色々なIF集   作:超人類DX

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続きというか……うん。


竜娘の開き直り

 

 

 

 考えてみれば、オレはイッセーの力が何なのかをよくわかっていない。

 シンプルに身体能力が高いとか、手から魔力とは違うビームを放てるとか、そういったものは何度か見たが、それがどんな能力から来ているものなのかはまではわかっていない。

 

 

 オレは圧倒された。

 

 

「わかったわかった、お前のそのチンケな挑発に乗ってやるさ。

光栄に思えや? 俺がこの世界で禁手化の『鎧』を纏うのは、多分お前が最初で最後ダァァァッ!!!」

 

 

 

 血のように赤い籠手を纏ったイッセーの全身を覆う赤い鎧。

 大きさこそこの迷宮の『主』であるミレディ・ライセンの方が巨大だが、解放されるその力は無限にも感じ……。

 

 

『う、うっそーん……?』

 

「くっくっくっ……! 禁手化なんて久しぶりだ。

さて、あれだけ御大層な御託並べてくれたんだ…………精々一撃で消えんなよ?」

 

 

 禍々しく、それでいて美しくて……。

 

 

「さァ、始めようかァ……!!」

 

 

 跪きたくなる程に強かった。

 

 

 

 

 

 これで全盛期の兆分の一なんてどんな詐欺だと、恐らく初めて――そしてもう二度と無いであろう、『ちょっぴりその気になった』イッセーによるミレディ・ライセンへの蹂躙劇は、段々とミレディ・ライセンに同情を覚える程の差だった。

 

 

 

『すいません、これまでの数々のご無礼を御許しください。

もう煽りませんし、良い子にしますから……!』

 

「ん~ 聞こえんなぁ……? ビッグバン・ドラゴン――」

 

『ひぃっ!? それだけはやめてください! この迷宮どころか外まで破壊されてしまいますからぁ!』

 

 

 ハジメが求めてるミレディ・ライセンの重力の神代魔法を真正面から突き破り、巨体を誇る鎧騎士を土くれのように破壊する鬼畜さの前にすっかり戦意が喪失してしまっている様子。

 だがそんなミレディ・ライセンに対して赤い龍の鎧を久々どころでない時間を経て纏っていたイッセーは、聞く耳なんて持たないとばかりにドラゴン波の構えを取る。

 

 

「もうよせイッセー。

奴は既に戦意を失ってる」

 

「「………」」

 

「むむ、ミレディ・ライセンめ、あんな鬼畜状態のイッセーに痛め付けられて良いなぁ……」

 

 

 完全に消滅されてはハジメとしても困るので止めに入る事でイッセーはとどめを止め、全身に纏われた鎧を消す。

 

 

『た、助かったぁ……!』

 

「アンタも煽る相手を間違えたな」

 

『ま、まったくだよ。

まさか何を言ってもヘラヘラしてた男にこうまで一方的にやられるなんてさ……はぁ』

 

 

 

 こうして珍しくヤル気スイッチを少しだけ入れたイッセーにより、ライセン迷宮は攻略完了を迎えることになるのだった。

 ……………迷宮の大半を破壊されるというオマケつきで。

 その後、オンボロ状態のミレディ・ライセンからハジメは神代魔法を得て溺れるということもなく地上へと戻った。

 

 

「チッ、意味深に煽り入れときながら根性のねー奴だったな。

あれじゃあ準備体操にもなりゃしない」

 

「あ、あんな一方的にボコボコにされれば色々とへし折れますよ」

 

「後半殆どマジ泣きだったからな」

 

「イッセーってS……?」

 

「敵には超Sなのは間違いないぞ」

 

 

 中途半端に暴れたせいで、どこか不満そうなイッセーを全員でなだめるという、珍しい状況のまま街へと戻る事になったハジメ達は、とりあえず今日はゆっくり休もうということで久しぶりの宿を取ることになった。

 

 

「ほう、風呂の貸し切りか……」

 

「はい! 15分で100ルタですが、いかが致しますか!?」

 

「そうだな……。

二時間くらいで良いか? オレとイッセー、ユエ、シア、ティオで一時間ずつ入れば十分だしな」

 

 

 宿泊のついでに風呂の貸し切りが可能と聞いたハジメは二時間程貸し切ることに。

 その際、何故か宿屋の女性に『え!?』という顔をされた。

 

 

