色々なIF集   作:超人類DX

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続き……。

……これぞ学園ラブコメだ(白い目)


悪役令嬢と主人公は重さを重いと感じない

 

 

 学園がただ一人の男によって『暴力が支配する世紀末的な学校』にはさせない為にこの度学園長に就任した男はとても窓の外から見えてしまう『世紀末っぷり』に遠い目をしていた。

 

 

『地獄の九所封じその一、大雪山落としーっ!!』

 

『ごぼぇっ!?』

 

 

 それまでは単なる一介の生徒としか認識されていなかったとある田舎貴族の息子が、一体どうして何を言ったりやったりしたからそんなに怒らせたのかと聞いてすらみたくなる形相で、何やら豪快な技を叩きつけいる頭痛の種ともいえる青年を見ている。

 

 

『お、おい……!? ぱ、パトリックの背中から聞いてはいけない音が聞こえたぞ!! それ以上は―――』

 

『地獄の九所封じその二、その三! スピン・ダブルアームソルトーっ!!』

 

『と、止めろユミエラ! お前の言葉ならヒョウドウもある程度は――』

 

『嫌ですね』

 

『事故と言い張ってても、流石にユミエラちゃんのおっぱいをあんなに鷲掴みにするのは良くないと思うかな?』

 

『あ、アリシアまでそんな……』

 

 

 なるほど、どうやらまたしても懲りずにユミエラに対してやらかしたらしい。

 

 

(なんでやっちゃうのかなぁパトリック君も……)

 

 

 それならわざわざ殺さないように手加減しつつも確実に痛め付ける技のようなものを何度も叩き込まれるのも納得だわと、どこまでも冷たい目をしながらイッセーを止める事を拒否するユミエラを見てため息を吐く学園長は、既に軟体動物のように両肩があらぬ方向に曲がりまくるパトリックの髪を掴んで立たせ、軽く上空へと投げる鬼の形相をしたイッセーを見る。

 

 

『地獄の九所封じその四と五! ダブル・ニー・クラッシャー!!』

 

『げげぇー!? 今度はパトリックの両足が大変な事にっ!?』

 

『こ、今度こそ死ぬだろ!?』

 

『大丈夫ですよ。

イッセーは相手を殺さずに嬲殺す天才ですから』

 

『本気なら一発でパトリックさんの全身をこの世から消し飛ばしているだろうしねー?』

 

『あ、アリシアまでそんな冷静に……』

 

『地獄の九所封じその六、兜割りー!! そしてその七! ストマッククラッシュ!!』

 

 

 エドウィン、オズワルド、ウィリアムがオロオロする中を、ただただ冷静かつ冷酷な視線で全身を丹念に破壊されていくパトリックの様を見ているユミエラとアリシアは、既に動けるわけもなくなっていたパトリックの手を掴んで無理矢理立たせるイッセーがトドメを刺そうとしているのだと察する。

 

 

『その八……人間じゃねぇ生物以外で、それも人間様がこうまで俺をムカつかせてくれるとはなぁ。

褒めてやるよテメー?』

 

『も、もう勘弁してくだ――』

 

『うーん………………聞 こ え ん な ぁ ?』

 

『』

 

『地獄の九所封じのラストワン!!』

 

 

 これが後に学園の伝説となる事件のひとつ――龍の帝王による血祭り事件である。

 

 

 

 

 

 

 

『完璧壱式奥義!! 神威の断頭台ーっ!!!』

 

 

 

 魔王だ……いや大魔王がそこに居る。

 

 

 かつての世界のとある漫画を読んで完コピまでに至った、悪魔な将軍様にて完璧超人始祖の一人である超人の必殺技(フェイバリット)を叩き込まれてまたしても無惨な姿にされてしまうパトリックを見下ろしながら……。

 

 

「おいそこのボンクラ三人。

汚いからさっさと片付けておけよ、そのボロクズを」

 

「「「…」」」

 

 などとこの期に及んで宣うユミエラ以上に危険極まりない男のその姿は、見たことなんて無いものの魔王そのものに見えて仕方ない。

 

 

「」

 

「最近、自分にあるこの地位の意味がまるで無いと思い始めてきた」

 

「奇遇だなエドウィン……俺もだ」

 

「というかあの暴君があまりにも例外過ぎるだけなんだろうけど……」

 

 

