色々なIF集   作:超人類DX

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続き。
かなり適当


取り戻す道

 

 

 

 記憶は取り戻せたけど、あの時との違いはまだまだ残っている。

 

 そのひとつにて、今の俺にとって恐らく最大の『枷』が、自分が転生悪魔であることだろう。

 

 ただのイッセーだった頃には経験すら無かった転生悪魔としての肉体は正直言ってかなりの重石だ。

 

 記憶が無くて能天気だった頃の俺にリアス・グレモリーは転生悪魔になったことで寿命が伸びたとか、新体能力が上がっているだとか言語の壁がなくなった等々と聞こえの良いことばかり言っていた。

 

 事実記憶を失っていた頃の俺はその恩恵をもろに受けていられただろうから嘘ではない。

 

 だが記憶を取り戻し、自我(アブノーマル)を取り戻し始めている今となってはこの状況はかなりの枷―――というより俺にとっての異物になっている。

 

 早い話が、転生悪魔という身のせいで元のパワーが取り戻しにくくなっている。

 

 リアス・グレモリー曰く、一度駒を使用して転生悪魔になったら死ぬまで元には戻せない――らしいが。

 

 

「998……! 999……!! 1000……!!!」

 

 

 正直あの女共の言うことは信用していない。

 さっきの尋問の時にそれとなく魔王に聞いておけばよかったと軽く後悔しながら、俺はよくも知らんし興味もない三大勢力の会談とやらが終わるまでの時間を、可能な限りのトレーニングに費やす。

 

 

「ふー……」

 

 

 アザゼルさんではないアザゼルの在り方につい頭に血が昇ってしまった事で、俺は会談が終わるまでの間はこの生徒指導室に閉じ込められている。

 まー、今の立場をよくよく思い返してみたら、俺みたいな下っぱが敵勢力の長に喧嘩売った訳だし、こうして閉じ込めるのは当たり前といえば当たり前なので、別に抜け出す気は今のところない。

 

 

『アザゼルとコカビエルとガブリエルが俺達の知る三人ではなかったか……』

 

「………結構凹むよ」

 

『……。神牙はどうなのだろうな?』

 

「……………」

 

 

 コカビエルさんにアザゼルさん、そしてガブリエルさん。

 好き勝手生きようとしていたガキの俺達を守ってくれた、俺達にとって信用できた大人達はこの世界には存在しなかった。

 

 コカビエルさんはただの戦争狂なだけの堕天使。

 アザゼルさんはただの神器研究家なだけの堕天使。

 そして俺はまだ直接会ってないけど、エレーナの話からしてもガブリエルさんもきっとただの天使なんだろう。

 

 証拠にこの世界のコカビエルの引き起こした騒動に対してなんのアクションも無いのだ。

 

 それを踏まえれば、確かにドライグの言う通り、この世界に居るだろう曹操――ではなく神牙も『持たぬ者』なのかもしれない。

 

 

「まだそうと決まった訳じゃない。

アイツを見つけて直接話をするまで神牙であることを信じる」

 

 

 曹操の子孫であり、他人に対しては曹操の名で通していたあの前向きバカが、もし違っていて俺達の敵として立ちはだかったらと考えたは事は確かにある。

 だけど俺はそうではないと信じたい。

 

 親友の証として俺達に神牙という真名を教えてくれた、あのバーガー好きの大馬鹿野郎のままであると俺は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 イッセーが生徒指導室でトレーニングをしている頃、学園の会議室では悪魔・堕天使・天使のトップが一堂に会した会談が行われていた。

 その会談には先日コカビエルが引き起こした聖剣事件によって聖書の神が不在である事を知ってしまったリアス達も参加しているのだが、リアスを含めたその場の者達の視線は顔が青アザだらけで顔が何倍も腫れ上がっていたアザゼルに向けられていた。

 

 

「正直、アナタをそうまでさせた赤龍帝とは色々と話が合いそうな気がしないでもありませんね……」

 

 

 過去からの腐れ縁である現天使のトップであるミカエルが皮肉の籠った言葉をアザゼルに向ける。

 

 

「だったら会ってみろよ。

俺の予想じゃあお前も殴りかかられるだろうよ……」

 

「……。そんなに理性が無いのでしょうか?」

 

「誰にも懐かない狂犬みてーだぞありゃあ。

グレモリー……お前よく、あんなサイコ野郎を眷属にできたな?」

 

「……………」

 

 

