色々なIF集   作:超人類DX

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続き。
ふざけまくり


悪役令嬢は同じ目線となった『友』を得る

 

 

 文字通りだった。

 文字通り『死んだ方がマシだし楽』と思うしかないくらいに、修行は凄惨の限りであった。

 

 

「ぁ……ぎ……!」

 

「オイ……誰が寝て良いつったァ!? 起きろゴルァ!!」

 

「びぎゃっ!?」

 

 

 顔の形が変わるまで殴り続けられたのは当たり前。

 時には手足をへし折られた挙げ句腹を空かせた魔物の群れの中に放り込まれたりもした。

 

 

「ユミエラ、動ける程度に回復させろ」

 

「わかったわ……」

 

 

 そこをなんとか切り抜けて満身創痍状態だというのに、休ませんとばかりに水を頭からかけられ、無理矢理起こされて八つ裂きにされた。

 

 

「キィィッ!!」

 

「ぎゃっ!?」

 

「ウッシャアッ!!」

 

「おげぇっ!?」

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

 

「アガゴボボボボゲゲガ!?」

 

 

 これを少なくとも5歳の頃からユミエラがやっていたなんて信じられなかったと後にアリシアは語ったそうな。

 尊厳という概念に中指でもたてているかのような所業。

 

 性別の違いなんてあって無いようなもの。

 

 

 全てが平等に……ただ地獄を見せられる。

 

 

「は……ひ……!」

 

 

 なるほど、そりゃあユミエラがあんな強い訳だと思う他ない。

 顔の形を変えられ、歯もへし折られ、痛いところなんて皆無な程に痛め付けられ続けながらも、一歩一歩確実に『進んでいく』アリシアはそれでも『辞めたい』とは決して口には出さなかった。

 

 

「さぁ、どうする?」

 

「ぐ…うぅ……! ま、まだれふ……やめまひぇん!」

 

「へぇ? クククク……! ユミエラァ!!! オメーが持ってるヤクをくれてやれ!」

 

「……言い方に問題があるけど、わかったわ。アリシアを動ける程度に回復させる」

 

 

 

 今この瞬間だけは他の誰でも無い――――自分だけを真っ直ぐ見ているから。 

 

 

 

「あ、ありがとうユミエラさん……!」

 

「気にしなくて良いわ。

それより……やっぱり気付いてる?」

 

「う……腕が変な方向に曲がったまま――――へ? 気付いてる……とは?」

 

「いえね、こういう時のイッセーって………」

 

「……………。あ、はい。

他の全てが見えなくなるくらいに自分を見てくれるって事ですよね? ユミエラさんもやっぱりそうでした?」

 

「ええ……普段がああだから余計にね。

そこに気付くとはやはり――」

 

「似ていますよね、私達って……ふふふ」

 

「なにベラベラ喋ってやがる! さっさと来い!!」

 

 

 既にユミエラが経験したのなら自分が出来ない道理は無い。

 せっかちな子供のように声を張り上げるイッセーに呼ばれたアリシアは右側の手足がおかしな方向にひしゃげた状態のまま立ち上がる。

 

 

「ウォラッ!!」

 

「くっ……!?」

 

「! ほう、少しは学習したようだ……なァ!!」

 

「い、何時までもボコボコばっかりは嫌ですから―――にぎゃ!?」

 

 

 彼という存在を知ることがなければ決して無かったのかもしれない未来への一歩を踏みしめている感覚だけが痛みを越えたアリシアの意思となるのだ。

 

 

「無ゥ駄ァ、無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

 

「ひぎゃぁぁぁっ!?」

 

「WRYYYYEEEEAー!!!」

 

「ヤッダーバァアァァァァー!!!?」

 

「スタンドじゃないけど生身のジ◯ジョのラッシュを見るなんてね……」

 

 

 彼だけが君臨しているであろう、その領域に到達する為に、アリシア痛め付けられ、尊厳を壊され、至るところを破壊されても尚後退はせず、少しずつ前進する。

 

 

「ていうか、イッセーの中の人的に康◯君かジ◯ニーなんだけどなぁ……」

 

 

 覆い隠し続けた想いを共有できる彼女と同じ場所に立つ事で本当の親友へとなるために。

 敵を倒すではなく、敵を確実に殺す為の戦いを―――

 

 

 

「耐えてみな……! 10倍ッッ―――――――――

 

 

 Boost!!

 

 

―――――――――ドラゴン波ァァァッーーー!!!