 今日も懲りずに血祭りに上げられ、ミンチよりもヒデェ状態で横たわるパトリックを片付けろと庶民の筈の男に命令されるエドウィン、ウィリアム、オズワルドの三人は、この殺戮現場を見せられてすっかり恐怖した他の生徒達が一斉に――どこぞの十戒のように道を譲る中を堂々と歩いて去るイッセーの残虐さに戦慄しつつも、地位という概念を破壊して我を通せるその力にほんの少しだけ羨望の気持ちを抱くのだった。

 

 そしてそんなイッセーの後を追うように付いてこれるだけの領域に君臨しているユミエラ……そしてアリシアにも。

 

 

「まさかキン○マンの将軍様の技まで使えるとは驚いたわ」

 

「死ぬほど読み尽くした漫画のひとつだったからな。

てかお前も知ってたのか」

 

「ええ……もっとも私はそこまで読んではなかったけどね」

 

「???」

 

 

 どこぞの悪魔な将軍の必殺奥義の完コピまで見せられたユミエラはアリシアが頭に無数の?を浮かべているのを忘れて久々に前世の自分としてイッセーと話をする。

 どうやらユミエラ自身もパトリックへの同情心は皆無らしい。

 

 

「そんな事よりテメー、何をあんなカスに揉まれてんだゴラ?」

 

「しょ、しょうがないじゃない!? 突然過ぎて反応が遅れちゃったのよ!」

 

「なんというか、事故みたいな感じだったしねー」

 

 

 ジロリとイッセーに睨まれるユミエラをフォローしようとアリシアが事故だと話す。

 事実、確かに今回の件は本当に事故でそうなってしまったので本気の本当にパトリックに悪気はないのだ。

 

 だがイッセー的には事故であろうがなんであろうが無性に気に食わないわけで。

 

 

「あーちくしょう、まだムカムカしやがる……」

 

 

 最近特にその手の話を聞くとイライラして仕方ないイッセーは、顔色をうかがう様に此方をチラチラ見てくるユミエラとアリシアをちょいと乱暴に抱えると、さっさと部屋へと戻るのだった。

 

 

 そして数日は不機嫌だったという。

 

 

 

 どれだけの鍛練を積み重ねても届かない。

 

 どれだけの努力をしてきても触れられもしない。

 

 その男の存在はあまりにも理不尽で、あまりにも強すぎて……。

 

 

「パトリック君、キミは今後ユミエラ嬢やイッセー殿に近づく事を禁ずる」

「なっ!?」

 

「いや、なっ!? じゃないよ。

キミが何を考えてユミエラ嬢の周りを彷徨いているのかは知らないがね、キミがそうやってやらかす度に彼からのこの国への好感度が下がるのだよ」

 

「な、何故庶民一人の好感度など等―――」

 

「庶民かもしれない。

しかし彼は陛下――いや、この国にとっての友好関係を保ち続けなければならない相手だ。

その理由はキミ自身が散々教え込まれたのではないのかね?」

 

「………あの異次元の力ですか?」

 

「そうだ。

彼が敵に回ればそれこそこの国そのものが消えて無くなるかもしれない。

そして彼を敵に回せば間違いなくユミエラ嬢とアリシア嬢は彼に付く。

レベル99が二人もだ」

 

「…………」

 

「何度も言うがね、キミが何を考えてわざわざ彼に喧嘩を売るような真似をしているのかは知らないし敢えては聞かない。

だがこれ以上は私としても見過ごせないのだよ――それこそキミの実家の名をこの国から抹消しなければならなくもなる」

 

「っ!?」

 

「今の彼はそれだけ重要な存在なのだよ。

それこそこの国に存在する大半の貴族達よりも、ね……」

 

 

 あの男は危険だ。

 恐らくユミエラとアリシアが99となったのはあの男が理由だと。

 99という事意外は普通の女子だと思うからこそ、あの男の粗暴さに影響させてはならない―――そんな気がしたからこそパトリックはこれまで彼が居ない隙を突いて何度もユミエラに接触しようとした。

 

 その過程で思いの外ユミエラはちゃんと普通の女子だった。

 表情の変化は乏しいけど、友人となったアリシアと話す時の姿は穏やかにも見えた。

 そんなユミエラが日に日に気になっていった。

 

 

 だからパトリックは思うのだ。あの男さえ居なければ……と。

 

 

「彼がその気になっていたらキミはとっくにこの世から消されていたよ。

何故キミを殺さずに痛め付けるだけに留めているのかは――恐らく彼なりにユミエラ嬢の立場を考えているからなんだろうね」

 

