ブラック・ブレット 夜の海と蓮の華   作:神流朝海

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前から書きたかったブラック・ブレットの二次です。
問題児、黙示録アリス、ソードアートを書いていますが、どうしても書きたかったので、書いてみました。
受験が終わり次第、バンバン投稿しようと思いますので、もう少し待っていただけるとうれしいです。

では、ブラック・ブレット 夜の海と蓮の華、スタートです。


春先のこと

春先。

夕刻のあかね色に染まった空の下、住んでいる部屋の隣の部屋の出入り口・・・もとい玄関前で見たことないおじさんが・・・警察だろうか。が、線の細い少年を脅していた。

「あぁん?お前が俺達の応援に駆けつけた『民警』だぁ?馬鹿も休み休み言え。まだガキじゃねぇか!」

ド迫力の顔を近づけられた少年は、覇気の瞳で視線を斜めに逸らし、ぼんやりと空を見ていた。

そして、もう帰りたい、と思っているのか、ぼやく。

「んなこと言われても仕方ねぇだろ。俺が応援に来た民警だよ。『天童民間警備会社』の里見蓮太郎だ。ちゃんと拳銃もライセンスも持っている」

見ていても退く気配がないことを知った私は、通路に陣取っている警官に話しかける。

「あの、お取り込み中悪いのですが、私、家に入ってもいいでしょうか?」

「ん?この部屋に住んでいるのか?」

蓮太郎、と名乗った人物が聞いてくる。見たところ高校生くらいだろうか・・・あれ?

「もしかして、勾田高校に通ってますか?」

「ん?ああ、そうだけど・・・って君も勾田高校の制服着てるな。で、質問の答えは?」

「ああ、いえ、その部屋の隣ですよ。・・・同業者なら大丈夫ですね。はやくガストレア倒しちゃってください。里見君」

「おう、わかった。・・・は?同業者?それになんでそんな呼び方?」

里見君の「おう、わかった」の声を聞き、扉を開けて部屋に入った。

 

「はぁ・・・私ってついてないなぁ」

ドアを開け、リビングに入ると、そのリビングの半分はダンボール箱で埋まっていた。

なんと、今回で三度目の引越しである。

前の二回のも、ガストレアによって隣の部屋や上の部屋が壊されたりして、引越しをしたのだ。

今回も、だ。

「あ~あ。ほんとついてない」

「さっきからついてないついてないしか言ってないね」

「あ、ごめんね。待たせちゃって」

「ううん。別にいいよ。いつものことだし」

「あはは、以後気をつけます、と」

「ふむ、そうしなさい。というくだらない会話はここまでにして、晩御飯つくろ?」

「そうだね。何にする?月夜」

「う~ん・・・」

私が買ってきた食材を見ながら月夜がうなる。

「もやしに・・・お肉に・・・・・・・」

ご飯の内容を決めるのは、いつも月夜の仕事だ。

私は適当なものを買ってくるだけだ。

「う~ん。よし!決めた。今日は野菜炒めにしよう」

「了解。じゃ、作り始めるとしますか」

 

IP序列234位。

「神流式抜刀術」免許皆伝という実力を持っている、神流海夜(しんりゅう みよ)

その海夜のイニシエーターで、モデル・マンティスの影ノ月夜(かげの つきよ)

2人は野菜炒めを作るために、せっせと準備を始めて間もなく、

ドガッ!という隣の部屋の扉が蹴破られる音。

「ああ・・・やっぱ先に引っ越す?平和に食事はしたいな」

「・・・そうだね。いくら私と海夜で序列234位っていっても、食事くらい平和にしたいし」

 

急いで荷物を片付け、たくさんのダンボール箱をもって、その借りていた部屋をでた。

もうすでに借りているアパートに向かい、歩いている途中、

 

「―――蓮・太・郎・の・薄・情・者・めぇぇぇぃ」

 

