色々なIF集   作:超人類DX

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続きだけど、まったく話は進みません


赤い龍と黒い竜

 

 

 足りない。

 いくらカス共が徒党を組んで来ようとも、まるで足りない。

 

 

「何でか知らないけど、かなりの数の魔物が種族関係なく徒党を組んでこの町に近づいてくるみたい」

 

「へぇ……?」

 

「流石に町の人達も気付いちゃってるみたいでね。

町に残っていた私たちに助けを求めているんだけど……どうするいっちー?」

 

 

 昔――俺にとっては忌々しくも最初に生まれた世界を生きていた頃と違って、いくら畜生共を殺しまくっても、進化の気配がまるで感じないし、手応えが無さすぎる。

 

 当時の俺がまだ弱かったからなのか、それともこの世界の畜生共のレベルが平均して弱いからなのか。或いは両方か。

 

 

「谷口は、町の連中に『普段通りに生活をしていろ』と言え。

……まあ、それ言った所で連中がはいそうですかと言えるメンタルしてるとは思わんが……」

 

「えー? それじゃあどうすれば……?」

 

「町全体を覆う程度で構わないから、町の連中共を結界で閉じ込めろ。その間に片付ける」

 

 

 解る事はただひとつ。

 俺達が壁を乗り越える為にはもっと強い敵が必要だ。

 俺達を殺せるだけの――俺達に死を覚悟させる程の敵が。

 

 

「………」

 

『数だけなら7・8万程度だが、どれもこれも弱いな』

 

「だろうよ」

 

「一応、町長さんにはそれらしい事を言っておとなしくして貰ったし、結界も町の周りを覆うように張っといたよ」

 

「どうするのイッセー?」

 

 

 まあ、居ないなら居ないで構わない。

 何故なら俺には『進化』に困らないだけのパワーを身に付けんとする子が近くに居るから。

 

 

「こうするさ――行くぞドライグ」

 

『…………。完全にオーバーキルになるだろ』

 

「構うか。

たまには『発散』しないと、色々と溜まっちまうだろう?」

 

『まあ、それもそうだな。

なら―――――融合するぞイッセー』

 

「ふ、やっぱりお前は最高だぜ―――ドライグ」

 

 

 

 俺を殺せるかもしれない子。

 ずっと奪われてきた女の子。

 

 ……多分俺のせいで色々と台無しになっちまった女の子。

 

 

 ――Welsh Dragon Fusion!――

 

 

「いっちーの姿が変わった……」

 

「これがぼくも初めて見る、イッセーの本気の姿……」

 

「『………」』

 

 

 歴代の赤龍帝の誰しもが到達しなかった、俺が生まれた世界でガキだった頃に見ていたアニメを参考に、ドライグと共に到達した新たなにて最後でもある姿となった俺を、この子達は―――俺からしたら無垢に見える顔で見ている。

 

 あぁ、俺なんぞと会わなければまともな人生って奴を送れたかもしれないのに――――いや、恵里は違うか?

 

 

「『一瞬で終わらせてやる」』

 

 

 こっち側に踏み込んてしまった以上、そしてこの子達が人間である限り、俺はこの子達に対しする責任は自分なりに果たしていくつもりだ。

 

 その為には、この子達に降りかかるくだらない柵は全部排除してやるさ。

 

 

「『アーッハハハハハハハァ!! 喜べ畜生共ォ! 一匹残らず纏めて仲良く皆殺しにしてやるッッ! ビッグバン―――』」

 

 

 傲慢? 最低野郎? 結構だな。

 俺はあのクソ悪魔のメス共の寄生から抜け出した時から終わっちまってるんだからよォ!!