「…………」

 

「だから厳しい言葉をここでキミに言わせて貰おうか。

……キミと彼等とでは器が違い過ぎるし、キミは決して彼等のようにはなれないよ」

 

「っ……!」

 

 

 ユミエラに全てを肯定されている男。

 ユミエラが想いを寄せる男。

 

 何もかも自分には無いものを持つ男。

 

 地位を力で黙らせ、我を押し通せる強さを持つ男。

 

 

「これが最後の忠告だ。

もし今後同じような真似をするのであるなら、陛下へと反逆行為と見なし、キミ――そしてキミの実家の全てをこの国から抹消させる」

 

「…………」

 

 

 全てを力で押し通す――自分にとっての理想の姿。

 

 

 それがパトリックにとってのイッセーという名の挫折を象徴させる強大な壁なのだ。

 

 

 

「………………」

 

「あ、あぅ……」

 

「い、イッセーくんったら、お部屋に戻るなり真顔でユミエラちゃんのおっぱいをあんな……」

 

「ちょ、ちょっ……あぅ……! ちょっとやすませてよ……! さ、さっきから変なのぉ……!」

 

「………………………」

 

「きゃん!? わ、私のおっぱいまで……そ、そんなに……やぁん♪ 今日のイッセーくんは狼さんみたい……♪」

 

 

 

 ある意味その強大な壁そのものから敵意というか半分嫉妬心を持たれているのは快挙だったりするかもしれないが……。

 

 

 

「はぁ……はぁ……。

単なる作り話だと思ってたけど、人間って胸だけでああなるのね……」

 

「う、うん……ぱ、ぱんつが……」

 

「こ、これだけしておきながら責任取らないなんて無いでしょうね?」

 

「うっせー、元を辿ればオメーの危機管理能力の無さが悪いんであって俺は悪くない」

 

「悪いなんて言わないわよ。

だ、だけどその度にこんな事されたら……え、えっち……」

 

「うー……お腹の下がさっきから切ないよぉ……」

 

「わ、私も……絶対このまま寝れないわ」

 

 

 

 

 

 パトリックさんがやらかす度にイッセーくんの機嫌が悪くなるけど、ある意味機嫌が悪いとすごいことしてくれるという意味ではアリかもしれない……なんてイッセーくんにおっぱいをこねこねされてしまってから数日後。

 

 やっぱり同じ時間を過ごしてきた差って結構あるんだなーって思う今日この頃。

 私、アリシア・エンライトは学園で催される学年末パーティーについて、一汗かいてからの休憩中に聞いてみた。

 

 

「え、出ないけど?」

 

「こいつ、そう言って入学直後の顔合わせのパーティーにも出なかったからな」

 

「あ、やっぱり……? でも今回はダンスとかあるみたいだよ?」

 

「余計でないわよ。

第一誰と踊れば良いのよ?」

 

「え、それはイッセー君と……」

 

「俺はそもそも生徒じゃないっての」

 

 

 ユミエラちゃんはどうやら出ないらしい。

 そして私もすっかり忘れてたけどそういえばイッセー君はユミエラちゃんの専属使用人という体であって生徒じゃないから参加できない……と、今更になって思い出す。

 

 

「そっか、イッセー君が出席できないのなら出る意味なんて無いよねー……」

 

「そういう事よ。

まあ一応小さいころ実家でイッセーと一緒になって貴族のマナーだなんだってのは一通り学んだけど」

 

 

 

 そうチラリと暑苦しさの感じない……鋼のように絞り込まれた上半身を晒しながら、その左腕に赤い籠手を纏うイッセー君を見るユミエラちゃん。

 

 

「ここでもそうだけど、コイツこの髪の色のせいで実家でも腫れ物扱いされてんだよ。

…………あれ、思い出したらなんかムカついてきたぞ? おいユミエラ、オメーの実家を今から更地にしてきても良いか?」

 

「良いけど、金蔓が無くなるわよ?」

 

 

 私は慣れちゃったけど、私も最初はユミエラちゃんのことを魔王の生まれ変わりなんて酷い事を聞いちゃったし、本気でそうなんじゃないかって思ってた。

 そしてそんなユミエラちゃんの傍に居るイッセー君を知って、ユミエラちゃんが羨ましくて妬んじゃって……。

 

 

「アリシアはダンスは?」

 