大声で怒鳴る声が聞こえて、私と月夜は足を止めた。

「あれは“呪われた子供たち”ですね。見たところイニシエーターのようですけど」

「だよね。しかも蓮太郎って・・・」

里見君、イニシエーター無しでガストレアと戦闘したかったの?いた方が絶対安全なのに。

そのまま通り過ぎようとしたら、その里見君のイニシエーターらしき少女に、ある男が近づいてきた。

「あれは―――」

「ガストレアに・・・なりますね」

「ちょっと荷物見てて!私、いってくる」

「はい。あの程度で怪我したり、あの子に怪我させたりしたら、怒りますからね?」

「あはは、万が一にもそれはない!」

愛刀を腰に差し、蓮太郎のイニシエーターに向かって走る。

なにやら、その男と少女がしゃべり、少女が頷く。

そして、あの男が、ガストレアに変わる。実にあっさりと、人間の形がなくなる。

いつ見ても、これだけは慣れない。

「「ガストレア―――モデル・スパイダーステージ1を確認。これより戦闘に入る!・・・え(は)?」

「広い十字路の角から現れたのは、里見君だった。

「もうここまで来たの!?」

「なんであんたがいるんだ!?とりあえずこいつを―――ぐあああああッ」

突然蓮太郎が叫びを上げる。

理由は、里見君のイニシエーターであろう少女の放った蹴りが、里見君の股間に食い込んだからだ。

里見君は股間を押さえたまま膝をつき、そのまま地面に額をつける。

・・・きっと私には理解できない痛みが彼を襲っているのだろう。

だが、それでも里見君は歯を食いしばって顔を上げる。

「あの・・・大丈夫?」

「ここ蹴られて大丈夫なわけないでしょ・・」

「妾を自転車から放り出しておいて、よくもぬけぬけと妾の前に顔をだせたな」

「お、怒ってんのかよ?」

「え?そんなことあったの?それは里見君が悪いんじゃ・・・?」

「当たり前だ。全部蓮太郎が悪い・・・え?誰だ?」

「この子里見君のイニシエーターだよね?」

「ああ、そうだ。藍原延殊。モデル・ラビットの俺のイニシエーターだ」

「私は神流海夜。私も民警だよ。私のイニシエーターは・・・と置いてきたままだった。月夜、こっちにおいで」

「・・・あの、荷物は?」

「持ってきて」

「・・・・はぁ」

ため息をつきながらも、月夜が荷物を持って近づいてきた。

ダンボール箱が上に十個積んである。

「で、この子が私のイニシエーターの影ノ月夜。モデル・マンティスだよ」

 

その時、私たちの会話に割り込むように銃声が轟いた。遅れて現場に着いた、おそらく警部であろう人物の手には、硝煙をあげるリボルバー拳銃が握られている。

「おい、お前ら。敵を放って自己紹介か?仕事しろ民警!」

「はいはい。あ、あとガストレアに撃つなら普通の弾じゃなくてバラニウム製のやつにしてよね」

ガストレアを見ていたなら、よくわかる変化が見られた。

警部の撃った弾は、産まれて間もないガストレアの皮膚を貫いたが、今はその部分が再生している。

ガストレア、という生物は、バラニウムという金属でしか倒せない。

もしくは一瞬で跡形もなく吹っ飛ばすとか?

そういうことをしないといけない。

 

「里見君!警部さ―――」

私が里見君に指示をだそうとした時、すでに彼は動いていた。

警部さんに向かって。そのまま体当たりをして、警部の上体を倒す。

巨大蜘蛛が低い姿勢でジャンプし、2人がたったいまいいたところを通り抜けていった。

「あはは、里見君って結構やるんだね」

愛刀を持って、ガストレアに近づく。

「おい、バカ、離れろ!」

「あはは、里見君、心配してくれてるの?それはうれしいな」

私は笑いながらも、真剣に構える。

 

迫ってくるガストレアの動きをよく見て、居合いを解き放つ。

 

「神流式抜刀術 二の型一番、『夜明け』」

 

神流式抜刀術の二の型は、居合いの型。

刀を抜いた瞬間に斬りつけ、一刀両断する初歩的な抜刀術。

 

「ふぅ。終わった」

「いやいや、終わってねぇだろ。まだ元気に動いてるじゃねぇか」

いつのまにか里見君が私の隣に来ていた。

銃をガストレアに向けたまま。

「ううん。終わったよ」

「終わりましたよ。里見さんには見えなかったんですか?」

「見えたもなにも・・・は?」

 

突然ガストレアの動きが止まったかと思うと、ガストレアが真っ二つにされて、倒れた。

いや、まじで?木更さんみたいな人だな。

「むちゃくちゃ斬った跡きれいなんだけど」

「そりゃもちろん。私が斬ったんだから」

さも当然という様に返してくる。

「私の名前、神流海夜なんだけど。聞いたことない?」

「神流海夜・・・?聞いたことないな・・・」

「あ、そうなんだ。ま、お互いがんばろうね」

「おう、会社はどこに所属してるんだ?」

「え?会社になんて属してないよ?」

「は?民警なんだろ?仕事は?」

「いや、私のとこには個別に依頼が来るし」

「・・・は?それってどうい―――」

「蓮太郎!今度月夜の家に遊びに行ってもいいのか?」

「え、もうそんなに仲良くなったの?」

「延珠、それは俺じゃなくて神流に聞けよ」

「え、私?別にいいよ。これから家に荷物置きに行くんだけど、一緒に行く?」

「あの、さっきから警部さんがこっちを見てるんですけど」

 

