ブラック・ブレット 夜の海と蓮の華   作:神流朝海

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こんにちわ。
お久しぶりです。
ようやく1ページ書き終わったので、投稿しました。
原作の蓮太郎の性格とここの蓮太郎の性格が少し変わったかもしれないですが、まぁ、あまり気にしないでください。(つっこみが増えただけ)

お待たせしました。

では、どうぞ



延珠ちゃんの行方

「アンタがさっきの変なのが言ってた長老か?」

「ああ、長老は愛称ですよ、はは。松崎といいます。いや、私も驚きました、マリアが『右手が警察で左手が性犯罪者の人と、性犯罪者に捕まっている女の人が来た』と言っていたので、ちょっと驚きましたよ」

「えーと、念のために言っておきますけど、私は捕まっていませんよ?」

「否定するのそこだけかよ!?俺が性犯罪者だってことも否定してくれていいだろう!?」

「えー、あははは。まあそんなことは置いといて、どうですか?この娘来ませんでしたか?」

 

話が逸れかけたから、元に戻そう。

おそらく松崎さんはここに自発的に住んでいるのだろう。

身なりは綺麗ではないが、ホームレスではないと思うから、おそらくそうだ。

彼も『奪われた世代』なのに。

松崎さんは私の問いに少し考えるようなそぶりをしてから、首を横にふった。

 

「・・・来ていません。残念ですが、知りませんな」

「「そう(です)か」」

 

まあ、こんなにすぐ見つかるわけないか。

 

「わかりました。ありがとうございました」

「ああ、時間を取って悪かったな」

 

もちろんこれくらいじゃへこたれないよ!

延珠ちゃんも月夜も見つけないとね。

私と里見君が一礼して去ろうとしたとき、引き止めるように杖がこちらに伸ばされた。

 

「これからどこへ?」

「三十九区をくまなく。こいつの故郷なんで。見つかるまで探してみるよ」

「見たところ、あなたは相棒に逃げられたプロモーターのようだ」

 

里見君は、何も言わなかった。

・・・いや、言葉がでてこなかったのかもしれない。

里見君の視線が泳ぐ。

それだけで松崎さんには伝わってしまったらしい。

 

「この子でなくともよいのではないですか?」

「なに・・・?」

「ああいう子たちの面倒を見てると自然と詳しくなってしまうのですが、別に民系のペアで性格の不一致など珍しいことではないはずです。ペアの解消または志望の場合、IISOに連絡して新しいイニシエーターと契約を結べばいい。IP序列は一旦大きく下がりますが、再び実績を上げて返り咲くのも、あなたの年齢ならそう難しくはないはずだ」

「俺はイニシエーターだとかプロモーターだとか、そんなの抜きで延珠を探しに来てんだ。アンタはいい奴で感謝もしている。その上で言わせてくれ。―――――何も知らねぇくせに偉そうに語んじゃねぇよッ!」

 

その里見君の声の迫力に、私も松崎さんも驚いた。

松崎さんは目を見開いて、杖を落とすほどだった。

チッと小さく舌打ちする音が里見君から聞こえた。

 

「・・・悪い。怒鳴るつもりじゃなかったんだ。もう行くよ。じゃあな」

 

そう言って、里見君は歩いて行ってしまった。

 

「・・すみません。ありがとうございました」

「・・・いえ、私も怒らせてしまったようで、すみませんでした」

 

走って私も里見君の後を追う。

 

 

 

松崎は、その二人の後姿を愛おしげに眺めてからおもむろに振り向いて、後ろの闇に向かって声を上げた。

 

「聞いてたんだろ。良い青年じゃないか。このまま本当に見送ってよかったのかい?お譲ちゃん」

「ほんとによかったんですか?延珠」

「・・・・・」

 

後ろの闇から出てきたのは、紅い髪の女の子と、刀を携えた女の子だった。

 

 

 

・・・・・

―――――

 

 

翌日。

私はバラニウム義脳と義眼の定期点検のために、菫先生のいる大学病院にいた。

もちろん、学校は欠席にしてもらっている。

 

「しかしまぁ、君もたいしたもんだねぇ」

「え?どういうことですか?」

「いや、ねぇ。まだ試作段階だった二三式バラニウム義脳とニニ式バラニウム義眼をちゃんと操作できてるってことさ」

「ん~、フルで使ったことはないんですけどね」

「二二式は蓮太郎君が持っている二一式義眼の演算能力を引き上げたものだ。つまり、それだけ脳に負担がかかる。君には二三式義脳があるから少しは軽減されるだろうが、それでもかなり危険だ」

