ブラック・ブレット 夜の海と蓮の華   作:神流朝海

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どうもっ、こんにちは!
今回も書いてきます!
最近ブラック・ブレット書くのにはまりすぎて、問題児があまり進んでおりません……。
でも、それでもこれを書いておきたいんですっ!

では、どうぞ



彼を探して

「無茶すんなよッ。お前がヤケになったかと思って俺は――」

 

里見君が近づきながら延珠ちゃんの肩に手を置くと、延珠ちゃんは顔をしかめた。

怪我、したのかな?

 

「……どこか怪我したのか?」

「い、痛くないぞ! ちょっと左足を捻っただけだ。一時間もすれば治る」

 

そんなやりとりに微笑みながらも、それを邪魔すまいと今回のターゲットであるジュラルミンケースを探す。

画像で見たときはいまいち大きさがわからなかったけど、その大きさは一抱えほどある。

そのケースの持ち手には長い手錠がくくりつけられていた。おそらく、決して離すまいとガストレア化する前の被害者がつけていたものだろう。

 

思考にふけっていた私を叩いたのは、なるべく聞きたくない、そして会いたくない相手の声だった。

 

「ヒヒ、ご苦労だったね里見くん、神流くん」

「えっ」

 

驚きつつも振り向きざまに刀を抜くが、斥力フィールドによって妨げられる。

くっ、さすがにこれだけの力じゃたりない。

 

「くっ……きゃあ!」

 

力で押し負け、私はあの時と同じように吹き飛ばされる。

私の攻撃力だけじゃ限界があるかも……

 

「神流ッ! くそ、蛭子影胤ぇ!」

 

里見君が声を荒げ、パシュンパシュンと音をたてるのが聞こえる。

おそらく拳銃を発砲したんだろう。

吹き飛ばされた私は、背後の木にはあたらず、寸前にふわっと受け止められ、運動エネルギーが急速になくなっていく。

 

「大丈夫ですか? 海夜」

「あはは、ありがと月夜」

 

月夜に礼をいい、影胤のほうを振り返る。

瞬間、右側から、ガキィイ! というバラニウムを打ち合う音が聞こえた。

延珠ちゃん……足を怪我してるはずなのに。

その奥で、里見君が影胤を戦っている。

 

「天童式戦闘術一の型八番――『焔火扇』ッ!」

 

里見君の突き出した拳は、青白いバリアに激突し、ベクトルをそらされ、空を切る。

私も刀を差しなおし、月夜に延珠ちゃんの支援をするように頼んでから里見君の支援に向かおうとしたそのとき、パンパンパン! と弾が拳銃から放たれる音がした。

里見君のほうを振り返ると、影胤が至近距離で里見君の肩を――

 

「里見君ッ!」

 

悲鳴の様な叫びを上げながら私は走った。

走りながら居合いの構えを取り、放つ。

 

「神流式抜刀術二の型三番――『白夜』ッ!」

 

白夜は、フェイクを何重にも重ねて放つ居合い斬り。

普通の人なら、何本もの居合いがほぼ同時に飛んでくる感覚だろう。

本当の刃は一太刀だけで、他はすべて残像とフェイク。

並みの人ならば、フェイクだけで斬られたと錯覚し、本当に斬られたように細胞がダメージを受けるほどの剣戟。

しかしその一撃も、影胤の肩の肉を切り裂いたまでで、骨までには至らなかった。

里見君をかばうように立ち、もう一度構える。

 

「これほどまでとは……。君達にひとつ、私の技を見せよう。『マキシマム・ペイン』!」

 

突如、影胤を覆っていた斥力フィールドが大きく膨らみ、私たちにめがけて殺到する。

避けようと後ろに二歩下がるが、突然の背中への衝撃に驚いた。

 

「えっ……岩ッ?」

 

