色々なIF集   作:超人類DX

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……メルドのとっつぁんェ……


メルドのとっつぁんの終わらぬ胃痛

 

 

 

 宿敵との再会を一応は果たした最後にて最悪の赤龍帝の対となる最後にて災厄の白龍皇とかつて呼ばれし青年はヴァーリ・ルシファー。

 

 今はルシファーの名を棄て、ただのヴァーリとして生きている彼にとっての生きる意味は、かつて完全敗北となった赤龍帝へのリベンジ。

 

 ただの人から、狂気にも近い壮絶な積み重ねを経て人でなし(・・・・)へと到達した宿敵の強さはこの度の再会で確認する限り、やはり今の己の一歩上を行っているに加え、かつての頃の彼ならば考えられない――仲間が居る。

 

 その仲間の人間の少女達もまた彼の精神性に近いものを掴んでいる。

 

 実に厄介で、実に厳しい局面だとヴァーリは危うく殺されかけた魔人族の女性を回収して現在己が身を置く魔人族の住まう領土へと帰還をする。

 

 

「フリード様にはなんて説明をするんだいヴァーリ?」

 

「ありのままを説明するしかないだろう。

それで理解と納得をするかは彼次第だけどな」

 

 

 世界は異なるとはいえ、半分は魔の血を――それも王族の血を宿すヴァーリの魔人族側での立場は少々複雑だったりする。

 現にカトレアにオルクスの迷宮での任務を与えた魔人族であるフリード・バグアーに事の説明と『忠告』をするために城の中を進むと、既に来ることを察知していたのか、褐色肌の赤髪の男性が、部下の魔人族の男性を従えながら姿を現す。

 

 

「戻ったかヴァーリ、カトレア」

 

「フ、フリード様!」

 

 

 赤髪の男性を前に、生粋の魔人族であるカトレアは慌てて膝を付きながらフリードと呼ばれる男性に頭を垂れるが、ヴァーリは軽く会釈だけをする。

 

 

「危うく殺される寸前だったが、なんとか間に合ったよ」

 

 

 立場上はフリードが上であるが、両者の間における格差はほぼ無いが故の気安い言い方をするヴァーリに、フリードの傍に居た男性の視線が険しくなる。

 

 

「アハトドを連れて行かせたが、それすら全滅させられたのか。

……それは例のイレギュラーの四人組か?」

 

「わ、私に関してはその者達で間違いはございません。

しかし――」

 

「―――――赤龍帝だ。奴が現れた」

 

「!?」

 

「っ!?」

 

 

 フリードの口にするイレギュラー四人組というのは南雲ハジメ達の事なのだが、ヴァーリはそれ以上にまずい存在としてその名を口にするとフリードは驚愕に目を見開く。

 

 

「……確かなのか?」

 

「ああ……アンタ達もここに居ても感じた筈だ。

紛い物でもなんでもない、過去オレが完全に敗北を喫したあの赤龍帝だ」

 

「…………」

 

 

 最早ハジメ達イレギュラーの存在が霞むほどの凶悪にて強大な存在の力の波動は確かにこの領土――いや、世界全体を震撼させるだけあってフリード達も感じ取れてしまっていた。

 

 故にフリードの表情は厳しくなっていく。

 

 

「よく無事でいられたな。

お前の話からして、赤龍帝は非人間族全てを理由も無く殺す狂人だろう? 現にこちら側も何人か奴に殺されている」

 

「ああ、どうやら奴の周辺――所謂人間関係とやらが少々厄介な事になっているらしくてな。

特にアンタの言っていたイレギュラーの連中だったか? そいつ等から敵意を持たれているらしい」

 

「……ほう?」

 

 

 ヴァーリが見た限りの情報に耳を傾けていたフリードが興味深そうな顔をする。

 

 

「早急に新たな神代魔法を手に入れる必要が出てきたか……。

だがしかし……」

 

「ああ、アンタ等にとっては納得したくもない話だろうが、奴を相手にはそれではまるで足りない。

現にそのイレギュラーとやらは神代魔法の一部を手にしていたのだろう? ……途中まで見ていたが、話にならなかったぞ」

 

「………。だろうな。

お前に匹敵――もしくはお前以上の強さなら神代魔法なんぞ奴にとってすれば児戯にもならん。

しかしそれでも残りの神代魔法の確保はしておく。

奴には児戯以下にしかならぬとしても、人間共に対しては有利に働くだろうからな」

 

 

 かつてヴァーリの強さを『身以て知った』からこそフリードは慎重になろうとする。

 

 

