色々なIF集   作:超人類DX

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孤独なベリーハードからの精々シリーズの続き。

つまり、やったぜたっちゃんシリーズ


孤独からの精々シリーズその2
其々の日


 

 

 

 赤髪の悪魔の少女と出会わなかった少年が別世界へと追いやられた。

 そして出会いし赤――では無く空色の髪の少女との時間によって這い戻った精神はどこへとたどり着くのか? それはまだ誰にもわからない。

 

 

 

 姉の千冬絡みで敵意を抱くラウラが、顔に似合わず妙にノリがおかしい四組の更識簪とタッグを組む事になったわけだが、織斑一夏の精神は少しの揺れもブレもない―――

 

 

「マコト、まさかとは思うけどあの人と組もうなんて考えちゃ……」

 

「い、いや……。(そもそも先輩に『よした方が良いだろ。余計恨まれるし……』と言われてるし……)」

 

 

 ―――という訳でもなく、簪とラウラがタッグを組むという話しになったのと同時に、一年生の女子に片っ端から声を掛けては断られ続けていたイッセーが見ていられなくなった神崎マコトだが、今のところ組むということは考えてはいなかった。

 何故なら組んだらややこしいことになるのは一夏を見ていれば分かりきった事なのだ。

 

 

「それなら良いけど……」

 

「そもそもあの人、試合に出れるのかな? まだパートナーが見つかってないみたいだし……」

 

 

 一夏のパートナー役であるシャルルことシャルロット・デュノアの言葉通り、イッセーは何故かパートナーが未だに見つからない。

 

 

「いや、あの人は必ず試合に出てくる、絶対に……」

 

「「……」」

 

 

 ある種の確信のようなものを口にする一夏。

 この時点で一夏の意識は皮肉な事に他の誰でもないイッセー一点に向けられる事になるのだった。

 

 

 

「そういう訳だから、当日までの間は一切の遊びは無しでやるから付き合ってくれよシャル?」

 

「わかったけど、あの兵藤って人は二年生に進級したと同時に普通の学校から転校してきたんでしょう? ISに関するレベルは殆ど初心者と変わらないって聞いてるし、専用機ももってないみたいだからそこまで警戒する程じゃあないと思うんだけど……」

 

 

 とにかくイッセーにだけは勝つと何時も以上に気合いを入れ、専用機の白式を展開する一夏にシャルロットはイッセーのことをそう評するも、一夏は専用武装である雪片弐型を手に首を横に振る。

 

 

「事実その通りなんだろうが、あの人はどうやら生徒最強の更識楯無っていう生徒会長から直接教わっているらしいし、何度か俺もあの人が訓練機に乗って訓練している姿をみたこともある。

……俺も所詮素人だけど、あの人は侮らない方が良いって俺の勘が言っている」

 

「………」

 

 

 軽く片手で雪片弐型を振るいつつそうイッセーに対する己の表かを口にする一夏の表情は何時も以上に真剣であり、ほんの少しだけシャルロットはきゅんとしてしまう。

 

 

「マコトの事もそうだけど、何故か俺はあの人に負けたくないって思うんだ」

 

「一夏……」

 

 

 初めて知り合った時から抱いていた対抗心。

 マコトが何故か慕っているからなのもそうだが、それ以上にイッセーに負けたくないという男の意地があった。

 

 

(あの人にも……そしてあの赤と白の鎧の奴らにも……!)

 

 

 束にすら『あれは手出し出来ない怪物』と言われた赤と白い鎧を纏った何者に負けぬ為にも。

 

 

「少しは乗り方にも慣れてきたし、やっと『俺らしく』戦える」

 

「らしく?」

 

「まあな、取り敢えずまずは、ISに乗っている状態でどこまで扱えるかの確認をしたいから、暫く相手になってくれよシャル?」

 

 

 

 そう言いながら構える。

 

 

「1の型……【決意】」

 

 

 

 

 

 完全な途中編入ゆえに他の誰よりもISに関する技能と知識が乏しいという理由で特別枠で一学年の試合に出る事になっているイッセーは、困った事に未だにパートナーを見つけられないでいた。

 

 

「真面目に見つからん……」

 

 

 既に50人程の一年生に声をかけてきたが、その全てが既にパートナーが居るからか、試合に出るつもりがないからと断られてしまっているイッセーは、このままでは普通に出場資格を獲られないと困った。

