色々なIF集   作:超人類DX

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続きです。

なんの展開もない


強さの理由

 

 

 

 

 夢を見る。

 

 ある一人の男の夢。

 

 外から来た存在に全てを壊され、生き延びた男の復讐の人生の夢。

 

 復讐の為に人を越え、やがて同じ傷を負った少女との出会いにより人知れず英雄へと変わる男の夢。

 

 

『お前がどこから現れたのか、何を目的にしているのかなんてもうどうでも良い。

リアスとドライグは逝ってしまった……。

だが二人の意思と行動はまだ死んでいない……! 二人が俺に力を託してくれたからだ』

 

 

 ただ一人の女の為に至極真面目に世界と神に戦いを挑んだ馬鹿な男の夢。

 されど、愛する一人の女の為だけに平気で己の命を投げ出す燃え滾る心を持った男の夢。

 

 

『俺はもう、テメー等が嫌いでしょうがないイッセーでも、リアスでも――そして赤い龍でもない。

俺は――俺達は貴様を殺す者だ……!』

 

 

 その男の名はイッセー。

 惚れた悪魔の女の為だけに進化を果たした全盛期の頃のイッセーの夢

 

 

『さぁてと。

いよいよ俺達の必殺技を見せてやるか……!!』

 

 

 それが……。

 

 

『先に地獄へ 行けッッ!! 俺も必ず行って何度でもブチ殺してやるからよォ!!

ウルトラビッグバン―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラゴン波ァァァッーー!!!

 

 

 

 

 妾が知る……異界の英雄の夢。

 

 

 

 

 

 突然だが、南雲ハジメとそのお仲間達は過去最大の『壁』を前に疲弊していた。

 

 

「はぁ! はぁ……!」

 

「っ……う……ぅ……!!」

 

「つ、強すぎる……!」

 

 

 7大迷宮の内の二つを制覇し、この世界の真実を少しずつ掴み始めていた者達の前に君臨する強大な壁。

 疲弊し、地に手を付ける三人を前にただ静かに腕を組ながら立つ一人の青年。

 

 

「こんな所だろ」

 

 

 異界の伝説。

 赤き龍の帝王の君臨する領域に初めてハジメ達は触れたのだが、その結果は―――『何をどうしても何も出来ない』という結末だった。

 

 

「俺が偉そうに人に教えられるような立場なんかじゃあない上で言うぞ?

やっぱり俺が思うに、三人はそのまま鍛えた方が良い。

変に『方向転換』するよりは今各々が掴んでる力のルーツを磨くべきだ」

 

「「「………」」」

 

「そもそもキミ達の魔力ってのと俺の持つ唯一の『魔力』は性質から根本的に違うしな」

 

 

 疲弊し、膝を付く三人の力の成長を確かめる為、ここ最近のイッセーは三人をまとめて相手取る鍛練に付き合うようになっており、今回のこれもある理由で目指すとある街への道中に起きた話である。

 

 

(い、一歩もイッセーを動かすことすらできなかった……!)

 

 

 二つの迷宮を制覇した事でハジメ達は二つの神代魔法を会得し、力を付けていた。

 それを確かめる為にイッセーに相手を頼んだハジメなのだが、結果は一切何もせずその場に立っていたイッセーに対してかすり傷すらつけられずにスタミナ切れで自爆するというオチだった。

 

 

(前々から確実に今のオレより格上だとは思っていた。

だが、こんなにも差があるのかオレとアイツは……)

 

 

 あまりにも実力の差がありすぎるという現実に、そして以前から聞かされていた『これでも全盛期の兆分の一』という話が、ハジメに深い挫折を与える。

 

 それどころかこれまであまり戦闘には参加しなかったティオですらイッセーと比較すればまだなんとかなるとはいえ、明確に今の自分より格上だったのだ。

 

 

「ぐ……流石じゃのイッセー。愛しておるぞ……!」

 

「ハイハイ」

 

(ティオだけがまともにイッセーに食らい付けていた……)

 

 

 自分達を相手にした時は一切動かなかったイッセーが、ティオを相手にした時は片腕だけとは言え動かせていた。

 それはつまり、ティオの攻撃がイッセーにとって『捌かせる』に値する程のモノであるという証拠。

 

 

(くくく、上等だよ。

こちとら元の世界に帰る為に下手すりゃあ神と喧嘩しようって考えてんだ。

寧ろこれくらいの目標がこんなに近くに居る事を幸運に思わなきゃあな……!)