「今後、赤龍帝が襲撃をすることになったら、ヴァーリ……お前達に頼むことになるが……」

 

「当然だ。

その為だけにオレは今まで生きてきたのだからな」

 

「…………すまぬ。

我等もできる限りの事はするが」

 

 

 弱腰だと批判されようとも構わない。

 可能な限り赤龍帝とは戦わず、そうなってしまったらヴァーリを頼る。

 誰よりもヴァーリの強さを知るからこそフリードは立場も関係なくヴァーリに頭を下げると、ミハイルという名の魔人族の男は微妙に納得できない顔をヴァーリに向ける。

 

 

「カトレア、お前も今後もしヴァーリと共に居ない状況で赤龍帝と出会したら、それがどんな任務であろうと放棄し、撤退をしろ」

 

「は、はい……!」

 

「そ、そうだカトレア! 危なくなっても私が――」

 

「ちょ、気安く触ろうとしないでくれるかい……?」

 

「んがっ!? くっ……!」

 

「……? 何故オレをにらむ?」

 

「ふんっ! 認めんぞ! お前みたいな『半端者』がカトレアに……!」

 

 

 そう悔しげに吐き捨ててからその場を立ち去るミハイルを、最後まで意味が解らずに首を傾げるヴァーリにフリードがため息を交えながら代わりに謝る。

 

 

「すまん。

後で奴には言っておく」

 

「別に構わないぞ。

半端者であるのは間違いないしな」

 

「その半端者呼ばわりする愚か者共に限って、お前がしてくれたことを何一つ解ろうとはせんのだ。

第一、そんなことを言えばますます――なぁ?」

 

「ええ、フリード様の手前抑えましたが、正直言えば今すぐミハイルを張り倒したいです」

 

「???」

 

 

 本人だけが首を傾げる傍で、カトレアの言葉に苦笑いを浮かべるフリード。

 ……ヴァーリというイレギュラーにより、どこか平和な空気が流れているのはきっと気のせいではないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

  中間管理職的な立場のメルドの胃へのダメージは現在進行形でダイレクトアタックだった。

 折角、ほんの少しは話が良い感じになりかけていたところに、またしても生存していた南雲ハジメの一言で元のギスギス状態に戻されたのだから。

 

 

「だ……だの゛む゛……! い、今は互いの持つ矛をおざめ゛でぐれ゛……ごぼぇ!?」

 

 

 メルドは必死だった。

 それこそ勝てる見込みゼロな強大な魔物と予期せず遭遇してしまった時よりも必死だった。

 ドライグとティオに背中を擦って貰いながら、床を這うようにしながら今にも殺戮現場と化しそうな空気を放つイッセー達に懇願するその姿は、光輝達も同じようにイッセー達に懇願するようになるには充分なものがあった。

 

 

「お、俺からも頼む……。

このままではメルドさんが……」

 

『………………』

 

 

 死人同然の顔色となるメルドが見てられないと一緒になってハジメ達――ではなくイッセー達に頭を次々と下げていく光輝達に、イッセー、恵里、鈴、雫の四人は無言で顔を一度見合わせてから殺意を霧散させる。

 

 

「ちっ、わかりましたよ。

ったく、人間に言われちゃあ仕方ないな」

 

 

 どちらかと言えば人間の味方ではあるイッセーが殺意を引っ込めれば、恵里と鈴と雫も仕方ないと同じく戦意を解く。

 

 

「あ、ありがとう……本当に」

 

「あ、あれだよな? 取り敢えず一旦南雲達には退出して貰った方が話も纏まりやすそうだし……」

 

「そ、そうそう……それが良いわ」

 

 

 本人達は燃焼不良気味な顔をするとはいえ矛を納めてくれた事に光輝達はほっとなりつつチラリとハジメ達の方を―

 

 

「「「「……………」」」」

 

 

 ――――いや、ハジメ達だったモノを見て胃の中のモノが逆流しそうになるのを必死に抑える。

 

 

「ぁ……ぁ……」

 

「こ、これが人間のすることなんですか……?」

 

 

 一瞬でユエやシア……挙げ句の果てには子供であるミュウといった非人間種族を八つ裂きにした三人のタガの外れっぷり。

 腕をひきちぎり、口を裂き、歯をぶちおり、両足を切断し……皮膚を引き剥がすという拷問にすら通じる痛め付けっぷりと、その躊躇いの無さは恐怖そのものでしかない。

 

 

「あ……が……」

 

 

