色々なIF集   作:超人類DX

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続き。
実はけっこーヒロインヒロインしてたりする子。


胡夢さんの見つけた道

 

 

 自分の魅力がまるで通じない――と、思えば単純な手には割りと簡単に引っ掛かる。

 チョロくないようでチョロいかもしれない。

 

 というのが月音に対する黒乃胡夢の印象だった。

 

 

 最初は魅力が通じず野蛮な月音に嫌悪していた胡夢も、紆余曲折あって彼の人となりを知り、そしてその正体を知ったことで気になる男子に変わった。

 

 

「!?」

 

「フッ!!!」

 

 

 

 気になってからの月音との付き合いはちょっとした友人のようなそれだった。

 

 

「うっ!?」

 

「せいっ!!」

 

「ぐっ!?」

 

 

 そして彼の過去を知った事である決意を固めた胡夢はそれまでの人生で行うことは無かった強さの研磨を始めた。

 強くなることが月音の背中に近づける唯一の方法であると信じて。

 

 裏萌香がそうであるように。

 

 

「コイツ……」

 

「やっと一発お見舞い出来たわよモカ……!」

 

 

 一度踏み込んでしまったからこそ止まる訳にはいかない。

 誰よりも先を歩む月音のもとへ。

 その後ろを必死に走って追い付かんとする役割を裏萌香だけに占領させるのは嫌だから。

 

 

『どうやら、前までの胡夢ちゃんと同じと思ってちゃあいけないみたいね?』

 

「………………………」

 

 

 少し顔色を変えた裏萌香に不敵な笑みを浮かべる胡夢の果てない挑戦はまだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 異空間での修業が日課になってから暫く経つ中、その鍛練における成長を一番果たしているのは意外にも胡夢であった。

 

 

「いたた……流石にまだ無理だったわ」

 

「ぽんこつ1号とやりあってるのを見てたけど、キミのその戦い方って……」

 

「あ、気づいた? 実は去年ドライグに月音の昔の記憶を見せて貰った時に、昔の月音がこういう戦い方をしているのを思い出してね。

自分なりに真似してみたのだけど……」

 

 その成長速度に驚いているのは他の誰でもない月音であり、しかもその戦い方は過去の自分に酷似していたのだ。

 

 

「出来ればもう少し自分なりに極めてみたいから、月音に教えて貰いたかったり……」

 

「それは良いけど、その(スタイル)ってガキの頃やってたゲームの主人公キャラをそっくり真似ただけなんだが……まさかキミにそこまで再現されるとは思わなかったよ」

 

「え、そーなの?」

 

「ああ、確かえーっと、そう……喧嘩師の型だったかな? 真○の兄さんってゲームキャラが居て……」

 

「ふむふむ……」

 

 

 記憶を見ただけで自分なりにそこまで再現したと言う胡夢に内心割りと驚く月音も気が乗ったのか、構え方からレクチャーを始める。

 それに倣うように胡夢も一緒に構えたり、拳を突き出したりとする。

 

 

「構えとしてはボクサーでいうフリッカースタイルを少し崩した感じで構えてだな――」

 

「こう?」

 

 

 意外にも親身になって教える月音のお陰でメキメキと戦闘スタイルのひとつを吸収していく胡夢。

 そんな二人の意外なやり取りを面白くなさそうに……先程の模擬戦の際に頬に小さな痣を作っていた裏萌香が見ている。

 

 

「私には適当な事しか言わないのに……」

 

『また始まった。

すぐ妬くんだから……』

 

 

 ムスッとする裏萌香に表の萌香が宥めるような声を出していると、同じく修業に参加していた紫やみぞれが裏萌香に同意するように頷いている。

 

 

「けど、思い返してみれば胡夢さんと月音さんって喧嘩をしなくなってからは割りと普通に仲良く見えます」

 

「それどころか胡夢に対しては結構態度が丸い」

 

「だろ!? そうだろう!?」

 

『そ、そんな事は………』

 

 

 紫とみぞれの意見に対してぷんすかと怒りだす裏萌香。

 表萌香はそれでもそんなことは無い……と言いたかったものの、言われてみればそんな気もしない空気を目の前で型のレクチャーをしている月音と教わっている胡夢を見て思ってしまう。

 

 

「そもそも月音はあんなに細かく教えるような奴じゃない。

現に私には適当だ」

 

「やっぱりおっぱいのせいなんですかね……」

 

「月音は無駄にデカい方が好き疑惑があるからなー……」

 

「疑惑というか、事実好きだと言ってましたよ……だらしない顔しながら」

 

 

 

