ベリーハードだったサーゼクス君と平等なだけだった人外さん
自分が善人だなんて思ったこともない。
自分が慈悲深いなんて思うこともない。
自分の器が広いとも思わない。
寧ろ利になれば簡単に悪事に手を染めるし、無理だと断定している存在に慈悲なんて抱かないし、一度でも裏切った相手を許せる性分でもない。
つまり、人生とやらにリセットボタンがあって、そのボタンが何かの拍子で押されて、同じ人生をやり直したとしても、自分は決して自分――いや、自分よりも我が子を裏切ったあの女のことは決して許さないし、永遠に関わりたいとも思わない………それだけなのさ。
サーゼクス・グレモリーは悪魔であり、ルシファーの名を諸々の事情があって継承し、一応四大魔王と呼ばれる地位につく純血なる悪魔である。
そんな悪魔の男は――基本的に同族に対して非常に冷めた目をする男だった。
種族としての存続に興味もない、栄光にも興味がない。
その理由は彼と、彼の信じる真の繋がりを持つ者にしか解らない。
「なぁ……?」
「う……」
「なぁ……?」
「わ、私はただ――」
そんな異端の悪魔は――――――
「今なぁ
「………………うぐ」
どういう訳かグラサンを掛け、何故か関西弁口調で半泣きになっている銀髪のメイド悪魔に圧をかけていた。
「ねぇ? 分かる?」
「うぅ……」
「何をお前、僕の気持ちもわからんとや。
家族との時間中に頼んでもないのにゴチャゴチャ抜かしながら勝手に入って来とんねん」
「…………」
「あ? 履き違えるな……!」
何故か置いてあったパイプ椅子に腰深く座り、半泣きの女性メイドに普段の彼らしからぬ口調で責め立てているサーゼクスは、自身のすぐ後ろのソファに並んで座っていた赤髪の少女と、白髪の少女の名を口にしながら尚も責め立てる。
「分かるかい? 僕とミリキャスとなじみでええ感じになっとんねん」
「…………」
赤髪のまだ幼い少女の事をミリキャス。
白髪で紅白衣装を着ている少女をなじみと呼ぶサーゼクスに、グレイフィアという名の銀髪メイドは思わずなじみという名の少女に殺意を向けるも、サーゼクスはそれを無視する形でトドメを刺す。
「お前みたいなゆるい、ゆるキャラ――ゆる使用人? いやゆる眷属なんて要らない。
ハッキリ言って邪魔! 害悪!」
「…………………」
「もうええ……出ろ!」
「……………………はい」
まるでその言葉に逆らえないが如く、グレイフィアはとぼとぼと部屋を出ていくのを見送った後、即座に部屋の内鍵を閉めたサーゼクスはグラサンを外しながら大きなため息を吐く。
「あの女、まるで寄生虫みたいに僕達の周りをうろうろと……』
その様子からして相当グレイフィアのことを嫌っているというのが見て取れるサーゼクスの悪態に、なじみと呼ばれた女性が苦笑いを浮かべる。
「まー……一応リセットされる前の時代におけるこのミリキャスの母親ではあるし……」
別にかばうつもりは無いとはいえ、一応それなりのフォローをしようとする安心院なじみなる少女にサーゼクスはふんと鼻を鳴らす。
「前はそうだけどこの時代では互いに一切触れてさえいない関係なんだから関係ないよ。
今更母親面なんて絶対にさせない」
「ボクもその……あの人のことは怖いし」
なにがなんでも許しませんといった、確固たる意思を感じさせるサーゼクスに続く形で、ミリキャスもまた一応かつての実の母とはいえ、今尚残るトラウマのせいで怯えている様子で隣に座る血こそ繋がらないものの母代わりとして自分と父親の傍に居てくれた安心院なじみにひしと抱きつく。
「それはそれで良いけど、彼女も結構必死らしいからね。
またキミの両親に泣きつくんじゃないか?」
「無意味に外面だけは良いからね。
お陰で無理矢理あの女を眷属になんてしなければならなかったし……」
過去の出来事により、かつて夫婦であったグレイフィアとは完全に切れている――それがサーゼクスの今である。
