蒼穹のファフナー Benediction   作:F20C

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今回は芹→広登→シュウ(過去)→シュウ視点です。
やっとシュウが救われます、半分だけですが。

ゴールデンウィークでございますね、頑張って書きダメしようと思ってますが、
ダメだ、ノートPCのキーボード配列が気持ち悪すぎて・・・
実家に帰るときキーボードも持って帰ればよかったと激しく後悔。。。。


あ、今回また長いです。。。気が付けば1万3000文字・・・
分ければよかったか。。。



そして君だけの英雄に -Ⅰ-

その言葉を、私はどれだけ待ち続けていたのか。

ずっと思っていたことだった、そうして欲しいと思っていた、私には遠慮なんて、我慢なんてしないで欲しかった。

必要とされたかった、ただ求められたかった。

 

けれど、何もこんなタイミングで、こんな悲しい事をその原因にしなくてもいいではないかと、世界の不条理を呪ってやりたい気持ちだった。

神様なんてものが居るのであれば、それはきっとどうしようもなく性悪で、性格がねじ曲がっていて、人間のことが大嫌いなんだろうと一方的に思えるほどだ。

 

思わず、今は実体の無い手をキツく握ってしまう。

私の目の前では、自分を抱くようにして砂浜に蹲るシュウの後ろ姿があった。

 

 

「………芹……助けてくれ……俺…一人だよ……」

 

 

何があったのか、何が起こってしまったのか、その一部始終を私は見ていた。

いや、ただ見ていることしか出来なかったのだ。

 

絞りだすような声で、私に助けを求めるシュウ。

私は、その言葉を聞くと同時に走りだしていた、走っているという確かな感覚はなかったけれど、兎に角シュウの側にという一心だった。

 

けれど、今の私は意識だけの存在。

肉体のない私が、蹲るシュウの背中に触れ、抱くように体を重ねるが、それをシュウが感じてくれることはない。

 

 

『なんで……なんでこんな…!!』

 

『芹ちゃん……』

 

 

今まで感じたことが無いほどの隔絶が、私とシュウの間に存在していると言う事実と、それによる無力感が私の心を締め付ける。

それを見た乙姫ちゃんが、悲しそうに首を横に振る。

今の私にはどうすることも出来ないのだと、同時に、自分を追い詰めてはいけないという彼女の気遣いを感じた。

 

けれど、これでは……このままではシュウが壊れてしまう、いなくなってしまう。

私がなんとか……何とかしないとという思いが焦燥をさらに煽ってくる。

 

 

「ゴホッゴホッ!! くそ……しっかりしろよ……まだ……まだ敵が来るかもしれないってのに……!」

 

 

またシュウが吐血する、でもそんなボロボロな状態にもかかわらず、シュウは蹲った状態から立ち上がろうとする。

その姿はまるで、自分を罰しているようにも、痛めつけているようにも見えてしまった。

きっと自分を責めているんだろう、絵理さんがいなくなったのは自分の所為だと、そう思い込もうとしているんだろう。

自分への嫌悪感、憎しみにも近い感情を燃料に、シュウは立ち上がろうとしているのだろう。

 

ずっと前から分かっていた、心配だった、シュウが自分のことを心底嫌っていることが。

 

必死に立ち上がろうとするシュウ、しかしながら、体が全くいうことを聞かないのか膝を地面から離したところで、再び砂浜に倒れこんでしまう。

息は荒く、体力の消耗が酷いのが分かる。

でも、それでもシュウは体を動かすことをやめてくれない。

 

 

「はぁ……はぁ……くそ……ちくしょう……! 動けよ……欠陥品が…!」

 

『もういい……もういいよ!シュウ! もう頑張らなくていいから! お願いだからもうやめて……!!』

 

 

喉が裂けんばかりに叫ぶ……けれど、やはり、どうやっても届かない。

声も、この手すら、今の私ではシュウに届けることができない。

 

気が付けば、私は涙を流しながら立ち尽くしているばかりだった。

シュウが助けてと言ってるのに、求めてくれているというのに、こんな時だっていうのに何も出来ない。

すぐ側にいるはずなのに、手も届く距離だというのに。

 

暫くの間自分の体と格闘していたシュウは立ち上がることは出来ないと一旦は諦めてくれたのか、砂浜に尻餅をつくような形で座り込む。

その表情は今までに見たこともないほどに悔しそうなもので、同時に暗いものに見えた。

 

 

『誰か……お願い……シュウを助けて……』

 

 

果たして、私の口から出てきたのは他力本願な、そんな言葉だけだった。

本当なら私が何とかしてあげたい、今すぐにでも抱きしめてあげたい。

けれど、今の私がそれを選択すれば、島が、シュウの体が、今よりさらに悪い状況に追い込まれてしまう。

あちらを立てればこちらが立たないという、まさにトレードオフ。

 

私には、今の私には……選択の余地なんて用意されてはいないも同然だった。

 

 

「こんなとこで、お前は何していやがるんだよ……!!」

 

 

しかし、シュウに救いの手を差し伸べようとしていたのは、私だけではなかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