 特にひどいのが、恵里によって徹底的に八つ裂きにされたハジメであり、両目の眼球は潰されるわ顔面は誰と判別できなくなるくらいにグチャグチャにされるしと、ある意味でイッセーと同等かそれ以上の残虐性がうかがえてならない。

 

 

「おい」

 

「「ひっ!?」」

 

「本音言うとアンタ等もこいつらみたいにしてやりたくて仕方ないんだけど、止められた以上は勘弁してあげるよ。

だからさっさと片付けておいてね? そのボロクズ共をさぁ?」

 

 

 返り血まみれの恵里が、完全に怯えきっている「人間」である愛子と香織に言うその台詞も如何にもイッセーが言いそうな台詞である。

 

 

「これが最後の通告よ香織。

南雲くんと今後幸せに生きたいのなら、私たちには関わらない方が良いわ。

わかるでしょう? 私たちとあなた達では住む世界が違うのよ」

 

「最後のサービスで今与えた傷だけは否定してあげる。

けど、それでも尚同じことをしたら今度は完全に息の根を止めて否定もしないからね」

 

「アレだアレ、いっそその白髪小僧を教祖にでも見立てて宗教的な活動でもすれば良いんじゃねーか?」

 

 

 皮肉っぽくそう言うイッセーによって締められた事で地獄絵図その2は終わりを迎えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぅ……」

 

「おい、メルドとかいう男が完全に滅入ってしまったぞ」

 

「この分では暫く動けそうにないのぅ……」

 

 

 これ以上この場に居られても話が進まなくなるということで、最後の否定により外傷だけは戻ったハジメ達を部屋から追い出した光輝達は、改めて今度こそお互いの今後について話し合う事に。

 

 

 

「? 香織まで出して大丈夫なの光輝?」

 

「ああ……話の限りでは香織的には南雲の傍に居る方が大事なんだろうし」

 

「へぇ? あの光輝とは思えない台詞ね?」

 

「前までのオレなら勝手に香織はオレの傍に居続けるだとか思ってたけどな。

しかし思い返せばそれはオレの勝手な決め付けでしかない」

 

 

 イッセー達の壊れっぷりと、それでもハジメに対する香織の思い方を目の当たりにしたせいなのか、妙に精神的な変質を見せる光輝の冷静な言葉に、雫はただただ驚く。

 

 

「それに、今後を考えれば香織はここで南雲達と共に外れて貰った方が良いだろう?

オレとしても幼馴染みが何度もお前達に殺されかける姿は見たくはない……」

 

 

 いっそここで香織には離れて貰った方が香織的には幸せだろうと話す光輝にクラスメート達も次々とうなずく。

 

 

「ああまで南雲南雲って言われちゃあな……」

 

「このまま無理に居て貰ったところで、絶対に上手くなんていかないだろうし……」

 

「そうだよね。

まあ、ちょっとは意外だったけどさ。

あの南雲に香織が……って」

 

 

 言葉こそオブラートに包んでいるものの、全員が一致して香織やハジメ達を厄介者と見なしている。

 

 

「それでよ兵藤? 俺達的にはやっぱりお前達の力が無いと今後を生き残れる自信が全く無いんだ。

そもそもどうも俺達をこの世界に召喚した奴等の事も胡散臭いし……」

 

「檜山の言うとおりだ。

……あまり大きな声では言えないがな」

 

 

 イッセー達よりも時間的には長くこの国に居た者達の抱いた印象を次々と吐露していきながらイッセー達に力を貸して欲しいと再び頭を下げる。

 

 

「だからオレ達は引き続き『何も知らずに戦ってる召喚者』という体で行動をするから兵藤達はオレ達とは別行動をしているというスタンスを続けるというのはどうだ? 定期的にお互いがこの世界で得た情報を共有するんだ」

 

「それならこの国――もしくは教会連中の監視的なものに煩わされる心配も少なくなるだろう?」

 

「「「「…………」」」」

 

 

 

 かなりこっち側を気遣う条件を提示してくる光輝やら檜山達に、イッセー達は全身がむず痒くなる。

 

 

「いや、その……アレだ。

それで良いってんなら良いがよ……」

 

「それって殆どアナタ達側の得にはならないし、下手したら死ぬかもしれないわよ?」

 

「それはそうだが、そうでもしないとそれこそオレ達はお前達の力に寄生するだけのお荷物にしかなれないだろう?」

「こうなっちまったが、南雲や香織もちゃんと元の世界に帰れるようにはさせたいし……。

まあ俺に関しては今更遅すぎるが、アイツへの詫びみたいなもんだからよ……」

 

 

