嵐の前の静けさ、とは言いませんが、こういう優しい話も必要ですよね。
芹ちゃんの包容力を見せつけるお話になっていれば嬉しい。
今回の視点は、シュウ→芹→シュウでございます。
なお、ここ2週間、エグゾダスに芹ちゃんが出ていない件について。
そろそろ禁断症状が出そう(真顔)
そこはアルヴィス……いや、竜宮島の中でも最も世界から隔絶された空間だった。
聖域とでも言えば例えとしては分かりやすいかもしれないが、事実、竜宮島の神様の様な存在、コアが眠るこのワルキューレの岩戸は入るたびに神聖なものを感じてしまう。
部屋の中央にはコアの眠る大きなカプセル、人工子宮『コアギュラ』が設置されており、中には小さな胎児が眠っていた。
二年前、生まれた時から島のコアという運命を背負っていた少女が、自らの存在と引き換えに島のミールに命の循環という概念を理解させたことによって誕生した存在。
皆城乙姫の生まれ変わり……いや、また別の存在として定義すべきなのか、それはこの赤ん坊が決めることだが、乙姫に縁のある者達にとっては彼女に等しい存在だった。
芹はよくここに足繁く通っているようで、来るたびに捕獲した虫などを見せ、話しかけている。
俺も芹に付き合って一緒に来ることはあったが、自分一人で来たことはこれが初めてだった。
そんな俺が、今日はどうして、何の用でここに来たのかと問われれば、ただ何となくという返事しかできない。
ファフナーへの初搭乗を果たした昨日から一夜明け、小楯のおじさんに与えられたシミュレーターでの訓練を朝から昼過ぎまでぶっ通してやっていたのだが、『休憩も取らずに何をしているの!』と羽佐間先生に一括され、休憩も兼ねてその辺りをふらふらしていたのだが、気が付けば自然とここに足が向かっていたのだ。
現在改修中のマークツヴァイを想定した戦闘シミュレーターだが、アルヴィスの授業の中でやったことのあるもの以上に、なかなかどうして良く出来ている。
思わず夢中になってしまったが、確かに先生の言う通り休憩もせずにやるもんじゃない。
「……悪いな乙姫、芹のこと、また泣かせた……。多分、お前がいたら俺のこと怒るよな……」
ここに足を運んだのは何となくではあるが、もしかすると乙姫に叱責を受けたかったのかもしれない。
昨日、帰り際に泣かせてしまった芹のことが、未だに頭から離れない。
あれから、芹を家にまで送ってから帰ったが、道中、芹はいつかの夏祭りの時同様、俺の手を握って離さなかった。
夏祭りの時は妙にドキドキとしてしまったが、昨日はそうではなく、ただお互いの存在を感じることで安心を得ていたような気分だった。
芹を抱き返した感触、あいつが震えていた感覚、俺を離すまいと必死に抱きついてきた感覚が消えることはない。
でも、気恥ずかしさは全くなく、思い出すだけで心が穏やかになるような、そんな気がした。
……自分で泣かせておいて最低な話ではあるが、俺にとって芹がどういう存在なのか、少し分からなくなっていた。
「俺……あいつのことどう思ってるんだ…?」
乙姫に尋ねたつもりはない、独り言だった。
自分で分からないようなことだ、誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
でも、それを聞いたところで、一体どうするんだとさらに自問している自分もいる。
芹との関係性を変えたとして、それからどうするつもりなのかと。
結局のところ、俺はどこまで行っても自分自身を肯定できないような人間だ。
そんな人間に、これ以上人との関わりを深くする理由が、深くしていい理由があるのかと。
それこそ、姉ちゃんにそうしてしまったように、俺自身の存在によって躓かせることにもなりかねない。
そんな人間だから、ファフナーに救いを見出してしまった。
「はぁ……何考えてんだか俺……戻ってちょっと寝るか……」