 

 

 

 こうしたまだ短いその人生の中で確実にもう二度と無いだろう濃い一週間をこうして過ごしたアリシア・エンライトは―――――

 

 

 

「見える!!」

 

「っ……!? ようこそアリシアと言ったところね……!」

 

「いえ、ユミエラさんと比べると圧倒的に経験が足りません。

ですからご教授をお願いします!」

 

「……ふふ、なるほど、イッセーが『同等』を欲しがる理由がわかってきたわ。

良いわ……お手合わせ願いましょうかっっ!!」

 

 

 

 人の限界地点に突入し、約一週間ぶりの復学により、アリシアを知る者達を一瞬にして震えがらせるのだ。

 化け物と揶揄するユミエラの本気と『笑い合い』ながら食い下がるその姿に。

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!」

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

 

 

 

 

 

「あ、アリシアが……あの優しいアリシアが」

 

「「」」

 

「や、やめなさい二人とも! こ、校舎を破壊する気ですかぁぁっ!?」

 

 

 

 

 

 

 嵐のような展開が学園内を災害のように襲うその元凶が誰なのか……流石に理解し始めていた学園側はその元凶とされる庶民の青年を呼び出す。

 

 

「生徒達からの噂が本当かどうか、それを確かめる為にキミを買うして呼び出させて貰った」

 

「…………………」

 

 

 王立学園の教師ならびに学園のトップの視線に囲まれる形で学園長室の真ん中に設置された椅子に座る使用人服の庶民の青年は、驚く程動揺の欠片も無く、いっそ不遜にも思える態度を崩さない。

 

 

「貴殿はユミエラ・ドルクネスの使用人だが……噂が本当なら貴殿がユミエラ嬢と――そしてこの度のアリシア嬢の両名に戦い方を教えた。それは真か?」

 

「………………」

 

 

 さて、やはりこうなるよなとイッセーはここ暫くの間でちと目立ちすぎたと、今の状況を前にどうしたものかと考える。

 言い方的にこの学園の連中とやらは責めている様子は無いのはなんとなくわかる。

 

 

「別に貴殿にどうこうしようとはせん。

ただ確かめたいのだ。入学時にレベル1だった生徒を僅かな期間であそこまでのレベルにさせたのが本当なのかを……」

 

「……………。本人がそれを望んだのでそれなりに汲んだだけです」

 

 

 否定したところで疑われている以上、納得なんてされないだろうと判断したイッセーが頷くと、周りで聞いていた教師達がざわつく。

 中には『胡散臭そう』な目を向ける者も居たが、そんな教師達のざわめきを手で制した学園の長はじっとイッセーを見る。

 

 

「一体どうやったのかは知らないが、その言葉が本物だとするなら素晴らしい快挙だ」

 

「……」

 

「ひとつ訊ねるが、貴殿のそのやり方は他の生徒達にも可能なのか?」

 

 

 そっちが目的か……と、イッセーは悟る。

 どうやら自分のやり方を参考に生徒達全体のレベルを引き上げたいようだ。

 王室からの心証の為か、それとも他国への侵略の為か……。

 

 

「無理ですね。

私のやり方では大半――いえ、全員死にます」

 

「……………」

 

 

 実に人間らしい欲望に拍手を送りたくなるイッセーだが、答えは否だった。

 というより本当に無理なので。

 

 

「国中の貴族の子息を預かっている事を考えれば、私のようなやり方は推奨致しかねます。

流石に預かった貴族や王族の子に死なれたら貴方方の立場は無いのでは?」

 

「…………」

 

『…………』

 

 

 何度かアリシアが絶命寸前になっている事を考えなくても、自分のやり方はあまりにも邪道だ。

 それに全員を確かめた訳ではないが、精神的な爆発力を感じられない者には不可能なのだから。

 

 

「なんなら貴方が試しますか? ……多分半日で死にますけど」

 

「………」

 

 

 故に敢えて挑発的な態度を取るイッセー達に学園長や教師達は口を閉じてしまう。

 

「なにより、この先を捨てるかもしれない『覚悟』がなければ無理ですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユミエラやイッセーが言っていた通りだったと、アリシアは一週間前までは感じられなかった『恐怖の視線』を受けながら思う。

 

 

「………」

「………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 ユミエラも入学した時から受けていただろう視線や、小声で聞こえるその言葉。

