暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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八幡と学秀の出会い編。
1年の時の話です。


番外編
零時間目(番外編)一昨年の時間 出会い


俺が浅野学秀と出会ったのは、一年の5月。ゴールデンウィークが終わった頃だった。

というより、それまで俺は椚ヶ丘中学に登校すらしていなかった。

原因は入学式の日に交通事故にあったからである。

新しい学校に、しかもかなり苦労して受験して受かった学校につい浮かれて自転車をこいでいると、犬が車に轢かれそうになっているのを見て助けたのだ。その結果、入学ぼっちが確定した。

そして中途半端な時期に初登校して、クラスからの視線がキツい。そして昼を一人で教室で食うのもキツいので俺は校舎の入り口付近の踊り場をベストプレイスとして飯を食っている。

そして、浅野学秀と出会った。

「おや? やあっ、こんなところにいたのかい?」

「いや、誰?」

「酷いな。同じクラスの浅野学秀だよ、ヒキタニ八幡君」

ヒキタニ君? 誰だよヒキタニ君……

ともあれ、これが俺と浅野学秀のはじめてした会話だった。

 

翌日の昼休み。俺はベストプレイスへ行こうとすると……

「ヒキタニ君。君も一緒にお昼どうだい?」

浅野に声をかけられた。何でだよ……周りは浅野が俺に声をかけたことで注目する。本当にやめてマジで……

「いや……その、俺はちょっと……アレだから……」

「? アレって?」

遠回しに断ってんのがなんでわかんねんだよ!?

『おーい、浅野ー、先に行くぞ!』

「まあいいや。じゃ、またの機会に」

浅野はそう言って丸眼鏡の丸顔男子と共に学食へ向かった。俺は引き続きベストプレイスへ向かった。

 

浅野学秀は人気者だった。容姿や成績はもちろん、運動神経や礼儀も……少し傲慢な所はあるが、それでもわずか入学一ヶ月でクラスの中心となっていた。

そして浅野は何故か頑なに事あるごとに俺の事を誘ってきた。

時にはカラオケ、時にはお茶、時には家、時にはホームパーティ、時にはゲーセン、時には部活の助っ人と……浅野は必ず俺に声をかけてきた。

強引に連れていかれるような事は無かったが、浅野の誘いを俺はとにかく拒み続けた。

そして更には俺と共にベストプレイスで一緒に弁当を食い始めた……

そして、いい加減に俺も何故誘うのかを聞いてみた。

「なあ、なんでいつも俺を誘うんだ?」

すると浅野は答える。

「僕はね。知っての通り、この学校の理事長の息子でね。いずれはこの学校の理事長として父のあとを継ぎたいと思ってるんだ」

いや、知りませんが? 立派な事ですね……

「僕はね、この学校を『良い』学校にしたいんだ。成績がいい偏差値の高い進学率の良い一流進学校なのはもちろん、さらには色々な生徒の良い一面を育てるような学校にしたいんだ」

は? 良い?

「例えば、僕といつもいる荒木は『声が明るくて良い』から放送部で活躍できているし、榊原は『字がうまくて良い』からクラスの書記に任命した。小山は『記憶力が良い』から色々な知識を身に付けてる。そんな感じに皆の『良い所』を育てられる学校にしたいんだ」

「はあ? それと俺に話してくるのとどういった関係が?」

「まずは誰の何処が良いのか知りたいからさ。君の『良い』所が何処なのか、一緒に過ごして知りたいだけさ、だから見させてよ。君の良い所を」

いや、敬意はわかったが……

「なんで俺なんだ? それを知りたいなら他の奴から見れば良いじゃねえか」

「僕は今は君の事を知りたいんだよ。気が向いたら一緒にゲーセンでも行こうよ……じゃあね」

浅野は飯を食い終わり、校舎に戻って行った。

 

時は過ぎ9月。生徒会長選挙のシーズン。

「えー、このクラスに立候補者がいれば挙手を……」

するとゆっくりと手を上げるものが一人。

「おお、浅野。立候補するのか?」

「はい」

誰もが予想した浅野の立候補。

そして演説の内容を榊原が考え、新木が応援演説をすると言う予想通りの役が決まっていった。

内容は『みんな仲良くそれぞれの個性を育てる良い学園作り』と言う浅野の目指す目標をそのままにしたような内容の演説だった。

今にして思えば問題のない演説。誰もが浅野の生徒会長就任を予想した。が、その予想は外れた。

 

生徒会長 城廻 めぐり ◎

 

当選したのは二年の城廻という女子の先輩だった。

あの時の浅野は同級生からは好評を獲ていた。が、しかし上級生には反感を買っていたのだ。『理事長の息子だからって偉そうに』や『爽やかな笑顔の裏には腹黒い血縁の本性が出てる』など、事実無根?を散々に言われていた。

この選挙での浅野の敗北が浅野を変えた……

「……ただ、『良い』を育てるだけじゃダメだったんだ……そうだ。『強い』を育てなきゃダメだったんだ……これからは『強い』を育ててみんなを『強者』にする。その為には僕は今から父を超える『強者』を目指さなきゃダメだったんだ……今まで『いつか超える』なんて曖昧な考えだったけど、それじゃあダメだ。今すぐにでも父を支配してやる! フフフッ」

この時から、浅野には俺の姿は映らなくなった。

人と人の繋がりや考えなんて簡単に変わり、リセットされる。

だから俺は……青春を呪った。




次回は去年の時間。
八幡がE組行きになるまでの、話の予定です。

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