 アザゼルからすればいきなり襲い掛かかってきた狂犬みたいな奴と思う他ないらしく、だからこそリアスがそんな男を手駒にしていることに逆に驚きだった。

 

 

「以前、妹のレーティングゲームの時に見た彼はもう少し年相応な青年というイメージがあったのだがね私も……」

 

「…………」

 

 

 リアスとしてもイッセーがまさかアザゼルを殺そうとするとは思っていなかったりするのだが、とにかく愛想笑いで誤魔化すしかできない。

 

 

「………。アイツの話をする為に、わざわざアンタ達が集まった訳じゃあないだろう?」

 

 

 気づけば赤龍帝の話に逸れている空気に、部屋の隅の壁に背を預けて立っていた銀髪碧眼の白龍皇少女ことエレーナが口を開く事で、本来の議題へと話が戻る。

 

 その際、顔全体が悲惨な事になっているアザゼルがしきりにエレーナに横に来いだの、膝に乗れだのと全力で嫌そうな顔をするエレーナに声を掛けるせいで、ミカエルやサーゼクス達の視線がなんとも冷たいものになったとかならなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 アザゼルの事もそうだが、オレからすればコカビエルとガブリエルの事も同様にショックだ。

 

 

「以前の説明通り、コカビエルの件は奴が単独で行った行動でそこに堕天使としての意思は一切ないからな。

コカビエルを止めるために送ったエレーナにコカビエルを回収させ、そのまま即『最下層』に送った。永久的にそこに送ったままにしとくさ。自業自得だ」

 

 

 アザゼル――いや、オレにとってこのアザゼルはただの変態だから変態で良いか。

 この変態とコカビエルの仲は悪く、そこに繋がりななかった。

 

 そしてコカビエルを想っていたガブリエルもまたコカビエルとの接点は殆どなかった。

 

 

「説明としては最低の部類ですね。

ですが、貴方個人が我々と事を起こしたくないという話は聞いていますがこれは本当なのですか?」

 

「ああ、戦争なんざ二度としたくねえよ。興味もないしな」 

 

「では何故ここ数十年の間に、神器の所有者をかき集めているんだい?

はじめは人間達を集めて戦力の拡大を図って天界か我々に戦争をけしかけるもんだと予想していたのだが……」

 

「しかし貴方はいつまでたっても戦争を仕掛けてこなかった。白い龍(バニシング・ドラゴン)を手に入れたと聞いた時には強い警戒心を抱いたものです」

 

 

 天使の――ミカエルがオレの方を見ながら言っているが、良かったなミカエル?

 今の言い方、アンタ自身に悪気は無いのだろうがもしイッセーか神牙が聞いていたら無言で蹴りか槍がアンタの顔面をぶち抜いていたぞ? あの二人はオレの過去を知っているせいか、妙にそこら辺に関しては過保護だからなぁ。

 

 

「今は絶賛反抗期で、どういう訳かあのサイコ野郎――じゃなくて赤龍帝の所に入り浸っているようだがな……」

 

「それは私達も聞いている。

エレーナさんだったかな? キミは何故妹の兵士でもある彼の傍に? 二天龍の伝承を知る身としては戦い合うこともしないのは些か不可解なのだが……」

 

 

 トップ達の視線がオレに向けられる。

 その内リアス・グレモリー達はある程度事情を知っているせいか、オレを忌々しげに見ているな……。

 

 

「一々アンタ達に事細かに説明してやるつもりも、理解して貰うつもりもない。

単純にオレはアイツのトモダチだし、大好きだから傍にいるだけだ」

 

『…………』

 

 

 お前達にはわからないだろうさ。

 ただ、宿命に乗っ取って殺し合うより、食い物ひとつで全力で喧嘩したり、ムカつく強い奴に喧嘩売って一緒に大暴れできる楽しさを。

 くだらない話をして笑って。背中を預けながら戦える存在の大きさをお前達は知っているつもりで何も知らないんだ。

 

 

「説明になってねぇぞエレーナ。

お前とあのサイコ野郎は今まで一度も会った事がないんだぞ? それなのに何故そこまで言える?」

 

「めんどうだな……じゃあ一目惚れした――これで良いか?」

 

「なっ!?」

 

 

 友であることに一々お前らの顔色なんて伺うつもりもない。

 邪魔をするならお前達だろうがまとめて黙らせてやる……。

 それがオレ達の生きた『自由』なんだからな。

 

 

「一目惚れ……ですか」

 

