色々なIF集   作:超人類DX

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今までとはまったくもって無関係な話です


緩めモード
※もしも壊れる前だったら


 

 

 その人は、ある日突然空から落ちてきました。

 

 その人は、とても傷だらけでした。

 

 その人は、男の人でした。

 

 

 

 私の眼前に血まみれで落ちてきた男の人が何者なのかはわかりません。

 けれど、どうしたら良いのか解らず、近付くのもちょっと怖かったので、ただ見ていたらその男の人は呻き声と共に起き上がりました。

 

 

『ぐぅ……な、んだ? 生きてるのか俺は……?』

 

 

 全身の至る所に痛々しい傷を負った男の人は小さくそう呟きながら自分の措かれた状況をあまり理解していないように、そして此処が何処なのかと辺りを見渡し……。

 

 

『む……? 誰だキミは?』

 

 

 色々な衝撃で動けなくなっていた私と初めて目が合いました。

 血まみれで、今にも死にそうな顔色をしている男の人――されどその瞳はギラギラと狂暴な獣のような獰猛さを私に感じさせる。

 

 

『すまないがお嬢さん。

ホント少しで良いから何か食べるものとか持ってないか? 本当に少しで良いから』

 

 

 

 その容貌のせいで普段の私なら怖いと逃げ出していた。

 でも、そんな姿とは裏腹に感じる優しげな声が私に少しずつ男の人への恐怖を薄れさせていきました。

 

 

『ぷっはー!! なんか見慣れない食い物ばっかりだっだけど旨かった! ありがとうなお嬢さん!』

 

 

 ギラギラとした目をしてるのに、どこか人懐っこさみたいなものを感じる、ちょっと不思議で変な人。

 

 

『ところで此処は何処なんだ? というかお嬢さんは人間――じゃないよな?』

 

 

 食べ物を食べたらその傷が直り、死人のような色だった肌に生気を取り戻すという――驚く程傷の治りが早いへんちくりんな男の人。

 

 

『えと、ごめん。キミが嘘言ってるとは思わないけど、キミが今教えてくれた此処等の場所を俺は全く知らないっつーか、そもそもここは日本―――え、ニホンってなんですかって? ……………ま、マジかい』

 

 

 これが初めての出会い。

 そして私が歩む筈の未来の分岐点。

 

 

 

 

 

 

 気付いたら異世界にすっ飛ばされてました。

 という経験をダイレクトに体験させられている少年がとある世界へと流れ着いてから約三年後。

 

 

 とある理由により、元の世界では生きるか消え去るかの壮絶な戦いを制したご褒美なのか、それとも元の世界そのものから存在を拒否されたからなのか、青年は三年の月日を経った現在も異世界で―――割りとのんびりと生きていた。

 

 

「ちくしょーめぇぇぇっ!!!!」

 

 

 所謂異世界転生系スローライフ……なのかもしれない青年の始まりは悔しげな怒号から始まった。

 

 

「こ、これで異世界におけるナンパが1525戦1525敗になってしまった……」

 

 

 少年とも言えた容貌も、異世界にて三年という月日を経て青年へと成長させた。

 そんな青年が朝っぱらから情けない声をあげながら地団駄を踏む姿は実にシュールであり、訳あって三年前からお世話になっている異世界の集落に住まう住人達は、地面に膝までついて項垂れている青年を見て、『ああ、いつものね……』とばかりに苦笑いを浮かべていた。

 

 

「何がダメだったんだ? いきなりベッドインを匂わせた発言がダメだったのか?」

 

 

 少年から青年へと成長しても、中身は盛った中学二年生みたいな精神のままである青年は此度の敗北の原因が何なのかを一人考えようとしていると、そんな色々と可哀想な人状態になっている青年に近付く者が一人。

 

 

 

「朝っぱらから何を騒いでいるんですか……」

 

 

 どこから聞いても呆れ果てている様な声の主は青年とあまり年の変わらなそうな少女であり、ブツブツと言っている青年の傍まで接近すれば、青年が顔を上げる。

 

 

「なんだシアかよ。

ほっといてくれ、今俺は男としての敗北感でナーバスなんだい」

 

「1500回以上も不毛通り越して無駄な事をしてる人が今更ナーバスになんてなるわけがないでしょうが」

 

「ぐ……ハッキリ言ってくれるね……」

 

