主人公の搭乗機も出てきます。
あぁ、戦闘シーンが怖い。。。
ファフナーに乗った感想を端的に言うと、『いきなり健康体になったような気分にさせてくれる』という一文になるだろうか。
コクピットブロックに入り、ファフナーに接続される。
俺の搭乗機となるファフナー、マークツヴァイ。
前の戦いでは、一騎先輩の搭乗機だったマークエルフが大破した際、コアやその他のパーツを修復に再利用され、日の目を見ることがなかった機体だ。
その後、余剰コアを再搭載して再建された機体と聞いている。
不思議と、恐怖は感じない。それどころか、懐かしいというか、何をどうすればファフナーを動かせるのか、生まれた頃から知っていたように思えた。
なるほど、これがメモリージングされた知識かと理解し、その知識に従ってコクピット内に存在する、10個の指輪に両手をはめる。
指輪状の操縦システム、ニーベルング・システムに接続することで、ファフナーと一体化する。
ニーベルング・システムが起動すると同時に、俺の肩、脇腹、太ももの辺りに勢い良く接続機器が装着された。
「痛ってぇ……!!!」
接続の際はチクッとするとか、羽佐間先生は言ってたけど絶対嘘だ。
チクっていうかグサって感じだったし。
激痛に一瞬意識を刈り取られそうになるが、何とか耐え、ゆっくりと目を見開く。
すると、自分のまぶたが開くように、コクピット全方向がクリアになり、外の光景が見えるようになる。
目に映るのはファフナーブルグの光景、見れば、姉ちゃんがちょうどブルグに入ってきたところ。
俺は、無意識の内に姉ちゃんが視界に入らないようにしてしまっていた。
そこから地上に出るまではそこまで時間はかからなかった。
この前、一騎先輩がマークザインにで出たのと同じように、ナイトヘーレから水の膜に包まれて射出されるだけ。
空中に放り出された時はやや焦ったが、不思議と恐怖は感じなかった。
いつもは想像するだけで、決して出来なかった大ジャンプからの着地をイメージするだけで、マークツヴァイ(俺)は見事な着地を決めてくれた。
地面に足をつけ、立ち上がり、目を開く。
ファフナーの模擬演習訓練などで使用される慶樹島の光景が飛び込んでくる。
島の景色については、まぁ足を踏み入れたことのない場所だが竜宮島と言うかアルヴィスの一部、これといって珍しさは感じない。
けれど、足を一歩動かしただけで、いつもと決定的に違う事があった。
「体が……軽い」
体が、異常に軽かった。
いや、軽いだけではなく、普段は出来ないようなことも、今ならなんでも出来るような気さえする。
でも、そんな感覚に、いつもと違うはずなのに、気持ち悪さや違和感はなかった。
逆にこみ上げてくるのは、体を自由に思うがままに動かさえるという確信と、強烈な喜び。
試しに走ってみたり、バク転してみたりする。
イメージするだけで、俺はそれを難なくやってのける、出来るのだ。
「俺……走ってる……走ってるよ俺……」
事前に説明を受け、こうなることは分かっていた、理解していた。
けど、やはり実際にそれを体感するのと、頭の中で想像することではわけが違った。
ファフナーに乗る……いや、ファフナーになることによって、俺は普段から夢見てきたことを実現させた。
もちろん、こんなことは副次的なものだと分かっている。
ファフナーに乗ることの本懐は戦うこと、フェストゥムと戦い、島を守ることだ。
やや浮かれた気持ちはそれを考えると一瞬で消え去り、目的を再確認するように右手に装備しているライフルタイプの武装、ガルム44に目をやる。
模擬戦用にマガジンにはペイント弾が装填されているそうだが、当たればそこそこ痛いとのこと。
そして、言うまでもなく実戦ではこの銃に実弾が込められる、フェストゥムを屠るための弾丸が。
そう、どれだけ体を自由に動かせるようになったとしても、ファフナーは兵器なんだから。