 なにより当初は親切で一番近しかったエドウィン、オズワルド、ウィリアムの三人ですら一週間ぶりの実技授業で張り切ってしまってついユミエラと遊び過ぎてしまってからは、近寄りすらしなくなってしまった。

 

 

 

「おっふ……」

 

 

 なるほど、こういう事なのか。

 自分がちっぽけだったからこそ分かってしまう。

 ユミエラに対して持っていた恐怖心と、その立場になったからこそ向けられるその恐怖の籠った視線の両方を。

 

 

「でも、自分で望んだ場所だから……」

 

 

 だけどアリシアは歩みを止める気はなかった。

 自分で選んだ道であるから。

 

 なにより――

 

 

「大丈夫アリシア? その……見事に孤立してしまったようだけど」

 

「あ、はい。

でも自分で選んだ事ですから。

それよりもおっぱい成長の研究を再開しないと……」

 

「そうね。うっかりハプニングを意図的に引き起こしてもイッセーは無反応だったし、やはり胸の成長が必要だわ」

 

 

 自分の抱えていた密かな苦悩を含めた全てをさらけ出せる友達と出会えた事は、アリシアにとって一番の成長なのだから。

 

 

 

 

 

 99を越えた先の領域。

 それは即ちこの世界の理に逆らう事を意味する。

 かつての世界でイッセー自身がそうしたように……。

 

 

「そんな無駄な抵抗なんぞしてないで、俺の話を聞け」

 

 

 世界そのものを敵に回す可能性がある。

 もう普通に生きることはできない。

 

 後悔したところで後戻りもできない。

 

 そう忠告をしても尚、進む事を決めているユミエラ……そして急激な精神の成長を示したアリシアに、いよいよそれまでは躊躇っていた『進化』を経験させる時が来たと、イッセーはまたしても部屋で怪しげな薬品を作りながら『目指せD以上!』と書かれた鉢巻きを頭に巻いていたユミエラとアリシアを呼ぶ。

 

 

「無駄な抵抗とは心外ね。

イッセーがアホみたいに胸フェチ爆発させてなければ自然体のつもりだったのよ」

 

「それまであまり気にしてなかったのに、あんなことをイッセーさんが言うせいです」

 

 

 

 味方が互いに出来たせいか、微妙に強気な言い返しをしてくるユミエラとアリシアに、何故だか言い返せなくなったイッセーは、誤魔化すように左腕に赤龍帝の籠手を呼び出す。

 

 

「お望み通り、お前らの限界値を超えさせる」

 

 

 淡い赤光を放つ赤い龍帝の籠手を見せながらそう告げたイッセーにそれまで膨れっ面をしていたユミエラとアリシアの表情が真剣なものへと変化する。

 

 

「一番早いのは、俺達側の感覚をお前達に一時的な譲渡として分け与えて身体に覚えさせる事だ。

だから今から俺とドライグの力をお前らに流す」

 

「まあ、一番は俺の体液とか取り込めば良いんだが、まあこれは―――」

 

「「!」」

 

 

 その言葉に何故か揃って反応し、何故か赤面するユミエラとアリシア。

 

 

「た、た、たたた、体液って……ど、どんなの?」

 

「きょ、興味あります!」

 

「あ? あぁ、血とか……? でも無理だし流石に俺でも躊躇うっつーか……」

 

 

 何故か揃って鼻息荒めに質問してくる二人に、イッセーは答えようとするも、途中で苦い顔をする。

 

 

『嫌なことを思い出して言いたがらんようだから俺がざっくばらんに説明してやるとだ。

イッセーの異常性の事はこの一週間で理解はしているだろう?」

 

「ええ……」

 

「無限に進化する異常……ですよね?」

 

 

 既に一週間の地獄修行の間にドライグの存在を教えられていたアリシアは、籠手から聞こえる渋い声に驚くこと無く頷く。

 

 

『そうだ。

そしてその異常は条件を揃えれば他者すら引き上げる』

 

「じゃあその気になればレベル99を簡単に量産できるわけ?」

 

「私が一週間で99になれたのもその異常というもののおかげ?」

 

『ある程度はな。

が、さっきも言った通り、それは条件がある。

その条件が緩いと進化の速度は緩やかになる』

 

 

 これまた何故か苦虫でも噛んだ顔をするイッセーに代わって説明するドライグに、ユミエラとアリシアはふんふんと興味津々だ。

 

 