 頼みの綱である簪は銀髪の眼帯っ娘と組むし、本音は元々整備科で試合に出場する申請をしていないので無理。

 

 組んでくれそうなマコトとは一夏の事もあるし、これ以上変に恨まれたくないので組めない。

 

 

「どうしたもんか……」

 

 

 わざわざ千冬に声を掛けられたというのに、パートナーが見つからないので出場できませんはあまりにも格好がつかない。

 いっそ誰でも良いし初対面でも良いから組んでくれる子は居ないものかと、本日も一年生の校舎内をキョロキョロとしながらパートナー探しに勤しむイッセー。

 

 

「あの……」

 

 

 あまりにもキョロキョロとし過ぎて不審者でも見るような目を一部後輩女子からされてもめげずに探し続ける事数十分。

 それまで一度も後輩女子から話しかけられてなかったイッセーを呼ぶ声に、イッセーは思わずという勢いで振り返る。

 

 

「キミは……?」

 

 

 あまりにも勢いが良すぎて軽く引かれてしまったが、その声を掛けてくれた女子に見覚えが少しだけあったイッセーは目を丸くした。

 あれはそう、一夏を見る度に彼の傍に常に居る女子の一人で……。

 

 

「一年の篠ノ之です。

一夏やマコトと同じクラスの……」

 

「お、おぉ! そうだそうだ! 織斑君と神崎君のお友だちの!」

 

 

 ISという存在を世に解き放った篠ノ之束の妹である篠ノ之箒だった。

 名を名乗られた事で完全に思い出したイッセーは人目も憚らず大袈裟なリアクションをしつつ、内心ちょっとの期待を寄せながらどうしたのかと尋ねてみる。

 

 

「暫く先輩の様子を失礼ながら窺わせて貰った所、まだ一年のパートナーが見つけられていないと思ったのでお声を掛けさせて頂いたのですが……」

 

「は、はは、恥ずかしい所を見られてたのね。

そうなんだよなぁ、やっぱ良くも知らん野郎――しかも学年も違う奴と組みたがる子なんてあんま居ないらしくて、中々……」

 

「……。でしたら私が組みましょうか?」

 

「……!」

 

 

 『キタコレ!!』と箒からの申し出に一気に勝ち確を悟るイッセーは二つ返事で了承する。

 

 

「ホントか!? ありがとう! 是非お願いするよ!」

 

「…………」

 

 

 本当の所を言えば箒も箒であまり友人を作りやすい性格じゃなくてあぶれたクチだったりするという事実を知らずに一人大喜びするイッセーなのだった。

 こうして早速二人で試合出場の申請を済ませると、タッグ戦までの間の訓練に勤しむのだった。

 

 

(……。見た限り兵藤先輩のISに関する技術はほぼ私と変わらない程度。

しかし生身の動き方が素人のそれではない……取り繕ってはいるが明らかに『場馴れ』している)

 

(よーしゃ! 目指せ一回戦突破!)

 

『そこはせめて優勝を目指せよ……』

 

 

 

 

 

 

 イッセーが箒とタッグを組む事になったその頃、紆余曲折な悪戯を経て簪とコンビを組む事になったラウラは驚いていた。

 

 

「影分身の術!(擬き)」

 

「は……?」

 

 

 訓練機に乗る簪と軽く手合わせをした際に見せられる訳の分からん状況。

 

 

「さ・ら・し・き……!」

 

「ぐっ!?」

 

「かんざし連弾!!」

 

「ぐががっ!?」

 

 

 体術のみで決して油断なぞしていない自分を簡単に翻弄するその訳の分からない状況にラウラは分身した簪達にしばかれながら『不条理な気分』になっていた。

 

 

「ふっ、これぞ更識流忍術……」

 

「そ、そんな訳あるかっ!? い、今お前! あきらかに姿が6人程に増えていただろ!? な、なにをした!? というか訓練機だよなそれ!?」

 

「だから言ってるでしょ? 更識流忍術だって。

別に機体の性能は関係ないよ?」

 

「に、ニンジュツだと!?」

 

「そそ」

 

「忍術は既に廃れたと聞いていたのに……存在していたのか」

 

「人の世を忍びながらね」

 

 

 しかしあまりにも刺激的というか、この簪がすることは一々驚かせてくるものばかりであり、ラウラはちょっとだけ興奮していた。

 

