シュウ達とフェストゥムとの初戦になりますね。
シュウのマークツヴァイの新武装もお披露目になります~
戦闘シーンって、何故こんなに難しいんでしょうか。。。
気が付けば1万文字超え。。。
今回は芹→シュウ→剣司視点で話を進めます。
敵は、いつだって突然やってくる。
そんな、二年前なら当たり前だったことを、私達は少し長めの平和の時間を享受している間に、忘れかけていたのかもしれない。
ニーベルング・システムに指を通し、ファフナーと私を、立上芹をマークツヴォルフと一体化させる接続機器が勢い良く体に装着される。
その激痛を身に感じた時、私はそんなことを考えていた。
夏祭りの時とは違い、今回は敵が一体というわけではないらしい。
CDCから降りてくる情報から、敵は群れを成し、まるで人間の戦争の仕方を理解したかのように攻めてきているとのこと。
エウロス型と呼ばれる、例の紅いフェストゥムの自身の体を大口径ライフルのように変化させた攻撃により、島を守るヴェルシールドが破られ、そこを起点にフェストゥムが島のテリトリーに入り込んでくる。
続けて、通常のスフィンクス型よりもサイズが大きい、スフィンクスE型と呼ばれるフェストゥムが無誘導爆弾のようなものを背部から島へ投下、爆撃を行う。
艦砲、爆撃、まさに人間のような戦い、戦争の仕方だ。
人を理解し、人のように戦術を立てて攻めることを学習した……であれば、逆に今まで行動を読まれ続けていた人類にとっては、意趣返しの好機にもなる。
フェストゥムの予測不可能な攻撃、戦い方に今までは翻弄されていたけれど、ここにきて人のように戦うようになった。
相手が人と同じような戦術を立てて襲ってくるのなら、対策はいくらでも立てられる。
フェストゥムと人間の戦争は、言っては何だけど歴史は浅い。
人間と人間同士の戦争の歴史は、何千年単位でずっと続いてきていたということを、フェストゥムは理解していない。
「後続のファフナー、出撃!!」
CDCから要請を受け、羽佐間先生が私達、ファフナー部隊の出撃のためにナイトヘーレを開く。
そして、ついこの前そうしたように、私は、マークツヴォルフは水の膜に包まれ、戦場へと送り出された。
今日はこの前とは違う、着地も体を動かすのも自由。
ファフナーを動かす、一体化するための訓練の成果が確実に現れていた。
広登に里奈、暉、それに遠見先輩たちも既に戦場に立っていて、敵の群れを視界に入れている。
「すごい……なんて数……」
本物の戦場なんて、これが初めてだけど……敵の群れは私が思っていたよりも多かった。
いや、北極での決戦に比べれば、多分全然少ないんだろう。
あの頃は、私達はただ見ていることしか出来なくて、ただただ守ってもらって送り出すばかりの側だった。
けれど、今は違う。
こうしてファフナーに乗って、戦場に立って、フェストゥムと相対している。
今日から私も、本当の意味で島を守る側の人間になれたということだった。
「あれ……? シュウ…マークツヴァイは?」
と、パイロット同士のクロッシングを完了させたところで、クロッシングの輪の中にシュウの存在を感じられないことに気がついた。
ツヴァイは改修作業で別のブルグにあるって言うから、出撃の時も一緒じゃなかったんだけど……
『マークツヴァイは装備の最終調整が今終わったとこらしい。だからちょっと遅れて出撃する』
『それまでは、私達だけで島を守るよ! いいわね!』
「は、はい!」
シュウの不在の理由を剣司先輩から聞いて納得すると同時に、再びマークドライに搭乗して戦闘に参加することになった咲良先輩の力強い言葉にやや気後れしそうになる。
マークドライはファフナー専用の飛行用大型装備、リンドブルムを纏って空を舞っている。
咲良先輩、同化現象の後遺症で大変なはずなのに凄い……
前の戦いを経験した先輩が多いのは純粋に頼もしい……けれど、それでは昔から何も変われていない。
