蒼穹のファフナー Benediction   作:F20C

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軽く第二回戦闘を描きつつ、お話を進めていきます。
今回は、剣司→芹→シュウ視点になります。

何気に、剣司視点が結構多いですね・・・





摩耗していく命 -Ⅲ-

当然のことだが、フェストゥムとの戦いは一度だけで終わる……なんてことはあり得ない。

新人たちの初戦から数日後、敵はまた竜宮島に侵略の手を伸ばしてきた。

俺、近藤剣司は愛機であるマークアハトに搭乗し、後輩たちを引き連れて出撃、島の防衛を目的とした迎撃行動を展開していた。

 

俺は主に陸戦部隊、広登、暉、里奈、芹の四人を、マークドライツェンを駆るカノンと連携しながら指揮を取り、空戦部隊は遠見のマークジーベン、咲良のマークドライ、そして修哉のマークツヴァイと言った布陣。

 

前回同様、統率の取れた行軍、陣形を意識したかのようなフェストゥムの群れだが、前回の戦いからまた何かを学習したのか、攻撃方法にやや変化が見られた。

前回の戦闘では確認できなかった、スカラベ型、無数の触手による同化を主な攻撃方法とするタイプのフェストゥムで、2年前の戦いにおいても俺達を苦しめた種類のフェストゥム。

その亜種と思われるフェストゥムが、体から枯葉剤の様な物質を分泌、島に散布し始めた。

 

その物質は毒素を多分に含んでいるようで、浴びた植物や大地はみるみる内に健康的な緑色から、毒々しい茶色に変色、傍目からも汚染されているのが分かった。

 

やばい……あんなので島を攻撃され続けたら、成長期に入ったコアにとっちゃ致命的だ。

兎も角、あのスカラベ型を地上に引きずり落とすなりして陸戦部隊の有効射程内に置かねぇとな……

 

 

俺はアハトの手に装備されているガルム44をセミオートに切り替え、空中を舞いながら毒素をまき散らすスカラベ型に狙いを定めて数発を打ち出す。

ドラゴン・トゥースを装備した暉も、同じくスカラベ型へ炸裂弾を発射、撃ち落とそうとする。

 

しかし、その銃弾がスカラベ型に着弾する前に、スカラベ型の周囲を飛ぶ、護衛隊のような役割を帯びているフェストゥムが自身を盾として銃弾をその身に受けた。

言うまでもなく、スカラベ型自体は何ら傷を負っておらず、尚も毒素を散布し続けている。

 

 

「フェストゥムが……フェストゥムを庇った?」

 

「っ! マークツェン、ボケっとすんな!!」

 

 

フェストゥムが仲間を守るような行動を取ったことに、暉が一瞬呆ける。

隙を見せた暉に狙いを定めたように、スカラベ型が緑色のワームスフィアを大きな板状にしてマークツェンに放っていた。

 

俺の声でハッとしたようだがもう遅い、スカラベ型のワームスフィアがマークツェンのドラゴン・トゥースを、腕を覆うと同時にねじ切るような形で切断。

ツェンの腕はもちろん、ドラゴン・トゥースも一瞬で鉄屑にされてしまう。

強化されたノートゥングモデルを安々と切断したあのワームスフィア、今までのスカラベ型のものとは比較にならない攻撃力を持っている。

被弾したマークツェンをカバーしながら、なおも宙を泳ぐようにして毒を撒き散らすスカラベ型を睨みつける。

 

ちくしょう……あの護衛部隊を何とかしねぇと埒が明かねぇ。

 

 

『盾を潰すよ!』

 

『了解』

 

 

と、俺が空戦部隊に護衛部隊の排除要請を考えていると、遠見と咲良が毒を撒き散らすスカラベ型の一団へと高速接近していく。

なるほど、言われるまでもないってか……うちの女性陣は頼りになるぜ全く…!