と、考えが昨日の夜から一歩も前進していないことを自覚した俺は、そこで思考を一旦止め、岩戸の出口に向かうことにする。
芹を送った後からずっと考えていたことではあるが、やはり分からない。
それに考えたところで、俺では良い答えを見い出せそうない。
そうして、待合室でジュースでも飲んで、一眠りしようと考え、岩戸の出口に向かった時だった。
『その答えを知りたいなら、あなたの本当にやるべきことにちゃんと向き合って。いなくなることだけが救いじゃないよ、修哉』
「乙姫?」
幻聴か、乙姫の声が、二年前に聞いた時のままの声が、岩戸に響いたような気がした。
慌てて振り返ってみるが、やはり岩戸の中にいるのは、未だ胎児のコアと俺だけ。
乙姫の姿は、やはりと言うかどこにもなかった。
……本格的に疲れているんだろうか、ここのところ普段以上に動いていることもあるし可能性としてなくはない。
ただ、幻聴というにはあまりにも鮮明でいて、俺の心の深くに突き刺さったように感じた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その日の私、立上芹は、朝から自己嫌悪に陥っていた。
理由はハッキリしている、昨日の演習の帰り道でのシュウとの出来事以外、なにがあるというのだろう。
あ~~~~!!
まさか、まさか泣きながらあいつに抱きついてしまうなんて……挙句の果てにはあんな弱音まで……
本当なら、私がシュウの弱音を引き出して、その上で絵梨さんと仲直りしてもらうなりするようにしたかったのに……
「私ってば……急に色々怖くなって泣き出すし……はぁ……もうやだ…」
こんなはずじゃなかったのに……と、もう何回目か分からないほどのため息と後悔。
今日だって、この落ち込んだ気分のせいなのか、シミュレーターでの訓練でも思わしくない成果しか出ていない。
明らかに集中できてない……これから戦うかもしれないっていうのに、こんなんじゃ……
『大丈夫……俺はどこにも行かない…芹のことは俺が守るよ、何があっても』
「~~~~~っ!! あぁもう、なんなの! シュウのくせに、シュウのくせに、シュウのくせにーーー!!」
唐突にフラッシュバックする昨日の夕方の一幕。
抱きつきながら泣き縋る私を、シュウは抱き返してくれて……いつもよりずっと優しく、安心させるようにそう言ってくれた。
あの時は恐い、不安という気持ちが先行して感じなかったけど……今思い出すと、心臓がバクバクと稼働率を上げていくのを感じる。
頭をブンブンと振り、頭の中で繰り返し再生される光景を振り払おうしても、全く消えてくれない。
まるで、あの時間を幸せだと感じる私が、それを消させまいとしているように、消しても消しても浮かんでくる。
シュウの暖かさと、生きている証である心臓の音、いつもと変わらない安心できるシュウの匂い。
それら全部を感じているだけで、不安な気持ちも恐怖も少しずつ小さくなっていって……
「(嫌じゃなかった……安心もしたし、恐い気持ちも不安も、全部忘れられた……だけど…)」
だけどこのままじゃ、本当にシュウに守られるだけになってしまう。
そんなこと、絶対に認めたくないし、しなくなかった。
私もシュウも、同じファフナーに乗って島を守るんだから、シュウの……いや、他の皆の足を引っ張りたくない。
今でも戦うことを、ファフナーに乗ることを考えると恐い……だけど怖がってばかりじゃ、何もしないままだと誰かがいなくなるかもしれない。
それのほうが、私にとってはもっと恐い事だと思う。
であれば、なおのこと、このままではダメだと自分を叱咤する。
そうだ、何を迷う必要があるのか、立上芹!
シュウの世話係たるこの私が、世話する相手に守られているだけなどあってはならない。
そう、逆だ、寧ろ逆なんだ。
私がシュウを守る、それでもって、シュウに『ふぇ…芹助けて…グスン……』って言わせてやるんだ!