俺が、堂馬広登がシュウを見つけることが出来たのは本当に偶然だった。

絵梨さんを……看取った後、あいつは外の空気を吸ってくるとか、適当な事を言ってフラフラとした足取りで病室を出て行ったらしいが、そのまま戻ってこないのだという。

事が事だけに、一人にするべきだと判断されたのも無理は無いことかもしれないが、今回はそれが完全に裏目に出た形。

 

あいつの身に何かあった…いや、『何か』をしでかす可能性を感じた里奈や暉……そして俺も、あいつを探し回ることになった。

俺だって心配な気持ちは確かにあった……が、正直なところ、見つけたとしても何を言えばいいのか分からなかった。

 

最近のあいつへの辛い当たり方、今日の戦闘が終わった直後も、俺はあいつの自分の命を顧みないような行動に激昂してしまっていた事もある。

直接会えたとしても、そんな今の俺に、一体何が言えるのかと、また怒鳴ってしまうのが関の山ではないのかと自問自答するばかりだった。

 

だからだろうか、手と口元を血まみれにしながら砂浜に座り込むあいつの姿を見て、一番初めに感じたのがやはり怒りだったのは。

 

 

「こんなとこで、お前は何していやがるんだよ……!!」

 

「広登……か…」

 

 

俺の声に、修哉がややゆっくりと視線だけをこちらに向けて答える。

確かに怒りもあった、そして同時に修哉の背中が今までに見たことのないようなほど小さく見え、心が傷んだ。

落ち込んで……いるのだろう、当たり前だ。

姉貴を、家族を失ったんだ、今までの人生を一番近くで見守っていてくれた人をだ。そんなのは当たり前のことだ。

 

俺だって、姉ちゃんがいる。

修哉のとこの姉ちゃんに負けず劣らず、優しい自慢の姉ちゃんだ。

もし、俺が修哉の立場だったらどうするのか……想像するのも恐ろしいと思う。

きっと落ち込むだろう、家族の死に動揺して、情けないほどに泣き喚いて、今ある現実を否定して、無かったことにしようとするかもしれない、逃げ出すかもしれない。

 

誰かに慰めてほしいと、助けてほしいと救いを求めてしまうだろう。

きっと、修哉も同じようにーー

 

 

「悪い、ちょっと遠出しすぎた。手間かけたな」

 

「っ……」

 

「あぁ、この血か? 大丈夫大丈夫、もう薬も飲んだし……ほら、自分の足でだって立てる」

 

 

しかし、この目の前の男は違った。

そんな俺の思っていた、人間らしい感情を、こいつは自分の意志で殺すことの出来る人間だった。

 

やや怒りを含めた俺の声に対し、ヘラヘラしながら、笑いながら自分が大丈夫だということを見せるように立ち上がってみせる。

それが逆に……酷く痛々しく見えてしまうのは、俺の目がおかしいからだろうか。

 

 

「もしかして、里奈や暉にまで探させちまったか?……だったら悪い事したか……2人と合流したら謝らないとな」

 

「………」

 

「広登も悪いな。昼間の戦闘で疲れてるって時に。今度からどっか出るときはーーー」

 

「そうじゃねぇだろ!!」

 

 

そんなこいつの姿を見ていられなくなったのか、こんな状態になってまで人に迷惑をかけたことを気にしている修哉にイライラしたのかは分からない。

いや、多分その両方だろう。

俺は今までで一番大きな声で怒鳴っていた。

 

 

「お前……絵梨さんがいなくなったんだろ!! 姉貴が……家族がいなくなったんだろ!! なのに何でお前はそうやって…!」

 

「……」

 

「だいたいお前……ちゃんと泣いたのか!? 泣きもしないで強がって、人に気ぃ使ってヘラヘラしやがって……お前のそういうところが…俺は大嫌いなんだよ!!」

 

 

思ったことが、口からそのまま次々と吐出される。

口に出そうとする言葉の良し悪しを吟味することもなく、ただ修哉にぶつける。

 

ここ最近の罵詈雑言もそうだが、最近の俺は修哉に怒鳴ってばかりだ。

それがつまらない嫉妬や劣等感からくるものか、修哉の生き方への憤りか、違いを挙げるとするならそれだけだ。

 

 

「い、今は……いつ敵が攻めてくるかも分からないだろ……その時になって動けないなんて」

 

「んなもん……理由にもならねぇだろ! 悲しいことには泣くのが人間だろうが…!」

 

「……」

 

「……それとも、お前にとっては絵梨さんがいなくなったことなんて、泣くほどのことでもないってか…?お節介な姉貴がいなくなって清々したってか!」

 

 

思わず、修哉の胸ぐらを掴んでしまう。

 

珍しく修哉が吃ったが、そんなことは今はどうでもいいことだ。

戦士として、ファフナーのパイロットとしての言葉であれば、修哉は立派なことを言っているのかもしれない。

人類軍辺りの連中からすれば、こういう考え方こそ美徳とされるところなのかもしれない。

 