 

 

 だからこそハジメは燃えている。

 こんなにも近くに『最強』が居る。

 こんなにも近くに越えるべき壁が居る。

 

 神をも殺した最強の領域に到達してこそ、自分の目的は叶うのだと。

 

「………………」

 

 

 そして、そんなハジメ達から密かに目標にされていることを知らないイッセーは、自身の力が封じられているままである事に密かな安堵を覚えていた。

 

 

(あのスキルは押し込めているままだ。

……ひとまずは安心だ)

 

 

 赤龍帝としての力。

 リアスから託された消滅の魔力。

 

 その二つの力とは違う、イッセーがイッセーたらしめられた人格の力――己自身を際限無く進化させ続けるという『人外』への道が約束されたチケットは、かつて自分自身で破り、そして棄てようとした。

 

 リアスとドライグを喪い、そして復讐を果たせた以上、最早必要が無くなったからであるのだが、結局捨てることはできなかった。

 

 何故ならそれは自分そのものであるから。

 故に極限まで押さえ込み、封じることしかできなかった。

 

 それがティオの声に起こされ、異世界で目を覚ました今でも変わらない。

 

 

「次の迷宮――グリューエンだっけ? そこに行くんだろ? だったらちゃんと体力を回復させなきゃいけないんじゃないのか?」

 

「ああ。

けど別に急ぐ旅ではないし、お前に相手になって貰うことこそが良い修行になるだろ?」

 

「修行といっても、今の私達じゃイッセーになにもできてないけど……」

 

「本気でハンマーを振り下ろしたのに逆に壊れた時は笑うしかありませんでしたよぉ……」

 

 

 今のところ、ティオに付き合う形で旅をし、ハジメという青年の仲間の一人になっているが、己が封じたスキルを復活させる気は更々ない。

 

 いや、無いのではなく出来ないといった方が正しいのか。

 

 

(ドライグもリアスちゃんも居ない今、もうスキルは使えないだろう。

何せ、二人の為に俺は進化し続けたいと思って来た訳だしな……)

 

 

 原動力であるリアスとドライグ亡き今となっては……。

 

 

 

 

 この世界の魔力の性質とは明らかに違う魔力をイッセーが扱えていることを初めて知ったユエは驚いた。

 何故ならイッセーの戦闘スタイルは基本的に徒手空拳であり、時折手から謎の光線を放つという、そんなスタイル。

 

 そんなイッセーがまさか魔力を――それもどの系統にも属さない対象物を『消滅』させる魔力を放った時は魔法に自信のあったユエを驚かせた。

 

 

「イッセーのその魔力はもしかしたら神代級かもしれない……」

 

「え?」

 

「確かに、対象物を一瞬でこの世から消し去る魔法はその域かもな」

 

「うーん……でも元は悪魔の魔力だから神代とは真逆だと思うんだが」

 

 

 聞けばその魔力のルーツは魔人族――ではなく悪魔らしく、ある理由によりイッセーはその悪魔の魔力を扱えるようになったとのこと。

 一体何故扱えるようになったのかについては、当初どういう訳か気まずそうに目を逸らしながら『言いたくないかも』と言って教えてくれなかったのだが、最近――というよりこの前のお風呂大作戦の後から少しだけイッセーの態度に変化が生じ始めた辺りから聞くことが出来た。

 

 

「副産物だったというかなんつーか……。

消滅の魔力に関してはリアスちゃんの母方の血族が扱える特性で、当然悪魔でもなければ血族でもない俺が扱えるわけなんなかったんだよね」

 

「じゃあ何で……」

 

「……………………。ま、なんだ……えと」

 

「「?」」

 

「妾はあんまり聞きとう無いぞ……」

 

「…………。リアスちゃんと逃亡生活してる時期は、まあなんだ――毎日あれこれしてたんだけど、それによって俺も扱えるようになったんだよね」

 

「「「「…………」」」」

 

「ほらやっぱり……」

 

 

 つまり、夜の行動をしたいたらそうなったらしい。

 それを聞いたユエとシアは反射的に微妙な顔をしていたハジメをガン見し、ティオは拗ねた。

 

 