大活躍する……とまでは行かなくても、最低限、足手まといにならないようにしないと……
『来るぞ!!』
「っ!?」
咲良先輩の飛ぶ姿に感嘆しているところに、カノン先輩の声が響く。
新型の赤いファフナー、マークドライツェンを駆るカノン先輩の言う通り、島に襲来したフェストゥムの群れが、私達の姿を認めて進路をこちらに進めている。
敵が…敵がこっちに向かってくる……そう考えただけで、恐怖に支配されそうになる。
けれど、島を、竜宮島を、乙姫ちゃんが守るこの島を怯えたまま黙って奪わせるつもりはない。
それにシュウにも約束した、絶対に竜宮島に帰って来てと。
だから、その帰る場所を守る、私はそのためにファフナーに乗って、今ここに立っているんだから。
「うおぉぉぉお!!」
自分でも驚くくらいの声が出ている、それを認識はしていても、おかしいことだとは思わなかった。
手にしたガルム44をフルオートモードにして、空中を悠然と舞いながら接近するフェストゥムに向かってばら撒いていく。
島の無人兵器のように読まれて避けられる……ということはない。
ファフナーに内蔵されたコアによって、フェストゥム最大の武器でもある読心能力が防がれている。
その恩恵もあってか演習の時とは違う、実弾の嵐を受けてフェストゥムが地面に叩きつけられる。
地面から起き上がろうとするフェストゥム、スフィンクス型にセミオートモードにしたガルム44を突き付け、ゼロ距離で数発をお見舞いすると、敵はワームスフィアに包まれ消滅する。
「まずは……1体!!」
初の撃破記録は、ものの数十秒の戦闘で終わってしまった。
けれど、命の掛かった戦いは予想以上に精神的にも、体力的も消耗する事を痛感した。
たった数十秒という時間にも関わらず息はやや上がり、気が付けば肩で息をしてしまっている状態。
対して、カノン先輩は既に2体目のフェストゥムにルガーランスを突き刺し、プラズマの塊を送り込み敵を滅ぼしていた。
空では咲良先輩と遠見先輩が空の敵を抑えこみつつ、地上への進行を防いでくれている。
剣司先輩は里奈と、単独先行気味の広登のフォローに回っているようだった。
暉も、島の高台から遠距離狙撃用大型ライフル、ドラゴン・トゥースの脚式アンカーを地面に突き刺し、後方支援に回っている。
広登や先輩たちに遅れる訳にはいかない、まだ敵は沢山攻めてきているんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「うああぁぁぁぁ!!」
次の標的、これで3体目…近くの海岸線に上陸しようとしているスフィンクス型を正面に定め、スラスターを全開にして一気に間合いを詰める。
島には上がらせない……! 落とす…!!
マークツヴォルフの背部に追加されたショットガン・ホーンを展開、エネルギーフィールドを発生させてフェストゥムに正面から突っ込む。
演習の時に剣司先輩に喰らわせてしまった頭突き攻撃が、より強化された形でフェストゥムに突き刺さり、ショットガン・ホーンの先端からプラズマ弾を発射。
内部から体を焼かれたフェストゥムは地に落ち、私は続けてガルム44を別のフェストゥムに向かってばら撒く。
迷いはなかった、島を脅かす存在を、ただ私達から奪うばかりの存在を倒すことに。
そう、迷いなんかなかった……はずだった。
「え……? なに……?」
私は、見てしまったのだ。
ついさっきショットガン・ホーンの攻撃で撃ち落としたフェストゥム、体の大部分を欠損しつつもまだ生きていたのか、僅かに動きを見せていた。
けれど、私が目を奪われたのはフェストゥムののっぺりとした顔のようなものに浮かんでいた、人間のような顔だった。
その顔は、苦しそうな表情にも見え、口元はなにか言葉を発するように動いている。
何か……フェストゥムが何かを言おうとしているの?