けれど、それはあくまでパイロットという戦闘単位としての言葉であって、この竜宮島で生まれ育った滝瀬修哉と言う人間の言葉ではない。

事ここに及んで、自分の本心を偽り続けるこいつに、俺は心底腹が立っていた。

 

俺の苛烈な言葉に、修哉が俯き加減になる。

表情はよく見えなくなってしまったが、黙りでも決め込んでやり過ごすつもりかとも思えてしまう。

 

 

「…………」

 

「…何とか言えよ……!! お前にとって、家族なんてものはそんな程度のものでしたってよ!」

 

「……お前に…何が……」

 

「あぁ?」

 

「お前に……俺の何が分かる……!!」

 

 

こんな修哉の声を聞いたのは、初めてではないだろうか。

さっきまでの俺と同じように、怒り、憤りの感情を込めた声。

普段は温厚で、怒ることなどほぼ皆無な修哉が、他人に対して人一倍……いや、異常なほどに気を使うこいつの口から聞こえてきたそれに、俺は少なからず驚きはした。

しかし同時に、修哉の隠された心の戸口が開いたような、そんな風にも思えてしまう。

 

修哉は胸ぐらを掴んでいた俺の手を払いのけるが、その反動か、それともそもそも立っているのもやっとだったのか、2,3歩後退すると再び砂浜に尻餅をついてしまう。

 

 

「あんた達、なにしてんのよ!!」

 

「広登、修哉……!!」

 

 

と、それと時を同じくして、修哉を探していた里奈と暉もこの砂浜に姿を現した。

里奈は俺達2人の姿、砂浜に尻餅をつく修哉と、それを見下ろす俺という構図を見て何事かと声を荒らげ、駆け寄ってくる。

対して、暉はまだ戦闘時のダメージが抜け切っていないのか、ややフラフラとしているが、その声には力が戻り始めている。

 

 

「修哉……あんたその血……!」

 

「もしかして…病気が……」

 

「………」

 

 

修哉のただならぬ様子を見た2人は、尻餅をついた修哉の側に膝をつき、状態を伺う。

しかし、それに対して修哉は俯き加減のまま、微動だにしなかった。

 

果たして、里奈と暉が怪訝そうな表情になったところで、腹の中に溜まった感情を絞りだすような声で修哉が口を開いた。

 

 

「こんなはずじゃ…なかったさ……!」

 

「姉ちゃんには……幸せになって欲しかった……普通に好きな人と付き合って、結婚して、子供作って、家庭を作って……」

 

「でも…それを邪魔していたのはいつも俺だ。何かある度に、姉ちゃんのやりたい事も、自由な時間も奪って……何もかもを台無しにしてた…」

 

「……だから……俺はいなくならないといけなかった……!なのに……いなくなったのは、姉ちゃんって……なんなんだよそれは…!」

 

 

俺が、修哉を死にたがり野郎と言ったことがあるが……あれはあながち間違いでもなかった。

 

確かに、昔は修哉の体に何かある度、絵梨さんがすっ飛んで来ていた、寝る間も惜しんで看病して、修哉が入院するってなった時も毎日毎日通い詰めていたはずだ。

自分の時間も、好きなことをする時間も、修哉のために使っていたことだろう。

 

それを、修哉はずっと心苦しく思っていた、そしていつしか自分自身の存在の否定、いなくならなければという強迫観念にまで成長した。

歪な生き方も、自分の身を顧みない戦い方も、全てはそこに起因しているということか。

 

 

「それはお前が勝手にそう思ってただけだろうが…!! いなくなれって、お前のせいで不幸だって、絵理さんがそうお前にそう言ったのかよ!!」

 

「それは……!それは……」

 

「違ぇだろ……!!少なくとも、絵理さんはそんなこと望んじゃいなかったろうさ!」

 

 

そうだ。

少なくとも俺達の知っている絵梨さんは、修哉のことを邪魔だなんて絶対に考えもしない、それくらい修哉に愛情を注いでいただけだ。

 

 

「お前がいなくなったら……絵理さんも……俺達も……芹だって悲しむだろうが!! そんなことも分かんねぇお前じゃないだろ!!」

 

「分かってるよそんなことは!! でも苦しいんだよ……! 誰かに負ぶさってでしか生きていけないのは!!」

 

 

修哉の言いたいことには納得するつもりはないが理解は出来る。

いつもいつも助けてもらうばかりでは心苦しくもなるだろう、自分の無力感を見せ付けられているような気になるだろう。

それを苦しいと感じるのは決して悪いことではないし、何も感じずに他人の行為に甘えているような人間よりよっぽどマシだ。

 

だが、しかしだ。

そんなことは、誰かに助けてもらうなんてことは、人間であれば誰だってあることだ、当たり前のことだ。

なにも、修哉だけがそうであるわけではない。

俺だって、芹も、里奈や暉、一騎先輩や剣司先輩……真壁司令や溝口さんみたいな大人だって、きっとそうやって生きているはずだ。

 

 

「生きてんだ!! 他人の厄介になることだってあるだろうさ……! それにお前は、その分を俺達にいつも…必死になって返してくれてるだろ!!」

 