「じょ、冗談じゃねーぞエレーナ!? あ、あんなサイコ野郎となんて反対だ!!」

 

 

 リアス・グレモリーがオレに殺意を向けている中で、変態が煩いが―――しかしコイツ等、本当に各勢力のトップなのか? 先程から誰一人として気づいていない様だが……。 

 

 

 

 

 

 

 ―――――おっと、なだれ込んできたようだ。

 

 

 

 

「そういえば……変な組織があった気がするわ」

 

 

 

 一瞬だけ世界の時間が止まると同時に学園の校庭に次々と転移魔法が展開されては現れるならず者達を他人事のような気分で眺めていた私は、過去の世界の会談においても同じような事が起きていたことを今思い出していると、私と共に学園の警備を担当していた眷属達が大騒ぎする。

 

 

「か、会長! 侵入者です!」

 

「見ればわかるわ。

あー……取り敢えずそうね、流石にあの数相手じゃ不利だから魔王様と連絡取って―――」

 

 

 取り敢えず侵入者共の対処をしようと指示を飛ばそうとした私だったが、その言葉が紡がれる事はなかった。

 何故なら――

 

 

「あ、アイツ、兵藤か!?」

 

「か、会長……! 兵藤くんが一人で侵入者達の前に……」

 

 

 私の目に飛び込んできたのは、つい先程アザゼルを半殺しにした事で生徒指導室に勾留されていたイッセー君だったから。

 

 

「あ、あの馬鹿! まさか一人であの数を相手にする気かよ!?」

 

 

 何も知らない者からすれば、確かにイッセー君の行動は無謀そのものだわ。

 けれどそんな事などお構い無しとばかりに、一人で現れた子供を前に面を喰らっている侵入者達に向かって、イッセー君は駆け出し、先頭に居た男の顔面を殴り抜いた。

 

 

「会長……!」

 

「アナタ達は今すぐ魔王様の居られる会議室に行きなさい」

 

「か、会長は……?」

 

「…………。イッセー君に加勢して時間を稼ぐわ。

流石にあの数を相手に今のイッセー君では……ね」

 

 

 激昂するならず者達を一人ずつ倒していくイッセー君が本来のパワーであるなら30秒で全滅は可能でしょうけど、それだけのパワーを今は失っている。

 その証拠にならず者の攻撃を何度か受けてよろめいている……。

 

 ならばすべき事は決まっている。

 

 

「そ、そんなの危険です会長!!」

 

「加勢しないと流石に危険だわ」

 

「そ、そんなの、あの野郎が勝手にやってることです! それで死んだってそれはアイツの自業自得―――」

 

「………………」

 

「う……」

 

 

 記憶が戻ったことで私とイッセー君のそこそこ複雑な関係がどういう訳か気にくわないらしい匙を目線で制す。

 

 

「勝手にやったのなら、私が勝手に加勢しても私は『悪くない。』………違う?」

 

『…………っ』

 

 おっといけない。久々に他人に『素』を出してしまったわ。

 けれど、ふふ……どこの世界でも私の『素』への反応は一緒ね。

 

 初見でケタケタ笑いながら『ひんぬーがなんかカッコつけてるんだが』なんて言ってきたのはイッセー君くらいだわ。

 

 

「さ、早くしなさい」

 

 

 わからないでしょうね、肉親を含めた他人には。

 受け入れられないと思って抑え込んでいた自分の素を、隠す必要なんてどこにもないだろう? って笑い飛ばしながら受け止めてくれた人達がどれだけ大切なのか。

 

 世間様からすれば彼がとんだはみ出しものだったとしても、この世にとって害悪であったとしても。

 

 

「アナタこそカッコつけじゃないの……まったく」

 

 

 私の抱いたこの気持ちだけは曲げられない。

 

 

 

 

 

 

 禍の団という組織がある。

 その禍の団のしたっぱ達はたった一人で立ちはだかってきた小僧ともいえる年齢の青年に思わぬ苦戦をしていた。

 

 

「ラァッ!!」

 

「ゴボァ!?」

 

 

 ギラギラと喉元を噛みちぎろうとする狂犬のような形相で次々を構成員を叩きのめしていくイッセー。

 

 

「ち……」

 

『今のお前では数が多すぎるか……』

 

 

 偶々拾った金属バット等を駆使し、沸き出る謎の連中を叩き潰していくイッセーだが、少しずつ蓄積していく疲弊に焦りを抱かせてしまう。

 

 

「スタミナすらここまでぽんこつ化してるとはね……!」

 