「うおぉぉぉぉ!! ゴウバインーーーー!! ってのわぁ!?」
「わっ、わぁっ…!? ど、どうすんのこれ……上手く歩けないし……」
「シュウはいきなり走り回ってるのに……!」
「……っ」
俺の後に続く用に、広登、里奈、芹、暉が自身のファフナーに搭乗し、ナイトヘーレから射出されてくる。
広登はマークフュンフ、里奈はマークノイン、芹はマークツヴォルフに、暉はマークツェンにそれぞれ搭乗し、武装は俺と同じガルム44を装備している。
広登はゴウバインのヘルメットを被り、やる気満々に着地したものの勢い余って自慢にディープキス。
里奈は着地には成功したものの、歩くのに苦労しているようで、いつものハツラツとした様子も成りを潜めている。
芹、暉も同じく着地は難なくこなしたようだが、やはりファフナーを動かすというか、ファフナーになるということに戸惑いを覚えている。
ただ、全く動けないということはなさそうなので、慣れれば問題ないレベルだろう。
「里奈、焦るな。ファフナーを操縦しようとするんじゃなくて、ファフナーになるんだ。羽佐間先生も言ってたろ?」
「そ、そんなこと簡単に言われても……うわわっ! 無理無理、無理だってばぁ! ていうか、何で修哉はそんなに平然としていられるのよぉ!」
「ほれ、手貸してやるから、まずは落ち着け。ゆっくりでいいから深呼吸、それから頭の中でファフナーになって歩くことだけ考えてみろ」
「う、うん……」
倒れ込みそうになる里奈を支えつつ、俺が一番しっくり来るファフナーの『乗り方』を説明する。
さっきも言った通り、別に『操縦しよう』だなんて考える必要はない、ファフナーと一体化と言うか自分がファフナーだと思って体を動かすイメージを持てば、自分の手足を動かすのとそう変わらない。
俺自身、乗るのはこれが初めてだから感覚的なことしか言えないが、要するにイメージすることが操縦するということに繋がっているんだろう。
前提として、皆ファフナーへの適正値が高いからこそ、今ここに居るんだ。
ファフナーを受け入れることが出来れば、何も難しいことはない、多分時間が立てば無意識で出来る様になるんだろう。
「わ、わわ……あ……歩ける……歩けた!」
「うん、上手い上手い、その調子だ」
まだ声に頼りなさ気な色を含んではいるものの、里奈はゆっくりと歩き出し、途中で俺が手を離しても問題なく歩行できた。
……なんだか、自転車の乗り方を教えているような気分になってしまうが、ほぼやっていることはそれと変わりない。
乗り物が自転車か、ファフナーかという決定的な違いを除けば、恐らく一度コツを掴めば、あとは適正値がモノを言うということなのだろう。
「広登に芹、暉も同じようにやってみろ。怖いなら俺が支えてやるから」
「わ、わりぃ…」
「ありがと、シュウ……」
それから、芹達を動けるようにするのにさほど時間は掛からなかった。
流石というか、パイロット適正値は嘘を吐かないということなのか、ともあれファフナーに乗ったら動けなくなったという笑えない状況にはならずに済んだわけだ。
そして、それを見計らったかのようなタイミングで、崖の上にマークアハトに乗った剣司先輩と、マークジーベンに乗って空中を優雅に舞う遠見先輩が姿を現した。
流石というか、二人の所作はどこか堂に入ったもので、俺達新米との経験値が違うことをを感じさせられた。
「いいか、さっき修哉も言ってたが、ファフナーの特徴は操縦する必要がないってことだ」
「ファフナーと同化して、変性意識を、自分の心が変わることを受け入れるの」
「いいな、マークフュンフ」
「お、おぅ!!」
「お互いを機体名で呼び合え、お前らがファフナーで、ファフナーがお前らだ」
剣司先輩と遠見先輩のアドバイスは、短いながらも的確で、ファフナーに乗る上で必要な基本的な部分を包括していた。