「逆に俺の特性をリアスちゃんも扱えるようになれたからな。

理由があるとするならそれしかない」

 

「つまり、同じことを私とハジメがすればお互いの力を扱えるように……」

 

「な、なんて素晴らしい……!」

 

「いやー……。

俺達の場合はそれ以外の要因もあるからキミ等が同じ事をしてもどうかなぁ……?」

 

 

 ユエからすれば希望にしか思えない理由だった。

 そしてこの話を聞いたせいか、ハジメへの積極性が当社比5倍増しになったのは謂うまでもなかった。

 

 

「ハジメ達が同じ事をしても無理なのはわかったのじゃ。

ならばもしイッセー自身とそうなればどうじゃ?」

 

「さぁ? 無理――」

 

「いや! 聞くより実践するほうが早いのじゃ! 試しに妾がイッセーと合体するのじゃ!」

 

「…………」

 

 

 そして開き直り宣言をしたティオもまた同じく、イッセーとリアスの関係性を聞いて燃えたのか、イッセーに飛び付きながら誘い始める。

 

 

「………。お前が言うのを渋ってた理由がわかったぞイッセー?」

 

「ああ……キミだけは解ってくれたみたいで何よりだよホント」

 

 

 ちなみに、特にトラブルもなく次の目的地の為に訪れる大陸一の商業都市ことフューレンに訪れた際、ユエ、シア、ティオの容姿が目立つせいで、間抜けな金持ち連中に絡まれたりする羽目になったのは別の話だった。

 

 お察しのとおり、そんな輩は主にハジメが蹴散らしたし、ティオが絡まれた際は――

 

 

「いやー、話せば分かる人でよかったわー」

 

「………おい、拳に謎の歯が刺さってんぞ」

 

「それに服が真っ赤……」

 

「違うって~ これはケチャップだぞ~?」

 

 

 かつての頃のリアスの受けた仕打ちを思い出したのか、珍しくスイッチが少しだけオンになったのだという。

 

 

 しかしそんな騒ぎを起こした事により、ハジメは再会する。

 

 

「な、南雲君……?」

 

「っ……!? せ、先生……」

 

 

 元の世界の者と………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 死んだと思っていた生徒が外見こそ滅茶苦茶変わったものの生きていたという事実は畑山愛子という社会科教師を安堵させるものだった。

 が、そんな愛子を他所に性格すらも変わっていた生徒の対応は塩だし、愛子と共に居た生徒達ですら今のハジメが別人にしか見えない。

 

 しかもそれ以上にハジメの仲間と思われる女性達―――ではなく。

 

 

「あ、アナタはたしかオルクスの迷宮でベヒモスを倒した……」

 

 

 最初の訓練に参加していた生徒の一人が、自分達とそう年の変わらぬ茶髪の青年を指差しながら怯えたような声を出すものだから、愛子からしたら事情を聞かなくてはならなくなった。

 

 

「???」

 

「で、ではアナタが王宮で報告されている方ですか?」

 

「?????」

 

 

 生徒の一人が言った事で、当時参加してせず直接見ていなかった愛子だけは思い出すのに時間は掛かったが、既に謎の男と竜族の女についての話は王宮から聞いていた。

 

 

「……だれ?」

 

「ハジメ達と出会う前にオルクスの迷宮を散歩していた際に居た連中じゃよ。

ほら、イッセーがベヒモスを粉砕したときに居た……」

 

「え? あー……言われてみれば確かに居たよーな」

 

 

 言われてみればその特徴はある。

 茶髪で、生徒達と変わらぬ年の頃の青年と、黒髪の女性。

 

 だがそんな二人組が何故ハジメと共に行動しているのか……愛子は気になったというか聞かなければならないので聞いてみたが、ハジメの返答は曖昧だ。

 

 

「訳あって一緒に行動して貰ってるんだよ。

別にアンタ等には関係ない――」

 

「か、関係ない事なんてありませんよ! 王宮からの報告によれば、その方が皆さんを危ない目に遭わせたと! ベヒモスに襲わせたとも!」

 

「はぁ……?」

 

「つまり、南雲君があの時落ちた原因であって―――」

 

 

 

 

 

「………え、俺そんな悪者キャラだったん?」

 

「思い返してみれば、あの時ベヒモスの居る階層まで転移させた原因扱いされていたの」

 

 

 

