色々なIF集   作:超人類DX

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やったね! これでハーレム王だ(棒)


悪役令嬢と主人公は『諦める(建前)』

 

 

 怒ると容赦ないし、女の子への配慮なんて全然無い。

 その癖結構スケベだし、女の人の好みがかなり片寄っている。

 

 多分『普通』の人達からすればイッセー君には好かれる要素が無いんだと思う。

 

 事実ちょっと本気を出したイッセーくんを見た人達はイッセーくんを怖がる。

 

 

 怪物扱いされる私とユミエラちゃんをまとめて叩きのめすその強さが異質だと顔色を真っ青にする。

 

 それが一般人から見えるイッセーくんなんだと思うし、私も切っ掛けが無かったら一般の人達と同じ事をユミエラちゃんやイッセーくんに抱いていたと思う。

 

 

 人間は理解不能な力に対して『異端』と見なして受け入れない――前にイッセーくんが言っていた言葉。

 

 その言葉の意味が今ならわかる。

 最初は『普通』だったからこそ痛いほど解ってしまう。

 

 

『俺の生き方は俺が決める。

誰かの決めた『正しさ』とやらになんて興味はない。

自分のこれが異常だからといって、周りの顔色を一々伺いながら隠して生きるなんて真っ平ゴメンだ』

 

 

 でも、そういう意味でも私はとても幸運なんだと思う。

 

 頑固な程に揺れない信念を持つ人であることを知れた。

 悪戯をする子供のように笑うその顔を最初に見れた。

 

 クールに見えて結構普通にスケベ事をする人なんだって。

 

 ツンケンしてる言い方をする割りには寂しがりやさんなんだって。

 

 

『そんなに知りたいのなら教えてやる。

けど、知ったら最後――お前達は絶対に逃がさないし解放もしねぇ。

逃げても地獄の果てまで追い回してやるからな……ふっふっふっ』

 

 

 私は知ったんだ。

 どれだけ強くても、どれだけ恐れられていても……イッセーくんは完璧な人なんかじゃないって。

 

 むしろ、イッセーくんは完璧とはほど遠く、そして永遠に完璧には成り得ない人なんだって。

 

 そして……本当は甘えたがりな人なんだって。

 

 

「ガキの頃、親に捨てられてホームレスやってた頃に出会した人外女はこう言ってた。

異常(アブノーマル)過負荷(マイナス)ってな」

 

 

 きっとこの世界にとってイッセーくんは危険だし、殆どの人達はイッセーくんの存在を受け入れられないと思う。

 でもそれは仕方ないし、責める事はできない。

 

 何故ならイッセーくんは自覚しているから。

 

 自分がこの世界にとっての害悪なんだと。

 

 

「待って、その単語……どこかで聞いたことある気がするわ」

 

「………。やっぱりコレについての知識はお前にもないのか?」

 

「ええ。

私の知る限り、イッセーはあくまで赤龍帝であって………………っ!? お、思い出したかもしれないわ!!

ねぇイッセー! その人外女ってもしかして安心院なじみって名乗らなかった!?」

 

「と思いきや知ってるのかい。

お前の知識ってやっぱりスゲーな。まさにその通りだよ。

平等なだけだった人外って名乗ってた」

 

「や、やっぱり! まさかのジャ◯プ漫画キャラがイッセーの居た世界に居たなんて……」

 

「あー……。

その言い方から察するに、あの女は元々俺が居た世界には存在しない筈の女だったのか?」

 

「え、ええ、更に別作品の登場人物だったわ。

……確かに精神の力をスキルと解釈しているのには納得できるわ」

 

「えーと……なにがなんだかよくわからないけど、とにかくその異常と過負荷ってものが私とユミエラちゃんにも宿っているんだよね?」

 

 でもイッセーくんが害悪であろうとなかろうと、私とユミエちゃんには関係ない。

 だって私もユミエラちゃんも好きになっちゃったんだもん。

 