それはもう、私の背丈をゆうに越えるほどの大きさだ。

ジャンプしてもギリギリとどくかどうかの。

すぐに横に飛びのこうとするが、里見君が後ろに……。

迫り来る斥力フィールドになんとか刀で押さえ込もうとがんばるけど、無理。力が足りない……。

次の瞬間突然力が大きくなり、私は抑えきれなくなって吹き飛ばされた。

 

「あっ……」

「神流ッ!」

 

 

頭を打ったのか、神流がぐったりと崩れ落ちる。

……強い。

あの神流が負けた。序列157位というのはやはり伊達ではない。

強すぎる、ここまでとは。

俺と影胤の単純な戦闘能力の差に延珠の足の負傷、神流の気絶。

延珠は主に月夜のサポート。月夜は小比奈と同等ぐらいだろうか。

その状況を見て、俺は冷徹で一番合理的戦術をはじき出す。

 

「逃げろ、延珠。月夜も、神流を連れて、逃げろ」

 

延珠が眼を見開き、首を振る。

 

「嫌だ!」

 

月夜は、俺と神流、延珠を交互に見回している。

その瞳は驚きの色で、しかし、冷静そうな眼だった。

 

「……わかりました」

 

月夜がそう言い、二刀で小比奈を遠くに弾いて、神流のところへすぐ行き、抱える。

延珠の背後で小比奈が刺突の構えを取るのを見て、延珠の足下へ一発発砲する。

延珠は反射的に大きく跳び、悲しそうな顔をして奥の茂みに消えた。

こちらを見ていた月夜に、延珠を頼む、と眼で合図すると月夜は、

 

「……延珠のいる病院で待ってます」

 

そう言って走り出した。

延珠の後を追って。

 

「パパ! 延珠と月夜逃げた! 斬りたい! 追いたい!」

「駄目だ我が娘よ。他の民警と合流されたら面倒なことになる。きけんだろうそれに彼女達も強い。彼女の足が完治したら危険だろう。さぁ、仕事を済ませようか」

 

小比奈がこちらをキロリと睨んだかと思うと、次の瞬間に視界から消えていた。

直後、腹に強烈な衝撃。

腹を見ると、黒いバラニウムでできた小太刀が日本、突き出ている。

それを実感するのに、数秒かかった。

 

「弱いくせに! 弱いくせに! 弱いくせに!」

 

血を吐きながらも裏拳で小比奈を振り払い、XDを連射しながら退去し始める。

一発撃つごとに反動が傷にさわり何度も意識が飛びそうになるのを堪え、走る。

だが、それは走るに入るのかというくらいだった。、

足が、腕が、体が、動かない。

視界が滲み、雨に体温が奪われていく。

寒い、凍えそうだ。

こんな時、神流がいてくれたらな……。

気絶した神流を心配しながら、木々の帳を掻き分けていくと、開けた場所に出た。

そこは増水した川だった。

とても泳いで渡れる川ではない。

ましてやこの傷だ。

河の突端に立ち、ゆっくりと振り返ると小比奈と影胤、そしてカスタムベレッタの銃口がこちらを向いていた。

サー、とホワイトノイズめいた雨音が、静かに耳に入る。

……そうか、ここで終わるのか。

延珠、木更さん、月夜……そして神流、ゴメンなさい。

 

「……なにか言い残すことは、死にゆく友よ」

 

俺は血を吐きながらも、少し笑って、

 

「地獄に……落ちろ」

「おやすみ」

 

 

パパパパパン!

 

銃の音が微かに聞こえ、私は目が覚めた。

体を動かしてるわけじゃないのに、景色が右から左へとすぎていく。

 

「……海夜、起きましたか?」

「里見君は……?」

「…………」

 

月夜が何も言わず走り続ける。

その無言が、なによりの答えだった。

 

「降ろして!」

「……はい」

 

月夜にそう言うと、おとなしく止まった。

延珠ちゃんがいないのは、先に行ったのかまだ戦っているのか。

後者はまずない。月夜がここにいるのだから、それはありえない。

 

「月夜は延珠ちゃんのところへ。足怪我してるからね」

「……、わかりました」

 