「そうだよ…! 喋れなかった僕の代わりに、里奈とか学校の皆との間をいつも取り持ってくれたりして、助けてくれたじゃないか……」

 

「ファフナー乗ってからも、落ち込んでた時に悩み聞いてくれたりしたじゃん……!私だって、修哉に助けてもらってる」

 

「それ…は……」

 

 

俺に続いて、暉と里奈が修哉にそう告げていく。

確かに、修哉は人よりも一人でできる事が少ないかもしれない、人に助けてもらう回数だって多いかもしれない。

けど、こいつはいつも、助けてもらった分を自分なりに返そうとしてくれていた。

 

そんな修哉の姿を知っていたからこそ、皆こいつを助けてくれていたんだ。

 

 

「俺はお前に一方的に嫉妬して、勝手にイライラして、お前に言うべきじゃないことまで言いまくった……正直、最低なことしてた」

 

「………」

 

「でも……その後も、そんなこと言われた後も、ファフナーで戦ってる時、お前は俺を助けてくれた。……俺だって、助けてもらってばっかだって、自己嫌悪したりもしたさ。しかも、理不尽に怒鳴り散らした相手に助けられたんだから尚更な……」

 

「……」

 

「誰だってそうなんだよ……!一人で生きていける人間なんて、居るわけねぇだろ!!」

 

 

そうして言葉を一旦区切ったところで、俺は自分が肩で息をしていることに気がつく。

ここまで必死に声を張って、必死に話したのはいつくらいぶりだろうか。

二年前、最早黒歴史にしたい放送室ジャック事件以来といったところか、あの時だって自分の思いをぶち撒けたくて必死だったように思う。

 

それくらい、修哉の今の状態を何とかしたいと思っているのか、あれほど羨んで、妬みすらした修哉を。

俺に持っていないものを持って、芹の想いを一心に受けているこいつを。

 

 

ーーーいや、そうじゃないな。

これは単純に、俺のためなのかもしれない。

 

芹が帰って来た時、そこに修哉が居なければあいつは泣くだろう、どうしようもないくらいに落ち込んで。

俺は、そんな芹を見たくない。

修哉だって死なせたくない。

 

あぁ…俺は多分……修哉のことが好きな、いつも修哉の事を考えてる芹が…好きだったのかもしれない。

 

 

「助けて欲しい時は助けてって……素直にそう言えばいいんだよ!!」

 

「っ……!」

 

「悲しい時くらい、情けないくらいに泣けよ……! 修哉、お前は今…泣いていいんだよ!!」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

あれはいつの事だっただろうか。

少なくとも、小学生に上る前……姉ちゃんがまだ学校に通っていた頃の事だったような気がする。

 

切っ掛けは、些細な事だった。

芹と2人で遊んでいた際、木にカブトムシだかクワガタムシだかがいたらしく、芹がやけに興奮しながらそれを捕まえようと木に登った。

当然、俺にはそんな真似はできなかったから、芹が危うい足取りで木に登っている姿を見ているしかなかった。

今思えば、子供ながら女の子らしくないほどアグレッシブな奴だったと思える。

 

それはさておき……あと少しで目的のムシに手が届きそうというところで、芹が足を滑らせ、木から落ちたのだ。

俺は慌てて駆け寄ったが、運が良かったのか芹は足を挫いたのと、腕を少し切った程度で済んだ。

 

けど、流石にまだまだ今よりも子供の頃だ、脚を挫いた事、腕の切り傷による痛みで芹は大泣きしてしまった。

周りに大人は居なかったし、このまま放っておくなんて選択肢、最初から俺にはなかった。

今思えば、大人を呼びに行っていればとか、そういう発想をして然るべきだったのかもしれないが。

 

俺は、後先考えることなく芹をおぶって、遠見先生のところに向かった。

怪我・病気を何とかしてくれる人といえば、俺の中では日頃からお世話になっていた遠見先生だったからだろう。

しかしながら、遊んでいた場所から遠見先生の診療所まではそこそこ距離もあるし、今よりも虚弱体質が酷かった俺にとって人をおぶった状態での強行軍は流石に堪えた。

 

歩き出して10分ほどで、俺は息切れしてしまっていたほどで、視界もぼやけてきていた。

けれど、背中で痛みに耐えかねて泣き続ける芹の泣き声が耳に入ってくる、その度に俺は無理矢理に体に命令して脚を動かした。

多分、思えばあれが人生最初の無茶だったように思う。

 

果たして、朦朧とする意識の中で診療所に辿り着いた俺は、掠れた声で遠見先生の名前を呼びながら扉を開いたところで倒れこんでしまい、そのまま一旦意識を手放してしまった。

 

 

次に目を覚ました時、俺は病院のベッドの上だった。

見れば、外は既に夕焼け色に染まっていて、意識を失ってから少しばかり時間が進んでいたことにまず気が付いた。

 