 

マークジーベンとマークドライは並列飛行しながらフェストゥムの群れに接近、射程に入ると同時に二人は散開、攻撃に移る。

空戦での取り回しを考慮されたレールガンを持つジーベンが引き金を引き、マークドライがリンドブルムに内蔵している誘導弾と後部200mm火砲を放つ。

護衛部隊は数こそ多いが防御力は大した事はない、被弾したフェストゥムが次々とワームスフィアに包まれて消滅していく。

 

護衛部隊には確実に穴が開きつつあった……だが、二機の火力でも限度があった。

あと少しというところで、敵の防衛陣形の綻びを広げきれない。

 

だが、空戦部隊にいるのは頼りになる女性陣だけではなく、頼りになる後輩もいる事を忘れちゃいない。

 

 

『盾をまとめて潰します。デカブツは地面に叩き落としますから、後のことはお任せします』

 

 

そう通信を寄越す修哉、マークツヴァイの姿は敵の群れ、その直上……というか、現在進行形で敵に向かって一直線に降下していた。

かなりの高さまで垂直上昇したのだろう、地球の重力の助けを借りているのとスラスターを全開にしているらしいマークツヴァイは尋常ではない速度で敵に迫る。

 

フェストゥムもツヴァイの姿を認めたのか、ワームスフィアを発生させはするものの、黒い球体の発生よりもツヴァイの速度が速いようで全く当たる気配がない。

そして、超高速降下しながら、マークツヴァイは背部のバインダーからリディルを全機展開。

今回は全機が射撃攻撃モードになっているらしく、8つのユニットが全機一斉に赤色のレーザーの雨をフェストゥムに浴びせていく。

 

遠見や咲良の攻撃に負けず劣らずのペースで、修哉の放ったリディルは一つ一つが命を持ったように動きまわり、次々とフェストゥムを屠っていく。

各ユニット、味方、敵、それらの位置や方向、姿勢や大きさ、間隔など。

その全てを頭の中でイメージ、処理することが出来なければ到底使いこなせない。

 

果たして、空戦部隊三人の攻撃によって、スカラベ型の周囲に侍っていた護衛部隊をあらかた掃除。

しかし、マークツヴァイはそれでは足りないと言わんばかりに、更に続ける。

 

 

『いけぇぇ!!』

 

 

自由落下エネルギーとスラスターによる加速で、ある意味隕石にでもなったようなマークツヴァイは、修哉の咆哮と同時に、右手に装備していたルガーランスをスカラベ型に向かって投擲。

マークツヴァイの投擲によって付加されたエネルギーも加わり、ルガーランスは空気の壁を破る。

 

そして、ルガーランスのその鋭い切っ先は、スカラベ型の中央を正確に捉えて突き刺さり、敵の体を地上に叩き落とした上、蝶の標本のように磔状態にする。

加えて上空から、エネルギーフィールドを展開して格闘攻撃モードになったリディルがスカラベ型に襲いかかる。

 

尚も逃げようとするスカラベ型の各所にリディルが突き刺さり、ルガーランスを中心として敵の動きを完全に止めてしまう。

 

 

『喰らええぇぇ!!!』

 

「うおぉぉぉお!!」

 

 

そのチャンスを見逃すことなく、カノンと俺は身動きの出来ないスカラベ型に接近。

カノンはドライツェンの持つルガーランスを突き刺し、俺は修哉が投擲して敵に突き刺さった状態のルガーランスに飛び付き、二人同時に刀身を展開、プラズマエネルギーをスカラベ型の体内に流し込んでやった。

 

ランスの刀身から流れる光の奔流によってにコアは消滅、スカラベ型は巨大なワームスフィアを発生させた後、消滅した。

 

 

『はぁ……はぁ……』

 

「修哉、お前たまにえげつない事するよなぁ……あと、急降下は見てるこっちの寿命が縮まるから程々にな」

 

『はい…すみません…』

 

 