 

 

「『ドラゴン波ァァァッ!!!」』

 

 

 それが二つで一つ、最後の赤龍帝である俺達だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 数万の魔物の群れを一撃でこの世の塵へとしてしまったイッセー――否、最強最悪にて最後の赤龍帝。

 たった一撃の赤き巨大な閃光が魔物の軍勢を飲み込む光景は、常人達にすればまさに神にも悪魔にも見えるだろう。

 

 

「英雄よ……!」

 

「……は?」

 

『急になんだ? 町の人間達がお前に向かって膝をついて両手で祈り始めているが……』

 

 

 少なくとも、その光景を目にしたウルの町の人々から見た青年は、それまで豊穣の女神と称えていた畑山愛子が霞むだけの神々しさに誰しもが膝を付き、両手を合わせ――そして祈るように青年を崇めるには十分だ。

 

 

「えーと町長さん? 急にどうしました?」

 

「こ、これまでの数々の非礼! 知らぬ事だったとは言えお許しを!」

 

「え、えぇ……?」

 

 

 突然へりだくる住人達に割りと戸惑うイッセー。

 しかしイッセーは知らない。

 

 

 

「なんなんだよ……。

例によって力を見てすり寄ってんのか?」

 

「多分違うんじゃない?」

 

「どっちかと言うとイッセーのパワーを目の当たりにして平伏してるって感じじゃない?」

 

「なんじゃそりゃ……」

 

 

 

 

 かつて、恵里や鈴と出会う前――そう、自分が生まれた世界にて、人間達から思われていた事を……そして何時しか伝説としての語られていた事を。

 

 

 

 イッセーが生まれた世界では、ある伝説があった。

 

 

 

 力の無い人間。

 弱き人間。

 自分達の故郷を悪魔や堕天使や天使といった存在に乗っ取られてしまい、それらから守れることすらできなかった脆弱な人間。

 

 そんな弱き民の前に立つは一人の青年。

 

 人であり人を超越した人間の男。

 

 青年の背中には常に弱き人間――弱者の群れが居た。

 

 

 弱い人間達の味方? 否。

 正義の味方? さらさら否。

 

 彼等のような力を持たない人々の前には必ず―――

 

 

 強き人ならざる存在が居た。

 

 

 元は人である青年は、一度魔によって尊厳や自由を踏みにじられたその瞬間から決めていた。

 

 己の立つ場所は、常に強者となる人ならざる存在共の前だと。

 

 

 そこに正義は無く、悪も無く、そして誰かの為でも無い。

 

 あるのは常に殺るか殺られるか。

 力の解放による闘争のみ。

 

 何故なら青年の精神(アブノーマル)は常に餓えていた。

 

 抑えきれぬ進化(アブノーマル)への欲求に。

 

 

 故に男は二度と奪われぬ為に闘い続けた。

 

 種族を問わず。

 

 時間を問わず。

 

 人なざる存在達を屠る事で青年はより先の領域へと進み続けた。

 

 やがて、人間達にとっては恐るべき強大な種族達は青年を恐れ、身を隠すようになった。

 誰しもが青年の顔色を伺うようになった。

 

 誰しもが弱い筈の人間達に恐怖するようになった。

 

 たった一人の、人間でありながら人間を超越した青年により世界のパワーバランスが変わった。

 それは世界規模の革命にも等しき行為。

 

 

 故に弱き人々はその青年を―――たった一人で世界をひっくり返した赤龍帝。

 

 

 

 

 

 神のように崇め――――天使のように愛した。

 

 

 そして、異界にまでその伝説が伝わることで事で、この世界の竜の一族達からは、英雄のように崇め、龍神のように称えた。

 

 

 

 それを知らない本人は、皮肉な事に別世界の人間達から崇められてしまったのだ。

 

 

「…………。それで、帰ってきたら妙に町の人達がアナタを崇めていたわけね」

 

「迷惑でしかねぇわ……まったく」

 

「本人はストレス発散のつもりで魔物を狩ってただけなんだけどねー」

 

「でしょうね……。

それで? なんで清水くんが見るも無惨な姿で吊るされてるのかしら?」

 

「その魔物をけしかけた張本人だから―――てのは別にどうでも良くて、このバカが喧嘩売ってきたからね」

 

 

それにまったく気付かないイッセーからすれば気色悪い連中としか思えずに居ると、ちょうど雫が見知らぬ少年を連れて町に戻っており、町の住人達のイッセーへの態度を当然ながら疑問に思う訳で。