そして、寝惚け眼で視線を隣に向けると、そこには遠見先生に処置してもらったのだろう、腕と足に包帯を巻いてベッドに腰掛けた芹の姿。

加えて、木から落ちて怪我をしたという知らせを聞いてすっ飛んできたのだろう、芹の母親と、こちらも余程慌てていたのか、いつもの神主の格好のままの父親の姿があった。

二人共、怪我はしたものの命に別状なかった娘の姿にホッとして、危険な遊びをしていた芹を叱りつけている。

芹は今度は叱られていることと、自分が危ない目にあったことを理解したのか、またしても泣きじゃくってしまっていた。

 

 

『………』

 

 

芹が無事だったことに、まず最初にホッとした。大した怪我でなくてよかったと。

そしてその次に感じたことは、『羨望』だった。

自分に何かあった時に心配してすぐに駆けつけてくれる両親、危ないことをしたことに対して、ちゃんと叱ってくれる親。

そんな両親に囲まれて泣きじゃくっている芹のことが、堪らなく羨ましいと感じてしまった。

 

親の顔なんて見たことも、記憶にすら無かったし、今まで居ないことを気にしたこともなかった。

けれど、この時初めて、親がいるということを羨ましいと思った。

 

 

『シュウくん……っ!!』

 

 

そのあと少ししてから、多分生徒会の仕事を途中で抜けたきたのであろう、いつも学校にいく時に持っている鞄を持った姉ちゃんが病室に飛び込んできた。

また姉ちゃんの邪魔をしてしまったと、思わず『ごめんなさい』と言いそうになったが、その前に姉ちゃんに強烈に抱きしめられてしまったため未遂に終わった。

 

その後の出来事は、まぁ想像に難くない内容だ。

俺はめでたくしばらく入院することになり、芹の両親からは娘が迷惑をかけたと、助けてくれてありがとうとすごい勢いで頭を下げられた。

俺はなんと答えたのか……あぁそうだ、『芹が大丈夫ならそれでいいです』とか何とか言っていた気がする。

今思えば、可愛げの欠片もない子供だ。

 

 

『シュウ……ひっく…ごめんね……うぐ…ありが…とう……』

 

『別に……お前一人担ぐくらいどうってこと無いし……お前軽いんだよ、もっと米食え』

 

『うぅ……えぐ……ごめん……シュウ…』

 

『だ、だから、泣くなよ……お前に泣かれると……どうしていいか分からなくなるだろ……』

 

 

芹も泣きながら俺に必死に伝えてきたが、芹に対してはなんというか……照れもあったのか、妙に素直でない反応を返してしまった。

いや、担いで歩いた結果が病院送りになっているのだから、全く説得力のない台詞だったが。

俺はもう、この時から芹に泣かれるのにはどうにも弱かった気がする。

 

 

そして、家に帰る事になった芹達の家族を見送った後、病室には俺と姉ちゃんだけになった。

姉ちゃんからは無理をしたことへの軽いお叱りを受けたものの、芹を助けるためという大義名分があったからかそこまでキツイものではなかった。

 

しかし、俺が何となく呟いた言葉に、姉ちゃんはすごく悲しそうな、複雑そうな顔になる。

 

 

『なんで……うちには父さんも母さんも居ないの?』

 

『シュウくん……』

 

『………』

 

 

姉ちゃんから、両親は俺が生まれてすぐに亡くなったと聞いた。

二人共病気でいなくなってしまったと聞いてはいたが、その日まで気にしたこともなかった。

 

けれど、芹達家族の姿を見て、何か俺の心に響くものでもあったのか、気が付けばそう呟いてしまっていた。

姉ちゃんに悲しい顔させたいわけではなかったが、口に出てしまったものはもう戻せない。

 

 

『シュウくんは……お父さんとお母さんが居なくて……寂しい?』

 

『別に……姉ちゃんいるし………』

 

『そっか…』

 

『ごめん……変なコト言って』

 

 

姉ちゃんの問いに俺は取り繕うようにそう答えたが、多分姉ちゃんは俺の考えていることを理解してしまったんだろう。

一瞬少し困ったような顔をした姉ちゃんを見て、俺は少し後悔し、バツの悪い表情になってしまう。

今日はただでさえ、また病院送りになって心配させ、学校まで途中で抜けさせてしまったのにと。

 

しかし、姉ちゃんは表情に困った色を見せてから数瞬した後、『…よし!』と何かを改まった様子で俺を見据える。

そして、病室に飛び込んできた時とは少し違って、柔らかく、優しく俺の体を抱き寄せる。

俺の背中をポンポンと叩きながら、俺に、そして姉ちゃん自身に言い聞かせるように呟く。

 

 

「そんな顔しないの…」

 

「ん……」

 

「大丈夫、シュウくんの事は私が、お父さんとお母さんの分まで守るから、私が頑張るから……」

 

「姉ちゃん…が?」

 

「うん…寂しい思いは、お姉ちゃんがさせないよ」

 

 

姉ちゃんの声には、優しくも、力強いものを感じた。

少し体を離して、俺の顔を見ながらそう言う姉ちゃんの表情は、とても優しい色をした笑顔で。

その時の俺は、芹の家族を見て感じていた寂寥感もあってか、その姉ちゃんの笑顔と言葉に救われた。

 