ルガーランスを投擲した時点でスラスターを逆噴射させ、落下エネルギーを穏やかなレベルに落とした修哉、マークツヴァイが側に降りてくる。

急速降下からの攻撃は、さしものこいつも堪えたのか、やや息が荒くなっているが、それをツヴァイの挙動に出すことはない。

見れば、周囲の敵の迎撃を行っていた里奈達も敵を片付け終わり、こちらに向かっている。

 

初戦から見れば、少しばかりお互いを守り合いながら戦う姿勢が垣間見えた。

俺としてもこれは嬉しい、良い傾向でもある。

 

ただ、一つ気になることがあるとすれば……広登と修哉の間が微妙にギクシャクしているように感じることだ。

修哉は広登に少し歩み寄ろうとしているが、広登が一貫してそれを無視しているような……

 

二人の間に、この前の戦闘後に何があったのか、それは分からない。

だが、この状態が続くようなら……仕方ねぇ、俺が出張るしかねぇか……

 

と、また咲良に『世話焼きだねぇ~』と苦笑いされそうなことを考えつつ、俺達は竜宮島に、俺達の家に帰った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

戦闘が終わり、ブルグにファフナーを格納、コクピットブロックから外に出る時の感覚には未だに慣れない。

まるで自分自身を置いて、脱ぎ捨ててしまうような妙な感覚を覚える。

これがファフナーとの一体化から解放、あるいは切り離されるとでも言えばいいのか。

 

ともあれ、私、立上芹は小一時間ぶりの外の空気を吸うことで、また生き残れたのだという安堵感を得ていた。

前回の戦闘のあと、シュウと話して、次の日には里奈とも話すことが出来た。

 

里奈はバツの悪そうな表情になりながら、らしくないほど大人しい様子で戦闘中に酷いことを言ったと謝って来た。

私自身、戦闘中に敵のことが気になって取り乱してしまったわけで、里奈が悪いわけじゃない。

そう言葉を交わし合い、私達は小さなすれ違いというか、いざこざにケリを付けることが出来た。

 

暉も、遠見先輩と何かあったようだけど、今もコクピットブロックから出て来て明るい表情でどこかに行ってしまう。

多分、別ブルグの遠見先輩のところだろう、こういう所を見ると、暉は犬っぽいと感じてしまう。

 

 

「(これもシュウのおかげ……かな)」

 

 

前回の戦闘のあと、様子がおかしかった皆の様子を見に行っていたことは、彼自身との会話で何となく察することは出来た。

多分自分からなにか言うつもりはないんだろうけど、周囲を上手く回す、空気が淀まないように、それぞれをフォローしていたんだろう。

 

私自身そうだったし……シュウ自身も…その、この前の『あれ』で元気になってと言うか、フォローになってれば嬉しい。

 

ただ、一つ気掛かりな事を挙げるとするなら……広登とシュウ、二人の間の空気だけが微妙に淀んでいる気がすることだろうか。

いや、正確に言うとシュウだけでなく……広登は周囲に小さな反発を繰り返しているようにも見える。

理由は分からない……ただ、特にシュウに対しての当たりが強い…そう感じた。

 

今度、私も何かあったか聞いてみた方がいいんだろうか……と、それこそシュウの癖が伝染ってしまったような事を考えてしまい、内心苦笑してしまう。

最近、いろいろとシュウに影響されているというか、ほんと振り回されているような気がする……いい意味で、だと思うけど。

 

そんなことを考えながら、ツヴォルフの左隣のドックに格納されたマークツヴァイを見る。

元々の近接戦仕様という機体コンセプトは完全に廃され、シュウ専用・空戦仕様に改修された機体。

今日もそうだったけど、シュウは無茶な戦い方が目立っている。

 

高高度からの急速降下、そこからの強襲攻撃、見ていてハラハラされられることは必至……だけど、結果的に戦果は上げているわけで。

あまり無茶なことはしないでと言ってはいるが、『分かってる分かってる』と、ほんとに分かってくれているのかは微妙……

一度じっくり、正座させながら、小一時間ほど無言の圧力でも掛けてやろうかと思ってしまう。

 