「そりゃあ、最初は血塗れのヤバイ人かと思って怯えていましたけど、中身がこんなちゃらんぽらんな人だとわかってしまえばこうもなりますよ―――イッセー」

 

 

 薄い空色の髪を持ち、その頭部には兎のような耳が生えている少女の遠慮ゼロな言い回しにイッセーと呼ばれた茶髪の――兎のような耳は生えていない青年はぐぬぬと悔しそうにシア――の胸元付近をガン見する。

 

 

「ぐ、三年くらい前はびくびくおどおどのまな板娘だったくせに、そんなメロンを搭載しおってからに。

あんましバカにしてっとその乳ヒーヒー言うまで揉むぞちくしょーめ」

 

 

 図体は成長しても、中身が中二男子のままであるイッセーのドストレート極まりないセクハラ発言に、言われたシアは激怒する――

 

 

「構いませんよ、はいどーぞ」

 

 

 ―――事はなく、寧ろ揉んで結構とあっさりと胸を張って見せた。

 そう、この三年の間目の前の青年からもたらされたエキセントリックな経験や冒険を経てシアは知っていたのだ。

 

 

「え!? い、いやいいよ。

流石に今のは冗談だし」

 

「…………」

 

 

 言動と行動こそ御用案件なのにイザその状況を目の前にすると途端にヘタレまくる――割りと口だけ男であることを。

 

 

「ホントにヘタレ男ですねイッセーって……」

 

「う、うっせーやい! やろうと思えば出来るわい! でもやったらシアの親父さんにぶっ飛ばされるからやらないだけだい!」

 

「うちのお父さんは寧ろ『イッセー君以外は許さん』って言ってたけど?」

 

「そうだとしても俺の好みは年上なんだよ! 未亡人とか人妻なら尚良し!」

 

「………」

 

 

 それに加えてどこで捻れたのか、その性癖がおかしなことになってしまっている。

 だからナンパが成功するわけがないとシアは思うのだが、そこに関しては敢えて言わず、人妻やら年上やら未亡人女性の良さを無駄に力説しているイッセーを白い目で見るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「それで? 何か用でもあるのか?」

 

 

 結局そこから1時間は続いた講義を全て聞き流しているとは思ってもいないイッセーが、シアに何か用かと尋ねる。

 

 

「もう忘れてるのですか……。

昨日約束したでしょう? 私の『未来視』で観た『二人組』が今日ここから近い場所に現れるから、確認をしに行くって」

 

 

 シアという兎人族の少女は、この世界においては亜人という名称で分類される。

 当然この世界には他にも種族が居るのだが、亜人は基本的に『魔力』という概念を持たない種族である。

 

 しかし、このシアは亜人である筈なのに魔力を持ち、そして操作もできる特異な存在だった。

 更に固有の魔法である未来視という、仮定した未来を観る力を持っいる。

 

 それはつまりどういう事かといえば、簡単に言えばシアは亜人としてはかなりの異端であり、当然兎人族以外の他の亜人種族達からは『危険な存在』と見なされており、事実シアを含めた兎人族は現在亜人族が住まう国から完全に追放されてしまっていた。

 

 

「あー、ちょっと前から見える見える言ってた奴か。

そういや一緒に見に行くみたいな話になってたね」

 

 

 加えて兎人族が追放された理由のひとつが、シアが入れたお茶を呑気に飲んでいるイッセーだ。

 

 

「シアや兎人(ハウリア)族の皆にゃあお世話になりっぱなしだし、そもそも俺なんぞさっさと追い出してりゃあ今頃『フェアゲルベン』に帰れたかもしれないってのに、どこから現れたかもわからん、人間の俺を迎え入れてくれてるからなぁ」

 

 

 イッセーは特殊な事情があるにせよ、根っこの種族は人間だ。

 数多の亜人からすれば人間を迎え入れている兎人族があり得ないと考える訳で、追放しろという他の亜人達からの声を『ある理由』により兎人族の代表にてシアの父親であるカム・ハウリアが拒否してしまった事で、現在ハウリア族は故郷(クニ)亡き民となってしまったのだ。

 

 

「その事は私達が決めた事だからイッセーは気にしないでって、何度も言ってるでしょう?」

 

「そりゃあそうだけどよー……」

 