「えーと、下手だけどなんとなくは……。

でもイッセー君と踊れないんじゃ出る意味ないし……」

 

「俺にそんな期待されてもな……」

 

「イッセーのダンスってダンスはダンスでも、どちらかと言えばブレイクダンスって感じよね?」

 

「ぶれいくだんす?」

 

「ちょっと齧ってるだけのにわかだよ……」

 

 

 そんなユミエラちゃんとイッセー君が今はこんなに近くに居る。

 死ぬかもしれないあの修行を耐えて、掴めた私の居場所。

 

 

「てか今頃始まってんだろ? そのパーティーってのは」

 

「時間的にはそうだけど、修行の方が大事だもの」

 

 

 二人と居るときは光魔法を扱えたからこの学園へと庶民として入学できたアリシア・エンライトじゃなくて、ただのアリシアに戻れる。

 

 

「やっと『扉』が開いた感覚がした今、この先――イッセーが居る場所まで急いで追い付かないとね」

 

「………。今更言うが、開いた時点でもうお前達は『普通』では居られなく――」

 

「とっくの昔から望んでた事よ。

それに私にとっての『普通』がこれなの。

さあ、もう一度お願いイッセー……!」

 

 

 甘えることが出きる。そして甘えて貰える。

 

 心のそこから気を許した者同士の強いこの繋がりが――ユミエラちゃんとイッセーくんが私は大好きだ。

 

 

「ふふ、時間は掛かったけどこれでやっと私達もイリナさんとゼノヴィアさんの二人と同じスタートラインに立てたからね……!」

 

「………」

 

『だ、そうだ。

コイツ等が変人なのはわかっていただろう? お前も男ならそんな変人小娘の一人や二人受け止めてみろ?』

 

 

 確かに私はユミエラちゃんと比べるまでもなくまだまだイッセー君を知らない。

 時折二人だけでよくわからないことを話していてもわからない。

 

 

「はっ、ようこそこちら側の世界へ……と言った所か。

良いぜ……やっと俺も『真骨頂』を出せるぜ」

 

 

 でもこの場所は――イッセー君がまだまだ先に居るこの場所だけは私達だけの場所。

 

 

「起きろドライグ」

『やっとオレを使うか……くくく、待ちくたびれたぞ?』

 

 

 誰にも理解されない……でも大好きな人達との繋がりを実感できる世界。

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっと、やっと扉を開け放てた。

 そして開いた扉から見えた世界は――99という私自身がちっぽけに思える程に大きく、果てしない世界だ。

 

 そんな世界の最先端に君臨するイッセーを漸く真の意味で追いかける事が出きる。

 

 

『Boost!』

 

「今のお前達になら、ドライグの力をやっと使えるな……」

 

「っ!? 一度の倍加だけで一気に……!!?」

 

「き、基礎のスペックからしてまだ違いすぎる……!」

 

 

 

 イッセーが赤龍帝の籠手を左腕に纏いながら構え、一度の倍加を掛けたその瞬間、イッセーから放たれる力の波動は一気に異次元のそれへと変化する。

 それだけでもイッセーとの基礎スペックの差を実感させられるけど、私達だって負けてはいられないとばかりに私はデュランダルを、そしてアリシアはジョワユーズをその手に呼び出す。

 

 

「暴走はしないか……くっくっくっ、良いね」

 

「アリシア、二人で行くわよ」

 

「うん……いつでも良いよユミエラちゃん……!」

 

 

 その目を龍を思わせる金色の瞳に変化させているイッセーは嬉しそうに笑う。

 そんなイッセーの表情を見るだけで私は、これまでの全てが報われた気がしつつも、これこそが本当の始まりだと気を引き締め直すと、アリシアと同時にイッセーに全力をぶつけるのだ。

 

 

「「っ!?」」

 

「クサイ台詞かもしれないが敢えて言ってやる―――俺と一曲いかがかな、ミス?」

 

「「………よろこんで!!」」

 

 

 刃を両手で掴んで防ぐイッセーがニヤリと笑みを浮かべながら口に出した台詞のせいでどこがとは言わないけどキュンキュンしてしまうのを我慢しつつ、私達は踊るのだ。

 

 

 

 

 

 

 イリナとゼノヴィアの魂を預け、その魂をまだまだとはいえ継承するに値する領域まで使いこなして見せたユミエラとアリシアのコンビネーションに初めてまともに『避け』を選択したイッセー。

 

 