 

「あ、シュウ…」

 

 

と、シュウへの『お話』の仕方を考えていると、ツヴァイから分離したコクピットブロックからシュウが出てくる。

その姿を見ただけで、ホッと安堵すると同時に、何故か頬が熱くなるのを感じる。

戦闘が終われば検査がある、それが終わったら何か食べにでも誘ってみようか…と考えながら、私が彼のもとに向かおうとした時だった。

 

ブルグのデッキを歩いていたシュウの体が、突然グラっと傾く。

瞬間、その光景は私の目にはスローモーションに映る。

一度傾いたシュウの体は、そこから持ち直されることもなく……重力に従ってデッキの床へと沈んでいった。

 

 

「…シュウ?」

 

 

次の瞬間、私の脚は既に駆け出していた。

たった十数メートルの距離が、数秒で届くはずの距離が、やけに長く感じると同時に、脚に重りでも付いているんじゃないかと思えるくらい体が鈍く動いているように思えてくる。

 

うつ伏せの状態で倒れ、身動き一つしないシュウのもとに辿り着き、抱き起こす。

男の子の体だというのに、やけに軽く、起こすのにさほど苦労はしなかったが、それが逆に危うさを煽ってくる。

 

 

「シュウ!? しっかりしてよシュウ、ねぇってば!!」

 

「うぅ……はぁ…はぁ」

 

「すごい熱……もしかしてこれって…」

 

 

私の声に若干の反応は示してくれるものの、その声は小さく、今にも消えてしまいそうなものだった。

顔はやや紅潮し、息も荒い。

疲労だとか、ただの風邪と言われれば信じてしまいそうだったけど、私はこの状態のシュウをよく知っている。

 

子供の頃によく目にした、持病が酷くなった時のシュウ、そのものだったのだから。

けれど、ここ最近は安定していたため、滅多に見ることがなくなったその姿に、私はやや取り乱してしまっていた。

 

 

「芹ちゃん、一体どうし……修哉くん!?」

 

「い、五島さん……! シュウ、シュウがまた!」

 

「話は後に! 僕が運ぶから、早く遠見先生のところに!」

 

 

同じブルグに来ていたシュウのお姉さんの恋人、五島さんがシュウの姿を見るや、すぐにシュウを背に担いでくれる。

そのまま、シュウは遠見先生の居る医務室に担ぎ込まれることになる。

私も、五島さんに背負われて運ばれていくシュウを追った。

 

なにか悪いことが起きる前触れのような気がして、私の心はざわめき立っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

電源をコンセントから引っこ抜かれたパソコンが、再度電源を入れられた時の気分はこんなものなんだろうか。

ゆっくりと目を開けながら、俺は突然途切れた記憶と眼の前に広がる、真っ白な天井を見ながらそんなことを考えていた。

 

本当に久しぶりに、俺は倒れたのだと、そう理解するのにさほど時間は必要なかった。

真っ白な天井に、あまり寝慣れていないベッド、枕の感触。

そして、俺の目が覚めた事に驚いたのか、心配してくれていたのか、ポロポロと瞳から大きな涙の粒を流す芹の顔を見れば、簡単な話だった。

 

 

「……よぉ、添い寝にでも来てくれたのか…?」

 

「シュウ…!!」

 

 

俺の冗談めいた言葉には目もくれずと言った感じで、涙を流していた芹が抱き着いてきた。

右手だけを動かして抱き返し、頭を軽く撫でてみる。

彼女の体温と、心臓の音、それらを感じることで、ここがまだ地獄ではなく、自分はまだ生きていることを再確認する。

 

体の何処かが強烈に痛むということはない……体も動かせる。

ただ、体全体に割増された重力を掛けられているようなレベルで重く感じた。

 

