つか続きです。
色々と場面が切り替わりまくりです。
ハイスクールI×S
どういう事だ……。
シャルは原作だと男装し、ラウラは俺に恨みを持ってる筈だ。
なのに何故――
「こんなもんかしらね、どっちも専用機持ちで中々の実力よ」
「最近鈴さんを含めて専用機持ちの方が転校して来ますわね」
「ふん、随分と気になるようだな一夏?」
腕と脚をやられ、変身ツールを破壊されて医務室での生活をあのふざけた無人機のせいで余儀なくされてる俺は、比較的軽傷ですぐに復帰した鈴からこの前転校してきたシャルとラウラの様子についてを聞いてみたが、例の無人機の時と同じく二人とも様子が原作と剥離している。
まずラウラは精神にわだかまりが無く、普通にクラスに溶け込んでいるらしいし、シャルに至ってはシャルル・デュノアでは無くシャルロットとして男装無しで転校してきたらしい。
無人機の時点でよもやとは思っていたが、まさか此処まで違うとなると、例え俺が復帰してもどう動くべきか……。
クソ、今すぐにでも動ければまだ何とでもなるが、このザマじゃ千冬姉さんに突き返されてしまう。
「………」
クソ女神、さっさとツールとこのザマを何とかしろよ。役に立たねぇな。
転校して早数日が経つが、この国は平和だな。
生徒達も気が抜けているというか、危機管理能力があんまり無いというか……。
いや、決して貶してるしてる訳ではない、日本は軍隊を持たずして此処まで経済を成長させた凄い国だし、フジヤマ・テンプラ・ハラキリの三種の神器のお陰で平和が保たれている神秘の国なのだ。
「っ……やはりまだまだ届かぬか。流石私の嫁だ」
「だから嫁言うなよ……」
さて、そんな日本での生活にも慣れてきたある日の休日だ。
教官の弟である織斑一夏とは、彼が重症患者となって医務室にいるせいで挨拶は出来なかったが、代わりに世界で二番目のIS操縦者であり、織斑一夏に顔がそっくりの男……兵藤一夏と、その兵藤一夏と仲良しである更識簪と知り合いになり、同じ日に転校したシャルロットとは部屋も同じということもあって友人にも近い関係を結べるようもなれた。
その時は特に何も思わなかったが、今にして思えばシャルロットと友人になったのは運命なのかもしれない……。
「ぷっ!? ヴァーリお前……!
こんな娘に嫁なんて言われてるのか?」
休日を利用し、学園を出た適当な場所でヴァーリと合流した時に一緒に居た黒髪の男。
最初に見た時は驚いたものだ……何せこの男の姿はシャルロットが兄と呼ぶ男に瓜二つだったのだから。
しかも、嫁……ヴァーリと旧知の友と知れば単なる偶然とは思えん。
「もう、笑ったら失礼だよお兄ちゃん!」
シャルロットの兄が、ヴァーリの知り合いだった。
それにより休日となるとシャルロットと二人で学園の外でフラフラしてるヴァーリと、最近行動を友にしているらしいシャルロットの兄――曹操と合流し、修行したり遊んだりをしてるのだが……。
「ふはっ!? どうした曹操? お前だってその娘に兄と呼ばせてるじゃないか!」
「ち、違うわ! 何か流れでそうなっただけだ! 嫁呼ばわりさせるお前とは違うぞ!」
「お前の方が酷いだろうが! 一誠がよく持ち込んでたジャパニーズ・モエ・アニメにド嵌まりしてしたお前の方がな!」
「違う! 嵌まったのはヘラクレスとゲオルクであって俺じゃない!