『一番緩い条件が、アリシア、お前が一週間の間に行った修行だ。

その条件を乗り越えて一定の頑丈さを持つことでより強い条件を耐えることができるようになる。だからこその修行だったわけだ』

 

「なるほど、じゃあ私は既に最初の条件をクリアしていたのね?」

 

『そうだ。

まあ、お前の人生の目標のこともあるし、内容も内容だからイッセーはお前を引き上げなかったのだがな…』

 

「内容……?」

 

「………………」

 

 

 ドライグの意味深な言い方に目を丸くしたアリシアとユミエラがイッセーを見れば、ますます苦そうな顔をしている。

 

 

『先ほどイッセーは言っていただろう? イッセーの一部を取り込むと力の譲渡よりももっと直接的に進化することができると』

 

「ええ、でもそれって確か神器使いに作用しやすいって話ではなかった? 私もアリシアも神器なんて持ってないわよ?」

 

『イッセーの場合は違う。

コイツは進化する異常を持っている。

コイツの細胞に殺されぬだけの頑丈さが必要だがな……』

 

「な、なるほど! それで血とイッセーさんは仰っていたのですね?」

 

 

 ますます原作からかけ離れた廃スペックっぷりだわと、改めてイッセーと一誠の違いに内心感嘆してしまうユミエラ。

 

 

『血が一番濃度が低いし、安全牌ではある。

が、もろもろのリスクを覚悟するなら――アレだろうな?』

 

「「あれ?」」

 

「…………」

 

「あれとは?」

 

「そんなにリスクが高いのなら取り敢えず血で良いのだけど、気にはなるわ」

 

 

 わざわざそこまで言われてリスクの高い方法は回避するつもりである二人だが、折角なのでその高いリスクとやらを聞きたい。

 

 

「もう良いだろ、それ以上はやめろよ」

 

『……まあ、それもそうだな。

では取り敢えずユミエラとアリシアに聞くが、イッセーの血を口から取り込むか、それとも子種を直接体内に取り込むか―――」

 

「言ってんじゃねーかっ!? 何をどさくさ紛れに!」

 

 

 そして出てきたリスクは確かに高かった。

 

 

「「……………」」

 

 

 そして聞いてしまったレベル99コンビの選んだ方法はシンプルであり、いそいそと服を脱ごうとするのでイッセーが全力で止める。

 

 

「バカなのかテメー等は!?」

 

「え、だ、だって……ねぇ?」

 

「た、確かにリスクは高いですけど、でもあんまりリスクにも感じないかなーって……」

 

 

 ここまで来るとわざとドライグが煽った疑惑が出てきているというか、実際わざと言っていたりするし、その思惑通りユミエラとアリシアの選択は早すぎた。

 

 もっとも、イッセー本人に一切のその気がないのでそうなることなんて無いのだが……。

 

 

「「ぶーぶー」」

 

「こ、コイツ等、アホみてーに仲良くなりやがって……!」

 

「仕方ないから血で我慢するわよ……ふーんだ」

 

「どうせおっぱいが足りませんよーだ……」

 

 

 こんなドタバタ劇がありつつも、アリシアとユミエラはこうして99レベルの先――100への第一歩を踏み出すのだった。

 

 

「あぅ……ちょ、ちょっと困ったわ」

 

「お、お腹の中が熱くて切ないですぅ……」

 

「知るか! テメー等で処理してろ!」

 

 

 血だけで発情されてしまって困った夜にはなったようだが……。

 

 

 




簡易人物紹介


 ユミエラ・ドルクネス

裏ボス候補の悪役令嬢キャラ……だけど、本人が割りと内面的にミーハーなせいでそんなことは無かったし、なんなら異性の好みが合致しまくりだったのもあって割りと普通にアリシアと仲良くなった。

イッセー以外に全力を出せる相手が出来たので結構人生を楽しんでいるのかもしれない。

99の壁を乗り越える為に接種したイッセーの血で発情してしまう。


イッセー
 超鬼畜乳龍帝。
 流石に他の人間達に疑われ始めているけど、本人は同等の存在となる者の出現にワクワクしているので気にしない。

過去、悪魔の女達にあれこれされたのが割りと今でもトラウマとして残っている模様。


アリシア・エンライト

主人公から見事チートバグキャラに転身してしまった少女。
そのせいか精神的な意味で解放されている感が否めず、割りとユミエラみたいにはっちゃけやすくなる。


 99の壁を超えた際の血により、ユミエラと同じく絶賛発情してしまう。

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