 

 それを恵里と鈴が、首から下の骨という骨の全てを砕いて、逆さ吊りになっている清水少年についての説明を交えて、イッセーが一撃で数万の魔物の群れを塵にしたからだと話す。

 

 

「なるほど、清水くんが……」

 

「そ、そんな……本当に清水君が? いったいどうして……」

 

「さぁ? 理由なんて今さらどうでも良いんじゃないの? どっちにしろ魔物達はイッセーが本気の姿で消し飛ばしたし、清水自身もこの通り動けなくしといたし」

 

「私としてはイッセーくんの本気の姿というのが気になるのだけど……。

山を降りてる最中に感じた、例えるものが存在しないと思える程の凶悪な力の気配はイッセーくんだったのね」

 

「凄いんだよいっちーは! ドラちゃんとひとつになった姿に変身して、凄く大きなドラゴン波で魔物達を一発で消し飛ばしちゃったんだから!」

 

 

 ほぼ虫の息である清水が僅かに痙攣しながら吊るされている状況もショックだが、何より大量の魔物を使って、ほぼほぼ未遂とはいえ町を襲わせようとしていた事実に愛子は多大なショックを受けている。

 

 

「そんな事よりそこに居る女の人もそうだけど、何で南雲が魂抜けたような顔をしてるの?」

 

 

 見てみたかったと呟く雫に、内心得意気な気持ちになる恵里がふと見知らぬ人物が雫の後ろに隠れながらチラチラとイッセーを見ている黒髪の女性についてと、ユエとシアに肩を貸されながら、魂の抜けた顔で立っているハジメについて訊ねる。

 

 

「南雲君は――まあ、現実の世知辛さにセンチな気持ちになっているだけで、こちら女性は―――あー、イッセーくん?」

 

「なんだ?」

 

「多分もう気付いていると思うけど、この人は人間ではないわ。

名前はティオ・クラルスさん――竜人族よ」

 

「………」

 

『ほう? 竜人族か……まだ若いな』

 

 

 ハジメは半ば放置する形でイッセーにティオの名前と種族を教える雫に、イッセーは先程数万規模の魔物を皆殺しにしたばかりなのもあってか、特に殺気立つ様子はない。

 それを慎重に確認する雫は、先程から恥ずかしそうに雫の後ろに隠れながらチラチラとイッセーを見ているティオをジト目で睨んでいる恵里に対して牽制するつもりで打ち明ける。

 

 

 

「ティオさんは赤龍帝と呼ばれるアナタ達を探す為に人里にやって来たらしいのよ」

 

「……………」

 

「何で赤龍帝の事をそいつが知っている? って顔ね。

どうやらアナタ達の事はこの世界の竜族達には伝説として語られていたようなのよね」

 

『なんだと? それはありえん話だろう。

何故この異なる世界でオレ達の名が……』

「さてね、理由は知らないけど、とにかくこのティオさんはアナタ達――特にドライグに会いたがっているのよ。

だから連れてきたった訳」

 

「………ドライグにだと?」

 

『………何?』

 

 

 流石のイッセーとドライグも少々面を食らう話だった。

 

 そしてこの後、ガッチガチに緊張をしたティオがちに地に額を何度も叩きつける勢いで平伏しながらイッセーとドライグに挨拶をしたのだが……。

 

 

 

「………………………………………………」

 

『こ、この小娘の声……!? に、似ている、あの悪魔の小娘の声に』

 

 

 

 その声が、喋り口調こそ全く違うものの、あまりにもイッセーの後の生き方をある意味決定させる元凶でもある悪魔の女――リアス・グレモリーに酷似していた事で、一瞬にして殺戮スイッチを入れそうになったのだが……。

 

 

「て、敵意なんてこれっぽっちもござりませぬ! 妾は――いいえ私はアナタ様に幼き頃から憧れを持っておりました! 異界の伝説にて英雄であらせられるアナタ様を!」

 

「……………………………えぇ?」

 

『あの悪魔女に似た声でこんな台詞を吐かれるのは違和感しかないな……』

 

 

 

