
たしかに平塚先生の知っている俺なら確実に言わなかっただろう……
「……確実に後悔することになるぞ?」
「だとしても、俺達は暗殺はやめません」
「……そうか。ふ、説得できると思ったんだがな……由比ヶ浜が嫉妬するのもわかる……変わったな、比企谷」
「はい」
「だが、全員これだけは覚えておけ。君達はいずれ必ず私の言った選択に迫られる。選択に間違えれば君達はバラバラになる。そのときの覚悟だけはしておけ」
クラスの奴は皆『はい』と答えて、平塚先生は教室を出ていった。
「結局のところ平塚先生は何をしに来たんだ?」
「かつての教え子の成長を見たいだけだったのか?」
……。
…………。
………………。
「はい、説得には失敗です。やはりこのまま教室は……ええ……大丈夫です」
教室を出た私はあるところへ電話をかけた。
「……しかし、あの教室にあらたに二人派遣したと聞いていたが、その内一人が彼女とはな……政府も残酷なものだ……」
平塚先生がかけた電話の先は?
その真実は最終暗殺計画編で!
次回は演劇の時間(予定)