………いや、シュウに限ってそれはないかな……ていうか、勝手に想像するだけしておいて失礼な話だけど、普通にキモいかも。
と、かなり失礼な妄想をしつつ、喉の渇きを覚えた私はジュースでも買おうと自動販売機の設置されている休憩室に入る。
さてさて、今日はサイダーかレモンスカッシュか…と悩みながら入ったのだが、そこで私は息が止まりそうになった。
「…ぐぅ……」
「しゅ、シュウ………?」
居たのだ、私のお世話対象且つ、現在進行形で私を悩ませている原因たる男が。
シミュレーターでの訓練を切り上げ休憩中ということなのか、ベンチに腰掛けた状態で船を漕いでいる。
瞬間、さっきまでの勢い付いた立上芹はどこかへ退散してしまい、再び昨日の光景が頭の中でループしだす。
い、いやいやいや、なんでそうなるの!
本人に会っただけで、別に触ってもないし抱きしめられてもないってば……!!
「い、いや別にまた抱きつきたいとか思ってないし……」
私は一体、誰に言い訳しているんだろう……
周りには誰も居ないっぽいし、今ここには私と呑気に爆睡していらっしゃるシュウしか居ない……と、そんな事実を理解してしまうと余計にドキドキしてきてしまう。
最初はコクリコクリと船を漕いでいる、余りにも無防備なシュウの姿を見ているだけだったけど、私は起こさないようにゆっくりと、静かにシュウの横に座ってみる。
あれ、何で横に座ったの私? じゅ、ジュース買うだけ買って行っちゃえばいいじゃん。
い、いやいや、こんなとこで寝てたら風邪引くから、シュウを起こすべきだよね、そのために隣に座ったんだよ!
「だから…何言い訳してんだろ私……」
自分がテンパっている事を自覚して、そんな独り言が口から出てしまう。
昨日の事が、決定的に変えてしまったように思う、私にとってのシュウの存在というものが。
それがどういう存在になったのか理解して、言葉に出来ないのがなんとも心苦しくもあり、同時に何故か理解することを躊躇ってしまっているような気もする。
我ながら矛盾した話だと思うけど、それが今の私の気持ちだった。
「シュウ……こんなところで寝てると風邪引くよ…」
「んん……」
シュウに声をかけてはみるものの、割りと深い眠りについているのか、口から声は漏れるものの意識が覚醒する様子はない。
けど、こんなに無防備なシュウの姿、なかなか見れない。
そう思うと、私は今、結構レアな場面に出くわしてしまっているのかもしれない。
仕方ない……疲れてるんだろうし、このまま寝かせておいてあげよう。
起きるまで私もここにいればいいだけの話だし……起こすのも可哀想だ。
と、そう思った矢先の事だった。
「ん……」
「へ、ちょ!?」
船を漕いでいたシュウの体が傾いたと思ったら、『ポス』という小さな音と同時に、隣に座っている私の太もも辺りにシュウの頭が収まってしまった。
いきなりのことに変な声が出てしまったけど……これは、アレだろうか。
俗にいう『膝枕』というものを私がシュウにしている状態ということになるのでございましょうか……?
太ももに感じるシュウの体温、より近くで聞こえる小さな寝息、規則正しい呼吸。
その全てが、今現在、シュウが私に体を委ねているということを強く認識させていく。
「(どどど、どうしよう……)」
幸い周囲に人は居ない……こんな場面を見られたら……特に里奈とかに見られたらヤバイ。
絶対弄り倒される……
膝枕とか……ある意味抱きしめられるよりもレベルが高いというか、親密度が高い人たち向けのものなんじゃないの?