一度壊れてしまった繋がりはそう簡単に治すことは叶わない。
それでも誇りの為に戦い抜いた戦友が自分達には居た。
友情の為に全てを敵に回す覚悟を当たり前のようにしていた戦友も居た。
ただ惚れた者を支える為に堕ちる覚悟をしていた戦友
も居た。
絶望の底へと落とされた妹と共に這い上がった戦友にて義弟が居た。
そんな戦友達と共に抗い、戦い抜いた事で昇華していった悪魔の青年は、自らと自らの娘を裏切った妻への未練を共に断ち切る事で前へと進んだ。
自らを導いてくれた人外であった者と共に。
その先に何があろうと恐れる事は無いと……。
それが例え奇妙なやり直しをすることになろうとも、超越者を越えた到達者である青年は変わらないのだ。
同じ運命になることを回避する為の準備は当然怠らない。
故に彼はまず後の妻となる者との関わりを徹底的に避けた。
それにより、娘が生まれなくなるという歴史に変わる事になるだろうが、彼にとってそれは問題ないのだ。
何故なら既に彼には娘が居るのだから。
人外であった者によって立派になってくれた自分と彼女の娘が……。
加えて妹と妹が愛した彼も居てくれたし、戦友達とも秘密裏に再会することが出来た。
となれば怖いものなどありはしない。
前世で裏切った者達が余計な真似をしてくるが、彼はその悉くを無視してやった。
今更自身の種族に誇りなんて抱けないのだから。
「やり直したいなんて言われてもね。
今の僕はキミの存在そのものに興味なんて無いし、ご覧の通り僕には妻も娘も居るんだ。
周りに何を言われたのかは知らないけど、相手にして貰いたいなら僕以外の誰かにするんだね」
「……………」
それに、前世で妻であった彼女への未練も……。
魔王なんて役職に最初からやる気等無いものの、今の妻との正式に一緒になる条件を飲ませる形で就いているサーゼクス・ルシファーにとって、今世ではほぼ避けていた筈の前世における妻であったグレイフィア・ルキフグスの存在は実に鬱陶しい。
「サーゼクスよ。グレイフィアさんがお前に辛辣にものを言われたと泣いていたのだが……」
「出歯亀のような真似をされたのにそれを笑って許せとでも? 相変わらず彼女には妙にお甘いですね。
あの女がその程度のことで泣くようなタマではありませんよ。
どうせ周りからの同情でも買うためです」
「しかし……」
「しかしも何もありませんよ。
どうや周りのバカ共は純血同士である私とあの女を一緒にさせたいようですが、くだらないにも程がある」
「「………」」
普段は人当たりの良い青年であるサーゼクス。
しかし特定の人物の事になると一気に冷徹さが浮き彫りとなる。
それは妹以外の肉親ですら例外では無く、特に先の戦争で敗戦派閥に属し、人質という形でサーゼクスの――名目上は眷属となるグレイフィア・ルキフグスに対しては辛辣を通り越して嫌悪すら示している。
その理由は誰にもわからず、グレイフィア自身も『何か思い当たる節』を持っている様だが決して語ろうとはしない。
サーゼクスの現在の妻と娘――特に妻に対して嫉妬と憎悪を向けているのだけは間違いないのだが……。
「そんな事よりも今日は非公式ながらもリアスの初ゲームです。
そろそろ私はあの子の顔を見に行きたいのですがね」
「「…………」」
どうしてそこまで……。
サーゼクスの両親達にもわからないのだった。
色々と変えてきたものの、前世からの『呪い』のような運命だけはどうしてもこびりつくものなのだと理解しているサーゼクスは、前世とは違い、現在も悪魔として生きている妹が、前世とは違って逃げずに、己の愛する者達と戦って勝利する姿を見て頬を緩める。
「こうなって当然の結果だね。
今のリアスとイッセーに加えてヴァーリも居るのだし、あの程度の連中なんて片手間にもならないよ」
「そうだね。