月夜の一言で、思い出す。

「そうだ、延珠。お前、形象破壊起こす前に被害者と話していたけど、何か言ってたか?」

延珠が神妙な顔で、頷く。

「うん、妻と子供によろしく伝えてくれって言ってたな」

「そうか・・・ガストレア倒したの神流だけど、どう報告するんだ?」

「じゃあ、里見君の手柄でいいよ。別に生活に困ってるわけじゃないし。引越し業者を使わないのはいつもだし」

「そうか、わかった。ごめんな。横取りみたいなことして」

「いやいや、気にしなくていいよ」

その言葉を聞いて、時計を見る。姿勢を正し、警部に敬礼する。

「二〇三一年、四月二十八日一六三〇、イニシエーター藍原延珠とプロモーター里見蓮太郎。ガストレアを排除しました」

「ご苦労。民警の諸君」

警部も同じく敬礼をする。

この場の最高責任者だ。一応報告をしておかないと。

 

が、そこで月夜が思い出したかのように言う。

「あ、そういえば、海夜。もやし買ってきてたけど、今日タイムセールだからその時買えばよかったのに」

「だってそこまでするほど貧乏じゃないでしょ。だってまだ講座に××億円あるし」

そんな爆弾発言を海夜がしたのだが、蓮太郎には聞こえていなかったようだ。

そもそも預金××億円など、どうやったらたまるのだろうか・・・?

そんな大金があれば、一々ぼろいアパートに住まなくてもいいだろうに・・・

 

「え?・・・ああッ」

蓮太郎は慌ててポケットから今日の折込チラシを取り出す。

蓮太郎の顔から、血の気が引いていく。

「えっと・・・大丈夫?」

血の気が引く理由は、なんとなくわかった気がするけど、一応聞いてみる。

けど、私の問いには答えを返さず、走り出す。

「お、おいもう行くのか?」

「ああ!また仕事あったら回せよな」

「ところでなんでそんなに急いで―――」

「もやしが一袋六円なんだよ!!」

・・・・やっぱり。

 

走り去っていく後ろ姿と、その後ろをじゃれつく子犬のようについていく後ろ姿を見ながら、警部が言った。

「もやし・・・だと?」

「あはは、あの2人、お金に余裕がないみたいで」

「主任、無事でしたか?」

声のした方に振り返ると、警部さんの部下らしき人たちがいた。

その部下らしき人たちは、死んでいるガストレアを見ると、言った。

「あいつら、新米みたいですけど、使えそうですね」

「さぁな。それより『IP序列』聞くの忘れたな」

「で、あなたは?あなたも民警のようですが」

「あ、私?私は神流海夜。で、イニシエーターの影ノ月夜。IP序列は、234位」

「なっ!本当にか?」

警部が驚きの声で聞いてくる。

「そうだよ・・・ん、なに?月夜」

「海夜、そろそろ行かないと。大家さんにも挨拶とかしないといけないし」

「あ!そうだった。ではこれで・・・っと忘れてた。ガストレア退治の報酬は?里見君に渡しとくから、頂戴」

「あ、ああ、これだ」

警部が差し出した封筒を取り、ダッシュで家に向かった。

・・・もちろん。たくさんのダンボール箱を持って。

 

「あの2人、234位って本当ですかね・・・?」

「・・・確かに、あの剣術はすごかった。だが、こんなところにそんな序列が高い奴がいるのか・・・?」

「何者なんでしょうね・・・彼女たち」

「・・・さあな。俺にはわからん」

「あ、煙草ですか?」

「いいだろう?あいつが助けてくれなかったらなかった命だ」

 

警部は久しぶりの煙草に火をつける。

煙草をすっている間、ずっと、眺めていたのは、聳え立つバラニウムでできたモノリスだった。




どうでしたでしょうか?
わかりやすいように書けていればいいのですが・・・

オリ主は神流海夜と影ノ月夜です。
今後もよろしくお願いします。

読んでくれてありがとうございました。
問題とかありましたら感想までお願いします。
感想書いてくれたらうれしいです

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