と、私が迂闊にも瀕死のフェストゥムの奇妙な動きに注意を向けていた瞬間、別のフェストゥムがマークツヴォルフ目掛けて急速に接近してきたのを、目の端で何とか捉えた。
「しまっ…!!」
けれど、気が付いてからでは、何もかも既に遅かった。
フェストゥムは私を同化するつもりなのか、2本の腕を突き出しながら猛然と迫ってくる。
フェストゥムへの恐怖、同化への恐怖が一気に心の隙間から吹き出し、一瞬私の体を金縛り状態にする。
時間にすればコンマ数秒、けれど、フェストゥムに遅れを取る原因としては十分過ぎた。
回避……攻撃……いや、どれも間に合わない!! 嘘……! 乙姫ちゃん……シュウ……!
鈍い衝撃音が響く。
果たして、私への来るべき衝撃などの類は……一切無かった。
恐怖に思わず閉じてしまった目蓋を開くと、そこには確かにフェストゥムの姿はあった。
しかし、私を同化しようと突き出された腕は、私には届くことはなく、私とフェストゥムの間にはお互いを隔絶する壁があった。
両刃剣の刀身部分のみを削りだしたような形の、3つのユニットが発生させているシールドに衝突し、フェストゥムは進行を阻まれていた。
尚もシールドを突き破って進もうとするフェストゥム、でもフェストゥムの必死とも見える抵抗はそのシールドにいかほどの効果も与えていない。
「な、なに……? これ……?」
私が戸惑いの声を上げている間に、謎のユニットのシールドに阻まれ、動きを封じられていたフェストゥムに対して、シールドを展開しているのと同じ形のユニットがまた3つ、私のショットガン・ホーンと同じようにエネルギーフィールドを纏った状態でフェストゥムを串刺しにする。
そして、内部で高出力のレーザーでも放ったのか、赤色の閃光が3本、フェストゥムの体を内側から突き破った。
コアを溶解させ、破壊したことを確認すると同時に、フェストゥムに突き刺さっていたユニットは3つとも自分の意志で動いているようにフェストゥムから分離。
直後、フェストゥムはワームスフィアに包まれて消滅した。
フェストゥムを滅ぼした3つのユニットは、尚も生き物のように三次元的な動きを取りながら、さっきのフェストゥムを内側から突き破った高出力の赤いレーザーを掃射。
周囲にいたフェストゥム数体を次々と貫き、無に帰した後、全ユニットが同じ方向に飛んで行く。
シールドを展開して私を守ってくれていたユニットも、役目を終えたと言わんばかりにシールドを消失させ、さっきの攻撃していたのと同じ方向に飛んで行く。
そこには、濃紺色のファフナーが悠然と滞空していた。
攻撃と防御を同時に実現させた6つのユニットは、そのファフナーの、まるで翼を模した様な背部の機動兵装のアームへ接続。
手には見たことのない、ガルム44よりもやや大きめのライフルを一丁装備している。
『よう、俺のこと呼んだか?』
「シュウ……?」
『悪い、ちょっと遅れたな。まぁ、ピンチの所を助けたってことで勘弁してくれ』
クロッシングによってまるで目の前に居るような感覚で話すのは、紛れも無いシュウ。
ということは……このファフナーって、マークツヴァイ!?