 その内瑠妃までもがジト目となってあーだこーだと言いながら、直接胡夢の身体に触れながら教えている月音と、不意に触れられて軽くどぎまぎしている胡夢を見てもやもやするのであった。

 

 

「良いか? 身体の重心はもっと前だ」

 

「あ、う、うん……。(お、教えてって言って正解だったかも)」

 

 

 そんなもやもやを娘さん達に与えている自覚なぞ当然ないし、あったとしても迷惑だとしか思わない月音はといえば、実の所この空間を理事長に提供されてからはまともに眠らずの鍛練に費やしていた。

 

 

「…………」

 

「流石に一ヶ月近く寝ないのはよくないし、少し寝た方が……」

 

「大丈夫だ、ガキの頃はこれでも寝ずとも二ヶ月はパフォーマンスを落とすことなく活動ができて……」

 

「そんな眠そうに目を擦りながら言っても説得力なんてありませんし、今は月音さんなんですから……」

 

「………ぬぅ」

 

 

 流石に寝かせないと不健康だと思った萌香達の説得によって、取り敢えず眠る事になった月音は、すっかり理事長室より豪華になった公安委員室のお高いソファをベッド代わりにして眠る。

 

 

「…………………」

 

「すぐに寝ちゃったね」

 

「やっぱり無理してたのよ月音……」

 

「一切私達にはそういう所を見せませんからね……」

 

 

 横になるや早いか、即座に眠ってしまった月音を静かに取り囲むように様子を見る萌香達。

 

 

『寮の部屋にすら戻らずにずっと鍛練だったからな』

 

「そーいや萌香って月音の部屋に無理矢理居座ってたわね……」

 

『居座ってなんか居ない。

目を離すとフラフラするから監視してるだけだ』

 

「どーだか」

 

 

 学校が建て直された後も、当たり前のように男子寮である月音の部屋を自分の部屋同然に使っている萌香達――というよりは裏萌香に胡夢ジトっとした目になる。

 

 

「zzz……」

 

『おい、わかっているとは思うが、恥ずかしい思いをしたくないのなら寝ている月音には近づくなよ』

 

 

 そんな少女達に寝ている月音の左腕に現れた籠手越しにドライグが忠告を出す。

 

 

「あ、そうだった。

寝てる月音に近づくと色々されちゃうんだったわ」

 

 

 そのドライグの声を聞いた表萌香が思い出したようにすやすや寝ている月音から二歩程下がろうとしたのだが……。

 

 

「きゃあっ!?」

 

 

 眠っている月音を見ることがあまりなかったのと、ふとした悪戯心が働いて頬をつつこうと手を伸ばしていた胡夢が餌食になってしまった。

 

 

「えっ!? ちょ、ちょっと月音!?」

 

『あっー!?』

 

 

 突っつこうと伸ばした手を掴まれ、あれよあれよと蟻地獄のようにソファに引きずり込まれてしまった胡夢が抱き枕にされてしまった。

 その光景に表萌香は『あちゃー……そう言えば皆はこのことを知らなかったわね』と呟き、紫やみぞれはぎょっと驚き――

 

 

『貴様ァ!! ホルスタインの分際でなにをしている!!!』

 

 

 裏萌香はロザリオ越しに相当荒ぶっていた。

 

 

「ど、どういうことです!?」

 

「く、胡夢が月音に抱きつかれてるぞ……」

 

「ど、ドライグさん! これは一体……」

 

『いや、言っていなかったか? コイツは寝ると無意識に人肌を取り込んで寝ようとする習性が……』

 

 

 表萌香と同じく、以前に説明していなかったことを忘れていたドライグの説明に紫達はそんな習性があったなんてと……抱きつかれている体勢から動けないでいる胡夢を妬ましげに睨む。

 

 

「こ、これって私はどうしたら?」

 

『叩き起こせホルスタイン! 早く!』

 

「……って、さっきから裏萌香がロザリオが荒ぶらせてるけど?」

 

『無駄だ、一度深く寝ると中々起きんぞ』

 

「そ、そうみたいね……」

 

「すぴー……」

 

 

 思いきり拘束されるが如く抱きつきながら眠る月音の頭を試しに軽く叩いてみるも、まったく起きる気配がない。

 

 

「ま、まあそれだけ疲れてるのだし、しょうがないわね……うん」

 

「………その割りには喜んでるように見えますけどー?」

 

「私に代われ」

 

「か、代われないわよ。

思いきり抱きつかれて離れてくれないし……」

 

『おい替われ! 今すぐあのホルスタインをしばき倒して――』

 

「そんな事したら月音が起きるし、五月蝿くしたら機嫌悪くなるわよ?」

 

『だ、だがあんな破廉恥なのはゆるさん!』

 