 そしてイッセーくんの立つ場所に必ず追い付くって心で決めている。

 

 

 

「もしかしたらイッセーと出会えたのは彼女が関係しているのかもしれないわね……」

 

「それはどうかな、文字通りのガキの頃にスキルの概念を教えられて以降は一度も会うことはなかったぞ。

俺に教えたのも単なる気紛れだったんじゃねーのか?」

 

「……。まあそれならそれで良いけど。

そっか……私とアリシアが黒神めだかや球磨川禊のようなスキルを……。

ところでイッセーのスキルは『成長』するスキルなの?」

 

「まぁな。

厳密に言うと、生きている限り『際限なく進化し続ける異常』………らしいな。

スキル名は―――『無神臓(インフィニットヒーロー)』なんて名前負けにも程がある名前だけどな」

 

「だからイッセーくんのレベルを調べようとしても水晶玉が砕けるんだね……」

 

 

 それが私の生きる意味だから。

 

 

 

 

 あらゆる環境や状況という概念に対して即座に適応し、糧として無尽蔵に進化し続ける異常か。

 

 改めて詳しく聞けば聞くほど確かにチート通り越してインチキな強さを持っている筈だわ。

 

 だって鍛えれば鍛える程この世界の限界値の遥か先に進み続けられる訳だし、元の世界で狙われ続けたのも納得するわ。

 

 

「ゼノヴィアさんとイリナさんも持っていたの?」

 

「当然だろ。

俺みたいに人外女から教えられた訳じゃないのに、再会した頃には既に完全に制御していたぞ」

 

 

 しかもイリナとゼノヴィアに至っては誰に教えられる訳でもなく自力で到達していたらしい。

 そりゃあイッセーが二人を好きになるわけだわ……。

 

 

「私とアリシアにもそう言ったスキルが本当にあるのかしら……?」

 

 

 自分の同類だから。

 でも他作品の力が本当に私達にあるのか……。

 そんな不安を口にしてしまう私に対し、修行場に使っている学園外れの荒れ地の岩場に腰かけていたイッセーが徐に私の前へと立つと、じーっと……それはもう鼻先が触れ合うくらい顔を近づけさせながら私の目を真剣に見つめている。

 

 

「……………」

 

 

 何時もイッセーの突拍子のない行動には驚かされるけど、この時の私はツッコミも忘れてじーっと見つめてくるイッセーの間近にある顔にドキマギしてしまう。

 

 

「むー……」

 

 

 そんな私の状況を羨ましそうに見ているアリシアを背に私は漠然と思う。

 やっぱりどこからどう見ても私にはドストライクな顔してるわ……。

 本人はエドウィンだとか言った男連中の顔より下だと卑下しているみたいだけど、少なくとも私――それとアリシアからしたらイッセーも充分に男前だと思うわ。

 

 等と思いながらついうっかりそのまま背中に腕を回して抱き寄せつつキスしてみたくなる衝動に駈られ始めた辺りでスッと離れたイッセーが頷きながら言う。

 

 

「間違いなく『手前』までお前は来ている」

 

 

 あると言われた私はホッとすると同時に絶対に掴んでやると改めて決意を固める。

 

 

「むー、イッセーくん、私の事も見てよ?」

 

「だから一応あるっての……後はそれを引き出すか出さないかだ」

 

「そうじゃなくて! さっきのユミエラちゃんの時みたいに近くで私を見てよ?」

 

「はぁ? なんだそりゃ……?」

 

 

 これでやっとイリナとゼノヴィアの二人と同じ土俵に立てる。

 そしてそこから二人には出来なかった事を――イッセーと同じ領域に到達してみせる。

 

 死にたくても死ねないイッセーを絶対に独りにはさせない為に……。

 

 

「お、おっふ……」

 

「おい、目ェ泳がしてないでちゃんと俺を見ろ。そうじゃないと確認しにくいんだよ。

第一、お前が見ろって言ったから見てやってんだろーが」

 