この前の演習の時に見たのと全然違ってたから気が付かなかったけど……まるで遠見先輩のマークジーベンみたいに飛んでる……。
飛行ユニットを得たということなんだろうか、だとすればさっきの攻撃を実現した武装と合わせて、大改修になったって話は本当だったんだ。
『おーい、芹ー? 聞こえてるか?』
「あ…えと……ありがとう……」
『約束したからな、お前のことは守るって』
「……うん…」
ファフナーに乗っても、シュウは変わらない。
ちゃんと約束……覚えててくれた……それだけで、それだけで嬉しいと感じてしまった。
いつも通りのシュウが、クロッシングで繋がっているということを自覚すると、さっきまでの高ぶりすぎた興奮がやや収まり、少し頭が冷静になった。
シュウが居て、声が聞こえる、それだけで不思議なくらい安心できる。
どうやら、初めての出撃で緊張と恐怖から、ギアがおかしい状態になっていたみたいだ。
『そこの幼馴染二人、イチャつくのは帰ってからにしろよ。で、マークツヴァイ、行けるのか?』
『すみません、遅れました。機体に問題はありません、俺はこれからどうすれば?』
『そっちの戦線は一旦落ち着いた、なら……フュンフがかなり前に出過ぎてる、ツヴァイはそっちに向かってくれ。俺が行きてぇとこだが、こっちもエウロス型がいやがるから動けねぇ』
『了解、すぐ向かいます』
『ツヴォルフはこっちの援護だ、いいな?』
「はい!」
と、シュウがクロッシングしたことを感知した剣司先輩が、私達に向けて指示を出す。
シュウは剣司先輩に指示を仰ぎ、これからの行動を定めていく。
自分達はファフナーに乗れはするけれど、実戦経験は全くないひよっ子だ。
先輩たちには負担になるかもしれないが、戦術面は経験豊富なパイロットに従うのが最も安全で確実だと、シュウは考えたのだろう。
通信を終えたシュウは、もう一度私の方に向き直り、さっきとは違ってキリッとした真面目な表情になる。
『聞いたとおりだ。俺は広登の方に行く、里奈の方は任せた。やれるな?』
「大丈夫! ……シュウ、ありがとう」
『よし。危なくなったらすぐ呼べよ、今のツヴァイならいつでもすっ飛んでいける』
いつになく真面目で、頼りがいのある感じの雰囲気のシュウに、少し戸惑いを覚えた。
助けてもらったこともあるけど、いつにもなくシュウが……シュウのことが大きく見えたような気がした。
「守るぞ、俺達の島」
「……うん!」
私がそう答えると、シュウはクロッシング経由の通信を解き、ツヴァイの背部にマウントされた、マークジーベンとよく似た飛行用スラスターの出力を上げて、空を舞う。
凄い加速……あれが、シュウ……シュウのマークツヴァイ。
いや、シュウ、マークツヴァイに感心しているばかりじゃダメだ。
シュウにも答えた通り、私には私のやることが、果たすべき義務がある。
今はやるべきは、島を守ること、剣司先輩から言われたポイントに行って、里奈を助けないと!!
ーーーただ、その思いとは別に、さっきのフェストゥムの何か言葉を発するような仕草、フェストゥムが何かの意思を伝えようとしていた姿が、私の脳裏から離れることはなかった。
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芹をぎりぎりのところで助けられたことに、内心ホッとすると同時に背中に嫌な汗をかきそうになった。
もしも間に合っていなかったら……それを考えると今も恐ろしく、今すぐ引き返して芹を守りに行きたい衝動に駆られる。
けれど、剣司先輩の言うとおり、島の防衛ラインを維持するためには戦力を一極集中させておく訳にはいかない。
芹も少し熱くなり過ぎていたみたいだけど、さっきので少しは冷静になったはず。
変性意識の分は仕方ないとしても、落ち着いて周りに目を配っていれば、そうそうやられたりはしない。
それに、向こうにはエウロス型がいるらしいが、剣司先輩と里奈のフォローに回ったのなら、戦力的にはまだ安心できる。
けど……広登の方は結構マズイ…
ジークフリートシステムが内蔵型になったことで、今のファフナーのコクピット内には戦場の情報がリアルタイムで表示、更新されているが、それを見ても広登のマークフュンフは先行、前に出過ぎていた。
このままではフェストゥムに包囲されてそのまま…という事にも成りかねない。
「広登のやつ……何やってんだ…!」
ツヴァイへ追加されたスラスターの出力を上げ、一気に上昇した推進力を体に感じる。
シミュレーターで飛行訓練は受けはしたものの、実機での効果確認はこれが初めてだ。
やっぱり、シミュレーターはシミュレーターだ、こういう体に掛かるGや圧力なんかの感じは別物のように感じられる。
けど、コントロール出来ないわけじゃない、空を飛ぶ、飛べるという感覚を受け入れれば、ツヴァイは俺の意志を代弁するように空を駆けてくれる。
そうして、ものの数十秒で広登が戦闘を行っている戦線エリア、その空域に入り込む。
コクピットに表示されている情報通り、広登のマークフュンフは数体のスフィンクス型に囲まれつつあり、ガルム44をフルオートでばら撒きつつ応戦している。
このままじゃ、包囲殲滅が笑い話じゃなくなる……!
