色々なIF集   作:超人類DX

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短いネタ。

これこそ平和……か?


コカビエルさんとガブリエルさん

「暇だ」

 

「確かに、ですが暇というのは平和の証拠です。良いことですよ」

 

 

 とある堕天使と天使が炬燵で暖を取りながら蜜柑を食べてる。

 その光景は知らない者からすればシュール極まりないというか、彼等の周りの存在が見たらびっくり仰天間違い無しだ。

 

 

「おい、お前だけ場所を取り過ぎだ。さっきから俺の足を蹴ってるだろ」

 

「あ、ごめんなさい。足を伸ばすと楽なのでつい」

 

 

 凶悪戦闘狂堕天使・コカビエル。

 死人の様に白い肌と尖った耳に真っ赤な目はまさに人外ですと主張するに充分な説得力を持たせており、悪人顔と言われる容姿の通りに戦う事しか頭にない生粋の戦闘狂。

 だがそんな彼も炬燵にくるまる位の心はあるし、蜜柑を食べながら人間界放送のTVを見る事もする。

 

 そう……彼はその悪人顔で割りと誤解されやすいタイプだった。

 

 

「コカビエル、ひとふさください」

 

「自分で剥くことも放棄かお前は。天使の癖に怠惰過ぎだろ」

 

「元は天使のアナタだってわかるでしょう? 私達だってたまにはダラダラしたいのよ。

さ、早くください……というか食べさせてください」

 

「………」

 

 

 そんな悪人顔で友達も少なくて、同じ若い堕天使からは間違いなく畏怖されて距離を置かれてるコカビエルの向かい側に、ヌクヌクとした表情で剥いたミカンをひとふさ食べさせろと口を開ける美しい女性。

 

 緩いウェーブの掛かった金髪の美女である彼女こそ、天界一の美女と評される最上級天使の一人、ガブリエルだ。

 

 

「あーん……ん、甘い」

 

「ミカエルが見たら切れるだろうな」

 

「ミカエル様は見てないし、見られてなければ問題なーい」

 

「……」

 

 

 普段は超然と態度でメリハリのついた女性なのだが、如何せんコカビエルとこうして炬燵で寛ぐ時はそれが全て幻だったかの様にダラダラとしてしまう。

 コカビエルもコカビエルでダラダラなガブリエルからの要求に一々付き合ってるせいで、余計にである。

 

 

「というか俺と炬燵でだらけてるなんて知れば切れる前に驚愕が先か」

 

「もうひとふさ頂戴?」

 

「チッ……そらよ」

 

「あまーい♪」

 

 

 コカビエルとガブリエル。

 堕天使と天使。

 本来ならこうして炬燵で駄弁るなんてあり得ず、寧ろかつては悪魔も交えて戦争までした敵同士の関係だ。

 にも拘わらず、コカビエルとガブリエルは戦後も縁があって拘わり、互いに実力を高める好敵手同士となり、気付いたら人間界で密かに家を買い、暇さえあれば連絡を取り合って密かに密会している。

 

 理由はお互いに『何と無く』らしいのだが、人間界の街にちょくちょく二人で出掛けたりだ、こうして一つ屋根の下で炬燵囲って駄弁ったりする時点で、何と無くという理由だけでは無い事が伺える。

 

 

「ねぇコカビエル。アナタってキスの経験はあるの?」

 

「は? 何だ突然……? まあ、無いぞ。

というか、もう嫌って程自分の顔が女受けしない事を自覚してつもりだ。

もしかして嫌味のつもりか?」

「いいえ? そう……無いんだ」

 

 

 年末特番のバラエティ番組をBGMに、振られた話に答えたコカビエルに、ガブリエルは頬を炬燵のテーブルの上に置きながら、若干不貞腐れる腐れ縁の彼を見つめる。

 

 

「私も無いのよね……いやまあ、当然だけど」

 

「するのと出来ないは違うだろ。ふん、どうせ俺は女とは無縁だよ」

 

 

 浮いた話を振ると必ず不貞腐れるコカビエルは、残ってたミカンを一気に頬張りながらフンと鼻を鳴らす。

 

 

「お前は男受けの良い顔だから直ぐにでも出来るんだろ? ふん、顔だけは無駄に良いからなお前は」

 

「顔だけなんて失礼ね。

それに私だってそんな易々と唇を許したくなんてありませんからね?」

 

 

 ケッ! っと、自分の同胞のモテ具合を間近で見せられて何度もうんざりしていたコカビエルは完璧に不貞腐れてしまったようで、ガブリエルから目を逸らし、つまらなそうにTVを見る。

 悪人顔のせいで女と無縁だったのは否定しないが、別に戦えればそれで良いので要るか要らないかを問われたらどうでも良いんだよ――と、自分の中で言い訳しながら。

 

 

「俺の事よりお前はどうなんだ? そんな話を振るって事は気になる男でも出来たのか?」

 

 

 さっきからガブリエルがジーッと見てくるのが、段々くすぐったくなってきたコカビエルが話題を逸らそうとガブリエルに問う。

 

 するとガブリエルは炬燵の中に入れていた手を出し、頬杖を付いていたコカビエルの手首へとちょっとだけ身を乗り出して触れ、小さく微笑む。

 

 

「コカビエルが気になるわ」

 

「は?」

 

 

 何だコイツ、変な物でも食ったのか? それとも逆上せたか?

 頬を少しだけ紅潮させ、頬杖付いてたコカビエルの手を掴んで放そうとしないガブリエルに胡散臭そうな顔をするが。

 

 

「白いけど暖かい……」

 

「……」

 

 

 コカビエルの掌にガブリエルは自分の掌を重ね、指を絡ませながら微笑む。

 流石にこれにはコカビエルもちょっと驚いてしまい、ほんの少しだけ唖然とする。

 

 

「ある意味男の人はアナタしか知らないのよ、私は」

 

「は? ミカエルだ何だと居るだろう? 何を言ってるんだお前は」

 

「そういう意味じゃないわよ。

本当に鈍いですねコカビエルは……」

 

 

 指を絡ませて、惚けた表情で告げるガブリエルの言葉にコカビエルも若干だが動揺する。

 

 

「これからも、こんな女をよろしくね……コカビエル」

 

「あ? お、おう……」

 

 

 コカビエルとガブリエル。

 堕天使と天使。

 本来なら和平も結んでないのに会うことはあり得ない筈。

 しかしこの二人はずっと昔から周りに何と無く隠したまま会っている。

 理由はそう――

 

 

「変な女」

 

「お互い様ですよ」

 

 

 妙に波長が合って居心地が良いから……である。




補足

誰得故に続きは考えてません。

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