「え、皆様全員一緒には入らないのですか!?」

 

「はぁ?」

 

「も、もしくはアナタ様とそちらのお二方と、そちらでお話されているお二人と別れて……」

 

「何を言ってるんだアンタ……」

 

 

 妙にキラキラした眼差しの店員にハジメが引いていると、後ろから主と思われる女性が現れ、若い女性店員に拳骨を落とす。

 

 

「すみませんね、そういう年頃でして。

ではごゆっくり……」

 

「…………」

 

 

 そういえばこの前も勝手に舞い上がってたなあの店員と、主人に首根っこを掴まれて引きずられていくのを見送ったハジメなのだった。

 

 

 

 

 

 

 こうして風呂を貸し切りにしたハジメはまず自分とイッセーが入るとユエ達に告げてから共に入る。

 

 

「ふー……湯船ってのは良いな。

色々あったが、オレもまだ日本人ってことなのか」

 

「だねー……ふへー……!」

 

「そういや名前からしてイッセーも日本人なんだよな?」

 

「おー……うへー……!」

 

 

 どちらも世界は違えど日本人であるせいか、湯船に浸かることは心地よいらしい。

 そんな状況を楽しみつつ、ハジメはふと自分の傷が多くなった身体に視線を落としてから―――すぐ横でぽけーっと浸かっているイッセーの身体を見る。

 

 

「うほほーい……お風呂しゃいこー……!」

 

(………)

 

 

 極限まで鍛えられた無駄なき肉体。

 その肉体の所々に残る、恐らくは元の世界で潜り抜けてきたであろう修羅場の証。

 

 

(見た目はそうオレと変わらないが、その質は雲泥の差だな……)

 

 

 ただ鍛えられただけではない、多くの修羅場を経て搭載された『戦闘に特化した肉体』であることは素人目に見てもわかるほど、自分とイッセーの肉体の質は違っているとハジメは思いながら暫く眺めている。

 

 

「んへー……ドライグやリアスちゃんと源泉掘り起こして入ってた頃が懐かしぃ~」

 

(経験だ。オレには経験が圧倒的にまだ足りてねぇ……!)

 

 

 無意識にイッセーの立つ領域に対しての対抗心を抱いているハジメが、もし例の店員が見ていたら腐った思考に走り始めそうな程に眺めていると、何故か貸し切りにしている筈の大浴場の扉が開かれる音が聞こえる。

 その音に対して一切聞こえていないイッセーは間抜けな顔扉が声を出したまま振り向きもせず、代わりにハジメがその方向へと視線を移すと―――――何故かまだ30分すら経っていないのに入る気満々なユエやシア……そしてティオが入ってきた。

 

 

「ぶっ!? ゆ、ユエ!? それにシアとティオ!?」

 

「んぁ?」

 

 

 予想もしていない展開を前に驚くハジメの声に気付いたのか、間抜けな顔をしていたイッセーもまた何故か三人の娘さんが入ってきている事に気付く。

 

 

「あ? なんでどこぞの漫画みてーな展開になってんの?」

 

「し、知らん! お、おいお前ら! まだ一時間経ってねーぞ?!」

 

「? 今背中をながしてほしいって言った?」

 

「言っとらんわ!!」

 

「あー! ずるいですよユエさん! 抜け駆けはダメです!」

 

「あ、あれじゃぞ? 今後の事を思えば仲を深めるのは大切じゃし、所謂裸の付き合いというのが……」

 

 

 全員わざわざ前すら隠さず入ってくるものだから、ハジメは思わず顔を逸らし……そして気付いた。

 イッセーの顔が――驚くほどクールで感情の揺れが一切無さそうだったことに。

 

 

「ちなみにティオはイッセー専用」

 

 

 それに気付いているのかいないのか、ユエがどや顔と共にイッセーに向かってサムズしながらそんな事を謂う言えば、横に居るティオはチラチラとしらーっとした顔をしているイッセーを見ている。

 

 

「お、お前らな……!」

 

「じゃあ俺はもう出るぞ、後はキミ等で精々南雲くんをご奉仕したらよ?」

 

「おいイッセー!?」

 

「だってしょうがねーじゃん。

キミがモテるのが悪い」

 

 

 やはり基本的にリアス一辺倒なせいか、ある意味で正解な事を言いながら出ていこうとするイッセーがきちんと前を隠しながら湯船から出ようとする。

 

 

「それはダメ」

 