「だ、だってイッセーくんの顔がカッコいいから……」

 

「はぁ?? ……。ユミエラといい、どういう趣味してるんだよ? まったく……」

 

 

 こういった時間を永遠のものにする為には駆け上がらないといけないのよ。

 

 

 

「そんな事を言うのはゼノヴィアかイリナくらいだっつーのに……」

 

「逆にどうしてそんなに自信が無いのよ……?」

 

「そうだよ、前もエドウィンさん達の顔がイケメンで腹立つって言ってたけど、イッセーくんも負けてないよ?」

 

「だから、そんな台詞吐く時点で美的感覚が狂ってんだろ。

……。強いて理由を上げるとするなら出会してきた畜生共含めて顔面偏差値だけは無駄に高すぎたんだよ」

 

「だからその顔面偏差値の高さに関してはイッセーも負けてないと思うわけで……」

 

「やめろ!! 慰めなんて要らん! ……余計自信無くすぜ」

 

「……変な所でネガティブだよねイッセーくんって」

 

 

 

 

 

 学園始まって以来の濃すぎた一年が経過した春の今日。

 実は密かに学園内にて『大魔王とその側近二人』等と囁かれるまでになってしまっているユミエラとアリシアも進級して二年生になった。

 

 

「早く孵らないかな~」

 

「ええ、孵ったら絶対に強い子にしてみせるわ」

『……』

 

 

 そんな噂など全く意に介さない大魔王の側近二人ことユミエラとアリシアは春の長期休暇の全てを大魔王ことイッセーからの超鬼畜トレーニングに費やした事で、休暇前と比べると明らかなパワーアップを遂げていた。

 そして入学式と始業式となる今日、ユミエラとアリシアは妙にホクホクとした顔をしながらそれぞれバレーボールサイズの漆黒と純白の卵を抱えながら門を潜っていた。

 

 

『何かの卵かあれ…?』

 

『また嫌な予感が……』

『というか大魔王は居ないのか…?』

 

 

 その異様すぎる光景に当然最早有名人どころではない二人を遠巻きに見る生徒達だが、その異様さの黒幕と黙されるユミエラの使用人である男の姿が無い。

 

 

「アリシア! ………っと、ついでにユミエラ嬢」

 

 

 去年彗星の如く出没し、髪の色からして魔王の生まれ変わりだと思われたユミエラを怪物まで押し上げ、そして聖女と同じ属性の魔力を持つ庶民の少女をも懐柔し、信じられない速度で怪物化させた事で付けられた渾名が『魔王を裏から操る大魔王』。

 陛下に友好条約を宣誓させたとされる『化け物』の存在去年の一年間を知る生徒達からしたら全ての常識を真っ向から否定された悪夢の一年だった。

 

 その大魔王の姿が見えない。

 考えてみればあの男は使用人であって生徒ではないので当たり前といえば当たり前ではあるのだが、姿が無いと無いで不安になる。

 

 去年の年末パーティーの時みたいに、学園全土――国全体―――否、世界そのものを震撼させる程の力をユミエラとアリシア相手に『とことん楽しそうに』解放していた姿を目撃してしまっては尚更……。

 

 

 

「あ、おはようございますエドウィン王子、ウィリアムさん、オズワルドさん」

 

 

 そんな怪物女子二人に対して、果敢に絡もうとする猛者は少ないながらも存在している。

 例えば初期は友情を深めかけていたエドウィン、ウィリアム、オズワルドの三人がそれに該当しており、大切そうに白く輝く卵を抱えていたアリシアの前に現れる。

 

 

「………あの男は居ないのか?」

 

「? イッセーくんなら朝から居ませんよ」

 

「………」

 

 

 どこかビクビクとしながらイッセーが居やしないかと周りを見渡す三人にアリシアがキョトンとしながら居ないと言えば、露骨に三人がホッとする。

 

 