姉ちゃんがいるならそれでいいやと、さっき言った俺の台詞を、心の中で再度呟いた。

そうだ、姉ちゃんが家族としていてくれるのなら、もうそれ以上を望む必要なんて無いって、思えていたんだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

姉ちゃんの最期の言葉は、幼い頃の俺のための姉ちゃんの決意、約束、その思いを形にしたものだった。

最後の最後まで、姉ちゃんはその約束を覚えていて、俺のことを想い続けてくれていた。

俺は、どうしようもないくらい、言葉で言い表せないくらい、姉ちゃんに愛されていた、守られていた。

 

そんな姉ちゃんと、もう二度と会えない、話すことも出来ない。

 

 

「うっ……あぁ……っぐ……ううぅ……!」

 

「……修哉」

 

「姉ちゃん………最後の最後まで……俺のことばっかり……っぐ…うぅ……うああああぁぁあぁぁ…!!!」

 

 

気が付けば、俺は情けないほどの、今まで生きてきた中で一番多くの涙を砂浜に溢しながら泣いていた。

目の前には、辛そうな、泣きそうな顔をした広登、側には里奈と暉も居る。

 

普段なら絶対に有り得ないことだと思う、こんな風に泣いてしまっていては、また心配させてしまう。

そんな迷惑なことあってはならないと、無理矢理にでも悲しい感情を殺すことができていたのだ、今までは。

 

けれど、広登の泣いていいという言葉に、俺の中の何かが音を立てて壊れた、

そこから先は、故障した蛇口のような勢いで、今まで俺の心の奥底に押し込まれていたものが流れ出てしまっていた。

 

 

「……俺だって…皆と同じが良かった……! 皆と同じように走ったり、無茶できる体が良かった…!」

 

「そうすれば……芹に危ないことさせることも無かったかもしれない……! 姉ちゃんだって守れてたかもしれない……!」

 

「なんで……なんで俺だけこんなんなんだよ……!! 俺が何したっていうんだよ……! くそ……ちくしょう…!」

 

 

ここまで自分の体が普通だったらと思ったことはない。

こんな事、いくら叫ぼうが駄々をこねたところで意味は無い……たらればの話など、なんの価値もありはしない。

が、それでも貯めこんできた思いを堰き止めることなど出来なかった。

 

そして、俺の心には今まで感じることのなかった、いや感じることを放棄していた感情が滲み出ていた。

姉ちゃんの死を、最後を、いなくなっていく過程を目の当たりにしたことで、芽吹いたのかもしれない感情だった。

 

 

「俺にだって……やりたい事だって、見たいものもあったんだ……!でも……どうせ長くは生きられないって…期待していたって無駄だって…全部諦めて……。遠見先生に死ぬかもしれないって言われた時、やっぱりそれが正解だったと思った」

 

「けど……芹に好きだって言われて……生きたいって…思った俺がいて……」

 

「姉ちゃんがいなくなるの見て……怖くなって……!」

 

 

ずっと、いなくならないといけないと思っていた、思い続けていた。

いくら人に迷惑をかけないように生きようと頑張っても、俺の体がそれを許してはくれなかった。

こんな俺が長く生きたところで、誰かの迷惑にはなっても、役に立つはずなんて無いと。

 

長く生きれない、どうせ皆より早くいなくなる、覚悟はできてる、死ぬことは怖くないと。

死は常に自分の近くにあると、死ぬことがどういうことかなど分かっている、理解しているなどと考えていた。

 

全く、勘違いも甚だしい。

俺は理解などしていなかった、居なくなることがどういうことか、置いて行かれる側がどんな気持ちになるか、真の意味で理解などできていなかった。

 

そんな俺が、こんなことを口にする資格など無いのかもしれない。

今更どの口がそれを言うのかと、呆れられてしまうのかもしれない。

しかし、俺の口は、心は、絞りだすように俺の本心を垂れ流していく。

 

それくらいに、俺は、恐怖していた。

 

 

「俺……死ぬのが怖い……死にたくない…」

 

「……」

 

「いなくなりたくない…ここに…いたいんだ……」

 

 

そう言って、俺は再び砂浜に涙をこぼしていく。

なんと情けない、みっともない姿だろうか。

 

こんな姿、広登達にも見せたことはなかったし、俺自身、自分がこんな風になることなど考えもしていなかった。

呆れられてしまうだろうか、ここまで情けなく泣いてしまって、俺という人間がここまで脆弱な精神の持ち主だと分かって幻滅されてしまうだろうか。

 

果たして、俺の叫びにも似た感情の吐露を黙って聞いていてくれた広登、里奈、暉の反応はそれとは正反対のものだった。

 

 

「ったく……最初から素直にそう言えばいいんだっての……」

 

「死ぬのが怖いなんて、当たり前のことじゃん……そんなの、修哉だけのことじゃない」

 

「僕も里奈も、広登だってそうだ。皆、いなくなりたくなんてないし……誰にもいなくなって欲しくないって思ってる」

 

「……っ!」

 

「それに竜宮島(ここ)がお前の帰ってくる場所なんだ……お前は、ここにいていいに決まってんじゃねぇか……い、一々言わすんじゃねぇよ……」

 