それでもちょっとは心配だったから、これでやっと安心したよ」
「よかった、リアスお姉ちゃん達の勝ちだ……!」
ゲームの対戦相手を片っ端から片付け、完全勝利をする姿を会場中継のモニターを隣に居る女性とその女性に膝枕される赤髪の少女と共に眺めるサーゼクス。
そんな三人の後ろから一応は眷属という体で存在しているグレイフィアが憎悪のこもった目で彼の『妻』となる女性を睨んでいる。
「………」
「何時までキミはそこで突っ立っている気なのかな? 早いところ終了のアナウンスをしてあげないと、イッセーがフェニックスの三男を殺しちゃうよ?」
「………………………」
それに対して元人外の女性は軽く流している様子だし、娘の方は目すら合わせず、サーゼクスはただただ淡々と自分の仕事をしろと女性を睨むグレイフィアに言う。
「何故私がこんな目に……!」
全てをやり直せると信じていた夫には冷淡に。
娘には完全に避けられ。
それもこれもこの人外の女のせいだと、己がやってしまったことを棚に上げて憎悪を募らせていく。
「安心院なじみ……お前のせいで……!」
何をしようともやり直すことは既に不可能であるというのに……。
サーゼクスファミリーがそうであるように、リセットによる人生のやり直しをするリアスもまたかつてとは違い、眷属もまともに揃える事は無かった。
しかし前世とは違ってイッセーに加えてヴァーリが仲間として居てくれているのもあり、今回もあった婚約話を真正面から捩じ伏せて破談させることに成功した。
相手のライザー・フェニックスには気の毒だが、イッセーが狂犬のように最初から全力状態で挑んだ時点でどうしようもないのだ。
「これでこういった話も二度と無くなるぜ」
「ライザー・フェニックスは二度とステーキが食べられなくなっちゃったわね……」
「一誠が気絶していた奴を、サーゼクスの元嫁のアナウンスが入るまで徹底的に殴り続けていたからな」
リアスは現在を生きるに辺り、眷属を二人しか持っていない。
だがその二人の眷属が異質なまでの力を保持しており、更に言えば各々が二天龍を宿している。
つまり戦力という意味でならこの二人だけで完成をしてしまっており、またリアス自身が他人に対して壁を作るような性格があるため、中々新たな眷属が加入することはない。
そんな娘や息子の現状に対して両親はあまりいい顔はしない。
「私なんかはまだいいわよ。
お兄様の方が面倒な事になっているでしょう? ヴァーリの言うとおり、記憶を持ったあの人が眷属にされちゃってるんだから」
「徹底的にあの女を避けたつもりなのに、押し付けられたと愚痴を溢していたな」
「ドロドロしてんだろうなぁ……」
ドス黒い念を抱いているのが丸見えな姿のグレイフィアと少しだけ顔合わせをしたことがある三人はサーゼクスにちょっとだけ同情しながら、冥界を後にする。
「記憶といえば、ソーナ・シトリーやらリアスの眷属だった連中もそうだったな。
……いきなりリアスに駆け寄ってやり直したいって宣った瞬間、間髪入れずに一誠のスイッチが入ってしまって、軽い殺戮現場化してしまったけど」
「ああなってしまった理由が理由だとはいえ、流石にその事を忘れてやり直したくはないわ……」
「大人しく俺達の関係ない所で無駄に生きりゃなんもしねーさ」
冥界から人間界へと帰還し、現状リアスが管理を一任されている街である駒王町内にて寝泊まりの為に借りているマンションに帰宅する。
「ただいまー」
とある理由により、少し大きめの部屋を借りており、その理由とは、ただいまと言いながら部屋へと入る三人を出迎える者達が理由であった。
「うーむ、あれだけボロボロだったフジナミがメジャーに来ることでオオタニのライバルとして復活するとはなぁ……」
「だな。こんなに見ごたえのある投げ合いも久しくなかったぞ」
「ほら、三人が帰ってきたのですから、TVばかり見ないでください」