「ブローック! ブローック!」

 

 

 しかしそんなイッセーを通せんぼするシアとユエ。

 

 

「は? なんで?」

 

 

 今更他人の異性の裸体に喜ぶ年でもなくなっているし、何ならリアス以外の裸体には無反応ですらあるイッセーが眉を寄せていると、ユエすっと指を指す。

 

 

「ぐすん……。

だから妾は嫌じゃったのに……。

案の定イッセーの顔が白けてるのじゃ……」

 

「お、おう……元気出せよ?」

 

「どうせ妾なんて……」

 

 

 

 ユエの指した先を見てみると、そこにはいじけて風呂の床に向かってのの字を書いているティオと、そんなティオにちょっと同情しているハジメの姿が。

 

 

「ティオは勇気出した。

だから少しだけで良いから優しくしてあげてほしい」

 

「実を言えばこの作戦に一番反対していたのはティオさんでした! イッセーさんに嫌がられたくないと……!」

 

「おーいおい、作戦って言っちゃってるぞこのすっぽんぽん兎娘さん……」

 

 

 普通にダシに使われてる気がしないでもない話を聞かされたイッセーはいじいじとしているティオをちらりと見る。

 

 

「どうせ妾はリアス・グレモリーに比べたら崩れた身体じゃ……」

 

「そ、そんな事は――いや、リアス・グレモリーがどんな奴なのかオレ知らんけど……」

 

 

 

 

「イッセーがリアスって人のことが大切なのはわかってる。

でもティオはそれでも――」

 

「俺は浮気をしない主義なんだけど……」

 

「お願いします! どうかティオさんの気持ちに少しだけでも良いので応えてほしいのです! ほら! 全裸で土下座しますから!」

 

「そんなんされても普通に困るんだけどね……」

 

 

 知らぬ間に仲良くでもなったのか、妙にティオの肩を持つユエとシアに困るイッセーはもう一度ティオを見る。

 

 

「それに、イッセーが居たらハジメも出ていかない筈……」

 

「………。そっちがメインか。

まったく……」

 

 

 このまま押しきって出ていくのは簡単だが、その後の事を考えると永遠にティオにいじけられてもそれはそれで面倒な気もしたイッセーは、今は亡きリアスに心の中で、『あの世であったら存分に俺をぶっ飛ばしてくれ』と呟く。

 

 

「どうすりゃ良いんだ? 赤裸々トークするにも俺にそこまでのネタなんてないぞ?」

 

「ぬがっ!?」

 

 

 迷宮での件のこともあるせいか、無意識にティオに対しての対応が段々と甘くなっている自覚をしていないイッセーは、然り気無く出ていこうとしているハジメの足を引っ掛けて転ばせながら、湯船に浸かり直すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 やめろコラ!

 

 邪魔しないでシア……!

 

 ユエさんこそ……!!

 

 

 

 

 

 

 

「おーおー、ラブコメしてんなぁ向こうは」

 

「……………」

 

 

 少し離れた場所から聞こえる三人のじゃれ合いを耳にしながら、別の浴槽に浸かり直していたイッセーは、一切喋らずに共に浸かっているティオに視線を向ける。

 

 

「なーに緊張してんだか……」

 

「い、いや……ユエとシアに乗せられた勢いもあったのじゃ。

冷静になってみたら普通に恥ずかしくなってきて……」

 

「普段あんな格好してるのにか? 変わってんなやっぱ……」

 

「イッセーに言われとうない……!

しかし……良いのか?」

 

「何が?」

 

「だからその……イッセーにとってこの状況は浮気というものになるのじゃろう?」

 

「あー……まあ、いつか死んであの世で会えたら往復ビンタして貰うさ。

……あの子の事だから普通に許してくれそうだけど」

 

「そ、そうか……」

 

 

 お互いに裸という状況でもやはり平然としているイッセーに、かなり複雑な気持ちになりつつも、怒ってはないと解って少し安心するティオ。

 

 

「少し懐かしいな……」

 

「へ?」

 

「いやな? 状況はまったく違ってたけど、よくこうしてリアスちゃんと風呂入ってたからさ……」

 

 

 そんなティオを尻目に、リアスとの過去を急に話し始める辺りは酷さ爆発なイッセーだが、過去を語る時の優しげな表情を見るのが好きなだけにティオは複雑な気持ちを押し込めながらその話に耳を傾ける。

 