 あまりにも自分達を見るその表情が輝きまくっていて、尚且つヒーローショーを見ている子供みたいなそれだったせいで、逆に戸惑いの方が強くなってしまい、殺戮スイッチが一旦OFFへと切り替えられてしまうのだ。

 

 

「おい、八重樫」

 

 

 声は確かに聞いているだけで八つ裂きにしたくなるものがあるのは間違いない。

 しかしその昔既にリアス・グレモリー本人を肉片になるまで存分に殴り殺してやった事もあるし、何よりそういった苦い過去は忌々しく思うものの既に過去の一つとしてある程度割りきっている。

 

 なので取りあえずイッセーは、このアホそうな竜の女を連れてきた雫に色々と訊ねる為に、何気に初めて名字とはいえ呼ぶ。

 

 

「はぅ!?!?」

 

「……は?」

 

 

 すると何故か今度は雫が妙な反応をするかと思えば、両手で顔を覆いながら踞るではないか。

 

 

 

「い、イッセーくん? い、いい、今私の事はじめて名前で……?」

 

 

 

 名前を呼ばれたら踞る理由がわからないイッセーからすれば、雫の反応は訳がわからない。

 

 

「…………そんな事はどうでも良いだろう。

それよりこれはなんだ? この今すぐにでも喉を潰してやりたくなる声してるバカそうなメスの竜は? どこから持ってきた?」

 

 

 そのあまりの変態的な態度のせいか、本来なら自分の人生のある意味岐路となったリアス・グレモリーの声にそっくりすぎて即殺しているであろうイッセーですら、恵里や鈴と共に引き気味に雫に説明を求めている。

 

 

 

「オレは……オレは……」

 

「しっかりしてハジメ……!」

 

「そ、そうですよハジメさん。

みんなで頑張ればきっと追い抜けますから!」

 

 

 ちなみに、何故か真っ白な灰になっているハジメやこっちを見て怯えているユエやシアの事は視界にすら入っていないし、そもそもこのティオの態度が色々と濃すぎてしまって意識がそれに向けられてしまう。

 

 

「はぁはぁ……! ひ、卑怯よ!? きゅ、急に名字とはいえ名前で呼ぶなんて! くぅ……! か、身体が熱いわ! どうしてくれるのよ!?」

 

「……………」

 

「あのさ、自分の変態さを一々カミングアウトしなくて良いから、さっさとこの竜人族の女について説明しろっての。

イッセーですら引いてるんだから」

 

「そうそう。

なんでドラちゃんの事を知ってるのさ? このおっぱいさんは?」

 

 

 説明を求めれば、雫まで薄気味悪くはぁはぁするというカオスっぷりはさておき、それなりに落ち着きを取り戻した雫は、今度は初な中学生みたいにもじもじとしながらティオの事を説明する。

 

 

『つまり、オレとイッセーの所業が他所の――というかこの世界では伝説として語られているのか? いったい一体どこの誰が……?』

 

「しかも随分と脚色されまくってな……」

 

「そうみたいなのよ……。

そ、それでこのティオさんはどうしても赤い龍――つまりドライグと会ってお話がしたいと……」

 

「そ、そうなのですじゃ!!!」

 

『……。それも意味がわからんが、何故オレなのだ?』

 

「いや、考えてみたらそのムカつく声してるメス竜からすればらドライグはほぼ同族だし、わからんでもない――――って思えるのがなんか腹立つな」

 

 

 

 声からして気に入らないものの、イッセーもイッセーでかなりドライグ大好きっ子なので、ティオがそういった憧れを抱いているその気持ちだけは同意できてしまうと話すと、姿こそ見えないものの、微妙な気持ちだと言わんばかりのドライグの唸り声が聞こえた。

 

 

「そ、そのぅ、ちっぽけな木っ端竜である私には大変恐れ多いのですが、出きればドライグ様お姿を見せて頂きたいなぁ……と」

 

「…………………」

 

『わからん。

おいイッセー、こんなガキの竜の戯言なんぞ無視しろ。

それよりどうするんだ? 殺すのか? 声だけはお前の怒りを常に助長させる声だからな……』

 