「別にそこまで怯えなくても、お三方に対してな『何もしなければ』イッセーも何もしませんよ。

……まあ、相手にしないと言う方が正しいですけど」

 

「「「………」」」

 

「パトリックさんくらいじゃありませんか? イッセーくんが完全に敵意抱いている人って……」

 

「そ、それなら良いが……」

 

「それより二人の抱えているそれはなんだ?」

 

 

 ほんの少しでもユミエラに近づいただけで過剰に殺意を剥き出しにする相手はパトリックくらいだと話すアリシアに、三人は複雑な顔となる。

 というのもそのパトリックが先ほどから50メートル後方からストーカー宜しくにこちらを見ているのだ。

 

 それがもしバレたら新学期早々血みどろカーニバルが強制開催されてしまう。

 だからこそイッセーが留守にしていると聞いてホッとなるエドウィン達はユミエラとアリシアが後生大事そうに抱えている漆黒と純白の卵について訊ねる。

 

 

「これはドラゴンの卵です」

 

「同じく」

 

「「「は?」」」

 

『………』

 

 

 ちょっと拾ったみたいな言い方をする二人にその場で聞いていた全員が固まる。

 どうやらこの世界におけるドラゴンは貴重かつ制御が難しいとされる生き物だ。

 

 卵を孵すにはまず大量の魔力を注ぎ込む必要があり、その魔力によって孵った子ドラゴンが最初に目が合った存在を親と認識する習性がある――というのがこの世界におけるドラゴンの習性だ。

 

 だがそもそもその卵自体を見つける事が難しく、よしんば見つけたとしても親ドラゴンを越えた魔力を持たない限りは単なる珍味にしかならない。

 

 そんなドラゴンの卵を二つも所持している時点で、そして当たり前のように親になろうとしている二人の少女にエドウィン達以下その場で聞いてしまっていた生徒達はとても遠い目をしている。

 

 

「アリシアの卵は優しい雰囲気がするが……」

 

「ユミエラ嬢の方はなんというか……」

 

「普通に禍々しいものを感じるけど大丈夫なんだろうね?」

 

「失礼な、立派なドラゴンとして育てますよ」

 

 

 この国に存在する人慣れしたドラゴンが2体だけしか存在しないのに、個人が持つ事は色々と快挙というより大変でしかない。

 だがユミエラもアリシアも手放すつもりはまるでないらしい。

 

 

(イッセーもドラゴンと共に在るからね。

もし上手く育てられたらお揃いになれるわ)

 

(ドライグさんみたいに強くてカッコいいドラゴンに育って欲しいなぁ)

 

 

 何故ならドラゴンと共生し、頂へと到達しているその背中を知っているから。

 こうして周囲の何とも言えない視線を受けつつエドウィン達にお辞儀をしてから去るユミエラとアリシアはマイペースに雑談するのだった――大事そうに卵を抱えながら。

 

 

 

 

 

 新学期早々にユミエラとアリシアが早速の話題を生徒達に提供する中、大魔王呼ばわりされているけど実は魔王含めた悪魔やその他の生物を絶滅させた赤き龍帝ことイッセーは、すっかり威厳が削がれつつかる学園長に呼ばれていた。

 

 

「嫌ですね」

 

「そこをなんとか……」

 

「俺は学なんてありませんよ。

それにあんた等の言う庶民だ」

 

「陛下が爵位を是非キミに与えたいと申されているし、私としてもキミには是非そうして頂きたい」

 

 

 学園長室のソファに座り、出された茶菓子を行儀悪く貪りながら、何やら提示された話を断るイッセー。

 

 

「アリシア嬢という前例があるし、そもそもキミなら周りの声なんて黙らせられるだろう?」

 

「だとしても嫌ですね」

 

「そこをなんとか……。

正直使用人として学園内を自由に徘徊されるのは私の胃的な意味で辛いのだよ……」

 

「………」

 

『言われてみれば随分と窶れてるなこの男も……』

 

 