お互いを機体名で呼ぶ、確かにこれは有効だと思った。
自分だけがファフナーになろうとするのではなく、仲間全体でその意識を高めることで相対的にファフナーへの一体化を促すことが出来る。
人間が自分が他人からどう見えているかで、自分自身の認識を変える生き物だということを考えれば、効果の程は疑うまでもない。
そして、ここで俺たちは予想外の出来事に遭遇することになった。
「マークツェン」
「あ……と、遠見……先輩……聞こえ…ますか?」
「……うん、聞こえるよ暉くん」
「あっ……」
そう、失語症だったあの暉が、自ら口を開き、言葉を発することが出来たのだ。
これには俺は言うまでもなく、里奈や芹たちも漏れなく驚いていた。
芹なんか、びっくりしすぎて点呼に答える余裕がなかったくらいだった。
ファフナーに乗ることで、変性意識が表に出てくるらしいのだが、暉はそれによって言葉を取り戻したというわけなのだろうか。
暉の中の世界の話であるため、俺にはその真相を推し量ることは出来なかったが……まぁ、あいつが話せるようになったのは友人として素直に嬉しい。
「よし……それじゃあお前ら、掛かって来い!!」
と、暉の声が復活したことを喜んだのもつかの間、今ここにいることの本当の理由を思い出させるように剣司先輩の声が響いた。
先の戦争を生き残ったパイロットを二人も相手にした模擬戦が、始まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
模擬戦を開始して十数分。
俺、近藤剣司は一種の危機感を覚えていた。
「うぉぉぉおおおおお!! ゴウバイン!!」
「うわああぁぁぁ!!」
勢いに任せ、互いの存在、位置関係も確認もせずに突っ込んでくる広登のマークフュンフ、そして里奈のマークノイン。
二人共ガルム44をフルオートモードに切り替えて景気よくペイント弾をばら撒くが、動きが直線的過ぎる上に、二人同時にかかってきても連携も何も取っていない為、回避することは簡単だった。
芹のマークツヴォルフも、暉のマークツェンもその辺りを言うとあまり大差ない。
今も空中を旋回する遠見のマークジーベンにペイント弾をぶっ放してはいるものの、当然ながら当たらない上、暉に至っては遠見に遠慮しているかのような動きをしている始末。
要するに何が言いたいかというと、こいつらは全くお互いを助け合うような動きを見せないということだった。
まぁ、ファフナーに初めて乗って、変性意識が先行してしまっていることを考えれば仕方のない事かもしれないが、もし実戦でもこんな調子なら長続きはしないだろう。
「マークフュンフにマークノイン、景気良くぶっ放すのはいいけど、もっとお互いの位置を意識しろ。特にフュンフ、射線上にツェンがいる。ヘタするとフレンドリーファイアだ」
「このゴウバインにそんな心配は無用だぁぁぁぁ!!!」
「だって撃たないと勝てないじゃん! ていうか修哉もさっさとこっち来て撃ってよ!」
「はぁ……元気なのはいいけど、脇見運転には注意な」
「「ふぎゃあ!?」」
そんな中、修哉だけは突っ込むだけの広登と里奈に冷静に進言してくれたりとしているが、変性意識が先行している二人がそれに従う様子はない。
結果、マークフュンフとノインはお互いに接近しすぎたのか、もつれ合うように地面に倒れこんでしまう。
修哉の奴だけ、いやにいつも通りだと思ったら、変性意識の影響がほぼ無いのか性格が変わっていない。
稀なことだが、前例はある。
これは自身への強烈、そして積極的な自己否定を日常的に行っている人間に見られる現象だった。
まるで一騎みたいなやつだと思いつつ、変性意識による影響がないということの意味を考えると……こいつはこいつで、どこか危ういものを抱え込んでやがるのか?