戦闘中、終盤の当たりから『リィィ…』という耳鳴りと視界の揺れを感じていた。

なんとか戦闘中は耐えてみせたのだが、ファフナーから降りた瞬間、張り詰めていたものが切れたように意識を持って行かれてしまったのだ。

我ながら情けないことだと思いながらも、ここ最近は安定していたにも関わらず、何故このタイミングでと自身の体を恨めしく思うばかりだ。

 

 

「もう…!! ファフナーから降りた途端に倒れるし、めちゃくちゃ熱あるし、丸一日目覚まさないし……!」

 

「悪い……」

 

「謝ったって……許してやんない……!」

 

 

若干しゃくりを混じらせながら、芹が抱きついたままそう言ってくるが、俺には謝ることしか出来なかった。

丸一日寝てしまっていたということに若干驚きはしたが、これまでも似たようなことはままあった。

その度に記憶の連続性が途絶えてしまい、時間感覚や曜日感覚がおかしくなったりするのにも慣れていた。

 

けど、やはりと言うか、こうやって誰かに泣かれるのが一番堪えるし、慣れることもない。

 

 

「いやはや……修哉くんも隅に置けないね」

 

「広臣……さん?」

 

「無事に目が覚めたみたいで良かった…慌てて遠見先生のところに運んだときはどうなるかと思ったけど…」

 

「広臣さんが俺を運んでくれたんですか……すみません、迷惑かけて」

 

「迷惑だなんてとんでもない。当然のことだろう?」

 

 

と、芹の居る方とは反対、ベッドの左側にいたのは広臣さんだった。

自然とあの夏祭りの時の記憶がフラッシュバックし、苦い思いが頭の中を過っていく。

 

でも、広臣さんはいつもと変わらないような優しい、本当に俺を心配してくれていたような表情。

それに加えて、俺が倒れた時に医務室にまで運んでくれたのも広臣さんだという……本当に、どこまで人が良いのかと思う一方で、こういう人だから姉ちゃんも好きになったんだと思い直す。

 

でもだからこそ、二人の邪魔をしてしまった自分自身に腹が立ってくる。

 

 

「それにしてもビックリしたよ、ブルグにいた羽佐間先生、CDCでも要先生が続けざまに倒れてね……」

 

「羽佐間先生と要先生が…? お二人は大丈夫なんですか?」

 

「今は落ち着いているらしいよ。というか、一番酷かったのは修哉くんだったみたいだからね」

 

「そうですか……」

 

「ただ、遠見先生の話では、成長期に入った島のコアが自身の成長にエネルギーを集中している間は、他の島民の中にも体調を崩す人が出てくる可能性があると……」

 

 

元々持病のある俺が倒れることは…まぁ、可能性の上では最も高いから納得出来るが、羽佐間先生や要先生は特に何の問題もない健康体だったはず。

だがなるほど、俺の体も、大人たちの不調も、島のコアが成長期に入ったことに起因しているのなら納得ができる。

 

……俺の体も島に、乙姫に守られてたのか…

今まであまり実感することがなかったが、いざそれを認識すると乙姫には感謝の念しか浮かばない。

 

だが……これで来栖操が言っていた事の現実味がさらに増した。

来栖側のフェストゥムの群れとの戦闘がこのまま続けば、コアは消耗し、成長までの時間も当然伸びてしまう。

そうなれば、島の人間は時間経過と共に命の危機にさらされていく。

 

島のコアを殺すという竜宮島上空の謎のオーロラ、フェストゥムからの攻撃……来栖の申し出を受けることは難しい以上、事態は真っ直ぐに悪い方向へと進んでいると言う他ない。

 

 

「さて、修哉くんが目を覚ましたことを遠見先生に伝えてくるよ。あと、君の着替えを取りに行った絵梨さんを迎えに行かないとね」

 

「あ……その広臣さん…」

 

「ん、なんだい?」

 

 

と、俺が倒れた間に起きたことを簡単に教えてくれた後、広臣さんは思い出したようにそう言いながら病室の出口へ向かう。

俺は、気が付けばそんな彼を呼び止めていた。

 

ちょっと待て…俺は何を言うつもりだ、何を聞くつもりなんだ?