いや、実際にしてる人見たこと無いからなんとも言えないけど……
でも本当に困った。
引っ叩いて起こすのは簡単だけど……それはやっぱり可哀想だと思うと同時に、この状態自体が悪くないと、そう思っている自分がいた。
「すぅ…すぅ……」
「当の本人は……気持ちよさそうに寝ちゃってまー……」
今も誰かがここに来るかもという緊張感、そしてシュウが体を預けてくれているというこの状況に心臓がうるさく動いている。
けど、嫌じゃなかった。
なんというか、シュウがここまで無防備な姿を見せることはそうないし、偶然であれなんであれ、私に体を預けて安心して寝てくれているというのが……単純に嬉しいと感じた。
それに……ここ最近ずっと様子がおかしかった、自分を酷く追い詰めて、痛めつけているようなシュウばかりが目に入ってしまっていたから、いつものシュウに戻ってくれたようで私自身も安心してしまったのかもしれない。
はぁ……悉く、良くも悪くも、私はこの危なっかしい幼馴染に振り回されているような気がする……けど、やっぱりそれは嫌じゃない。
「私の膝枕……そんなに安くないんだからね……」
と、そんな言い方をしつつも、私の表情は柔らかいものになってしまっていたと思う。
膝の上にあるシュウの頭を撫でてみたり、ほっぺたを突いてみたり、そうする度に小さく身動ぎするシュウの姿が面白くて、私は自分からシュウを起こそうという気をいつの間にか失ってしまっていた。
私の側で安心して寝てくれるのなら、私の側でだけ無防備な姿を見せてくれるのなら、私の側であれば自分を苦しめずに済むのなら、いつでも、いつまでもしてあげたいと、そう思ってしまっていた。
せめて、夢の中だけでもいいから、シュウに平和で優しい夢を見て欲しいと、私はシュウが起きるまで頭を撫でていることにした。
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懐かしい、昔の……まだ島のことも世界のことも、ファフナーのこともフェストゥムの事も知らない、この島がただの楽園だった頃の夢を見たような気がした。
俺の手を力強く、それでいて優しく引っ張る芹と、俺の背中をグイグイと押す広登。
横には里奈と暉が居て、俺の荷物を持ってくれていて……
あぁ、そうか……と、これが小学生くらいの時の夢だと自覚する。
まだ何も知らない、世界には平和しか無いのだと思っていたあの頃の夢だと。
あの頃は病気がかなり不安定で、学校に行く日も飛び飛びだった。
で、たまに登校するときは、決まって四人がこうやって俺の世話を焼いてくれていたような気がする。
思えば……子供の頃からどデカい借りを作ってばかりだ。
なのに、あいつらときたらそれが当たり前みたいな感じで……それがほんとうに…嬉しかった。
だからこそ、芹達へ、芹達の住むこの島へ、何かを返したかった、その気持ちに偽りはない。
けど、俺は気が付けば、いなくなるために戦おうとしている。
誰かのため、島のためと、卑怯な免罪符を手にしながら、命を使う選択をした。
姉ちゃんを傷つけて、芹を泣かせてまで。
と、そこまで考えたところで夢の場面がころっと変わる。
次のシーンは、小学生の時よりももっと前か……芹とママゴトなんてやってら……ほんと懐かしい夢だ。
『シュウ、……のこと………にしてね………絶対、約束ね!』
『うん! 頑張って病気治して、絶対に………』
あぁ、そう言えばなんか……芹と約束したっけかな……
あんまりにも古い夢を見たからか、こんなことがあったのかも少し定かでない。
でも、とても大事で、優しい約束をしたような……そんな核心めいた何かが、心の中にあった。
でもなんだか、この夢は芹のことばっかり出てくるな……別に嫌じゃないけど、他人には言いにくい夢であることは確かだった。
「んん……ん?」