『うぉぉおお!! ゴウバイン!!』
広登は尚も猛々しく吠えながらも攻撃を続けているが、明らかに精彩を欠いている。
焦っているのか、それとも勢い任せなのかは分からないが、フュンフのイージス機能を全く活かせていない。
元々、マークフュンフは防御特化の機体で、攻撃特化の機体と攻守をスイッチしながら戦うのがセオリーだってのに……
それも忘れて戦ってるってことは、あいつも芹と同じで頭に血が上ってるのか?
いや、そんなことは今はどうでもいい。取り敢えず、この包囲陣形を崩す!
俺はツヴァイの背部、追加された翼のような形をした機動ユニットから、遠隔操作型分離攻撃ユニット『リディル』を全て展開。
片方の翼に4つずつ装備されている剣のような形のユニット、その総数は8つ。
高出力レーザーによる射撃装備、エネルギーフィールドを形成しての格闘攻撃装備、複数のリディル同士でエネルギーシールドを形成する防御装備と、複数の運用が可能なツヴァイの新装備の目玉らしい。
そして、ツヴァイの右手に装備されている試作エネルギービームライフル、『ニーズヘッグ』を構える。
8つのリディルをツヴァイの背後に展開し、ニーズヘッグの銃口をフェストゥムに向ける。
背後のリディルも同時に、広登と剣司先輩の周囲を囲おうとしているフェストゥムを同時にロックオン。
フルロックオン完了と同時に、俺はリディルとニーズヘッグのトリガーを引く。
ニーズヘッグからの青い色のビーム、8つのリディルから放たれる赤色のレーザーがフェストゥムへ向かい、次々と撃ち貫いていく。
攻撃を行った9体のフェストゥムの内、3体はワームスフィアに包まれて消滅するが、残り6体は腕や脚部に命中しただけに留まったようで、致命傷にはなっていない。
くそ……!射撃の成績はまだまだだ……けど、これで包囲線に穴は空いた!
『なんだ!?』
「マークフュンフ! 穴は開けた、そこから一旦離脱して体制を立て直せ!」
俺の攻撃に驚いた広登の声。
広登には包囲陣形に開いた穴から一旦脱出してもらい、体制を立て直し、フェストゥム側とこちら側の戦線を整理してもらう。
俺も背後に展開したリディルを半分を射撃形態のまま、もう半分をエネルギーフィールドを展開させて格闘形態にして攻撃、広登の後退をフォロー。
遠隔操作武装である、リディルの最大の魅力でもあるオールレンジからの攻撃によって、フェストゥムを赤色の光で撃ち貫き、あるいは串刺しにし、コアを直接焼き尽くして葬り去る。
自分で使っておいてなんだが、とんでもない武装だと思う……小楯のおじさん、何でこんな凄いものを倉庫の奥に突っ込んでたんだ?