TVを見ている浴衣のような出で立ちをした男性二人に、注意をしながら料理を運んでいるエプロン姿の金髪の女性。
リアス、一誠、ヴァーリにとっての同族を越えた信頼関係を持つ者達。
「よぉ、その様子じゃ余裕だったみてーだな?」
「当たり前だろ、今更コイツ等がぬくぬくと生きてきただけのガキ共相手に遅れなぞ取る訳がない」
軽薄そうな出で立ちの青年と悪人顔の男性。
それぞれ名をアザゼルとコカビエルという名の堕天使である。
「寧ろ相手を殺してないかが心配です。
リアス、イッセーは相手を……?」
「えーっと、二度と物が食べられなくなったりはしたけど一応生きてはいるわ……うん」
「ゲーム終了のアナウンスが後数秒遅かったら死んでたかもしれないがな」
「調子こいてリアスちゃんにベタベタしようとしたんだ。死んでねーだけありがたいと思って欲しいくらいだわ」
「やはりそうでしたか……。
まったく、アナタはリアスの事になると熱くなりすぎですよ?」
「いやー、ガブリエルさんだって似たようなもんでしょうに……」
「失礼な、私は状況に応じて感情を爆発させるだけです」
ウェーブのかかって金髪のこの美女の名はガブリエルで、なんと天使である。
つまり今この場には世間的には三大勢力と呼ばれ、冷戦状態な筈の三種族が揃っている事になっている。
しかもそれに更にあの三人――
「はぁ、そろそろ魔王の地位とか捨てたい気分だ」
「一応ダミーを置いてきたから暫くはサボれるぜ?」
「ボクはもうあそこに戻りたくないかも……」
サーゼクス、娘のミリキャス――そして別に正式ではないが事実上のサーゼクスの再婚相手であり、この面々がひとつのチームとなることが出来た核の元人外の安心院なじみ。
堕天使、天使、悪魔、神滅具の使い手というドリームチームの集結である。
「おお、元嫁を撒いてきたのかサーゼクス?」
「やめてくれ、元嫁じゃないよアザゼル。
ここでは僕は彼女とはなんの関係も無いんだから」
「向こうはそうとは思っていないのだろう? 記憶もあるようだしな……」
「今更なんだよ全部が。
『なじみ』に逆恨みをしてるのがズレてるとしか言えない」
誰かが見たら仰天するであろうドリームチーム。
かつて世界そのものに抗い、戦い続けた者達。
チームT×G
「アザゼルこそ結婚しようとは思わないのかい?」
「そう思えるような女を知らないからな」
「そうは言うが、部下達には好かれているじゃないか」
「好かれることと俺が好くのとはまた別だろ。
コカビエルこそいい加減ガブリエルとガキくらい作れよな――10人くらい」
「ほらアザゼルもこう言っていることですし! 早速今晩は励みましょうねコカビエル!?」
「いや……10人は無理があるだろ……」
「流石にのらりくらりは無理だとわかったんだな、俺の師というかコカビエルは……」
「本当にガブリエルはぶれが無くて、尊敬するわ」
「それを言ったら一誠お兄ちゃんも大概だと思うけど……」
「だな、コイツもコイツで本当にリアスしか見やしない」
「当たり前だろ」
終わり
オマケ
人外と魔王
別に劇的な理由があった訳ではないのだけど、自然とそんな関係になっていたサーゼクスと安心院なじみ。
一京という途方もない個性がかつての戦いにより100以下にまで失われてしまった彼女と、妻を寝取られ、娘を守ろうと奮起した魔王。
「すーすー」
「ミリキャスは寝たかいなじみ?」
「うん、近くに居たグレイフィアちゃんから離れたことで、緊張が抜けて眠くなっちゃったみたい」
「そうか……。早くミリキャスを安心させてあげないといけないな」
当初はグレイフィアの事を引きずりまくっていた彼だが、彼女がミリキャスを自分共々あの男に売ろうとした瞬間からかつてのグレイフィアは完全に死んだと悟り、そして戦うべき相手と覚悟した。