 

「ほ、他には何ができるんだ?」

 

「他? うーん……まだトレーニング不足だけどあれくらいならできるかな?」

 

 

 有り体に言うならば、ラウラは自覚こそしていないものの、すっかり簪の展開する独特のワールドに嵌まりつつあった。

 

 

「チャ○ラを圧縮し、留めきる! 螺○丸!!」

 

「おぉっ!?」

 

 

 千冬関連の恨みがどこぞへ飛んでしまっているほどに。

 

 

「そ、そういうのって私にもできるのか?」

 

「修行次第じゃない?」

 

 

 ラウラ、ますます簪に懐く。

 

 

 こうしてどこか緩い空気な気のする日々は過ぎていく。

 

 

終わり

 

 

 

 

オマケ・それぞれの夜。

 

 

 クラス内ではすっかり更識楯無の旦那扱いされていたりする事実をあまり理解していないイッセーが、篠ノ之束の妹である箒とタッグを組むことになったという話を聞いた楯無こと刀奈は、ドヤ顔でタッグパートナーが決まったぞと自慢げに話してくるイッセーに相づちを打ちつつ、彼女は一夏にしか興味がないからある意味安心だわと、内心安堵する。

 

 

「あの子って剣道やってるみたいで、結構動きが良いんだよ」

 

「実家が確か道場だったわね」

 

 

 余程試合に出られる事に安心しているのか、今朝までの焦りが嘘のようにリラックスしているイッセーはどうやら一回戦を突破することを目標にしているようだ。

 別に初心者としては悪い目標ではないが、本気のイッセーを知る身としては少し物足りない目標だと刀奈は小思ってしまう。

 

 

「一回戦突破じゃなくてそこは優勝するって言わないのかしら?」

 

「流石にそこまで自惚れられるほど楽な状況ではないからな」

 

 

 苦笑いしながらベッドに横になるイッセーに刀奈は『誰にも見られて居ないし聞かれてもいない』のを確認しつつ、内心心臓が破裂しそうな思いで切り出す。

 

 

「最近出来なかったけど今日こそその……一緒に寝ない?」

 

「………は?」

 

 

 しょっちゅう妹だ母親に『ヘタレ』と言われていたりする刀奈は、言動や態度とは裏腹に結構な初心な面があり、対するイッセーもイッセーで似たところがあるせいで、意外な程進展が遅かった。

 別にそれでも良いと刀奈自身は思っているものの、煽られ続けられているのもあってか少しくらいは前進したいという気持ちになってしまうわけで。

 

 

「こういうこと、女の子から言わせないで欲しいけど……」

 

「い、いやでもよ……」

 

 

 確実に目が泳ぎまくるイッセーからは近寄らないと確信していた刀奈がゆっくりとイッセーの使うベッドに乗る。

 

 

「それとも、私じゃ……嫌?」

 

「………」

 

 

 ゆっくりと身体を寄せながら、少し不安そうな眼差しと声色で言った刀奈に、それまでヘタレていたイッセーは黙って彼女の身体を抱き寄せる。

 

 

「その言い方は狡いぞ……」

 

 

 そう言いながら抱き合う二人の身体がひとつのベッドに倒れる。

 

 

「何時だったか、楯無としての私の決められた将来の為に宛がわれた結婚相手から私を奪った時からずっと私の心は決まっているのよ?」

 

「……」

 

「だから難しく考えないで、イッセー君の好きにしても良いのよ?」

 

 

 頬を紅潮させ、赤い瞳を潤ませながらイッセーの手を取り、自身の胸に当てる。

 

「ほら……私の胸……こんなにドキドキしてるのがわかるでしょう?」

 

「………」

 

 

 決められたレール以外を歩む術を教えてくれた少年との未来を望む少女の覚悟。

 その覚悟は皮肉な事に――もしも出会えていた場合の赤い髪の悪魔と同じもので……。

 

 

「大好きよイッセー」

 

「お、俺もその……あの……!」

 

「ふふ、慌てなくてもわかってるわよ? だから今夜は離さないわ……」

 

 

 更識刀奈の抱いた精神なのだ。

 

 

 

 

 

 刀奈とイッセーがそんな夜を過ごしている頃、織斑一夏は夜空の下でひたすらに素振りを――――暫く己で封じていた型を確実に扱える訓練に勤しみつつ自身の電話が鳴るのを待っていた。

