ここから完全にバグ男ルート入る
『ドラゴンボール』的なアニメの主人公の技を赤龍帝の力と混ぜ合わせて再現するのが一誠でなくてイッセー。
なので必殺技はかめはめ波ならぬドラゴン波やその強化版らしい。
当然赤龍帝としての力はどうなのかについては聞いてみたことがある。
それに対して返ってきた言葉は……。
『禁手化の鎧以降は完全に路線変更したからな……てか、燃費悪いんだよ歴代の赤龍帝のアレって』
出来なくは無いけど燃費が悪いのでやらないであった。
そしてその代わりに掴んだのが、歴代最強にて最悪――そして最後だとドライグが完全に認めているイッセーとドライグの二人が掴んだ別の領域。
『見てみたいだ? ……別に良いけど、見たところでなんの参考にもなんねーぞ?』
いやー……ドラゴンボールのパチモン的なアニメの主人公の技をほぼ完コピしたとは聞いてはいたけど……。
『ドライグ』
『何時でも』
Welsh Dragon combine!
「『赤い龍と一誠が合体して……龍誠ってところかな』」
そこまでやれるとは思わなかったというか……。
『ちなみにだが……行けるかドライグ?』
『ああ』
Welsh Dragon fusion!
「『オレはドライグでもイッセーでもない、オレは――貴様等を皆殺しにする者だ」』
これ、勝てる人居るの? 無理ゲーそのものなんだけど……。
と、私は思いました……まる
「ユミエラさーん、ご飯一緒に食べましょう!」
「ええ」
『………』
怪物女子と光魔法女子が妙にほのぼのとした空気を纏いながら、しかも仲良さそうにしている光景を見せられるクラスメート達の大半が『なにがあった!?』と思うのも無理らしからぬ光景だ。
「「「………」」」
それは入学当初にユミエラの化け物ムーブを前に各々が心を折っていたイケメン三人組も同じであり、庶民の出ながらも健気に頑張っているあのアリシアに何があったのかと軽いショックを受ける。
そして三人の脳裏には一人のふざけた青年の顔が思い浮かんだらしく……。
「あ? 俺があのピンクになんか吹き込んだだと? んな暇なことするかってんだ。しっしっ!」
「「「…………」」」
先日の『ある一件』以降、一切取り繕うのを止めた無礼者使用人に問い詰めるも、本人はどこぞで狩って来た魔物の亡骸を生で貪っていた。
「う……な、なんて下品な」
「同じ人間とは思えん……」
「な、生で食ってるぞコイツ……」
まるで初登場の某サイヤの王子のように生で魔物を食べている姿は、貴族や王族である彼等にはおぞましく見えるらしいが、本人はまるで気にする様子がない。
「じょ、状況から考えても貴様がアリシアになにかをしたとした思えない!」
「だから知らねーよ。
俺だって気付いたら妙にユミエラと馬が合ってたんだから」
「だからそれを貴様が……」
「知らねーってんだ! しつけーぞボケが!」
あまりにも堂々としたチンピラムーブのせいか、特権階級意識の強めな三人組も圧されてしまうのだった。
「ったく、一々俺に突っかかりやがってボンクラ共め」
『お前がそんな態度だから余計になんだろう』
「けっ! 親の功績をテメーの功績と勘違いしてる温室育ちのボンボン共に取り繕うなんて反吐がでるぜ」
結局三人組を追い返したイッセーは、イライラしながら部屋に戻ろうと生徒達が居ない道をドライグに愚痴りながら歩く。
そもそもイッセーだって、あれだけ警戒というよりはかかわり合うのを避けようとしていたユミエラとああなるとは思ってすら居なかったし、あの三人組に理由をバカ正直に話した所で信じて貰えそうもない。
「おっぱいが世界を平和にしましたって……アホかよ」
自分の性癖のせいでなんかおかしな方向に飛んでしまったこと自体が、イッセーでも予想していなかったのだから。
イッセーがイケメン攻略対象三人組にチンピラムーブを、かまして追い返した頃、ナイチチ同盟を結んだユミエラとアリシアは改めて書庫で資料漁りをしたり、胸の大きめな教師や先輩生徒にその秘訣を聞き回ってはドン引きされたりと、精力的な活動に勤しんでいる。
「まとめると、よく食べ、よく眠るが基本のようね」
「一応故郷ではそうした生活の筈でしたけど……」
二人して凄く真面目な顔をしている癖に話している内容が実に年頃らしいお悩みである。
「ちなみにレベルと胸の大きさは無関係だというのは立証済みだわ」
「あ、そういえばユミエラさんは凄いレベルですもんね」
「ええ……といっても私達はまだ15だし、成長の余地は残されている」
「で、ですよね!?」