そして夢はそこで終わり、俺の意識は現実世界に引き起こされていく。
まぶたの向こうに光を感じ、空調のおかげかややヒンヤリとした空気が肌を触る感触を覚える。
そして、後頭部に感じるとても柔らかな感触と、俺の頭を誰かが撫でるような感覚。
それを自覚すると同時に、俺は今仰向けに横になっている事に気がついた。
何だと思い、ゆっくりと瞼を開くと……優しい表情をした芹の顔があった。
そして、俺の頭を撫でているのは芹の手で……その手の動きと感触が、昔姉ちゃんによくそうしてもらっていたことを思い出させた。
「おはよう、シュウ」
「……あぁ…おはよう……?」
結構な時間寝てしまっていたのか、頭がかなりボーっとしている。
考えが上手くまとまらないし、まだ体も動かしたくないという気持ちだった。
俺が起きたことを認めた芹のおはようの挨拶に、取り敢えずは返してみたものの、何故こんなに芹の存在が近くにあるのか理解までは出来なかった。
「俺……寝てたのか……」
「うん……1時間位かな」
「……こんなに熟睡したの…本当に久しぶりだ……」
ここ最近は特に寝付きも悪く、夢見も、睡眠の質そのものも劣悪としか言いようのないレベルだった。
体には目立った影響はなかったものの、少し疲れが溜まっていたのかもしれないが、仮眠しようとしてここまでぐっすり眠れるとは思っていなかった。
「……芹…」
「ん? なに?」
「もしかして、俺が起きるまで一緒にいてくれたのか……?」
「ん~まぁ……起こすのも可哀想かなって思って」
「そうか、悪い……ありがーー」
と、そこで俺の意識はやっと正常に起動シーケンスを完了したようで、覚醒する。
おかしい、俺は少なくとも横になって寝ていた記憶はない。
それに加えて、芹の顔が正面にあって、後頭部辺りにかなり柔らかい感触を感じる……横になってることも加味して考えると。
俺、芹に膝枕されてる?
この頭の柔らかい感じ、芹の太もも?
いやいやいやいや、意味が分からん、何がどうしてこうなった?
今、芹にしてもらっていることを理解すると、急速に顔が赤く紅潮していくのが分かる。
芹も俺が自分の今の状態を理解したことを察したのか、同じく頬を赤く染め、恥ずかしそうな表情になる。
「あ、あの……芹さん……」
「う、うん?」
「俺は何故、膝枕されているのでございましょうか」
「私がその……寝てたシュウの横に座ったら……シュウがコテン…と」
「マジでか」
「マジです」
いかん、恥ずかし過ぎて何も言えん。
どうしていいか分からず、一旦起き上がってこの状態から脱しようという選択肢すら出てこなかった。
いや、もしかすると膝枕が心地よく、体かそれを拒否していたのかもしれない。
頭に感じる暖かく、柔らかい感触と、正面にはやや上気した芹の顔。
夏祭りの時同様、そんな今まで見たことのない芹の表情に、俺は不覚にも『可愛い』と思ってしまった。
昨日アレだけ偉そうなことを言っておきながら、泣かせた幼馴染に対してこんな気持ちになるなど、なんと自分勝手な事か。
そんな自分に呆れながらも……俺はどうすることもなく、芹もそのままの状態で何も言ってこない。
沈黙を苦痛と思うこともあるが、今はこの沈黙すらも心地よく感じるような気がする。
「なぁ……」
「んー? なぁに?」
「いや……そのだな……今のこの膝枕」
「またして欲しい? これ」
「是非お願い致します」
何を即答してやがるんですか俺は。
あんまりにも自然に口が動いてたから、自分の事なのにビックリだよ。
けど、それを見てどこか満足気な表情になった芹を見ると、もうどうでも良くなった。
そして、芹は俺の頭を撫で続けながら、優しい……姉ちゃんみたいな口調で続けた。
「仕方ないなぁ……じゃあ、シュウがちゃんと島に帰ってきたら、またしてあげる」
「帰ってきたら…か」
「うん、帰ってきたら」