『あれから姉ちゃんとは、まだ続いているんですか?』

『プロポーズ、俺のせいで台無しになってすみません』

 

いや、どれもない、あり得ないだろう。

2人のあの光景を、二人の間にあった出来事を出歯亀して見ていた事を広臣さんは知らない。

俺は……彼に何を言わせたいのか、彼に何をさせたいのか。

 

お前のせいで全てが台無しになったと罵倒して欲しいのだろうか、お前さえいなければと、俺を罰して欲しいのか。

 

 

「いえ……いろいろと、ありがとうございました……」

 

「どう致しまして。でも、本当にお礼を言わないといけないのは僕じゃない」

 

「え?」

 

「芹ちゃん、昨日から君に付きっきりだったんだ。絵梨さんもブルグでの作業がない時間はずっと君のそばにいた…だから……あとは分かるね?」

 

「は、はい……」

 

「よろしい。じゃあ、僕はこれで。また少ししたら戻ってくるよ」

 

 

本当に……どこまで人が良いのだろうかと、俺は広臣さんに恐れを抱いてさえいた。

自分のプロポーズを失敗させた原因に対して、どうしてそこまでしてくれるのかと、何故優しく出来るのかと。

広臣さんが部屋を後にして、閉じられたドアを見ながら、俺はそんなことを考えていた。

 

姉ちゃんも……この前の一件からあまり話も出来なくなっていたのに…

芹と一緒で、また泣かせてしまったのだろうか…心配させてしまったのだろうか。

 

そして、同時に現在進行形で、未だに俺に抱きついたままの芹に目を向ける。

昨日から付きっきりということは、俺が倒れてからずっと……芹は側に居てくれたのか……

また……大きな借りが出来てしまったと思うと共に、純粋に、芹がそこまでしてくれたことが嬉しかった。

 

 

「芹……その…なんだ……悪かったな、心配かけて」

 

「………」

 

「あと……側に付いててくれて、ありがとな……」

 

 

まだご立腹なのか、芹からの返答はない。

だが、芹の抱きつく力は衰えることはなく、彼女の暖かさと心臓の音……そして、女性らしい柔らかい体の感触がかなりダイレクトに伝わってくる。

芹の、いつもの安心できる柔らかい匂いが鼻孔をくすぐるのも相まって、俺の心臓は急速に心拍数を上昇させていく。

 

体はまだまだ重いというのに、随分と都合のいい体だと、自分自身に呆れ返ってしまう。

 

 

「……目が覚めて、一番最初に見れたのが芹の顔で……なんでかな、凄い安心してさ…」

 

「……」

 

「芹が居てくれて本当に良かったってーー」

 

「すぅ…すぅ……」

 

「………って、あれ?芹?」

 

 

俺が、若干らしくない程素直に感謝を伝えようとしている中、聞こえてくる小さな寝息。

それは、紛れも無い芹のもので……彼女が俺に抱きついた状態のまま寝てしまっているという状態を分かりやすく俺に教えてくれた。

付きっきりってことは……そうか、多分昨日はあまりよく眠れなかったんだろうと、芹の負担になってしまったことに心苦しさを感じてしまう。

 

だがしかし、何も抱きついたまま寝てしまうこともないだろうに……いや、眠れない原因を作った俺にそんなことを言える資格などないことは理解している。

けれど、こんな刺激の強い添い寝は……俺の心臓に悪い。

 

一先ず、俺は不安定極まりない体勢のままの芹をベッドに引き上げ、寝かせてやる。

体の怠さはあったが、芹の体を引き起こすことくらいは何とか出来た。

そして、俺を強烈な力で抱いていた腕を出来るだけ優しく外し、ベッドの半分を芹に譲る形で寝かせることに成功した。

ーーーちょっと勿体無いことをしたとか、そんなことは欠片も考えていない……いない。

 

 

「はぁ……無防備すぎだって…ほんとに……」

 

 

安心しきった表情のまま眠り続ける芹、そしてその柔らかそうな唇がやけに目に入ってきて、視線を外せない。

本来喜ばしいことではないが、今この時に俺の体が不調でよかった……

もしそうでなければ、俺は今頃芹にーー

 

 

「な、何考えてんだ俺は……」

 

 

俺は、一体芹に何をしてしまうところだったんだろうか?