いや、この装備のお陰でかなりの戦果に繋がっているわけだから、感謝してもしきれないことに変わりはないが。
一先ず、近場の敵を一掃できたところで、リディルの内蔵バッテリーが底を尽きかけていたので、ツヴァイ背部のバインダーに再マウントし、充電しておく。
フル充電状態での限界活動時間が約3分と短く、再充填にも5分ほどかかってしまうのが唯一の泣き所か……
「マークフュンフ…何でこんな無茶を……」
『………余計なことしやがって』
「包囲殲滅されかかってた奴の台詞じゃないだろ? 大体、フュンフは単独で戦うんじゃ……」
「うるせぇよ!俺は一人で戦えるんだ!」
『あ、おい!! だから単独で突っ込んでもダメだって……あぁ、くそ!!』
やけに刺々しい広登にやや戸惑ってしまうが、広登が再び単独で敵の群れに突っ込んでいってしまい、それ以上の事は考えられなかった。
広登のやつ、演習ではここまで極端に攻撃的な個人プレーをするような様子はなかったのに……
何があったのかは分からないが……このまま突っ込んでいった広登を放っておくわけにも行かない。
俺は空からフュンフをフォローするべく、ツヴァイのスラスターの稼働率を上昇させ、広登を追う。
さっきの攻撃でいくらか撃破はしたものの、相変わらずフェストゥムは次から次へとやってくる。
リディルは充電中、しばらくはオールレンジからの攻撃には使えない……広登も連携して行動してくれそうにないし、このままじゃジリ貧だ。
『どうしたぁ! 掛かって来いフェストゥム!』
俺を尻目に、広登は景気良く銃弾をフェストゥムにお見舞いしていくが、倒すペースよりフェストゥムが増えるペースのほうがやっぱり早い。
俺も空からニーズヘッグでフェストゥムを数体溶解させはしたが、広登が再度囲まれないようにするので精一杯だった。
フェストゥムもまた、やられっぱなしということはなく、空を飛ぶ俺に対してワームスフィアで攻撃してくる。
上下左右、黒い球体が現れる度にギリギリのところで回避しつつ、ライフルでの攻撃をお見舞いしてみるが、やはり回避運動を取りながらでは命中精度が一気に悪くなる。
遠見先輩なんか、俺より速い速度で飛びながら、コアを確実に撃ちぬいてるってのに……これが経験値の差ってやつか…
「(俺の経験値不足の反省は後にするとして……どうする?誰か一人こっちに回ってもらうように要請するべきか?いや、他の戦線もそんな余裕は…)」
と、俺が支援要請を出すべきか迷っていた時だった。
突如、大挙して押し寄せてきていたフェストゥムの群れが、後退を始めたのだ。
まるで、信号弾による帰還命令を受けた兵士のように、その動作は統率が取れていて、ますます人間のような戦争の仕方だと思わされる。
フェストゥムの群れは他の戦線からの部隊?と合流しつつ、エウロス型が先導するような形で竜宮島の防衛範囲から去っていく。
『勝った……勝ったぞ……!! うおぉぉぉぉ!!』
「………」
敵の撤退を目にした広登が、未だに引くことのない興奮状態を発散させるかのように吠えながら、ガルム44を空に向かって撃ち続けている。
一時的にハイになっているんだろうが……このフェストゥムの撤退を素直に喜んでいいのだろうかという疑問が、俺の頭から消えなかった。
そもそも、このタイミングで後退する理由が見つからない。
少なくとも、俺と広登の戦線はさっきの物量のまま押していれば、時間経過とともに俺達の側が押され、最終的には突破されていたはずだ。
勝てる戦いを自分から投了したような……そんな感覚を覚えさせられた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「一人で戦うなって言ってんだ!! お前の所為で、誰かが死ぬぞ!!」
フェストゥムが去ってすぐ、俺、近藤剣司は孤立していたマークフュンフ、そしてその援護に向かったマークツヴァイのもとに向かった。
戦況については、大体把握していた。
単独戦闘を続けて包囲されそうになっていた広登は、一先ずは修哉のお陰で難を逃れたようだが……その後も、広登は単身で敵の群れに突っ込み、無謀な戦い方を続けた。
修哉はなんとか広登がフェストゥムに袋叩きにされないように頑張ってくれていたみたいだが、そっちに気を使い過ぎでは自身を守るような戦い方はまず出来ない。
危うく広登だけでなく、下手をすれば修哉までやられていたところだった。
