暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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なんとか更新できました!


九十六時間目 降参の時間

理事長の目の前には死がある。理事長は何やら考え込んでいるが……

「いくらあなたが優れていても……爆弾入りの問題集を開けばただでは済まない」

「あんたが持ち出した賭けだぜ、死にたくなきゃ潔く負けを認めちまえよ」

殺せんせーと吉田が言う。理事長はギロリと吉田を睨み吉田はビビる。そして片岡と神崎が――

「それに私達、もし理事長が殺せんせーをクビにしても構いません」

「この校舎から離れるのは寂しいけど……私達は殺せんせーについていきます」

そして、潮田が――

「家出してでも、どこかの山奥に籠ってでも、僕等は3月まで暗殺教室を続けます」

潮田の言葉にはE組の全員が納得した。

殺せんせーはうるうると泣きながら俺等を見る。

「今年のE組の生徒は……いつも私の教育の邪魔をする。ここまで正面切って刃向かわれたのは、今年に入って何度目だろうか」

理事長は一呼吸入れて言う。

「殺せんせー。私の教育論ではね、貴方がもし地球を滅ぼすなら……それでもいいんですよ」

理事長は、そう言って……参考書を開いた!?

 

ドグォッ!

 

レバーが起き、爆発がおこる!?

しかし――

理事長は無事だった!?

殺せんせーの脱皮の皮によって……そういや今月はまだ使ってなかったな……

「なぜそれを自分に使わなかった? 数学の爆弾を開くときに使っていれば……そんな洋ナシみたいな顔にならずに済んだものを」

殺せんせーは言う。

「あなた用に温存しました。私が賭けに勝てば……あなたは迷いなく自爆を選ぶでしょうから」

だろうなぁ、理事長ならそうすると俺も思う。

「なぜ……私の行動を断言できる?」

殺せんせーは言う。

「似た者同士だからです。お互いに意地っ張りで教育バカ。自分の命を使ってでも教育の完成を目指すでしょう」

殺せんせーは続けて言う。

「テストの間に昔のあなたの塾の生徒に聞いてきました。あなたの教師像や起こったことも……皆の良いところを伸ばし、それぞれの『良い』を育てようとした教育。10年前のあなたの教育は私の求めた理想の教育にそっくりでした。第一期生の一人が自殺と言う失敗から変わってしまったようですが……」

え? それって……

おいおい……浅野家の血筋かよ……息子の方も1年の時にはそんな感じの学園作りで生徒会長に立候補して失敗してあんな風になったってのに……」

「おや? 比企谷君。そうなのですか?」

「あれ? 俺、声に出してました?」

周りは思いっきり頷いていた。

「で、でもならなんでここまで殺せんせーと理事長は違っちゃったの?」

殺せんせーは言う。

「私があなたとくらべて恵まれてたのは……このE組があったことです。纏まった人数が揃っているから同じ境遇を共有してるから、校内いじめに団結して耐えられる。一人で溜め込まずに相談できる」

そうだ。だから俺もぼっちでなくなった……

「そして理事長。このE組を創り出したのは……他でもないあなたですよ。結局あなたは……昔描いた理想の教育を無意識に続けていたんです」

そうだ。息子の方も今でも荒木や小山達の『良い』を伸ばす事はやめていない。本当にこの親子はそっくりだな……

「対先生ナイフで殺せるのは超生物だけ、人間の命を奪えと教えるわけがない。私もあなたも理想は同じです」

殺せんせーは言い放つ。

 

「殺すのではなく、生かす教育。これからも……お互いの理想の教育を貫きましょう」

 

殺せんせーは対先生ナイフを理事長に渡す。

「…………私の教育は、常に正しい。この十年余りで、強い生徒を数多く輩出してきた。ですがあなたも今、私のシステムを認めた事ですし……恩情を持ってこのE組を存続させる事とします」

お、やった!

「……それとたまには私も殺りに来ていいですかね」

「もちろんです。好敵手にはナイフが似合う」

理事長は出ていった。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

「……で、俺等が校舎修理すんのか」

「『君達には一教室あれば十分です』だと、そこら辺ブレねーよなあの理事長」

まあなにはともあれ、このまま暗殺教室を続けていけるわけだ。

「理事長も今頃息子と車で家族旅行の計画たてるみたいに、親子裁判の訴状の話でもしてるんだろうな……」

『『『そんな親子は嫌だ』』』

ごもっともです。

それはそれとして……

「そーいや先生さ、テストの褒美に弱点教えてくれるって言ってたよね」

倉橋が言う。そうだ、理事長登場で忘れていた。

「ヌルフフ、そうでした。頑張ったから決定的弱点を教えてあげます」

お、なんだ? シロの使ってた殺せんせーの動きを鈍くする光線の作り方か?

「実は先生、意外とパワーが無いんです。スピードに特化しすぎて」

は? パワー?

「特に静止状態だと……触手1本なら、人間1人でも押さえられる。指1本でおでこを押さえて立ち上がれないあの原理です」

いや、だから……

「なるほど!」

「つまり皆でそっと近寄って」

「全員で触手を全部押さえれば動きが止まる!」

いや、待て待て!

何人かが触手を捕まえようと行動を起こす。が……

 

ぬるん、ぬるんぬるん

 

「それが出来たら最初から苦労してねーよ!」

だよな……そもそも粘液で滑るからつかむのも難しい。

「不可能なのわかってて教えただろ!」

結局、殺せんせーのこの弱点は余り使えそうにない……

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

放課後の帰り道……E組メンバーと別れると――

「ヒッキー……」

「……由比ヶ浜」

――が、いた。

「少し、話さない?」

「ああ」

俺と由比ヶ浜は公園に入った。

「理事長の洗脳は解けたんだな……洗脳されたままの方が成績あがってよかったんじゃねえか?」

「な!? 酷い! 確かに今回は理事長のお陰だけどあたしもやればできるって事なんだからね!」

それはともかく……

「署名活動。E組の内部進学は無理そうだけど、高等部への最終試験みたいなのがもうけられるかもしれないんだよね……」

「ほう、そんな事が」

「試験が終わった後、浅野君達も署名を書いてくれたんだよね……」

マジか!? あの浅野が!?

「署名活動ね……本当はヒッキーに奉仕部に戻って来てほしいだけだった……後、ヒッキーを変えられたE組が羨ましかった……いや、嫉妬してたんだと思う……理事長はそこを見抜いて……自分達に出来なかった事をしたE組の嫉妬を憎悪にして理事長の良いなりになってた……だけどわかったんだ。ヒッキーが奉仕部でもE組でもあたしにとってのヒッキーはヒッキーだって……だからヒッキー、よそに行ってもあたしと――」

そこまで由比ヶ浜が言うと――

「――それを考える必要はない」

――第三者の声が聞こえた。

「なぜなら、E組は明日解散し、私が全員本校舎に戻すからだ」

俺と由比ヶ浜が見た方にいたのは――

 

「……平塚……先生……!」




突然現れた平塚先生!
次回、オリジナル展開!
更新が遅れていたのはこれを考えていたからです。
また遅くなるかもですが頑張ります!

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