その覚悟をした時から……いや、その前から安心院なじみはミリキャスの傍に居てくれた。
故に当初は感謝と恩義を彼女に持っていたサーゼクスは、やがて互いに助け合いながらミリキャスを守り続けていく内に、お互いに、つい何と無くな感覚で一緒になった。
それは、ヤムチャを振った後のブルマが寂しそうに見えたベジータとついなんとなくでそんな関係になったのと同じように。
「結局僕のスキルは戻らなかった。これじゃあもう平等なだけの人外である安心院なじみちゃんにすらなれなくなっちゃったぜ」
「……キミのかつての相棒の不知火って男が居たらなんとかなったのかもね」
「どうかな。あくまでも僕のバックアップみたいな存在だったし。
それにあの時世界に閉じ込められた時点で僕は悪平等ですらなくなった。
キミ達が居なかったら完全に僕は詰んでたと思うと笑えないぜ」
「逆にキミが居なかったら僕たちはひとつのチームとして戦えなかったよ」
寝付いたミリキャスを起こさないように、ベランダへと出た二人は、夜空を眺めながらこれまでの思い出を語り合う。
「本当に良いのかい?」
「……? 何が?」
「これはチャンスなんだぜ? 正気に戻ったグレイフィアちゃんとやり直せる」
色々あった。
個性を失い、大幅に力を失った事で死にかけた事は一度や二度ではなかった。
だけど、リアスを守るために進化をし続けていた一誠の様に、サーゼクスもまた進化をしてきた。
ただ、ミリキャスを守ってくれた安心院なじみへの恩を返す為に。
「良いも悪いも無い。
ここでは彼女とは何の関係の無い他人だ。
だからやり直すもなにもない……それに、あの男と一緒になってキミとミリキャスにしたことを無かったことにするなんて僕にはできない」
「でもそれってさ、あの男に――」
「一誠も言っていた。
じゃあ、洗脳されていたからって自分の仲間だった相手を傷つけて良いのか? 正気に戻ったからってそれを信じられるのか? ………僕の結論は後者だ。
いくら正気だなんだって言われても、あの時された事だけは絶対に忘れられないし、許したくない」
「……………」
慈愛のグレモリーなんてどうでも良い。
かつてされた事を忘れて再び慈愛とやらを向けられる程、サーゼクスもリアスも大人ではない。
「だから完全に縁を切る。
それで僕たちは本当の意味で前を歩ける」
名誉も地位もなにもかもを捨て、本当の意味でのリトライを果たせた時こそが自分達のゴールである。
そんな覚悟の炎が目に灯るサーゼクスの言葉に、安心院なじみはやれやれと肩をすくめた。
「これじゃあ僕がグレイフィアちゃんからキミを寝取ったみたいじゃあないか」
「あはは! じゃあ僕はキミに洗脳されてメロメロになった男かな? ふふふ、それも良いかもね」
個性のほとんどを失い、かつて球磨川禊によって封印された時の様と同じ白髪と化した彼女と赤髪の青年は互いに笑いながら、つい何と無く肩を寄せ合う。
「あーあ、平等なだけの人外って自称していたのも返上だ」
「もし完全に取り戻せていたらどうしていたんだい?」
「んー……さぁ? 行く宛もないしどっちにしろキミ達と居たかも? どっちにしろ――」
「……!」
「――――口移しはサーゼクス専用になってたと思うぜ?」
そしてつい何と無く不意打ち気味にサーゼクスへキスした安心院なじみはふふんと笑っていた。
「キミには敵わないなぁ……」
そんな不思議な彼女にサーゼクスは笑うと、彼女にされた時と同じように――影を重ねるのだった。
終わり
簡易人物紹介
サーゼクス君
嫁を寝取られ、娘にすら手を出そうとしていた外からの存在から娘を守るべく人外となった超越者。
当初は奪われた嫁さんに未練たらたらだったけど、あまりにも嫁の娘に対する態度が酷すぎたので、情と共に関係性も吹っ切る事を決意。
代わりに娘を守ってくれていた安心院さんと……つい、なとなくで惹かれ合ったらしい。