 

「さっきユエさんが南雲君の背中を流すとか言ってたのを聞いて思い出したわ。

ガキの頃俺もよくリアスちゃんに流して貰ってたよ」

 

「……そうか」

 

「あの子の髪を洗うときが一番生きてて良かったと実感できてたっけ? はは……懐かしい」

 

「さぞ幸せだっただろうな、リアス・グレモリーは……」

 

「どうかな……今にして思えば、そうやってあの子の自由を守るとか抜かしておきながら、俺自身が一番あの子を縛り付けてたかもしれない」

 

 

 湯船のお陰で思考がふやけているのか、何時になく過去を語るイッセーは自嘲するように笑う。

 

 

「それを心のどこかで解っていても俺は目を逸らしてきた。

………それだけ俺はあの子に惚れちゃってたからな。

だからあの子の同族があの子を連れ戻そうと来た時も………」

 

「…………………」

 

「おっと、こんな所で話すような事じゃねーな」

 

 

 自由を欲していたリアスを誰よりも縛っていたのは自分だったのかもしれないというイッセーの言葉に、ティオは無言で聞きつつも内心その言葉を否定していた。

 

 

(それはきっと違うぞイッセー。

妾はリアス・グレモリーと会ったことも対話したこともないが、それでも解る。

きっと彼女は自分の意思でイッセーの傍に居たいと思っていた筈じゃ。

イッセーが愛しているように、彼女も同じようにイッセーを……)

 

「ははは、若いなやっぱ。

元気そうな三人の声が聞こえらぁ……」

 

 

 ギャーギャーと元気の良い三人の声が向こうから聞こえると笑うイッセーを見つめるティオはリアスの心情を理解していた。

 それは恐らく、自分がリアスと同じ気持ちを持っているから……。

 

 

「イッセー……」

 

「っ!? え、あ、お、おう……ど、どうした?(あ、焦った。今の声の感じ、まんまリアスちゃんだったぞ……)」

 

 

 ただ一人の女の為に世界を……神を――全てを敵に回したその馬鹿としかいえない――されど燃えるような精神(ココロ)に惹かれていったのだと。

 

 

「好きじゃ……イッセー」

 

「あ、あぁ? 急にそんなカミングアウトされても、しかもこんな所で……」

 

「む……わかっている。

でもこんな所だからこそ言いたくなったのじゃ」

 

「…………」

 

「その顔からしてイッセーの気持ちがどこにあるのかも、痛いほどわかっておるつもりじゃ。

それでも好きなのじゃ」

 

「……えと、ごめん」

 

「ぐ……あっさり振ってくれおって。

だが妾は諦めんぞ? 根負けするまで何億回だって言ってやるからな……!」

 

「………なんでそこまで」

 

「ふ、確かに妾はリアス・グレモリーにはなれない。

じゃが、抱いた気持ちは『同じ』じゃ」

 

「………」

 

 

 愛する者の為ならば、自分の命すら平気で捨てられる覚悟の炎を燃やす身勝手なヒーローを……。

 

 

「殺されても構わぬ。

妾はもうイッセーに遠慮なんてしないぞ……!」

 

「馬鹿だぜお前……」

 

「馬鹿で結構! という訳でユエ達のように妾がイッセーの背中を流してあげるのじゃ!」

 

「…………」

 

 

終わり




簡易人物紹介

イッセー

 スイッチ入ると世界征服くらいは出来そうな燃え尽き男。

基本的に異性はリアス一辺倒であるし、そう言ってる筈なのに何故か開き直られて普通に解せない。

 逆を言えば、ユエやシアからはそんな性格だと理解されてるせいか全裸を見られても恥ずかしがらないらしい。

 なんならハジメとの時間をゲッツするための作戦に利用しようとしてくる。


 禁手化の鎧は一応手加減モードではある。


ティオ・クラルス

 この度開き直った竜娘。
 その背景にはユエとシアの影がちらほらあるのは気のせいではない。

取り敢えず今の目標は1日一回はイッセーに好きだと言う事。


 南雲ハジメ

 イッセーがティオに対して塩じゃないように見えて、やっぱり塩な対応なのを見ていてちょっと不憫に思っていたら、それどころではなくなった主人公。

 イッセーとティオの微妙すぎる関係を見てるせいか、本来よりもアグレッシブさを増したお二人に揉みくちゃにされたかは――ご想像にお任せ。



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