「許さんって言うけど、貴女だって経験してるでしょーが……」

 

 

 こうして胡夢は思わぬ初めての体験をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んあ………? あれ、おれは―――――どぅわっ!?」

 

「あ、起きた……」

 

「ちょ……なっ……えっ!?」

 

「大分寝ぼけてたみたいよ? で、その……まあこういう事になっちゃった感じ?」

 

「あ……わ、悪い……」

 

「べ、別に良いわよ。

それより何か飲む?」

 

「え、じゃ、じゃあ水くれ……」

 

「ん……持ってくるから待ってて」

 

 

 

 

 

 

「…………………おい、俺は一体なにしてた? 見てたんだろ?」

 

「胡夢さんのおっぱいに即負けする月音さんなんて知りません」

 

「普通に酷いとしか言えないぞ月音」

 

「もう一人の私が完全に拗ねちゃって大変だったわよ?」

 

「え、えぇ……?」

 

 

 

 

 

 

「はい、お水」

 

「お、おう」

 

「? なに緊張してんのよ?」

 

「し、してねーし。

あ、あのよ……俺はキミになにしてた?」

 

「なにって……抱き枕みたいにされたり、胸を思いきり揉まれたり――」

 

「……ごめんなさい」

 

「い、良いわよ別に。

そんな子犬みたいな目で謝られると逆におかしな気分になっちゃうし……」

 

「……」

 

「ただ……裏モカに負けたくなくなった理由が余計強くなっちゃったくらいだわ」

 

「へ?」

 

 

 

 

終わり。

 

 

 

 

 

 

只の魔を越える。

 そうすることで到達した領域は彼女を更なるステージへと誘うのだ。

 萌香達が月音とドライグに近い力を持ったように、彼女は月音の精神を知る。

 

 

「多分、それがキミの異常(アブノーマル)だ」

 

「そう……なの?」

 

「ああ、だから納得もしたよ。

なるほど……多分キミの異常は模倣することに特化したものだ。

だから俺の戦闘スタイルを簡単に真似られた」

 

「………」

 

「だから魔である筈のキミをその剣が次の使い手として選んだのかもな」

 

「このデュランダルが……?」

 

「そうだ。もっともデュランダル――というよりはゼノヴィアの意志かもしれないけどな」

 

「………」

 

「だからその剣はキミが持っておけ。

元々俺は単にゼノヴィアから預かってただけだからな」

 

 

 そして魔でありながら時と世界を越えて継承するのだ。

 

 

「行くわよモカ! 蒼龍破……!!」

 

「なにっ!?」

 

『あれは月音の過去の記憶にあったゼノヴィアさんの……』

 

 

 聖と魔を越えた先への道を歩む事を。

 

 

「月音に名付けて貰った。

そう、これが正心翔銘の私よ!!」

 

 

 皮肉なことに、共に歩むもしもの世界の赤髪の悪魔が掴んだ領域を。

 

 

「ず、ずるいぞアイツばっかり!」

 

「うっせーな、なんだよ?」

 

「お前の血もあるし、デュランダルなんて聖剣まで貰ってるし、トドメにお前と同じ精神のそれまで! 胸か!? 胸がデカいからなのか!? だから優遇か!?」

 

「んな理由じゃねーわぽんこつ。

単純に彼女が適正だっただけで――」

 

「胸なら私もある! ほらどうだ! まいったか!?」

 

「わかったからもう黙れお前……」

 

「月音~? クッキー焼いたけど食べる?」

 

「おう。んめーんめー」

 

「」

 

 

嘘です




簡易人物紹介。


裏モカ
強くて美人なバンパイア――ではあるのだが、この物語ではコンタクトレンズ感覚で表の自分と交代したり意志疎通ができるせいでかなりぽんこつ化している。

自分の上を行く月音が余所の異性と居たり、冷たくされると子供みたいに泣き出す。

それでも現状一番月音の領域に近づいている辺りはスペックお化けで間違いなし。


黒乃胡夢
 淫魔の妖怪。

チャームが一切通用しない、自分に対してそこら辺に落ちてるゴミ扱い等々、当初月音とは互いに毛嫌いしていたのだが、何度か助けられたのと、一誠としての過去を知ってからは大分態度が軟化していき、月音も月音で自身の暴走のせいで胡夢が腕を失いかけた事もあったので、その態度を改めている。

 結果、なんか微妙に仲が良くなり、また腕の接合に使用した月音の血が馴染んだことで実は初期裏モカさんレベルのスペックに進化している。

 そして見よう見まねで過去の月音の戦闘スタイルを真似、そして――――

実は裏萌香さんよりもこの子の方が月音とのトラブル基、Toloveるに発展しがち。


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