「広登……里奈、暉……」

 

 

思わず顔を上げると、そこにはやれやれというような表情の広登、珍しく揃って柔らかい表情の里奈と暉がいる。

ずっと俺が無意識の内に押さえつけていた本心、身勝手な、俺の願望を聞いてなお、何でそんな風にいられるのか。

何故、それが当たり前なのだと、それでいいんだと言ってくれるのか。

なぜ……芹がそうしてくれたように、俺の存在を肯定してくれるのか。

 

そんな不思議そうな俺の表情を見て、里奈が言う。

 

 

「ちょっとはさ、自分勝手に…素直になりなって。そんなんじゃ疲れるばっかだし、逆に周りも苦しい思いすることになるんだからさ」

 

「………でも、俺がそんなこと」

 

「修哉ってさ、ホントに他人には滅茶苦茶甘いくせに、自分にはとことん厳しいとこあるのよね」

 

「え?」

 

「少しはさ、他人に向ける優しい気持ち、自分にも向けてやりなよ。あんたが自分のこと大嫌いなのは何となく分かってたけど、見てるこっちも結構辛いって…」

 

「修哉のそういうところ、芹もずっと心配してたしね」

 

 

里奈に続いて暉が肩を竦めながらそう言う。

普段の俺は、皆の目にはそんなふうに映っていたのかと、今更ながらに思い知らされたような気分だった。

 

……だが、指摘された点については客観的に見てもそうかもしれないし、里奈の言う『俺は自分が嫌い』の件について自覚はあった。

しかしながら、同時に自分自身に……こんな俺にどうすれば好意的になれるのか……今の俺には皆目見当もつかない。

 

 

「……こんな俺の…自分のことなんて、どうやって好きになれっていうんだよ……」

 

「ま、そこはあれじゃない? 修哉に好き好きビーム出してたどっかの誰かさんにレクチャーしてもらえば?」

 

「な、なんでそこで芹が出てくるんだ……!」

 

「あれー? 私は『誰かさん』って言っただけで、芹の名前なんて一言も言ってないんだけどなぁ? いや~、修哉ってば愛されてる自覚持ってたんだねぇ…」

 

「っぐ……」

 

 

里奈のやつ……絶対ワザとだ……!

い、いや……別に愛されてるとか云々じゃない、咄嗟に芹の名前が出てきたのは、あいつには告白されていたからであって……。

……言い訳している時点で、俺の負けか。

 

里奈にからかわれたお陰か、いつの間にか涙は止まっていた。

心も、さっきまで寂寥感でいっぱいだったのが少しマシになっている。

そんな俺を見て、今度は少し真面目な表情になった里奈がさらに続ける。

 

 

「……芹に告白されてんなら、ちゃんと返事しなさいよ。このまま泣かせたりしたら、私が承知しないから」

 

「……分かってる……でも、俺も島も……それまで保つかどうか……もう分からない…」

 

「修哉……」

 

 

それは姉ちゃんにも言われていたことだった。

俺自身、そこはちゃんと答えを出して、芹に伝えたかった……が、今日の戦闘で俺の体がどんな状態なのか、敵がどれだけの戦力で襲いかかってくるのかを思い知ったところだ。

泣いた後だからか、やや弱気になっていた俺は、後ろ向きな言葉しか返せず、そんな俺を見て、それを理解した暉と里奈は複雑な表情になる。

 

だが、少しムスッとしていた広登が、そこで口を開く。

 

 

「保つ保たねぇじゃねぇ、保たせりゃいいだけだろうが」

 

「広登……」

 

「芹のこと、『お前』が守るんだろうが! 男が一回決めたこと途中で投げ出すんじゃねぇっての!」

 

「あ……」

 

 

広登がどうしてそのことを知っているのか……は、まぁ別にいい。

けれど、こいつの言葉には俺の頭を再起動させるだけのパンチ力があった。

 

芹の事、芹との約束を思い出す。

守ると約束したこと、いなくならないと約束したこと……それだけで、尽きかけていた気力が蘇ってくるような気がした。

 

 

「初めて俺達がファフナーに乗る前、お前言ったよな、『島を守るなら、皆で守ろう』ってよ……今が、一番そうする時だろうが」

 

「初めての戦闘のあと、修哉、私に言ったよね、『皆で生き残ってくれ』って……ナチュラルに自分のこと外してたみたいだけど、私は勝手にそこにあんたのこと含めてるから」

 

「遠見先輩のことで悩んでる時、修哉は僕の背中を押してくれた。だから、今度は修哉の背中を押せるように、芹にもう一度会えるように……僕にも修哉を助けさせて欲しい」

 

 

広登が、里奈が、暉が、それぞれ俺にそう言いながら、手を差し伸べてくれる。

それを目にした俺の目から、再び涙が溢れてくる。

 

だが、今度のそれは悲しい感情からくるものではなく、嬉し涙だった。

姉ちゃんも芹もいない、もう1人だと思い込んでいた俺に、こうして手を差し伸べてくれる人達がいるという事実が嬉しかった。

 

 