 

 そして粗方の勘を取り戻しつつある頃、一夏の携帯に着信がはいる。

 

 

「どうも……」

 

『はろはろーいっくん! お待たせしちゃったみたいだね?」

 

「いえ、型の訓練をしてましたので……」

 

『型? ……ああ、昔の映画を観て束さんが適当に思い付いたアレのこと?』

 

「ええ、ISの戦いに転用できると思って久しぶりにやってみたところ、思いの他しっくり来ましてね」

 

『ふーん?』

 

 

 電話の相手は束であり、ここ最近は以前よりも頻繁に連絡を取り合うようになっていた。

 その理由は先日の謎の赤と白の機体に関する追加情報を得る為でもある。

 

 

『ホントごめん、あれから血眼になって探してはみてるんだけど……』

 

「束さんですら見つけられないとなると相当油断出来ない相手なのはわかりましたよ。

まあ、それの話よりも聞きたいことがあるんですけど……」

 

『?』

 

「束さんと直接会える方法ってあります?」

 

『………は?』

 

 

 しかし一夏的にそちらよりも別の理由で束にコンタクトを取っていたらしく、その申し出には束も思わず変な声が出てしまう。

 

 

『えーっと、なんでなのか理由を話して貰えると非常にありがたいかな?』

 

 

 思わぬ話に、先日一夏に言われた言葉を思い出して軽く心臓を早鐘させるのを悟られぬように努める束に一夏は、無自覚全開に理由を告げる。

 

 

「束さん流の剣術を見て貰いたいってのもありますけど、一番は久しぶりに直接貴女に会いたいから……ですかね?」

 

『………それ、お姉さんをおちょくってるの?』

 

 

 マジかよと顔全体に熱を帯びるのを感じながら、なんとか冷静に返す束だが、一夏は無自覚の攻撃の手を一切緩めない。

 

 

「マコトの次に大事だなと思う人と会いたいって思うのに理由なんて要ります?」

 

『ぅ……』

 

 

 完全に殺しにかかる文句に思わず声を詰まらせてしまった束。

 

 

「俺は、俺が好きだと思う人以外がどうなろうが知ったことじゃない。

でも貴女の事はマコトの次に好きですから」

 

『う……うぅ……』

 

「? どうかしました束さん?」

 

『な、なんでもないっ! あ、う……! い、いっくんが会いたいんなら、べ、別に会ってあげなくてもないこともないかな!?』

 

 

 パネェ……いっくんってパネェわと、完全に殺しに来る親友の弟にドギマギさせられる束は勢いでつい会う約束を取り付けてしまう。

 

 

『い、何時会いたいの? 言ってくれたらその日に直接会いに行くけど……』

 

「じゃあ明日とか」

 

『あ、明日ぁ!?』

 

「あ、やっぱ無理っすよねぇ? ええと――」

 

『や! ぜ、全然余裕なんだけどっ!? あ、あの、こ、心の準備的なものが……』

 

「は? 準備???」

 

『わ、わかってて言ってるって訳じゃないよね?』

 

「??? 何がですか?」

 

『…………………いっくんのいじわる』

 

「え……」

 

 

 皮肉な事に精神構造が互いの姉や妹よりも似通った似た者同士の密会はこうして続くのだ。

 

 

「ど、どうしよ……明日会うって言っちゃったし。

さ、さっきから身体が熱い……うぅ……」

 

 

 天才ならぬ天災を一人の女性にさせてしまった罪深き少年と……。

 

 

「本当に、どうしてくれるのさいっくん……」

 

 

終わり




補足

一夏の剣術は篠ノ之家の剣術ではなく、束さんが映画見て適当に再現させた剣型です。

具体的にはブォンブォン鳴る光る剣の7つのアレの型。

フォーム1:シャイ=チョー
フォーム2:マカシ
フォーム3:ソレス
フォーム4:アタール
フォーム5:シエン
フォーム6:ニマーン
フォーム7:ジュヨー

的な7つの型の内、一夏はフォーム5が得意らしく、そこから某若かりし頃の選ばれし者のように発展系にまで到達しとるとかなんとか。


その2
基本この二人はほっといてもヘタレイチャイチャやっとるんで……。


その3
一夏はやはり主人公だったのだ……

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