自問自答してはみたものの、その答えが出ることはなかった。

 

俺は自分の中の感じたことのない欲求を押さえ付け、芹に布団をかけた後、病室に備え付けられているソファに腰掛けた。

芹の寝顔から目を離すのに、時間がかかってしまったことは言うまでもない。

 

 

 

 




ファフナー12話

あの、希望が見えないんですけど・・・
もうこれあれじゃないですか

どうせみんな人やめる

レオくんの虚化、案の定酷くなってんじゃないですか・・・ミカミカもエレキバン増えてるし・・・
彗は質量増加によって体を動かすのも辛く、里奈はまた昏睡・・・
で、我らが芹ちゃんは隔離・・・部屋の隅で体育座りしてるところ見るだけで心が痛くなります。
織姫ちゃんと虫取りの約束しますが、いつになったら出来るんですかね・・・

食事だって同化現象で砕けちゃいますし(織姫ちゃんにあーんして食べさせてもらえばいいんじゃないかって、おじさん思うんだけどな)


で一騎達遠征組サイドですが・・・

出撃したがる一騎。
いやいや、お前はザインに乗るだけで寿命マッハなんだから大人しく座ってろ。

あと暉の主人公っぽさが半端ない。
民間人守ろうとした時のあの絶叫ですよ・・・その後のフェストゥムへの猛攻も含めていい味出してます。
苦悩系主人公っぽさが醸しだされていて、いいですね・・・


そしてカノンと咲良のパイロット復帰・・・
普通のアニメだと歴戦のパイロットがが現役復帰とか熱い展開なんですけど……
これファフナーなんだよぉ。。。(震え声)

次回で一旦おしまいですが、面白いだけに分割2クールなのが生殺しに感じます。。。



さて本編についてです。

二回目のフェストゥム襲来、枯葉剤っぽいやつをまき散らすスカラベ型ですね。
劇中ではスカラベ型を守る護衛部隊が邪魔で手こずりましたが、ファンネル先生のお力もあってサクッと攻略。
修哉のルガーランスとリディルの格闘攻撃によって串刺し、磔状態にして剣司とカノンにトドメさしてもらいました。

スマンなルガーランス、今回は投擲武器になってくれ。
刺して使ってもらえるだけマシと思ってくれたまえ(ゲス顔

というか、芹のショットガン・ホーンもシュウのリディルも刺突系武装なんですよね。
(リディルは機能の内の一つですが、割りとシュウは多用してます)
なんやこの串刺し夫婦・・・(怖い


そして島のコアの消耗によって倒れる大人たち。
シュウも時を同じくして倒れてしまいます。
感想でも頂いていましたが、シュウもまた島の加護によって生かされていました。
彼の場合、核攻撃による病の抑制ではなく、自身の肝疾患の進行の抑制でした。
詳細については次回に描写する予定ですが、簡単に補足まで。


で、目が醒めたシュウですが、広臣と久しぶりに顔を合わせました。
シュウの広臣に感じている恐れは、言ってしまえば強迫観念が生み出している妄想にも近いものです。
いなくならなければという自己否定がそうさせているんですね。
でも、広臣は基本お人好しの大人……あかん、死亡フラグやこれ


芹ちゃんにベッドを譲ったシュウ、一見紳士的にも見えますが、やはり男。
まぁ色々考えはしますよ。
ただ、考えることと行動に移すことは別でございます。
据え膳とか言っちゃダメ。


次回は芹が剣司と咲良から活入れられます。
そして漸く…と言うお話になります。


ではでは~



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