「マークツェン、遠見先輩だからって遠慮するな。ペイント弾なんだから万が一もないんだ」
「で、でも……!」
「シュウの言う通り! 暉もちゃんと狙ってよ!」
「でもってツヴォルフは熱くなりすぎだ。猪突猛進娘め」
「う、うっさい!! シュウのくせに!」
芹と暉にしても、そんな感じに戸惑いまくってる間に、ジーベンの訓練用長距離ライフルから放たれたペイント弾が直撃。
二人共、頭に鮮やかな色の花が咲いてしまっている。
つか、今日はこいつらに自信を付けさせるつもりだったんだが……一回頭を冷やさせることも考えていかねぇとかなぁ…
遠見もそれを考えて容赦なくヘッドショット決めてくれやがったし。
ともあれ、自信を付けさせるのは次のセットに持っていくとして。
残った修哉、マークツヴァイに視線を向ける。
状況だけを見れば、遠見と俺、修哉の2対1という形になってしまっている。
「さーて? 修哉、お前はどうすんだ?」
「どうするもこうするも、いつの間にか俺一人になっちゃいましたし」
「降参の印に白旗でも降ってみるか?」
「冗談でしょ」
そう言うやいなや、修哉はマークツヴァイの背部スラスターを展開、専用の飛行ユニットを持つジーベンのような飛行はできないまでも、地面をスライドしつつ高速移動することは可能。
ガルム44を構えつつ、標的を俺に絞ったかのように向かってくる。
けど、そうやって突っ込んでくるだけじゃさっきの広登達と同じだぜ。
それを教えてやる事も含め、修哉の背後に遠見のジーベンが回り込み、ライフルで照準を定めさせる。
ファフナー同士でクロッシングしている状態であれば、特定の相手にこうして指示を飛ばすことも簡単だ。
遠見は外すことはまずあり得ない、と高を括っていたのだが、現実はそれを否定してきた。
「後ろ、見えてます」
「わわ! ……修哉くんやるね~」
修哉のマークツヴァイは、後ろを見ることもせず、視線は俺に向けたまま移動しながらガルム44を持った腕だけを背後に向け、フルオートモードで発射。
遠見は驚きはしたものの、余裕を持って回避したが、挟撃は見事に失敗させられた。
おいおい……あいつ、背中に目でも付いてんのか?
見えてるっつっても、修哉の視線は俺に向かってて、遠見にはあいつの死角から回り込ませたんだぜ?
……なら、両方同時に捌けるか試してやる!
そこから、遠見の狙撃に加えて、俺の方からも牽制を含めて銃撃を行ってみるが、やはり遠見だけでなく俺の動きもあいつの頭の中に入っているようで、器用にスラスターの出力を操作しながら回避運動。
スラスターでの回避運動に加え、腕や足、頭や上体を小さく動かし、ペイント弾をのらりくらりとまるで幽霊のように避けていく。
一騎のようなダイナミックな動きこそしないものの、その分ムダがないからか隙も小さい。
あいつとは方向性が違うというだけなんだろうけど、昔一騎と決闘まがいの遊びをしていたことを思い出した。
「行きますよ、剣司先輩!」
「へっ、ちょっと上手く動けるからって調子に乗ってちゃ怪我するぜ?」
そう修哉が息巻くと同時に、攻勢が俺達から修哉に移り変わる。
回避行動を取りつつもライフルでの牽制射撃も行っていた修哉だったが、アハトのライフル、ジーベンの武装のマガジン交換のタイミングを見計らっていたのか、一転して攻めに回ってくる。
里奈が広登とぶつかった拍子に地面に落ちたガルム44を足で器用に蹴り上げ、空いている左腕で掴んで装備。
マガジンが空になった右手のガルム44は用済みとばかりとパージし、マガジン交換中の俺に突っ込んでくる。
なるほど、里奈が倒れる前にマガジンを交換してやがったから、あっちは既にフル装填済みのガルム44ってことになる、武器を拾って交換することでマガジン交換の時間を節約したか。
俺がマガジンを交換し終わった頃には、修哉のマークツヴァイはすぐ側にまで肉薄していた。
俺は距離を空けようとガルム44をフルオートでばら撒くが、修哉はその銃弾の中に何のためらいもなく突っ込んできやがった。
ペイント弾が広い範囲でばら撒かれる中を、相変わらず小さな動きだけで回避しながら接近してくる。
「修哉、このやろ…!」
「うぉおおお!!」
この馬鹿!! 頭のネジが2,3本吹っ飛んでやがる……!
ペイント弾って言っても当たればそこそこ痛いし、銃弾になんの躊躇いもなく突っ込んでくるなんて……恐さってもんがないのかこいつは……!