「このガキ……! いい加減に――うぎゃあ!?」

 

 

 背後から襲い掛かる侵入者の顔面を裏拳を叩き込んで黙らつつ片方の手に持っていた金属バットを眼前の顔面に向かってスイングして吹き飛ばす。

 

 

『白いのがそろそろ来ても良い頃だが……』

 

「会議が忙しいんだろう……よぉ!!」

 

「うげぇっ!?」

 

 

 金属バットをヌンチャクのように時には振り回したり、容赦なく頭を叩き割ったりとしている内に、とうとう金属バットの耐久性が底を尽きたのか、折れてしまう。

 

 

「ぶ、武器を失ったぞ! 今だ!!」

 

「うぉぉぉっ!!」

 

「……チッ!」

 

 

 それを機と見た侵入者達が一斉に襲い掛かり、イッセーも即座にボクシングのフリッカースタイルを思わせる構えを取って迎撃せんとした時だった。

 

 

「シッ!!」

 

「な――ごべっ!?」

 

 

 飛びかかった侵入者の脇腹に鋭い蹴りがめり込み、数人を巻き込んで吹き飛ばされる。

 

 

「ぬ……!?」

 

 

 伸びてきた脚の先へと視線を移せば、そこには―――ひんぬー会長ことソーナだった。

 

 

「一人で遊ぶなんてズルいじゃない」

 

 

 トレードマークの眼鏡を外し、アメジスト色の瞳を輝かせているソーナが少し息を切らせているイッセーの横に立つ。

 

 

「こ、この小娘がァ……!!」

 

「ごめんなさいね? つい蹴りやすかったもので……」

 

「殺す! その小僧もろとも殺せぇ!!」

 

 

 更に激昂する侵入者達に構えるイッセーだったが、不意に横に居たソーナから何かを投げ渡される。

 

 

「アナタが記憶を取り戻した時の為に用意してた得物よ。

過去のアザゼルから貰った得物と比べたら三級品だけど、切れ味は保証するわ」

 

「これは……」

 

 

 キャッチしたイッセーの目に飛び込むのは、鞘に納められた短刀――所謂ドスだった。

 その瞬間、ソーナが何を見たがっているのかを察したイッセーは、中国拳法を思わせる独特の構えをするソーナと息を合わせるように鞘からドスを抜く。

 

 

「エレーナが来る前に終わらせて悔しがらせるわよ――イッセー!」

 

「オーケー……終わったらセクハラしてやるから覚悟しろよなソーナァ!」

 

 

 そしてイッセーとソーナは異次元のコンビネーションで次々と敵をなぎ倒すのだった。

 




簡易人物紹介

イッセー
転生悪魔としての肉体のせいで、精神こそ戻ったもののその状態の肉体がもろに枷になっていてフルパワーを取り戻すのに四苦八苦中。

それでも狂龍状態――つまりバーサク状態になれば魔王一人くらいはぶちのめせる


戦闘スタイルは三馬鹿時代にゲームで覚えた某嶋野の狂犬の若かりし頃の喧嘩師とスラッガーの2種と狂犬スタイル。

そして赤龍帝としての自分が編み出した伝説スタイル。


 ソーたんに対するナチュラルセクハラと、そのセクハラに対してはソーたんが当たり前のように受け入れているということもあって匙からは恨まれている。


ソーナ・シトリー
素の自分を笑い飛ばして簡単に受け入れた三馬鹿達とは所謂ズッ友。

アザえもん、コカビー、ガブリーには正味肉親よりも信頼して懐いていた。

そんなソーたんも三馬鹿達に触発されて力を磨くことで種としてと限界値を突破していたのだが、イッセーのように今はかなり衰えている。

戦闘スタイルはイッセー達がやってたゲームを一緒にしていた事で真似した某元弁護士にて現探偵の、円舞、一閃、流の三種に加えたオリジナルの伝説スタイル。

 同じように関わりが薄かったのに何故か前世の記憶があるリアス達からはかなり妬まれいる。

 前世の際に泥酔したイッセーに思いきり純潔持ってかれたこともあってイッセーからのセクハラはなんでもかんでも受け止められるらしい。

 エレーナ(ヴァーリ)
 思い出した時期が早い為、現状三馬鹿勢力の中では最強。

その戦闘スタイルは某堂島の龍の三スタイル+白龍皇として編み出した伝説スタイル。

見た目は本当に美少女なせいか、割りとセクハラをされることが多いのが悩みらしい。

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