あれだけユミエラを警戒し、恐れていたのにイッセーというある意味な清涼剤のせいですっかり恐れも警戒も無くしたアリシアは絶賛ユミエラの部屋にお邪魔している。
そこでは持ち帰った情報を互いに整理しながら今後の傾向と対策を話し合っている。
「アリシアは今レベルいくつなの?」
「ええと、この前やっと5に……」
「ふむ……」
それもひとえに異性への好みが嘘みたいに合うからであり、ユミエラもユミエラで呑気な性格もあってか割りとアリシアへの警戒心が薄れている。
「イッセーさんは……」
「イッセーはわからないわ。
ただ、私が本気出しても片手で返り討ちにするくらいは強いわ」
なんなら結構な情報を喋ってしまっている始末であり、レベル99のユミエラ自身が間違いなく自分よりイッセーの方が強いという言葉にアリシアの目は子供のようにキラキラしている。
「そ、そんなにお強いイッセーさんに……お、おっぱいを揉まれたら凄く大きくなる気がしてきません?」
「奇遇ね、それは私も思うわ。
ただ本人に全くその気が無いのよね……」
「やっぱりイッセーさんはおっぱいの大きな女性が……」
「それだけは間違いないと断言するわ。
だからこそなのよ」
イレギュラーにより人間関係が大幅に変わったこの世界の未来はどこへ……。
それは誰にもまだわからない。
「ただ、胸がこのまま小さいままだったとしてもイッセーの気を引く方法はあるわ」
「え!? そ、それはどんな――」
「イッセーの修行相手になれるだけの『強さ』よ。
彼って強い人間が好きな所があって、強くなりたいという意思を見せると結構親身になってくれるわ。
私がここまでになれたのもイッセーが鍛えてくれたからだし」
「な、なるほど! で、では私も――」
「ただ、これは正直言って死んでも良いって『覚悟』が必要だし、辛いからと途中で投げ出すのもダメ。
そうなったらもう一生イッセーは無関心になる」
言うなればバグルートとなる今の状況を当たり前だが知らないアリシアは、ユミエラの言葉にごくりと唾を飲み込む。
「正直、アナタにこれ以上塩を送るのを躊躇っているし、将来もし何かしらの理由で敵対してした場合の厄介さを考えたらどうかとも思ったけど、この件だけは私一人では無理だったわ。
だから――」
裏ボスと和解してバグキャラ攻略ルート計画はこうして厳かに始まる――のかもしれない。
部屋に戻った瞬間、イッセーはずっこけそうになった。
「……………なにしてんのお前ら?」
何故ならユミエラがアリシアの。
そしてアリシアがユミエラの胸を互いにアレしていたので。
「あ、いや……じょ、女性ホルモンの活性化の為にと……」
「はぁはぁ……へ、変な気持ちですぅ……」
「…………」
『カオスだな』
互いにハァハァ言いながら戦闘力が低い胸を揉みしだき合っている光景は、好き者には天国に見えなくもない光景ではあるが、どっちもそういう対象として見た試しもないイッセーからしたらアホの光景にしか見えず、ただただバカを見るような顔をする。
「お前らが妙に仲良くなったせいで、イケメン三人組に変な疑いかけられてるってのに、テメー等は呑気にレズってるとかよ――ちょっと一発ずつぶん殴りたくなってくるわ」
「そ、そんな趣味はないわ! 戦闘力の向上の為よ!」
「そうです! それにそんな事を言うならイッセーさんが――
「テメー等な揉んでるくれーなら小麦粉捏ねてた方がマシだ」
身も蓋もないことを言いながらまだハァハァ言っている二人を退かしたイッセーは、一応使用人の体なのに堂々と部屋のベッドを占拠する。
「それとイッセー、アリシアを99まで鍛えようと思うわ」
「あっそ………………は?」
ゴロンと横になったイッセーにユミエラがついで感覚で話し、当初は流したイッセーが驚いた顔をしながらユミエラともじもじしながら上着を羽織るアリシアをみる。
「………お前、殺されたくねーから鍛えたんだじゃないのか? なのになんで――」
「殺されたくないのは今でも同じだわ。
けど99の先―――アナタの領域に進むには私一人だけでは到底不可能。
となればもう一人私と同等の強さを持つ者が必要になる」
「進むだと?? ちょっと待て、お前は自分で今何言ってるのか……」
「わかってる。
今のレベルになってからのイッセーが意図的に手を抜いていることを。
多分アナタなりに『人間の範疇』から私を外させない為に気を使ってくれていたのでしょう?」
『………』
言い当てられてしまったイッセーは咄嗟に目を逸らす。
「私は自分の意思で進むわ。
でも私一人では進めない――だからこそ、私とは正反対だけど近い資質を持つアリシアの協力が必要になる」
「レベル5ですけど絶対に追い付きます!」