上手いこと避けられてるってのと、今は模擬戦だからいいものの、そんな戦い方続けてると真っ先に死ぬぞ!
果たして、銃弾の中を掻い潜ってきたマークツヴァイは文字どおりアハトに肉薄し、ガルム44を突き付ける。
勝負あったと、お互いにそれ以上の動きを取ることはしない。
「流石、剣司先輩……俺の負けです……」
「いや、正直驚かされたよ……でもな、あんまし危なっかしいことばかりするな」
「……すみません……ちょっと集中し過ぎました」
結果は、修哉の言う通りだった。
確かに、マークアハトの頭にツヴァイのガルム44が突き付けられているが、アハトの右手には訓練用の短刀があり、ツヴァイの腹部に向けられていた。
近接戦闘ではこういう取り回しの利く武器のほうが有利に働くこともある、カノンに言われたことあったけど初めて役に立ったな。
マークアハトは中距離支援型だからといって、近接戦をおろそかにするなと、近距離まで接近されれば終わりだの、いろいろと説教されたのを思い出した。
いや、あいつはガチの近接戦タイプだからなぁ……
「よっしゃ! 5分休憩したら次のセットだ! あんまし時間ないが、みっちりしごいてやるからな!」
ともあれ……こいつらの世代のエースは決まったな。
後はお互いに助け合うように、仲間と一緒に戦うように基本から叩き込んでやる。
さっきみたいな自殺行為まがいな戦い方も追々矯正してやるからな……覚悟しとけ!
ま、その前にこいつらに自信付けさせねぇとな……
そんなことを考えながら臨んだ2セット目、俺は芹の予想外過ぎる頭突き攻撃に悶絶することになった。
変性意識下の動きだって言っても……ったく、この幼馴染's め、仲良く揃って滅茶苦茶しやがる……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ファフナーブルグでは、チーフメカニックの小楯保と元人類軍で、カノン同様に竜宮島に帰属したイアン・カンプが新人パイロットたちの戦闘の様子をモニターしていた。
1セット目の模擬戦は……修哉の危険ながらも見事な動きに感嘆したが、ユニットとして戦闘を行うレベルにあるかと問われれば難色を示すしか無い。
個々のスキルが高いことは、無論生存確率を上げる要素になり得るが、相手は大群で攻めてくる。
仲間で助け合い、フォローし合いながら戦う術を学ばないことには、ファフナーといえどもフェストゥムに対する真の脅威にはなれない。
ともあれ、それは頼りになる教官、剣司や真矢達に一任する他ない。
保達が考えるのは、如何にしてパイロットたちを生還させてくれるファフナーに仕上げるか、ということだった。
「頭部で攻撃する奴がいるか…」
「変性意識による行動ですか」
「だとしたら、想定外の装備がいるな…」
芹の搭乗機マークツヴォルフの頭突き攻撃によって、剣司の乗るマークアハトが仰向けに倒れこむ姿を見て、やや呆れながらそう呟く保。
変性意識によってパイロットの性格だけではなく、時には芹のような突飛もない攻撃をする者が稀にいる。
しかし、流石のファフナーも頭突き攻撃のサポートはしていない。
同じことをフェストゥムに行えば、ファフナーの頭部を破損させるだけで済めばいいが、下手をすれば敵に同化させる隙を与えることに繋がるかもしれない。
保の中で、ツヴォルフへの追加武装の設計はこの時点で決定事項となった。
「あとは……修哉くんのマークツヴァイの改造だな」
「改造……ですか?」
もともと、今日の模擬戦では芹のような、パイロットの想定外の動きに対応する項目があるかの洗い出しも兼ねていた。
マークツヴァイも、修哉が適性を見せはしたものの、必要であればパイロットに合わせてチューンする必要がある。
加えて、保には一つプランがあった。
先ほどの第1セットでみせた修哉の動きと、遠見千鶴から事前に説明があった、彼自身の天才症候群の特性を合わせて考えるとピッタリな武装が。
「修哉くんのパイロット適性データは読んだな?」