一誠と同等のロリコンだったヴァーリが言うな!」
……。何故か言い合いが多い。
ヴァーリは曹操という男にロリコン呼ばわりされ、曹操はヴァーリに妹好きの変態野郎と罵り……。
私とシャルロットはよく解らないが、二人の普段見せない一面に満足感に浸れるので敢えて黙ってた。
「おい二人とも、少し落ち着け」
「そうだよ、友達に再会できて嬉しいのは解るけど、毎回そんな大きな声で言い合ってたら迷惑だよ? ここ、お店の中だし」
「「ぬ……」」
だが放っておくと何時までも言い合っているのと、喫茶店の中というのもあるので、私とシャルロットは一旦二人を止めるために声を掛けると、二人は揃って何とも言えない表情で互いににらみ合いながら、注文していたコーヒーに口をつける。
「ちくしょう、お前に言われて自覚したせいで一誠の事が言えなくなったぞ。そんな感情なんて無いのに」
「俺だってそうだ。
しかも、それだけならまだ良いが一誠がこの状況を知ったらどんな顔をすると思う? 多分、泣くほど笑うか、腹の立つ顔でニヤニヤしながら『まごう事なきロリコンですねぇ! ギャッハハハハ!!』と言ってきそうだ」
「くっ、簡単に想像できてしまうぞ」
他にも知り合いが居るらしく、とても苦い顔をしている二人に、シャルロットが質問しようと口を開く。
「そのイッセーって人がお兄ちゃんとヴァーリさんが言ってた、探してるパシリさん?」
「え? あ、お、おう……そ、そうだよ。な、ヴァーリ?」
「そ、そうそう、アイツとアイツと一緒にいるオーフィスという幼女がだな……。パシリの癖にフラフラしちゃって困ってね……うん」
「? どうした二人とも? 何故そんなに動揺してる?」
「な、なななな、何でもないぞ! アハハハハ!」
「そうだとも! わはははは!」
イッセーという人物が二人共通の知り合いで、どうやら二人の子分らしい。
普段からヴァーリに勝手に居なくなった困ったパシリだと聞かされていたので、存在は知っていたが……ふむ、どんな奴なんだ? ヴァーリより弱いだろうが、それでも強い男なんだろうけど……。
(お、おい! 何で一誠をパシリだと吹いてるんだ!)
(お前もそうだろうが! 妹の前で見栄なんか張るなよ!)
(人の事良く言えるな!?
ラウラって子の前でカッコつけたくてパシリなんて言いやがって! 一誠にこの事を知られたら確実に殺されるぞ!)
(ぐっ……だ、だよな)
「お兄ちゃん達の顔色が真っ青……」
「体調でも悪いのか?」
見たこともない位に何故か狼狽える二人に、私達はケーキを食べつつ首を傾げるのだった。
強い強いと聞いてたけど、アレはそれを通り越してると思うんだよね。
「うーん、10%も思考パターンを取り除いちゃうと更に弱体化しちゃうし、かと言ってこのままだとまた暴走しちゃうし……」
この前IS学園で残らず大破させられた時の戦闘映像をお復習しながら、只今私は新しく組み上げたゴーレム改の戦闘AIの製作に取り掛かってる。
モデルは勿論、私の護衛兼協力者であるソーナちゃんなんだけど……。
「そういえば匙と姉さんの間に6人目がデキたと向こうに居たときは聞いたけど、もう生まれたのかしら?」
このソーナちゃんの戦闘データは頗る優秀なんだけど、何というか製作元のソーナちゃんの我が強すぎるというか、例の一誠って男の人を前にすると確実に制御を離れてしまうのがネックなんだよねー
完璧に制御可能なレベルにまで下げちゃえば良いんだけど、そうなると最初期に組み込んだAIレベルに落ちちゃう。
只今天才の束さんの悩み所なのだ。
「あら、一夏少年が多数の女の子を侍らせながら一誠とオーフィスの元に。
あらあら、モテモテね」
「ぬ!? そんな言い方をやめてよね! いっくんは単に彼女達を一誠って人の所に案内してるだけだしー! 寧ろ一誠って人がおモテじゃないのかな!?」
衛生数機をハックして映し出してるいっくんの様子をニタニタしながら、私に聞こえる様に喋るソーナちゃんがこんなんだから、制御が難しく、私もついついムキになってしまう。
だっていっくんが侍らしてるなんて……束さん的に凄い困るし。
「だったらさっさと会いに行けば良いでしょう? うかうかしてると本当に取り返しが付かなくなるわよ?」
「うっ……そ、それは……いっくんに『だから何ですか?』って冷たく言われたら立ち直れる気がしないし……」