「揃いも揃って……どうしようもない、お人好しだ……」

 

「お前にだけは、言われたくないっつの」

 

 

また少し素直でない風にそういう俺に対して、広登が小さく笑いながらそう返してくる。

涙を腕で拭いながら、三人の手に手を伸ばす。

また泣いてしまったことを誤魔化したわけではないが、三人の厚意に感動して嬉し涙を流している自分が妙に気恥ずかしかった。

 

そうして、俺が伸ばした手を、三人が取る。

座り込んでいた俺を、絶望していた俺を引っ張り上げてくれる。

体の不調は、不思議と感じることもなく、意識も体の感覚も、やるべき事も、やりたい事もハッキリしていた。

 

立ち上がった俺が三人と顔を見合わせる。

そして俺は、今一番皆で成し遂げたいと思える、俺の素直な願望を言葉にした。

 

 

「生き残ろう、皆で」

 

「ったり前だ! とっとと終わらせて、本業に戻りたいしな!」

 

「私は芹と修哉を早く弄りたいし」

 

「り、里奈ってば……」

 

 

三者三様の反応に、真面目なこと言った俺が馬鹿みたいだったが、それすらも今は心地良かった。

 

ーーーもう、二度と自分からいなくなろうとなどするものか。

どれだけ絶望的な状況でも、どんなに無様で、情けない姿でも、意地でも生きてやる、生きていたい。

 

生きて、芹に会いたい……あいつへの返事はきっちり返す。

姉ちゃんとも約束した、姉ちゃんがそう望んでくれていた。

そして俺自身がそうしたいと、心の底からそう思うことができている。

 

だから芹、もう少しだけ、待っていてくれ。

 

 

 




今週の私↓


彡(゚)(゚)「お、夏アニメの一覧出てるやんけ!見たろ!」

彡(^)(^)「のんのんびより・・・プリヤ・・・ええやん、いけるやん!」

彡(゚)(゚)「ToLOVEるダークネスも二期やるんかいな・・・あれ?アニメ制作、XEBEC……ファッ!?」

彡(゚)(゚)「ということは、ファフナーの後半、夏は来ない・・・? 秋以降?」

彡(゚)(゚)「………」

彡()()「………」

彡(゚)(゚)「ま、まぁ時間かけて毎週神回連発とかになるやろうし、何の問題もないで!」

彡(^)(^)「それに金色の闇ちゃんの可愛いしな!福圓さんボイスも楽しめるし文句なしや!」


こんな感じで、自分一人で納得するようにしてました。
まぁあれです、TVシリーズから劇場版、劇場版から二期までの時間を考えれば、屁でもないわけですよ……(血涙)



さてさて、本編についてです。

最初の芹視点から、前回の続きをお届けする形です。
やっぱり、シュウのあの様子を芹ちゃんと乙姫ちゃんは見ていたわけで。
抱き締めようとしますが、当然それをシュウが感じることもなく、無力感に苛まれます。

で、そこで登場したのが広登、里奈、暉の三人ですね。
広登はここ最近心境の変化が見られていましたが、ここで一つの区切りを迎えています。
少し後に改めてシュウと一対一での会話イベント用意してますので、そこでわだかまりがどう決着するのかも見ていただければと思います。

ともあれ、広登の男気をここからもっと出していきたいですね。

シュウを救う役目をこの三人に努めてもらったのは、シュウにとっての味方は芹だけではないということをハッキリさせたかったからです。
彼らもまた、長い時間を一緒に過ごしてきた、シュウを肯定してくれる存在なんですね。

広登とは若干言い争いにも近いレベルになってしまいましたが、ここまでシュウが取り繕うことも、偽ることもせずにぶつかったのは芹を除けばこれが初めてかな。。。


さて、そして広登たちの声を受けてのシュウ視点です。
といってもまずは少し過去のお話をしてみました。

怪我をしてしまった芹を運ぶシュウでございます。
シュウは昔から無理をするタイプでしたが、この時期から体の不調を精神的にねじ伏せてました。
精神が体を凌駕する・・・とまでは行きませんが。

なお、この時点ですでに芹の涙には弱かった模様。

そして親の居ないことへの疑問と芹の家族たちへの羨望、子供ながらにそれを初めて感じた時、お姉さんがシュウに送った言葉。
前回のお話を見ていただければわかりますが、あの最後の言葉はこれなんですね。


で、時間軸を現在に戻し、改めてシュウ視点です。
姉の死を受けての涙、そして今まで貯めこんできた自分の体についての不満に、こうだったらよかったのにという願望。
そして、生きていたい、死にたくないという生存意欲を取り戻すことが出来ました。
今までいなくならなければと強迫観念に取り付かれていたシュウが、漸く『意地でも生きる』という風になったわけですね。
ある意味、芹が一番望んでいたことでもあります。

・・・ちなみにですが、シュウは姉の死を受け入れることがしましたが、乗り越えることまでは出来ていません。
まえがきでも書きましたが、今回救われるのは半分だけです。

もう半分は・・・言わなくても分かりますよね。


ではでは、次回からは第二次蒼穹作戦へ進んでいきますよ。




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