 雫からすれば誰だお前レベルの考え方の変わりっぷりを示す光輝や檜山は同じく戸惑っているイッセーにこうも言う。

 

 

「オレ達は引き続き『無知な召喚者』として居る。

だから少しの間だけで良い――その間を生き残れる戦い方をオレ達にも教えてくれ」

 

「雫達が短時間でそうなれたのはお前が教えてたんだろう?」

 

「………」

 

「もしかしたら雫達はオレ達には無い才能を持っていたからこそなのかもしれないが、少しでもお荷物にならない為に知りたいんだ――頼む」

 

 

 

 雫を短時間で自分達の遥か上の強さまでに至らせたその一部を、足手まといにならない為に知りたいと何度も頭を下げる光輝達。

 これこそ南雲君達が聞いていたらまた騒ぎだしそうね……と思いつつ雫はイッセーの顔を伺うが、その表情は厳しいものがある。

 

 

「俺がこの子達に叩き込んだものは、誰もが至れるものじゃあなく、仮にやり方を教えたところで何も得られないで終わる可能性の方が高い。

それならばこの世界に召喚された際に持った力を引き続き磨く方が良い」

 

『…………』

 

「………。それを踏まえてなら、まあ……」

 

 

 徒労で終わるのかもしれないという忠告をしながら頷いたイッセーに光輝達の表情が明るくなる。

 

 こうして恵里、鈴、雫を加えてのイッセー式鬼畜トレーニングを光輝達は受けることになったのだが……………………その明くる日の事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、畑山の奴が説明すら無しに白崎と共に南雲達を連れて国を脱走してしまった……」

 

『……………』

 

 

 案の定愛子は香織と協力までしてハジメ達と共に国から無断で出ていってしまったのだった。

 

 

「こ、これによりアイツ等に懸賞金が掛けられる――つまり指名手配だ」

 

「なっ!? そ、それは香織にもですか!? そ、そんな……」

 

 

終わり




簡易人物紹介


ヴァーリ・ルシファー

D×Sシリーズのバッドルートのヴァーリきゅん。

かつての世界にてイッセー、白音たん、ヴァーリきゅんの三人を合わせて『災厄の三竦み』と呼ばれていた。

しかし当時の実力差は白音たん≧イッセー>>>ヴァーリきゅんであり、三竦みの間では一番早く死んだ。

しかしこの『ある意味憐れな世界』にて相棒の黒猫や白龍と共に蘇っており、魔人族側として生きて今に至る。

しかしそれでもこの世界における強さは人外レベルであり、魔人族のリーダーであるフリード・バグアーはそんな彼による影響により原作の数千倍は強く、原作ではハジメに殺されたカトレアもその領域に進みつつある――――――原作よりも魔人族側の戦力が厄介にもアップしている。


 つまるところ、仮にハジメ君がえりりんに力を破壊されずに居たところで無理ゲーだったりするし、イッセー自身も黒歌も生存していると聞いたことで現状真正面で戦うのはリスクが高すぎると考えている程。

ちなみに、黒歌姉さん自身は白音たんまでとは言わぬが、災厄三竦みのひとつした下のラインの力にまで到達している。

 そんなヴァーリきゅんだが基本的に天然であり、ラーメン大好きなのはそのままであり、そんな天然さにカトレアさんが懐いたせいで本当なら恋人になってた筈のミハイルに思いきり対抗意識を燃やされている。












 塔城小猫(真名・白音)

 下手したら色々な全シリーズ中トップに君臨する、永久なるロリ猫。

 悪魔の下僕時代に、その理由から最後まで狂犬みたいに牙を剥き続けたイッセーに惹かれ、一度完膚なきまで壊された事で所謂『悟り』にも近い狂気を解放。

 概念も因果も無差別に喰らい尽くす精神を爆発させ、イッセー以上に無差別に生物を喰らう事で一度はイッセーを超えるまでに到達してみせた狂気の癒し系ロリ猫。

 しかしそんな彼女が求めるものはあくまでもイッセーだけであり、その為に到達した力もなにもかもが副産物でしかない。

 だが結局は最期までイッセーに受け入れられる事はなく、白音たんの領域を少しだけ超えたイッセー自身によって殺される事になるのだが、本人は最期の最期まで――皮肉にもイッセー自身を心配し、そして愛していたという。


 そんな白音たんがもしも生存し、この世界に居た場合。

……まー……二秒で『神』はシャクシャクされるし、イッセーに舐めた真似をする者は種族関係なくシャクシャクされる。

………えりりん達とは仁義なきバトルが始まるでしょうし、ハジメ君達は――――まーうん。

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