何かいいたそうな感じだったが、すぐに頷き、走っていく。

月夜は、それが正しいと思ったことはすぐにそれをやるタイプだ。

きっと、逃げろ、というのは里見君が指示したのだろう。

私もすぐ走り出す。今銃声がした方へと。

私のみたところ、里見君のXDは、フルオートじゃない……。

木々の帳を「神流刀」で斬り裂きながら走り抜けると、開けた場所にでた。

そこには、9mmパラベラム弾の空薬莢が散乱し血のあとが点々と河の突端へと向かって――

 

「……うそ、でしょ?」

 

おそらく人が立っていたであろうその場所には、血の跡と、拳銃が落ちていた。

その拳銃の名称は――――スプリングフィールドXD。

まぎれもない、彼の銃だった。

無意識のうちに義脳が演算を開始し、1秒が1時間に見えるほどの速度で演算が進められる。

発砲音がしてからここまでかかった時間、川の流れる速度、落下時間etcすべての情報を洗い出し、今彼が、蓮太郎君が流れているであろう地点を導き出すまで、わずかコンマ1秒。

 

「私の足で――400メートル先なら!」

 

蓮太郎君のXDを拾い、走り出す。

今までで一番速く走った。

50秒もせずに400メートル先に着き、蓮太郎君を探す。

此処に車でにまた雨がひどくなり、川の水も少しながら増えてきている。

焦る思考とは裏腹に、サーサーと雨音が耳を通り過ぎていく。

どこ? この辺りのはずなのに……!

 

「……、見つけた!」

 

刀を置く間もなく川に飛び込み、なんとか助けようとする。

 

「起きて……起きてよ!」

 

寒さで手先が麻痺してきて、呼吸してるかどうかが確認できない……

体も冷たく、顔色は悪いなんてものじゃない……

蓮太郎君が目を開けない……

それが不安を駆り立て、後ろに迫る岩に気づくのが遅れた。

 

「……!?」

 

気づいたときには、もう避けられなかった。

川の流れは速く、そんなにすぐ移動できるものじゃない。

蓮太郎君にダメージがいかないように抱きしめて岩に背を向け、

 

「きゃあ………」

 

そのまま気を失って流された。

 

 

 

「式、二人を助けなさい」

 

人形の形をした紙が、川に向かって飛び込み、二人を川から助け出す。

一人は傷だらけで、出血の量がひどい。

一人は背骨にひびが入っている。

 

「はぁ。無茶するから……。神流式陰陽術ニ系統三番『治癒ノ子(チユノコ)』」

 

二枚の紙が光を放ちながら二人の体にしみこんでいく。

体の表面の傷がふさがり、骨のひびが少しずつなくなっていく。

これで大丈夫かと一息つき、彼は近くに腰を下ろす。

 

「近くにガストレアも影胤もいなかったのサ」

「そうか。ありがとう」

「いやいや、これも君のためならなんともないのサ」

 

腰と足に黒い暗器を差し、両手にも暗器を持ちながら笑う少女に、彼はありがとうと礼を言った。

彼は魔法使いが着るようなローブらしきものを着ており、少女は動きやすいTシャツに上から軽いカーディガン、動きの妨げにならないくらいのスカートをはいている。

 

「さぁ、じゃあ帰ろうか」

「そうなのサ。二人を病院に届けて、さっさと家に帰るのサ」

「式、この二人を病院へ」

 

式に二人を託し、別の式に乗って家に向かう。

 

「たまには運動をしないと、妹をおんぶできなくなっちゃうのサ」

「うるさいぞ。それくらいの筋力はある」

 

彼は苦笑いをして反論する。

尚笑顔な少女は笑いながら彼にしゃべりかける。

 

彼らは雨の降る中、濡れることなく空を飛んで帰った。

 




今回は少しばかり長くなりました。
次回は、少し先……になりそうです。
問題児のコラボを投稿したあとですかね。
続きは考えてあるので、私のモチベーション次第といったところでしょうかw

読んでくれてありがとうございました。
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