俺は、その原因となった単独行動を続けた広登をやや強めに叱責していた……のだが…
「俺は、衛先輩みたいに戦うんだ!!」
広登はそう言い返すと同時に、聞く耳は持たないとでも言いたげにフュンフのスラスターを展開し、その場を離れて何処かへ行ってしまう。
馬鹿野郎が……衛みたいにって、あいつと今のお前とじゃ全然違うじゃねぇか……
あいつもゴウバイン節が全開で前に出過ぎなとこはあったかもしれねぇが、自分だけで敵を倒せるなんて、そんな風には考えてなかった……
フュンフのイージスで敵を食い止めつつ、俺や咲良と連携しながら戦って、皆を守りながら戦っていたんだ。
広登、今のお前は……衛とは程遠い戦い方だ…
『剣司先輩より……修哉より、俺のほうが強い!!』
去りながら、何かを振り切るようにそう叫ぶ広登の背中を見ながら、俺は自分の不甲斐なさに肩を落としそうになっていた。
あいつらの先輩として、誰一人として欠かすことなく、今回の戦いを切り抜けさせたい。
二年前の戦いで培った経験を活かして、もう誰もいなくなったりしないように、傷付かないように導いて、守ってやらなければと考えていた。
けれど、実際はどうだ。
後輩の一人も満足に指導できていない……パイロットとしての力がもっとあれば…一騎みたいに圧倒的な戦果を上げていれば、それが出来ただろうかと、そんなどうしようもない事を考えてさえしまう。
分かってるさ……俺は一騎みたいには、ヒーローみたいな活躍はできない。
だからこそ、俺は俺なりのやり方で、衛がそうしたように、仲間を守ろうと決めたんじゃないか。
……ったく、こんな情けないこと考えてちゃ、また咲良にどやされちまうな。
『剣司先輩。すみません……広登にはまたあとで俺から話してみます……なんかあいつ、今日は様子が変で…』
「お前が謝ることじゃないだろ、修哉。よく広登を助けてくれたな、よくやった」
『いえ…』
そんなことを考えていると、傍らに以前見た時とは造形がかなり変わったマークツヴァイが着陸し、修哉がクロッシング経由でそう言ってくる。
修哉の言う通り、今日の広登は変性意識のことを差し引いてもおかしかったのは事実だ。
この前の模擬戦じゃ、もう少し大人しいというか、少なくとも人からの助力を邪険にするような様子はなかったはず。
他の要因……何か別の精神的なものが広登の変性意識に影響しているのか……?
その辺りは、一度遠見先生に聞いてみるとしてだ……修哉にも少し説教だな。
「でも、お前も十分危なっかしい戦い方してたからな? 広登の方にばっかり意識向かせて、自分のことまるで考えてなかっただろ」
『それは……』
「新しいマークツヴァイは確かに頼もしいけど、その武装にだって弱点はあるんだ。あんまし無茶が過ぎると、ファフナーだからってタダじゃすまねぇぞ」
『……了解です、心に留めておきます』
修哉のマークツヴァイ、背部に新しく追加された武装の性能は確かに頼りになる、それを見事に操作する修哉にも関心はする。
少なくとも、あんな複数の攻撃ユニットを操作して、多方向から攻撃するなんて真似は俺には出来ない。
けれど、だからと言って一人で無茶を許す訳にはいかない。
二年前の戦闘で、一騎が絶対的なエースだった時、あいつの負担は俺達の中でも段違いに高くなっていった。
そして……結果として一騎は光を失いつつある様な状態になってしまっている。
同じようなことを、二度と繰り返させるつもりは毛頭ない。
『あの……剣司先輩、フェストゥムが撤退したことですけど……』
「あぁ…少なくとも俺達の勝ちじゃねぇ。絶対何かあるぞ……」
説教もそこそこに、どうやら修哉もフェストゥムの不自然な後退にかなり違和感を感じているらしい。
敵が撤退したからといって、それイコール勝ちじゃないことを分かっているようだった。
そして、修哉の感じた違和感は俺も感じているものだった。
加えて、CDCからの帰還命令が未だにこない事も気になる……フェストゥムの撤退も含めて、何かおかしい……
『やっぱり、そうですよね…けど、どういうつもりなんでしょうか……』
「それは分かんねぇけど……いずれにせよーー」
と、俺が修哉にそう答えようとした時だった。
ファフナーのコクピットに島からの回線が開かれ、映像ウィンドウが開かれる。
そこに映っていたのは、俺達とそう歳の変わらないくらいの、アルヴィスの制服に袖を通した優男の姿。
こいつ……まさか、一騎が人類軍の軍艦の中で見つけたっていう……?