「それに、どちらにしても私が生きている限りは国には戻れません。

争う事自体苦手で、戦うことすらまともに知らなかった私達を今までずっと守ってくれたイッセーを追い出すなんて絶対に、今後も――というか永久にありえませんから」

 

 

 そんな背景もあり、現在イッセーを迎え入れたハウリア族は住まいを転々としながらの生活を送っている。

 現在周辺が険しすぎる山脈を拠点にしているのもそれが理由なのだ。

 

 

「イッセーが私達に戦い方――いえ、生き抜く方法を教えてくれたお陰で、私達は今日まで帝国兵達の襲撃にも対抗できました。

間違いなくイッセーが居なかったら今頃私達は捕らえられて奴隷商の商品にされているか、殺されているかのどちらかでしたからね。

つまりイッセーは私達にとっての恩人なんです。そして私にとっては三年前から変わらない――ヒーローなんです」

 

「お、おぉう……。

前の世界じゃ面見られる度に罵声浴びせられながら殺しに来ようとする奴しか居なかったせいか、何時言われてもむず痒いな……」

 

 

 かつての世界では齢5歳にして『異常者』と呼ばれ。

 15になるまであらゆる種族や神にすら狙われ続け、やがては世界そのものから拒絶までされた人生を送ってきたイッセーは、悪意や嫌悪といった感情を向けられる事には慣れすぎて何も思わなくなったが、逆に好意といった感情を向けられる事には三年経った今でも慣れてはいないらしく、誤魔化すようにひとつ咳払いをする。

 

 

「ん……それじゃあお前が見たって奴等を見に行こうか。

その未来視曰く、その二人の仲間にシアがなって何かと戦うんだろ?」

 

「はい、あくまで未来視ではですけど」

 

「……。まさかその戦う相手ってのは俺じゃあないだろうな? その仲間になるかもしれない奴等はともかく、シア相手に殺し合いなんてしたくないぞ」

 

「変な心配しなくても、イッセーではありませんよ。

安心してください、イッセーはこれからも私と一緒です」

 

「えー……? それはそれで微妙に嫌だな。

だってお前、俺がナンパしようとするとすげぇ邪魔してくるし……」

 

「……逆にどうして私が邪魔をするかについては考えないんですか?」

 

「えーと、俺の困り顔が見たいからとかか?」

 

「……………………」

 

「は? 違うの?」

 

「はぁ………」

 

 

 これは世界に拒絶され、世界を追い出された怪物と異端者として故郷を追い出された少女のお話。

 

 

 

「なんだお前等は……?」

 

「ハウリア族と人間……?」

 

「よくぞ聞いてくれました! 私達は故郷(クニ)亡き民、流浪の戦士! シア・ハウリア!」

 

「――の、御供のしがない赤龍帝でーす」

 

「はぁ?」

 

「……赤龍帝?」

 

 

 

 本来ならダイヘドアなる魔物に追いかけられていた場面で遭遇し、流れで助けられるという出会い方であったシアだが、適当に御供を自称しているイッセーとの三年間により一族もろとの基礎の戦闘力がアレしていたので、寧ろ彼等が思わず足を止める程ぶちのめしていたり。

 

 

「すっごく簡単に説明すると、私は亜人ですけど魔力が扱えて、固有の魔法である未来視でアナタ達の姿が見えたので、どんな方達なのかなーって思って見に来た次第です」

 

「……と、言ってる彼女に付き合わされてる次第です」

 

「「…………」」

 

 

 色々と緩い自己紹介をされてリアクションに困らせたり。

 

 

「何故亜人であるハウリア族が人間と仲良さそうにしているのかが気になる……」

 

「え、私とイッセーがそんなに仲良しに見えるんですか!?」

「み、見た限りは……」

 

「イッセーイッセー! 確定です! この人達は絶対いい人です! だって私とイッセーが仲の良い夫婦に見えるって言ってます!」

 

「どう聞いたらそうなるんだよ、絶対に言ってねーっての。

あのアレだ、俺の場合はちょっと複雑な事情が多くあってだな……。

まあ、強いて言うならこの子とこの子の一族に世話になってて……」

 

 

 本来では存在しないイッセーが居るせいか、寧ろ二人の方から興味を持たれたり。

 

 

「はぁ!? べ、別の世界!?」

 

「あー……信じられませんよねぇ? でもそうとしか――」

 

「いやそうじゃねぇ! オレも別の世界から来たんだよ!