声を荒げる私に、ソーナちゃんが眼鏡のレンズを光らせながら淡々と言ってきた瞬間、言葉に詰まってしまう。
そう……嫌なら会えば良いんだけど、その際もしいっくんに拒絶される言葉とか言われたらへし折れる処かいきる意味すら無くしてしまいそうで……。
「盗撮した映像を慰めに使ってる女の言う台詞じゃないわね」
「そ、それは言わないでよ……!」
「じゃあさっさと行きなさいこのヘタレ。
一回につき五時間も同じ映像で慰める度に掃除と洗濯が大変なのよこっちは。どんだけ性欲有り余ってるのよタバネは?」
「だ、だって、自分で止められないというか……も、もう分かったよ! さっき箒ちゃんから専用機寄越せって連絡があったし、近々渡しに行くときにちゃんといっくんとお話する! これで良いでしょ!?」
「ええ、ついでに処女でも捧げなさい。場合に依っては簪って子を取り込んででもね」
い、言い方がストレート過ぎる。
ソーナちゃんが悪魔故なのか、それとも一誠って人に拘り過ぎてすっかり拗らせたせいか。
……。でも、初めてをいっくんがかー……。
「んっ……ぁ……や、やば……」
ちょっと想像してみたところ……一気に全身が熱くなってしまった。
だってあの小さかったいっくんが、成長し、強くなったいっくんが私をなんて……えへ、えへへ。
「ちょっと想像したらそれですか。
アナタ、多分私の姉さん並みの性欲ね。それに付いていけてる匙も匙だけど。
はい、新しい下着よ。さっさとシャワー浴びて履き替えなさい」
「ひゃ、ひゃい……」
ああ、いっくんに滅茶苦茶にされたいよぉ。
もういっそ奴隷扱いでも良いから傍に置いて欲しいよぉ……ぐすん。
ロリコンさん。
フッ……気付けば一夏の連れてきたお友達にそう呼ばれてるぜ。
「ロ、ロリコンの癖に強い……!」
「うぅ、一発も当たらないよー」
「チャラチャラしてるのに……り、理不尽ですよ!」
「いや……俺どんだけ不真面目なキャラなんだ? 何かキミ達にしたっけ?」
たっちゃん、一夏と簪のクラスメートの布仏本音ちゃん、そしてその本音ちゃんのお姉ちゃんの布仏虚ちゃんと……。
簪を理解してあげたいという意気込みと、一夏に負けたくないという意地で俺に鍛えて欲しいと頼んできたのをこうして、休みの日とかを主にしてあげてるのだけど、何故か俺はたっちゃんのせいでロリコン男にされてしまってる。
いや、ぶっちゃけると元の世界でも散々言われてたし? 別に良いんだけどさ……。
「くっは、流石オーフィス姉は強いぜ」
「攻撃が速過ぎて、反撃しようとしたらすぐやられちゃう……」
「ん、一夏も簪も普段から修行はサボってないみたいだね、偉い偉い」
オーフィスと一緒に居るだけでロリコン呼ばわりは幾ら何でも横暴だぜ。
「あの……今日もありがとうございます。本当は楯無お嬢様だけだったのに、私とお姉ちゃんまで……」
「別に良いよ。どうせ年中暇だしな」
ただ、この……ヴァーリの趣味と被ってる事を最近知り、是非本人と対談させてみたい本音って子はまだマシというか、俺をロリコンとは言わずに割りと素直な子なので救われてる。
こんかぽーっとしてそうな子までにっこりしながら『このロリコンさん♪』なんて罵られたら、Mじゃないので軽く泣ける。
「前々から疑問だったのですが、ご職業は何を?」
その代わり、本音ちゃんの姉ちゃんの虚ちゃんはすっごいツンツンだけどね……一夏に対しても。
今だって俺を胡散臭そうに見ながら就職してるのかと聞いてきやがる。
「……。インサイダースレスレの真似事して一発当てたから、何にもやってないけど……」
「あぁ、ニートですか」
「ま、まぁ……はい……」
で、金は掃いて捨てられるほど稼いでるから何もやってないと答えると、ゴミを見るような目で見られる。
この子が貧乳だったら多分何か言い返してたんだろうけど、悲しいかなこの虚って子は中々大盛りなもので……くぅ、おっぱいに弱い自分が憎いぜ。
「言い過ぎよ虚ちゃん。確かに一誠さんはオーフィスちゃんに犬耳付けてわんわんとか言わせたりするどうしようも無い変態だけど――」
「ちょっと待ちなよたっちゃん。何その話? どっから出てきたんだよ?」
「オーフィスちゃんが自慢気に『我は一誠にそういうことを頼まれるくらい愛されてる』と言ってましたけど?」
「オーフィスゥゥゥ!!」
あのバカ、随分昔のネタを事もあろうに何でこの子達に話てんだゴラ! アレは何となく魔が刺しただけなのにぃ!