「菫先生がそこまでいうなら相当なんでしょうね」

「・・・あぁそうそう、また朝海君が来たよ」

「兄さんが!?いつですか!?今どこに!?」

「っとまぁ落ち着きたまえ。しかし朝海君はおもしろいねぇ。実に興味深い。今度実験に付き合うよう海夜君から言っておいてくれないだろうか?」

「だめです!兄さんはたった一人しかいない『神流式陰陽術』の継承者なんですから!」

 

 

私の兄さん、神流朝海(しんりゅう あさうみ)は、『神流式陰陽術』という陰陽術を使える家族でただ一人の人だった。

ちなみに兄さんも民警で、IP序列は19位と、私なんか足元にも及ばないくらい高い。

この陰陽術を使うには才能っていうのが必要で、努力してもできないものなんだ。

父さんも昔使えたらしいんだけど、兄さんが生まれた時から使えなくなっちゃったんだって。

才能が親から子へ受け継がれていってるらしい。

兄さんはまだ19歳で、結婚もしてないし、もちろんのこと子供もいない・・・と思う。

だから、まだ陰陽術を使えるはずだった。

そういえば、兄さんのイニシエーター見たことないなあ。

 

 

「そういわなくてもいいだろう?一医者として、一研究者として、是非」

「是非、じゃないですよ!」

「先生、いるか?」

 

 

その時、扉が声と共に開かれた。

もちろん、声でその主はわかったのだが。

 

「やあ、里見君」

「先生、・・?今日は休みじゃなかったのかよ、神流」

「あぁ、うん。義眼と義脳の定期点検をしにきたんだよ」

「あぁ、やっぱそれほどのスペックになると定期点検がいるのか」

「いやいや蓮太郎君、定期点検とは名ばかりで、義脳にどのような変化があるかを見るために来てもらっているんだけどね」

「義脳に変化・・・?どういうことだ?」

「それは月夜ちゃんから既に聞いてるのではないのかな」

「・・・そうか」

「え?なになに?月夜が何か言ったの?」

「いや、なんでもねぇ」

「まぁなにもないところだが自由にくつろいでくれたまえ」

 

ものすごく気になるんだけど。

ピピッピピッピピと機械が音をだし、スキャン結果が出される。

それを見て、菫先生が声をあげた。

 

「これは・・・!」

「・・?どうしたんですか、菫先生?」

「想像以上、というか、今までのデータを基に解析するとこんなことには・・・海夜君、最近なにか変わったことはあったかい?」

「あの、だからどうしたんですか?」

「・・君には、君の義脳には、もう立派に人格が宿っている」

「「・・・え?(は?)」」

「いやはや、これはすごい。蓮太郎君の『俺のハーレム計画の概要がまとまったぞ』という話なんかよりも、なん兆倍、いや、比較にならないほどすごいことだ」

「嘘つくな!俺はそんな話してねぇ!」

「うわぁ、ものすごい計画だね」

「信じるなよ!」

「あはは、うん、信じてないよ」

 

けれど、最近私になにかあっただろうか?

特にこれといって思い当たる事はないんだけどなぁ。

あ、強いていうのなら、里見君に出会ったこととか?

 

「ああそうだ、蓮太郎君。さっき君の後援者が来ていたぞ」

 

菫先生の言葉に、蓮太郎君がそわそわと首を左右させ、周りを見た。

・・・なんか嫌ってるっぽいね。

 

「あいつが来てたのか?」

「うん、なかなか不機嫌だったぞ。最近、生徒会室に遊びに来てくれないから教室に会いに行くのにいっつも不在でつまらないってな」

「鉢合わせないように逃げてっからな」

「・・あれ、もしかして里見君の後援者って司馬重工なの?」

「ああ、そうだ。確かにありがたいとは思ってるんだが・・・」

「蓮太郎君はどうしてまた学校のアイドルから逃げるんだい?」

「そりゃ多少は、か、可愛いと思うけどよ、それはみんなあいつの本性知らねぇからだよ。あの女、感極まると学校でマグナムオートぶっ放すんだぜ」

「えぇー、あの人そんなに恐い人だったんだ・・ねぇ、里見君。あの人と私ってどっちが可愛いと思う?」

 

 

 

・・・・俺にそれを言えと・・?