いや、召喚されたというべきか……」

 

「へ、召喚……?」

 

 

 話の流れで男二人にちょっとした共通の話が出てきたり。

 

 

「この世界の人間にキミは召喚されたのか……。

ただ、俺は別に召喚はされてないんだよなぁ」

 

「? どういうことだ?」

 

「いやー……俺の場合、前の世界で色々とやらかしすぎて追い出されたというかなんというか……」

 

「は?」

 

 

 されど来たプロセスが全然違ったと知ったり。

 

 

「イッセーが来たのは三年前ですよ。

本当に文字通り、血塗れ状態で空から降ってきたんです」

「三年……!? お前三年も前からここに居るのかよ?」

 

「まあ……」

 

「血塗れになってたって、どうして?」

 

「それは―――」

 

『口で説明するのも面倒だから、いっそオレを介して記憶をこいつらに見せたらどうだ?』

 

「「!?」」

 

 

 ここで登場するパパなドラゴン。

 

 

「……………………」

 

「お前って……すげぇことやってたんだな?」

 

「あー……そうしなければまともに生きれなかったからというかね……。

ははは……でも確かにこうして改めて自分のやらかしてきたことを客観的に見てみると引くわ……」

 

「でもお陰でイッセーと出会えましたけどね!」

 

「そんなポジティブな事言ってるのって多分シアとハウリア族の皆くらいだぞ……」

 

 

 そのパパなドラゴンから見せて貰ったイッセーのエグい過去を見て戦慄する二人組だったり。

 

 

「取り敢えずオレ達は樹海を目指してるんだが……」

 

「案内とかしてくれたりは……」

 

「え、あー……一応案内とかは可能だけど、どうするよシア?」

 

「ハウリア族は国から追放されてしまいましたからねー……。

主に私が魔力を持ってるのと、イッセーを迎え入れてたって理由で……」

 

 

 こうして南雲ハジメとユエは、緩い空気を出しまくる癖に底が見えない二人組と出会うのだった。

 

 

「や、シアはああ言ってるけど、大半は俺のせいなんだよね」

 

「それはお前が人間だからか?」

 

「いやー……それもあるけど、一番は多分、亜人の国に住む年上のお姉さん方を片っ端からナンパしまくって国の上の人達をマジギレさせたからってのかデカイな。

流石に各一族の族長の奥さん口説き回ったのはマズかったね」

 

「「………」」

 

「おぉう……初対面で既に『あ、こいつただのバカだ』って目をしないでくれよお二人さん……」

 

「バカだと思われて当然です。

誰彼構わず声をかけては卑猥な台詞ばかり並べる時点でおバカ丸出しですよ」

 

 

 ヘラヘラしてるようで底が見えない――おバカな男と、そんなおバカによって未来視に囚われない道を切り開けた少女と。

 

 

「そう言う割りにはシアはイッセーと一緒に居るけど……」

 

「ま、まあ……。

普段はちゃらんぽらんですけど、ちゃんとカッコいい所もあるというか、可愛いところもあるというか……。

私達の一族が国を追われても今日まで無事に生きてこられたのはイッセーが他の種族からの攻撃からずっと守ってくれてたので……」

 

「だから仲良さそうにしてるって言った時あんなに喜んでたんだ?」

 

「あはは……そういう事です。

だからまあ、確率としては限りなく低いですけど、もしイッセーのあの下手なナンパに引っ掛かる人が居ないか見張らないとって……」

 

「それはまた前途多難だな……。

だって言ってる側からアイツ向こうで偶々通りすがった亜人の女に声かけてるぞ」

 

「なっ!? ちょ、ちょっと待っててくださいね! こらーイッセー!!!」

 

 

 

 始まらない、続かない。

 




補足

完全に精神のタガが壊れる前にすっ飛ばされたら的なIF

壊れる前なので原作イッセーにちょい近め(性癖は年上に歪められてる)

非人間族に対しても嫌悪も殺意もないし、寧ろ世話になれば全力で返そうとする。



ハウリア族はイッセーによって守られており、その数はほぼ減ってません。
寧ろ、『生き抜く方法』を三年かけて一族全体に浸透させた結果、平時は何時ものハウリア族でありつつの、スイッチ入ったら狂犬ならぬ狂兎となって外敵を蹴散らす傭兵一族化してます。



続きは………考えてない

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