「えぇ、シナジェティック・コード形成値も高く、空間把握能力に長けていると……確かに、あの視野の広さと周りを見る力を見れば納得ですが」
「そうだ。そこで、彼の乗るマークツヴァイに『リディルユニット』を搭載する」
「ちょ、ちょっと待って下さい保さん! あれはまだ試作というか、そもそもお蔵入りの武装で……」
「変則的でピーキー、確かに扱いづらい。ついでに言うとマークツヴァイは大改修だ」
「そこまで理解されてるなら…」
保の考えに、イアンはギョッとする思いだった。
確かに、パイロットに合わせたチューニングは行うが、保のプランは彼の言う通りに大改修になることは必至だった。
加えて、件の武装は特殊らしく、扱える者がいなかった為、倉庫の肥やしになるか、溶かしてレアメタルに戻してしまうくらいしか無かったのだ。
日野洋二が開発したザルヴァートルモデル、マークザインの性能を見てメカニックとしての闘争心に火が付き、半ば自棄になりながら作った特殊ユニット。
日の目を見ることはないと、保自身も考えてはいたのだが、思わぬところで適合者が現れた、
そう、保は修哉の特性ならばと、それを提案したのだ。
ユニットの製作過程はともあれ。無論、このユニットを使用する提案は、メカニックとしての勝ち負けの世界などでは決して無い。
その根本には、パイロットを生きて島に戻ってこさせるという、彼のメカニックとしての思想…いや、信念があった。
「それに、マークツヴァイは近接戦仕様、パイロットへの負担が大きい。他のパイロットたちなら心配いらないかもしれんが…」
「それは……確かに一理ありますが…」
「修哉くんは飛行適性もある、無論それなりに努力もしてもらうがな。となると、シミュレーターの用意もいる」
「……了解です、保さんがそこまで仰るなら、仕方がありませんね。我々も全力で子供たちを支えたいですから」
「あぁ。俺達の仕事は、子供たちを守る、生還させるファフナーを作ることだからな」
これはしばらくは徹夜だなと、保は腹を決める。
だが、これが戦うことの出来ない、子供たちに戦うことを押し付けている情けない大人である自分達がしてやれる唯一のこと。
大人として、メカニックとして、子供たちを護る、それは最早使命、生き方だった。
「(見ていてくれ衛……お前がそうしたように、お前の分も、俺がパイロットを、皆を護るってみせるからな……!!)」
亡き息子の姿を胸に、保はそう誓った。
ファフナー最新話……色んな意味で凄かったですね。
ザインとニヒトがマップ兵器化してました。
あと、ルガーランスの存在が、私の中でゲシュタルト崩壊しそうです。
ジョナミツ「あれがザルヴァートルモデル、父が造ろうとした人類救済の力」
ミツヒロ「なにあれ恐い」
さてさて本編についてです。
シュウのファフナーはマークツヴァイでございます。
もともと、マークエルフの修繕にパーツを使われたことで欠番機となり、1期本編には出てこなくなった機体です。
これを再建造し、余剰コア(あるという設定で)を割り当てた機体となっています。
ただ、本番では追加兵装を導入する予定です。
保さん達の話で、載せる武装がどんなものか、多分大体の方は予想ついたと思いますが・・・
完全に私の趣味でございます。あの武装が私は大好きなもので。。。
あと、模擬戦前の里奈たちへのファフナー講座については、私の想像です。
多分、最初はあんな感じに戸惑ったのではないかと。
メモリージングされてるとはいえ、ファフナーとの一体化に苦労している場面を入れたかったのです。
劇中ではいきなり乗っちゃってますからね。
模擬戦の内容ですが、シュウはパイロット適正が高いため、戦闘能力的には非常に優秀でございます。
ただ、剣司も行っている通り、頭のネジが吹っ飛んでいるフシがあるので、かなり無茶な操縦をします。
恐怖を排除して戦うやつほど怖いもんはありません。
次回は、ちょっとずつ変化する人間関係模様を・・・
あかん、広登が暗黒面(ダークサイド)に落ちてまう・・・
なお、私はスクフェスの課金面に落ちてしまいました。