「そらよ!!」

 

 

 肉薄する二人から振るわれる刃を紙一重で避けながら距離を取るイッセーから挨拶代わりとばかりに放たれた光弾をアリシアとユミエラはそれぞれの持つ獲物で斬り落とすと、その刃に魔力を纏わせる。

 

 

「黒龍破……!」

 

「白龍破!!」

 

 

 ユミエラの持つ闇属性の魔力。

 アリシアの持つ光属性の魔力。

 

 白と黒の魔力が其々の刃に纏われ、そして放たれる一撃は黒い龍と白い龍の形となりイッセーを喰らわんと襲いかかる。

 

 

「そうか、其々の属性魔力を……ははっ……!」

 

 

 かつてゼノヴィアとイリナの扱う技にも近いその龍の一撃を前にイッセーは不敵に笑うと、赤龍帝の籠手が纏われた左腕を突き出しながら放つ……。

 

 

「龍拳・爆撃!!」

 

 

 その言葉と共に放たれた赤き閃光は龍の形となり、白と黒の龍を迎え撃たんと咆哮し――強烈な爆発音が学園中に響き渡る。

 

 

「「「………」」」

 

 

 その強烈な爆音の後に生じ、暫し続いた爆煙が晴れればデュランダルを構えたユミエラとジョワユーズを構えたアリシアが息を切らし、反対にイッセーは疲弊の色が一切無い不敵な笑みを浮かべながら腕を組む。

 

 

「一度見せただけのアレをそこまで使えるまでにさせたのは褒めてやるよ」

 

「一発が限界なんだけどね……」

 

「簡単に相殺されちゃあ自信無くすわ……」

 

 

 まとまにやり合うからこそわかる、まだまだイッセーは遠すぎるとユミエラとアリシアは息を整えながら両手でしっかりと剣を握る。

 

 そんな二人の折れぬ闘志を前に更に機嫌を良くしたイッセーは――

 

 

「ドライグ」

 

『ああ……まったく、ガキじゃあるまいしはしゃぎ過ぎだ』

 

 

 

 その左腕に纏われた赤き龍帝の籠手の意識の名を呼び、それに応じると共に眩い光を放ち始める。

 

 

「ユミエラ、お前には一度だけ見せた事があったな。

………………テンション上がってるから久々に見せてやるよ」

 

 

 そうユミエラに告げた瞬間、イッセーの全身も眩い輝きを放ち――

 

 

 Welsh Dragon Fusion!!

 

 

 修行とは思えない――完全にオーバーキルの切り札のひとつを解放するのだ。

 

 

「う、うそん……?」

 

「ユ、ユミエラちゃん? イッセーくんが別人みたいに変わっちゃったみたいだけど……」

 

 

 その瞬間、どんだけテンション高いのよと闘志が折れ掛けるユミエラと、初めて見る今のイッセーの姿に困惑するアリシア。

 

 焦げ茶色の頭髪は燃え上がる炎のように赤く染まり。

 その瞳は金色に輝き……。

 

 その瞳と同じ色のオーラが全身から放たれ、天へと昇っていく。

 

 

『「オレは、イッセーでもドライグでもない』」

 

 

 

 空が、大地が、世界が、星が震撼するパワー。

 

 歴代の赤龍帝が歩き、そして掴んだ力の全てを捨て去ることで到達した歴代最強最悪――

 

 

「『オレは、お前等を倒す者だ !!」』

 

 

 ―――そして最後の赤龍帝の到達点。

 

 

「『ふっ……!」』

 

「うぐっ!?」

 

「あぐっ!? い、今何を……? イッセーくんがちょっと目を見開いた瞬間すさまじい衝撃が……!?」

 

 

 ユミエラとアリシアが目指す領域……。




簡易ステータス

ユミエラ・ドルクネス
 レベル99(内部的にはレベル103)

闇属性魔法(極限)

全ステータス999

武装・デュランダル

奥義・黒龍破
神滅・ブラックドラゴン波
   
 異常・???


アリシア・エンライト
 レベル99(内部的にレベル101)

光属性魔法(極限)

全ステータス999

武装・ジョワユーズ

奥義・白龍破
   魔滅・ホワイトドラゴン波

 異常・???


イッセー
 レベル計測不能(約2800)

全ステータス値測定不能。

 武装・赤龍帝の籠手

 奥義・ドラゴン波(派生あり)
    龍拳・爆撃


 異常・無神臓

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