「最低ですね、あんな無垢な子にそんな事を……」
「ちょっと待て、マジで待て。それはまだ俺が餓鬼の頃の話だぞ。
良いか? 何度も言うけど、アイツは俺より歳上なんだよ、訳あってあの姿だけど……」
「無限の龍神……でしたか? オーフィスちゃんの正体が。
まあ、確かにオーフィスちゃんの姿が変化して龍になったのは驚きましたが」
「そうそう、だから俺は別にロリコンじゃ――」
「ですが! 殆ど人と変わらないオーフィスちゃんを少女の姿にさせているのは兵藤さんとお聞きしてる以上は、誤解も何も無いと思いますけど?」
「う……それは」
オーフィスの姿がああじゃなきゃ嫌だ。
初めて出会った時の姿のままじゃなきゃ何か違う。
だから今も餓鬼の姿にして貰ってるだけで――あー……こんなん言っても意味無いな。
寧ろ余計に引かれるわ。
「……。いえ、ごめんなさい、少し言い過ぎました。
オーフィスちゃんのお話を聞くに、本当に兵藤を想ってる様ですし、強要している訳では無いのは解ってます」
「その上無理を言って私達三人を纏めて面倒を見てくれてるのは……本当にありがたいとは思ってます」
暫く年下の子に色々言われてたが、ちょっと言い過ぎと思ったのか、謝って来たたっちゃんと虚ちゃんにちょっとキュンとした。
くそ、この子達サドのセンスあるかもしれねぇぜ。
「良いよ、昔から散々知り合いに言われたからな……」
オーフィスの力を見ても、普通に仲良くやれる時点で少なくとも俺目線じゃ良い子達だし、少々俺が嫌われても良いさ……あはははは! …………………。はぁ~
概念をも破壊する力がある。
それ故に、神の力すら真正面から捻り潰し、かつてはよく神の座を持つ者達をボコッては下水道に放り捨ててたりした兵藤一誠は現在、超絶ニートになりたいが為にわざわざ世界を力技で強引にオーフィスと一緒に渡り、それなりのニート生活を送っていた。
が、最近はそのニート生活を脅かす存在がチラホラ一誠の周囲に浮上している疑惑が浮かび上がっていた。
「篠ノ之束? ……というとアレか、ISの開発者か?」
更識楯無・布仏本音・布仏虚と奇妙な師弟関係を結び、今日もドギツイ鍛練を施した連休初日の夜。
三人は一足早く学園に戻ったが、一夏と簪は実家でもあったので、泊まる事となり、久々に四人でご飯を食べつつ会話に華を咲かせていた。
「うん、姉さん達の話だと、この前の無人機の背後にはその人が居るかもしれないって」
そんな折りに簪から切り出されたある天才の話に一誠は眉を寄せた。
「ほーう、て事はあのド貧乳はその篠ノ之束ってのと一緒かもしれないって事か。
だ、そうだぜオーフィス?」
「………。別にあの雌悪魔が誰と居ようが我には関係無い。一誠にベタベタしなければ」
セレブニートをする為に、危険を承知で世界を渡った一誠とオーフィスの二人の察知を掻い潜り、この世界に居る可能性が大きいかつての知り合い。
ソーナ・シトリーという、唯一一誠に1番近い進化を遂げた超越者が、ISの生みの親である篠ノ之束の傍に居るかもしれない……という簪からの話と以前から推測していた自分の考えを照らし合わせる一誠は、ソーナと束が共に居ることをこれにて殆ど確信した。
が、オーフィスはその話にちょっと不機嫌そうにぎゅーっと一緒に引っ付き出したりしており、ソーナに対する敵意がまるで薄れていない事を存分に思わせる様子を見せたので、若干失敗した気分にはなったが。
「篠ノ之束……って、あんまりよく知らねーけど、確か織斑千冬って一夏の姉ちゃんの知り合いじゃなかったか? おい、そこんとこどうなんだよ一夏?」
篠ノ之束の姿を見てないので何とも言えないが、昔一夏を引き取った際に篠ノ之という名字を何度が聞いたことがあったのと、忘れてしまった一夏の姉の知り合いが篠ノ之束という噂をどこかのゴシップ記事で読んだ事を思い出した一誠は、さっきから嫌に無言で一誠作のご飯を食べてる一夏に話を振ってみると、一夏は動かしていた箸を一瞬だけ止める。
「一応知ってるけど、昔の事しか知らないよ。
どうせあの人も俺なんか知らねーだろうし」
「あ、そう……」
「一夏……?」
「……? 一夏が冷たい」
妙に淡々としてる一夏に三人は眉を寄せて食べるのを再開した一夏を見つめるが、それ以上何も語ることはしなかった。