その言葉の裏にある芹の本音に気が付かないほど、鈍感ではない。
俺が微妙な表情をしたのに気が付いたのかは分からないが、芹もまた、少し真面目な顔になる。
赤くなったり真面目になったり……今日は芹の色んな表情が見える日だ。
「シュウが帰ってくる場所はここなんだから、だから……ちゃんと帰って来て」
「………」
「ちゃんと……私のところに帰って来て」
「……分かった」
自分からファフナー乗ろうとしたような奴が、何を言っているんだと俺は自分をそう叱責する。
けど……俺は芹にもう泣いてほしくなかった。
それから俺達は、どちらからもこの状態をやめようとせず、久しぶりに安心できる時間を過ごすことになった。
ーーー偶然通りかかった遠見先生に見られた時は、『ご、ごゆっくり~…』と変な気を遣われたりしたけど。
やばい、次からどんな顔して遠見先生のとこに行けばいいんだ……
けど、そんな時間ばかりが長く続くことはなかった。
この数日後、敵が、フェストゥムが島に襲来した。
今週のファフナー、ロードランナー先輩マジパネェっす。
ザインとニヒト相手にして逃げはしたものの、瞬殺されないとは・・・
同じアザゼル型っぽいやつにモグモグされちゃいましたが。
で、ジョナミツが変なフラグ立てましたね。
人類軍側の新しいザルヴァートルモデルに乗ろうとするのか、それともニヒトかザインに勝手に乗る展開か…
ニヒトに乗って同化→マークニヒトが再魔王化しそうで恐いです。
それと広登、お前はフラグを何個立てれば気が済むんだ。
フラグを重ねがけして無効化しようとしてんの?いやそれならいいんだけどさ。
ポスト溝口さんのような存在になってくれ、そうすれば安心だ。
あと、アザゼル型に対してニヒトがガイアフォースみたいな攻撃しようとしてる時、
『どうしたマークニヒト、虚無の申し子がこの程度か!』という総士の言葉に反応して頑張っちゃうニヒトちゃん可愛いです。
さて、本編についてですが、修哉が岩戸にやって来ました。
芹に付き合って彼もよく来ていますが、一人で来たことはありません。
もしも劇場版時点でまだ乙姫が居てくれてたなら……どうなっていたでしょうね。
少なくとも、芹ちゃんがお持ち返りしていたことは確定的に明らか。
場面は変わって、芹ちゃん視点。
シュウと同じか、それ以上に悩める彼女ですが、たまたま寝ていたシュウの隣りに座ったら膝枕してやる羽目になったでござるの巻。
シュウにとっては、芹の近くというのは無意識化でも安心できる場所なんですよ。
決して、彼があのアルヴィスのミニスカートから見せる健康的な太ももに本能的に反応したわけではありません、ありませんとも。
で、もう一回シュウ視点。
彼の夢から、その昔、芹とは割とベタベタな約束をしていることがわかります。
いや、内容はちょいぼかしてますが、ベッタベタです。
まぁ、二人共忘れちゃってるんですけどね。
目を覚まして、膝枕してもらってる事を認識しますが……
くっくっく…ほら体は正直だぜ……(ゲス顔)
シュウはここ最近あまり上手く眠ることが出来ていません。
まぁ、あんだけ色々とショッキング且つ、自分を追い詰めるような事ばかり起これば寝不足にもなります。
芹ちゃんの太もも……じゃなかった、膝枕で漸く安眠できるわけです。
私も安眠したいです。寧ろさせてください、何でもしますから。
さて、次回はフェストゥムとの初戦闘になります。
ほぼ書き上がっていますが……なんか気が付いたら1万文字超えてました。
随分長くなってしまった……許してヒヤシンス
スフィンクスA型『なんかさ、俺らの出番遅くね? イチャコラ見せ付けられて嫌になるんだけど』
スフィンクスE型『なお、次回は出番がある模様』
スカラベ型『パスタの用意はできてるやで』
スフィンクスA型『初戦闘でパスタの出番ねーから、座ってろ』
スカラベ型『(´・ω・`)』