 どうやらユミエラの使用人という体――つまり立ち位置的に宙ぶらりん状態であるイッセーを正式に学園所属にさせたいらしく、その交渉の真っ最中らしい。

 確かに使用人という体で学園内を好き勝手に徘徊しては、たまに生徒を八つ裂きにしたり学園の敷地を更地にされるよりかはある程度行動が読める立ち位置になって貰った方が対応も楽だ。

 

 学園内で何かやらかす度に学園長の胃に甚大なダメージを与えられるのもあってか、中々に本音爆発で頭まで下げている。

 

 

「キミの名は既に王家や貴族達に知れ渡り始めているし、所謂『中擬き』と呼ばれる貴族達には『英雄視』すらされているのだよ」

 

「あ?」

 

「だってそうだろう? 地位を持たぬキミに対して陛下が――いや王国そのものが友好条約を結んでいるのだぞ? 血統等関係なく成り上がれると彼等は……」

 

「くだらねぇ……。

俺はそんな連中共に祭り上げられるつもりは無い」

 

「だろうね。

キミ程の力があればそれこそこの国を力で乗っ取れる。

だがキミそんなものに興味は無い――というのは一年程キミを見てきて解っているつもりだ。

だからここ、解りやすくある程度の地位をキミが持てば周りからの不満をもう少し簡単に抑え込める」

 

 

 なんならユミエラ嬢の親であるドルクネス伯爵よりも上の地位となれば合法的に彼女との仲をどうにか出来るぞ。

 それこそ重婚だって可能になる。

 

 

 等と言い出してくる学園長に対して脊髄反射的にテーブルの上のお皿に盛ってあった固そうなオレンジを顔面に向かって投げつけそうになるが、どちらかと言えば目に見える範囲に居て貰わないと胃が爛れて死んでしまうからという理由の方が本音だと理解したイッセーは取り敢えずその話を飲む事にした。

 

 

「そこまで俺が怖いか……あの王様は」

 

「そりゃあそうだろう。

私だって正直こうやって話している最中も何時キミに蹴り飛ばされやしないかとヒヤヒヤさ」

 

「………」

 

 

 決して合法的にユミエラとアリシアをどうこうできるという話しに魅力を感じた訳じゃないと誰に対してわからない言い訳を頭の中で並べながら。

 

 こうしてイッセーは―――

 

 

「進級おめでとう。

えと、さ、早速だがこの度この学園に編入する事になった者を紹介する……」

 

 

 

 

 

「イッセー・ヒョウドウ。

本日付けで大公の爵位を王様から押し付けられた挙げ句頼むからと学園長に言われて嫌々学生やることになりました。

………っあー、もう帰りてぇ」

 

「………」

「…………」

『………………………………』

 

 

 世界一似合わない王立学園の制服に身を包み、去年からその悪名を知るが故に唖然となる生徒達を前に心底かったるそうに自己紹介をするのだった。

 それはそんな話しなど知らなかったユミエラとアリシアも同じであり……。

 

 

「ではイッセー君の席は――」

 

「適当に空いてる席で良いでしょう? あー、もうめんどくさい……」

 

「あ、はい……どうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ユミエラとアリシア。その真ん中の席寄越せ」

 

 

 

 気づいたら数多のラノベ展開を思わせる勝手に成り上がりが成立した瞬間だった。

 

 

 イッセー・ヒョウドウ

 バルシャイン王国大公(公の場のみ)

 大公・ヒョウドウ家始祖にて初代当主。

 

 バルシャイン王国からの友好条約宣誓。

 現国王からの同盟条約成立。

 

 

「入学式と始業式の間に何があったからそうなったのよ……?」

 

「これ以上俺が『庶民』のままボンボン共相手にやらかすのは世間体が悪いから、いっそ爵位を渡したいんだとよ」

 

「えー……? せっかく同じ庶民同士だったのに出世し過ぎだよー……」

 

「俺だって嫌だったわ。

けどあんな窶れた学園長に必死こいた顔されたら―――」

 