 

 

 ドライグはこの竜娘に興味がないようだが、困った事にイッセーは、心底気にくわない声こそしているものの、ドライグに対する感情の一点だけはかなり同意できてしまう。

 

「…………」

 

『! ちょ、お、お前!? まさか……!?』

 

 

 

 徐に赤龍帝の籠手を纏ったイッセーが、軽く指で籠手の手の甲の部分を撫でる。

 その突然の行動に、ティオ、雫、恵里、鈴は首を傾げるのだが、ドライグだけは焦ったような声を出す。

 

 そう、ドライグは知っているのだ。

 

 

分離(セプレーション)

 

 実はとっくの昔からドライグの神器としての枷から抜け出させていたので、割りとコンタクトレンズ感覚で分離できるようになっていたりする事を。

 

 

 

「あ……」

 

【ぐっ!? イッセー、お前っ!?】

 

「ど、ドラちゃんなの?」

 

「赤いドラゴンだ……」

 

 

 強烈な閃光を一瞬挟んだ後、イッセーの隣に佇む強大な雰囲気を放つ赤い龍――ドライグの出現にティオは勿論、雫も、恵里も、鈴も……そして魂抜けた状態のハジメやユエやシアや愛子達ですらその圧倒的な存在感に目を奪われていた。

 

 

 

「あ、赤いドラゴンですね……」

 

「本当に赤い……」

 

「あ、あんなのが兵藤の中に宿ってるのかよ……」

 

 

 

 そしてなにか言いたげな顔でイッセーを見下ろすドライグを見上げたイッセーは――

 

 

 

「腹減ったから飯食ってくるわ。

後は頼むわドライグ」

 

 

 殺すかどうかを後にして、ドライグに相手をさせることにした。

 

 

【おい!?】

 

「遠路遥々探しに来みたいだし、少し相手になってあげたら? じゃあ頑張ってねティオさん?」

 

「まあ、ドライグなら良いや」

 

「頑張ってねー!」

 

【お前ら! 面倒になってオレに押し付けたいだけじゃあないのか!?】

 

 

 

 何時もなら即座に殺すだろうが!? と抗議をしようとするドライグをスルーし、ヒラヒラと手を振りながら町へと戻ろうとするイッセーを見て、雫や恵里や鈴も一言ずつ龍化しているドライグに言ってからその後をついていく。

 

 

「こ、これがドライグ様のお姿……! な、なんと雄々しく、なんて美しいのじゃ……」

 

 

 そして待っていましたとばかりにティオはドライグの手の部分に頬ずりながらうっとりすると、自身の姿を竜へと変化させ、一回り以上は大きいドライグの身体にまとわりつくように身をぴったりと寄せる。

 

 

 

【なっ!? おい小娘! まとわり付くんじゃあない!】

 

【はぁはぁ……! これがドライグ様の匂い……!】

 

 

 当然嫌がるドライグだが、引き剥がしても引き剥がしてもぴったりとくっついてくるので、やがて諦めると、人の目の事もあるので取り敢えずお互いに人の姿に変化するのだった。

 

 

 

「チッ、おい小娘。

何のつもりかは知らんが……」

 

「あぁ……人の姿となったドライグ様も妾が思っていた通りの渋さと男前さなのじゃ……」

 

 

 

 ハジメ達も愛子や捜索人のウィルと共に二匹の龍と竜を生暖かい、なんともいえない目で見ていたのだが、飽きたのか虫の息で放置されていた清水を連れて町へと戻ってしまった事に気づいていないドライグは、人の姿に変化しても尚ひっついてくるティオに半分うんざりしながらも目的を聞く。

 

 

 

「く、さっさとオレの質問に答えろ、貴様の目的はなん――」

 

「妾をドライグ様のお側に置いてくだされ! 妾をドライグ様のものにしてくだされ! というか結婚してくだされ!!」

 

「はぁ!?」

 

 

 予想の斜め上過ぎるその回答に、まさか小娘同然のメスの竜に求婚されるとは思わなかった赤髪の30半ばの青年姿となっているドライグはますます困惑した。

 