 どうやらイッセーは愛子達側にとっては敵のような認識をされているらしい。

 ハジメは聞けば聞くほど馬鹿馬鹿しくなってきた。

 

 

「逆だ逆。

偶々オルクスの迷宮に来てたイッセーとティオのお陰で、あの時アンタ等は助かったんだよ。

居なかったらアンタ等が殺されてたんだぞ、ベヒモスに」

 

「え……」

 

「そ、そう言われてみれば、ベヒモスを謎のビームで倒したのってあの人だったわ……」

 

「光輝達はあいつの仕業に決まってると言ってたけど……」

 

 

 一応イッセーの名誉の為に曲解されている話はデタラメであると話すハジメに、一応まともな考えがあるのか、愛子に同行していたクラスメート達は当時の事を思い出してなっとくしている。

 

 

「つ、つまり悪者さんどころか恩人さんだったと……?」

 

「本人はアンタ等を助けたつもりはまるでないだろうがな」

 

「そ、そんな! それじゃあ私はそんな恩人さんを勝手に悪い人だと……」

 

「別に罪悪感なんて抱かなくても良いと思うぞ。

本人の性格からしたらアンタ等にはなんの興味もねーだろうし、どう思われてようが関係ないとしか思わんだろ」

 

「そ、そういう訳にはいきません!」

 

 

 事実、イッセーからしたら愛子やハジメのクラスメート達の事なんてなんの思い入れすら持たない、そこら辺に落ちてる消ゴムのような認識しかしていない。

 

 そうとは知らず、見た目はただの子供にしか見えない教師こと畑山愛子は、ティオやユエやシアにと話をしていたイッセーに突撃し、これでもかと頭を下げまくる。

 

 

「あ、ああ、あの! アナタが生徒を助けてくれたのですね!? ご、ごめんなさい! 私ったらてっきり――」

 

「は? 生徒?」

 

「……この人、こんな見た目だけど元の世界で学校の教師やってたんだよ」

 

「あ、そうなの? …………ちっちゃいな」

 

「んが!? ち、ちっちゃい言わないでくださいよ!!?」

 

 

 あまりにもちっちゃいのでついストレートに思った事を言ってしまうイッセーに愛子は憤慨する。

 

 

「と、とにかく南雲君のこともありますし、きちんとお話を――」

 

「イッセーよ向こうに良い宿屋があるぞ。

だから今晩はイッセーとリアス・グレモリーが行った夜の合体パワーアップ作戦を妾と……」

 

「だからやらねーっての、ひっつくな」

 

「するのじゃ!! 寧ろ妾を孕ませるのじゃあ!」

 

「だぁぁあ! 胸が顔に当たって邪魔だっての! 開き直るって宣言した通りだなお前!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

 

「な? 本人はどうでも良さげだろ?」

 

 

 だが、そんな愛子の目の前で年頃の男女が目の前で目の毒なやり取りを開始するのであったとか。

 

 

「こ、こんな街中でいけませんよ?!!」

 

「む、なんじゃ貴様。

イッセーはお前の生徒とやらではないし、妾達は大人なのじゃ。

貴様に指図される謂われはない! 妾とイッセーは今晩の夫婦の営みについての大事な話をしておるのじゃ!」

 

「そ、そうかもしれませんけど、この方の年齢は南雲君とそう変わりません! ですから健全な青少年を導く教師として――」

 

「………………ちょっと助けてくれよ南雲くん?」

 

「ティオに関してはほぼほぼお前のせいだろ」

 

「ハジメに同意」

 

「吹っ切ったティオさんは止まりませんよ?」

 

 

終わり




補足

イッセー

燃え尽き気味な男。

過去、リアスとの繋がりとお互いの気質により消滅の魔力を扱えるらしい。
しかしその理由を話したら、開き直ってるティオからのアプローチが余計ひどいことになったので話したのを後悔している。

 その癖、この世界の人間達がユエやらシア――そしてティオに対してそんな目をすれば、ハジメ共々ヒャッハーする。


ティオ・クラルス

開き直ってる竜娘。
開き直り過ぎて若干エロさが増したとユエとシアは言ってる模様。


南雲ハジメ。

わかりやすい目標が目の前にいるので、メキメキとパワーアップしている主人公。

しかしティオのイッセーへの開き直りに影響されたユエとシアに少し振り回され気味。

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