しかし……。
「ちなみに、当時目線で構わないから聞くが…………ボイン?」
「ボインだったね、ぶっちゃけ当時の時点で山田先生レベルになりそうな気配はあった(キリッ!)」
「マジで!? お前が持ってきたボインリストNo.1の山田さんレベルなの!? スゲー!!」
ボイン談義にシフトして話を振った瞬間、オレンジジュースの入ったコップを片手に、無駄にキリッとしながら答えた一夏と聞いてハシャギ始めた一誠に、簪とオーフィスは無言でジト目となって二人を睨む。
「だがま、例の如くあのパチもん君にゾッコンになってるだろうし、もしかしたら既に生おっぱいを独り占めしてるかも」
「それは……うーん、許せねーなオイ。仕込みはしてやったが許せねーな」
「え、やっぱり兄ちゃんの仕込みだったんだ、どう治療しても重症から回復出来ずに居るって噂で聞いたけど」
「え、あぁ……その方がお前に逆恨みしてボロでも出すだろうと思ってよ。こっそりとね」
一誠のせいで、ハシャぐと『おっぱい! おっぱい!』と変な顔文字を連想させる顔で連呼する、実に欲望に忠実な青年に成長した一夏。
お陰で簪がむすくれる機会が増えたりもしたが、オーフィスと決定的に違うのが、簪は割りと大きく構えてるという所だ。
いやある意味自信というべきなのか……。
「お兄ちゃんも一夏も本音はそこまで女の子の胸の大きさとか気にしてないから大丈夫だよオーフィスお姉ちゃん」
「ん、我はとっくに知っている」
一夏と一誠という一×一兄弟は、どっちかというと包容力の大きい方が好みなのだ。
もっと簡単に言えば、相手がロリだろうが胸の大きさが慎ましかろうが、甘えさせてくれるのであればオーケーだったりする事を知っているので、オーフィスも昔と比べたらムッとする事はあれど、目くじらを立てる事は無くなったのだ。
無論簪もだ。
「でも待てよ? あのド貧乳と一緒なのと、この前の騒動の流れからして、もしかしたらその篠ノ之束って子はパチもん君をパチもんって気付いてねーか?」
「は?」
「え?」
「む?」
少なくとも、一誠の何気ないこの一言が出てくるまでは、簪は大きく構えていた。
「何言ってるんだよ兄ちゃん。織斑千冬元姉さんがあんな簡単にパチもんを弟だって言ったんだぜ? そりゃねーだろ」
「うん、私もそう思うよ」
一誠の一言に対して一夏が馬鹿馬鹿しいという顔で二杯目のオレンジジュースの煽り、簪もそれに追従する。
が、意外にもそれに対して異を唱えたのが……既に食べ終えて歯も磨いた後を暇してる所をひっつき、一誠のの指をちゅぱちゅぱしてるオーフィスだった。
「いや、多分一誠の言うとおりかもしれない。
そうじゃなければ、一誠と会う前までは暴走してなかったらしいあの機械があそこまでボコボコにするのは変」
子供が見てる前で段々と発情した表情になりながら、この前の事を説明するオーフィスに一夏と簪は押し黙ってしまった。
言われてみれば、あの無人機をアリーナから二人で見てた時、一誠とオーフィスが来るまでは機械っぽく織斑一夏をボコボコに……しかも割りと執拗にやってた。
これがもし篠ノ之束が織斑一夏のゾッコンだったとしても、再起不能ギリギリまでボコボコにするのはおかしいのだ。
「まあ、真実は本人に聞かないと解らないけどよ」
「……。一夏はどう思ってるの? というより、篠ノ之博士と面識は……」
「……。一応あった。
餓鬼の気の迷いが幾つか働いてた気がするが……いやでも無いだろ。
だって何でじゃああの人だけ俺を覚えてるんだ? 千冬元姉ですらアレだったのに……」
一誠とオーフィスの意見に若干揺らぐものの、それでも無いと……かつて全てを喪ったトラウマ故に、簪の不安そうな表情を横にジュースを一気飲みする。
「ある訳ねーよ、そんな事……」
心の奥底には言い知れぬ引っ掛かりと……。
『束のおねーちゃん遊んで~!』
『良いよ~ 何して遊ぶ?』
『あれ! えっと……夫婦ごっこしようぜ!』
『へ? あ、う、うん……別に良いけど、箒ちゃんがお嫁さんかな?』
『えー? 違うし、束のおねーちゃんがオレの――』
「ぬぐおぉぉっ!?!?」
「一夏が奇声挙げながら、テーブルに突っ伏してバンバンしてる……」
「変なもん食わせた覚えはねーけど何なんだ?