 

「い、イッセー! 早くオレをお前の中の戻せ! この小娘、頭がおかしいぞ!?」

 

「あぁ! 行かないでくだされ旦那様! 妾は離れとうございません!」

 

「ええぃ鬱陶しい! 脚にしがみつくんじゃあない! ほらイッセー! 早く!」

 

「………………………………………」

 

「流石に困ってるわね……?」

 

「ドラちゃんも困ってるし……」

 

「なんだろ、小さいときのぼくみたいな人だね、あの人…」

 

 

 

 こうしてドライグは、よくわからない竜の少女に付きまとわれるようになったのだという。

 

 

 

「け、結婚だぁ!? ド……ドライグと

 

か?」

 

「うむ! 妾が思い馳せていた以上にドライグ様は素敵なのじゃ! だから是非貰って欲しい!」

 

「……って言ってるけど?」

 

「バカ言うな。500年ぽっちしか生きていないガキになんぞ興味なぞないわ!」

 

「しかし成熟はしてるのじゃ! 子も沢山産めるのじゃ! 村が興せる程の人数は欲しいのじゃ!」

 

「……………と、言ってるが?」

 

「知らん断る! それよりもイッセー! 何時ものお前ならこんな小娘なぞさっさと消しに掛かる筈だろう!? しかもあの忌々しいメスの悪魔に似た声だ!」

 

「や、まあそうなんだけど……口調があまりにも違うし、こうまでドストレートにドライグが好きなんて言われると微妙に毒気が抜けるっつーか。

そもそもドライグに近い種族を昔殺しまくったせいで、ドライグの嫁さん候補が居なくなっちまったし……」

 

「そうなのか。

それなら宿主殿には感謝しなくてはならぬの。

お陰で今日までドライグ様に他の女は存在しなかったのじゃからな!」

 

「黙れ小娘が!

オレはイッセーの相棒として死ぬまで共に居るのだ! お前ごときに構ってられる程暇じゃあない! そうだろイッセー!!?」

 

「なんでそんなに必死に嫌がるのかは知らんけどさ…………普段はこうして分離したままにしとけば暇は作れんじゃねーの?」

 

「ほひょー!? なんて話がわかってくれる宿主殿なのじゃ! くふふふ♪ それなら早速ドライグ様とのやや子を作って……」

 

「するかガキめが!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんか揉めてますね……」

 

「ティオがあの赤い龍に求婚しまくってるせいか、ヒョウドウって人ですら微妙にマイルドになってる気が……」

 

「ブツブツ……オレダッテスウマンノマモノクライイチゲキデブットバセルンダ………」

 

「ねぇ、南雲に何があったの? ずーっとぶつぶつ一人で言ってるけど」

 

「今はそっとしといてあげなさい……」

 

「変なのー」

 

 

 

 

 

「ドライグ様~♪」

 

「ぐぉっ!? や、やめろ小娘! オレは人の姿に変化することに慣れていないのだ! だから―――もががが!? い、息がっ!?」

 

「お、おぉっ……! おっぱい竜さんのメロンがドラちゃんを顔面を押し潰さんとしてる……。

な、なんという戦闘力(おっぱい)……!」

 

「……。谷口を見てると、何でかデジャブを感じるな……」

 

「……。まさかイッセーもあのクラスの胸が良いと言いたいの?」

 

「いや俺は別にそういうのに拘りはあんまりないし、無いから俺の手を掴んで自分の胸を掴ませようとすんなっての恵里」

 

 

 

 ドライグの嫁さん候補との邂逅――厳かに終わり。

 




補足

流石にドライグに近い種族――しかものっけからドライグに好き好き光線ぶっぱしまくりなこともあってか、毒気が抜かれて仕方ないらしい。


 イッセーもドライグも知らなかったし、そのつもりも全くなかったのですが、本来の世界において人間達から勝手に英雄視されてました。





ハジメきゅんは余計コンプレックスを膨らませてもうた……

ちなみに清水は……今のところ再起不能状態で済んでいる

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