「………」
『まさかの展開とはこのことだな』
ユミエラの言葉に呼応するように、ふんすとやる気に満ちた眼差しをするアリシアの二人を見たイッセーは、ほんの一瞬だけ二人の姿に『イリナ』と『ゼノヴィア』が被った。
「胸の戦闘力を上げる、イッセーの領域に進む。
両方やらなくっちゃあならないのが『裏ボス候補』の辛いところね……」
「どこかで聞いた台詞だな……」
ただのアホかと思っていたイッセーは内心訂正をした。
コイツ等は正真正銘の大アホだったと。
「私がアナタに叩き込まれた事や自分がしてきた修行のノウハウをフルに駆使し、一ヶ月でアリシアを99にするわ」
「必ずなってみせますからねっ!」
「………………」
ユミエラとしての人生に引っ張られているといつか思った事があった。
しかし今のユミエラはその殻を自分の意思で脱ぎ捨てた……。
「一ヶ月、じゃねぇ。一週間だ」
「「え?」」
やっとユミエラ――として転生した元女子大生としての意思を見ることが出来たイッセーは、無意識に笑いながらベッドから降りる。
「一切の加減も情けもかけない。
確実にそこのピンク――アリシアを一週間でユミエラと同等にさせてやるよ」
「い、イッセーも教えてくれるの?」
「正直、俺と同等の奴は一人か二人は居てほしいからな……」
その身勝手にも我が儘にも近い精神こそが、スキルとして化ける事を知っているからこそ、イッセーは久々に高揚するのだ。
「おいアリシアだったか? オメーはユミエラをみていて知ってるだろう? ユミエラと同等になるってことはオメーも周りから化け物扱いされるってことだ」
「わ、わかっています。
私だってそう見てしまっていましたから。
でも……それでも私はユミエラさんと対等なお友達になりだいです……!」
「…………じゃあ軽装に着替えろ、暫くはまともに寝かせねぇ」
「! は、はい!」
進化の壁を越え続けるという欲求の赴くままに……。
「ちなみにもし本当にイッセーの領域に進めた場合のご褒美とかあったらモチベーションが上がるのだけど……」
「あ? ああ、まあ本当に来れたら流石にな……」
「! 聞いたアリシア!? もし達成できたらイッセーが優しく抱き締めてくれるって!」
「あ゛? んな事は言ってな――」
「いよっしゃぁぁぁっ!! やる気出てきましたー!!」
「………………………もう良いやなんでも」
悪役令嬢と主人公はレベル99……終了
人から化け物に――そして怪物となった光と闇がいる。
「そ、そんな……アリシアがあんな……」
怪物と化した光と闇が見る先はそれでもまだ遠い。
「こ、これはまさかデュランダル……? ど、どうしてイッセーが……」
「ゼノヴィアから預かってたんだよ。
後継となる使い手が出たらそいつに渡してくれってね……」
だがそれでも光と闇は共に先の先へと進むのだ。
「『私はアリシアでも、ユミエラでもない。
私は――アナタを超える者!』」
「ふ、ははは……! ははははは!!! そう来たかよ! はっははははは!!」
「ふざけるなよ!? 身に覚えもねーのにセクハラ噛ましたから国外追放だぁ!?」
「いやー、流石に学園の寮での朝チュンはまずかったわねー?」
「退学になっちゃいましたねー?」
「だからなんだそれは!?」
「なんだって、こんな跡をつけたのはイッセーじゃない?」
「えへへー、もうどこにもお嫁に行けなくて困っちゃうなー?」
「……………」
『諦めろ、この場合、基本女の方が強い』
終わり
簡易人物紹介
ユミエラ・ドルクネス
ご存じ裏ボス候補だった少女。
ナイチチ同盟を結成したことで急速に主人公ことアリシアと仲良くなり、彼女の『自我』に触発される形で転生者のユミエラとしての自我を確立させ、99の先へ進む覚悟をする。
アリシアとの豊胸マッサージに余念もない。
イッセー
超絶鬼畜赤龍帝
ユミエラがアリシアと急激に仲良くなるせいで原作攻略対象の三人イケメン達に食って掛かられやすくなる。
この度一人から二人に――こちらの側に来れる可能性を持つ者が現れたので内心ワクワクしまくる。
ある意味で世界と流れを根本的にねじ曲げた元凶。
アリシア・エンライト
主人公(笑)から見事に主人公(バグ)に転身しようとしているユミエラと同じく男の趣味がおかしすぎる少女。
ユミエラに聞かされていた以上の鬼畜トレーニングに泣きかけたけど、鬼畜フェイス状態のイッセーの顔だけでご飯を10杯はおかわり可能という意味わからんメンタルとなったのは密に。
その内ユミエラとの豊胸マッサージをイッセーにされたいとか修行中でも考えちゃう辺りはそこそこむっつりなのかもしれない。