つーか、オーフィスは何時までも餓鬼みたいに人の指を吸ってんなよ」
「はむ……じゃあやらない。
その代わり、我のムズムズするココを触って? そしてそろそろ子作りを――」
「バカか、子供の教育に悪いだろうが!」
「別に今更なんだけど……」
記憶の奥底から出てきた、恥ずかしすぎる記憶を呼び覚ましながら……。
終わり。
オマケ……。
「一誠とオーフィスからのアシストにより、光明が見えてきたみたいよタバネ?」
「う、うん……」
「しかも、一誠のせいで建前だけは胸の大きい女の人を好むらしいし? 良かったじゃない? その無駄に邪魔な脂肪の塊になっといて」
「何でそんな嫌味っぽいのさ? 自分が無いからって……みぎゃあ!? 痛い痛い痛い痛い痛い!?!?!?」
「ナニカ、イッタカシラ? コノコムスメハ?」
「な、何でもない! 何でもないからやめてよ! も、もげちゃうよぉぉ~!」
いっくんに私がちゃんと解ってるという事を、あの例の二人のお陰で植え付けられた。
それはとても嬉しい事で、とても暖かくて……。
「はぁはぁ……ソーナちゃんの力だと洒落にならないのに……」
「ふん、戦闘の邪魔になるようなだらしのないものをぶら下げるからそうなるのよ」
生きる意味を見出だせる。
あはは、私って現金な性格だな~ホント……。
「シャワーでも先に頂くわ」
「ど、どうぞ」
ソーナちゃんのコンプレックスをうっかり刺激してしまったせいで、すっかりヘソを曲げてしまったままシャワーを浴びると部屋を出るのを見送った後、私は何故かテーブルに突っ伏して寄生を出してるいっくんの姿をぼんやりと眺める。
『一夏?』
『な、何でもない……くそ、変な事を思い出して急激に恥ずかしくなっただけだ』
『恥ずかしいことだ?』
『う、うん……それが――いや、何でもない!』
何かを思い出し、悶絶してたらしいいっくんがお部屋を出て、自分の部屋へと戻り、ベッド飛び込んでいる。
学園が連休なので、どうやら簪って子と一緒に泊まるらしいんだけど……。
『もう昔の事だ……つーか、何確定項目扱いしてんだよ。
束のおねーちゃんって……ハッ』
「え……?」
それまで一言たりとも口に出さなかった私の――昔いっくんが使ってた私の呼び名を口にしたのを見た瞬間、私の身体は雷に撃たれた様に固まった。
「い、いっくん? 今、なんて……?」
勿論、こんな聞いても映像なので向こうに聞こえる訳が無い。
興奮したソーナちゃんがよくやらかしてるのと同じ事をこの束さんがやるなんて間抜けだけど、この時ばかりは思わず言ってしまった。
だって……だって……。
『チッ、もうオレには相棒が居るんだ……アレはそうだ、マセてた糞餓鬼のしょうもない初恋なんだ……でなけりゃ束のおねーちゃんに『結婚してください!』なんて……アホか!』
「はぅわ!?!?」
いっくんも、忘れてなかったんだもん。
「はぁ……ぁ……!
い、いっくん……そ、そんな事、今言われたら……わ、私は……」
あは、あはははは♪
終わり。
補足
地味に再会した後の死亡フラグが溜まるヴァーリきゅんと曹操くん。
『パシりって……………なぁに?』
と、バレたらこうなるかもね。
その2
三人娘は地味に生身超強化フラグ。
三人娘がこぞって生身でISをぶちのめす未来は来るのだろうか……。
その3
地味に思い出してしまい、自己嫌悪爆発の一夏きゅん。
まあ、でも束さんはそんないっくん見ながら……だし?
最後
最後の束さんの部分の『ノーカットver』極短ですが『色々なIF集r-18ver』にぶちこみました。
ただ、それだけ。