・・まずは整理しようか。

あくまで客観的に見た(客観的が重要だからな)容姿は、神流の方がかわいいと思う。

木更さんとは違って巨・・・んん、じゃないが、それでも、顔もかわいいし、スタイルもとてもいいと思う。

あの女は・・・まぁ、本性を知らないやつからしてみれば相当かわいいと思う。

だが、知ってしまった俺にしては、あのかわいさの裏に鬼の様な一面があることも知っているため、正直、あのかわいさは俺にとって凶器でしかない。

 

「俺は、神流の方がかわいいと思うけどな・・・」

「へ!?やった、ありがと、里見君」

「は?俺声に出してたか?」

「それはもう、蓮太郎君が幼女を誘拐したときの様な大声で―――」

「誘拐なんてしねぇよ!てか話の腰を折るな先生!」

 

クックックと、悪役染みた笑いを漏らすこの地下室の女王は、天変地異が起こってもここにいて、奇妙な笑みを浮かべながら俺を迎えるんだろうな。

なんとなくそんな気がする。

・・・この笑いと先生が話す内容を聞いていると、そう思う。

・・・・・いや待て待て。俺は今日ここに相談があって来たはずなんだが。

 

「先生悪い・・・実は今日は相談があって来たんだ」

 

彼女は書類を机に置くと、備え付けのコーヒーサーバーの下に耐熱ビーカーを三つ出してから、おもむろにふむと言った。

 

「何があった?話してみろ」

「あ、先生、私の分はいいですよ。そろそろ帰らないと」

「そうかい?だがしかしビーカーは三つでいい。なぜなら蓮太郎君が二杯飲むからね」

「そんなに飲まねぇよ!」

「はいはい、わかってるよ。じゃあね、里見君。はやく見つかったらいいね」

「・・・ああ」

 

 

私はそう言って、地下室を出た。

 

といっても、特に行くところはないので、とりあえず家に戻る。

 

「たっだいま~」

 

玄関の扉を開け、そう元気に言う。

もちろん、いつもなら

 

「あ、お帰り、海夜」

 

と、こんな風にお帰りを言ってくれる人がいるのだ・・・が!?

 

「え!?ちょ、月夜!?なんでここにいるの!?延珠ちゃんと一緒じゃなかったの!?」

「え、なんで一緒にいたことが・・・?」

「いや、そりゃ、普通そう考えるよ?」

「・・・海夜は馬と鹿だと思っていたから」

「ちょっとまって!?私そんなにバカじゃないよ!」

「そうですか。・・延珠は学校に向かいました」

「そう・・・え?学校に向かった!?」

「はい。学校に向かいました」

「ちょ、行くよ!月夜!」

 

私が月夜の手を引っ張って勾田小学校に向かおうとしたとき、携帯がピロリロリンッと、着信の音がなる。

相手は、木更さんだった。

 

「もしもし?」

「あ、よかった。今、月夜ちゃんといる?」

「え、あ、うん。今家の前。これから勾田小学校に向かおうと思っていたとこ。どうして?」

「あら、ちょうどよかったわ。すぐに勾田小学校に、“装備を整えて”行って!例のガストレアの居場所がわかったの!ヘリを飛ばすからそれに乗ってね!」

「うん。わかった。装備していく」

 

ピッと通話終了ボタンを押し、月夜に言う。

 

「月夜、あのガストレアの居場所がわかったって。装備を整えて勾小学校に集合するって。わかった?」

「はい、わかりました」

 

月夜がトコトコと部屋の中に入っていき、刀を3本持って戻ってきた。

一本は、兄が月夜のために造った『切れ味が落ちない、バラニウムでできた刀』

もう一本は、兄が月夜のために造った『絶対に欠けない、バラニウムでできた刀』

最後の一本は、兄さんが私のために造った『超バラニウムと、兄さんの陰陽術でできた刀』

兄さんがつけた名前は、

1本目が『清流刀』、2本目が『神樹刀』、3本目が『神流刀』。

 

月夜が腰に2本、刀を差し、私も左腰に1本、刀を差す。

 

「さて、装備は万端。行こうか」

「はい」

 

 

私は少しの不安を覚えながら、勾田小学校へと向かい走った。




読んでくれてありがとうございました。

今回もあまり内容が進みませんでした・・・。
次回は、たぶん、小学校のところから、ガストレアを発見し、影胤と会うところぐらいでしょうか。たぶんその辺のはずです。

何か問題とかありましたら感想までお願いします。
感想書いてくれたら嬉しいです。

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