『俺の名前は、
来主操、竜宮島に来訪した、人の形をしたフェストゥムが、そこには映っていた。
今季、ロボットアニメといえば私的にはファフナー、次点でアルドノア・ゼロですね。
豊作で嬉しい限りですが、ちょっと昔のやつを観返したりしたいですなぁ。
ちょっと懐かしい作品ですが、ゼーガペインとか。
ループする世界とか、程よい鬱要素とかが私の好みでした。。。
何気に花澤香菜さんが初メインヒロイン役された作品です。
あぁ、仕事さえなければ。。。
さて、本編についてです。
改修後のマークツヴァイですが、背部の武装のイメージはHi-νガンダムをイメージしてください。
エグゾダスで出てくるトローンズ・モデル、ラファエルっぽい感じも近いですね。
薄々予想されていた方もいらっしゃるかと思いますが、マークツヴァイの新装備は、ぶっちゃけて言うとファンネル系武装です。
空間把握能力と言えば、この装備になるかと思います。
ファフナーの劇中でのファンネル装備といえば、ノルンくらいですし、ファフナー単体で持たせてもいいのではないかと思い、装備させました。
ザルヴァートルモデルの同化ケーブルもそれっぽいですが、あれはあれはとんでも装備ですけどね。
攻撃方法については、1期に出てきたレーザー銃ゲーグナーよりも高出力のレーザー、ショットガン・ホーンの様なエネルギーフィールドを形成した状態での格闘(串刺し→レーザーでコアにダイレクトアタック)、シールド展開です。
ライフルについても新調しています、試作装備のエネルギーライフル(マガジン形式でコアからのエネルギー供給はなし)でございます。
リディルについては、記述ですが結構燃費悪いです。
稼働時間3分、充電に5分ですから、修哉みたいに一気に展開して使いきってしまうと武装がライフルのみに。。。
このへんの運用をうまくなって欲しいですね。
で、戦闘の内容でございますが、まずは芹ちゃんのターンです。
暉に助けられるシーンは……スマンな暉、主役に譲ってくれ。
フェストゥムの例のシーンは抜けないので、しっかり入れました。
これが切っ掛けで、芹ちゃんは色々と考えてしまうようになりますからね。
そしてシュウ視点です。
飛行訓練はシミュレーターでこなしてはいますが、実機での飛行は今回が初めてです。
飛行適性はありますが、まだまだ真矢にくらべると射撃も飛行も下手っぴです。
オールレンジ攻撃も当たりはしていますが、まだまだでございます。
広登を助けはしましたが、当の広登はかなり荒れています。。。
劇中に比べると、独断専行の面が強くなっています。
剣司視点については、彼も彼なりに葛藤があることを描いてみました。
決して一騎のようなヒーローみたいな戦い方は出来ないですが、剣司の人間としての力というか、魅力はそこじゃないですからね。
さて、次回は戦闘後の一幕です。
里奈と暉、広登に焦点を置きます。
ではでは