『俺にはドルクネスの家よりも高い地位を持てば合法的にお前達をどうこう出来るという話に釣られたようにしか見えんかったがな』

 

「「え……?」」

 

「そんな訳あるか! 変な事を言うなドライグ!!」

 

 

 ハーレム王になれる条件その1……入手完了。

 

 

「た、確かに中央擬き呼ばわりされているドルクネス家からしたら新興の家とはいえ大公――それも陛下と個人的な友好条約を結んでいる男との婚約は寧ろ――」

 

「だからちげーっての!」

 

「それに大公様なら重婚したところで問題も――」

 

「だから! そんな回りくどい真似なんぞせんでもお前ら二人くらいどうにか出来るわ! それこそ文句抜かしてくる奴らなんぞ片っ端からぶちのめしたりな!」

 

「へ、へぇ……?」

 

「そういう事考えてくれてたんだね……? あ、あはは……」

 

「んがっ!? う、うるせーうるせー! オメー等みてーなちっぱいに興味ねーわ!」

 

「今夜は眠れなさそうだわ……ふ、ふふふ……!」

 

「またちゅーちゅーされちゃうのかぁ。参っちゃうなー?」

 

「ばっ!? こ、声がデカ――」

 

「胸フェチにも困ったものだわー……あー、でも大公様からのご命令には逆らえないわねアリシアー?」

 

「だって大公様なんだもん、それは無理だよユミエラちゃーん?」

 

「「ねー♪」」

 

「こ、コイツら、最初の頃の互いに対する警戒心はどこいったんだ……」

 

『イリナとゼノヴィアもそうだったろ? 基本的にこういう時の女には勝てん』

 

 

 

 

 

 

 

 

「」

 

「パトリック……その、強く生きろよ?」

 

「これで授業中すら近寄れなくなったな……」

 

「ち、父上はどういうつもりなんだ……」

 

 




簡易人物紹介


ユミエラ・ドルクネス
悪役令嬢ですら無くなっている少女。

99の限界値を突破し、デュランダルの継承者候補となり、自身の扉を開け放つ事でスキルという概念を知る事になるのだけど、その元ネタがまさかのジャンプ漫画のそれであり、イッセーにその概念を教えたのが平等なだけの人外だったことに改めて驚く。

 その際、その平等なだけの人外の『かわいすぎる容姿』に対してのイッセーの印象はどうだったのかとビクビクしていたが、イッセー本人は『特にどうとも思わなかった』と言ったのでホッとなる。

 そしてこの度イッセーがラノベ主人公らしく成り上がった事で合法的に嫁げるチャンスを得てアリシアと共に小躍り(表情筋は死んでる)しつつ、最近イッセーに夜されていることを教室でぶちまけてしまう。

 

 アリシア・エンライト

 悪役令嬢と親友ルートを無意識に開拓した主人公。

 99の限界値を突破し、ジョワユーズの継承者候補となり、扉も開け放つまでに至ることで『イッセーとユミエラの其々の過去』を知る。
 だが知った所で二人が大好きなのは変わらないし、寧ろそんな秘密を打ち明けてくれた事が嬉しくて、ますます離れるつもりが無くなっている。

 ユミエラと同じく、イッセーが合法的に重婚可能な地位に成り上がったお陰でユミエラと一緒に小躍りしながら最近イッセーからされている事を教室のど真ん中でぶちまけてしまう。


 イッセー
 あまりにもチンピラムーブ過ぎて、ある程度の地位を友好の証しとして渡した方が良い気がしてきた王様の計らいにより、一応王国に名を連ねる貴族の一員になってしまった男。

 当初は勿論断ろうとしたのだけど、窶れ気味な学園長から『合法的に可能』だと言われたものだからつい了承してしまう。

 後に『敵として出くわしたら全てを捨てて命乞いをしろ』と畏怖される王国最高戦力一族ことヒョウドウ家の始まりとなるかはまだ知らない。





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