色々なIF集   作:超人類DX

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こんくらいまでかな……


ファンの一人

 

 

 

 宇宙が今尚限りない膨張を続けているかの如く、強大な報復心を抱いた事で宿ったその異常性がイッセー自身を進化させ続けている。

 昨日よりも今日、数分前よりも今。

 

 心の熱を失っても尚、その異常性だけは健在であるかのように、赤き龍帝の力は常に進化をし続けているのである。

 

 

 

 

「―――と、いう訳で実はオラリオに儂の孫が来ていての」

 

「あ、うん」

 

「お前さんも一度は会った事があったじゃろう?」

「あー……うん? うん、俺の記憶が正しければ」

 

「その見た目でボケるのはまだ早いじゃろ」

 

「うっせーなほっとけ、俺だってまさか人間の寿命の概念が無くなってるとまでは思わなかったんだよ」

 

 

 そんなイッセーは、オラリオから遥か離れた田舎の山奥にて普段は世捨て人のような生活をしている。

 人という概念を超越し続けたという結果と、自分の価値と危険性を把握していたからこそ、なるべくこの世界の人々とは関わるべきではないといった理由と、元々こうした生活に慣れきっていたからというのもあって一切の不満はないのだが、そんなイッセーの根城となる小さな山小屋に、ある人物が訪ねて来た。

 

 

「お主が溜め込んだ金を使うためにオラリオにフラりと訪れているのは知っとる。

じゃからこれは極個人的な頼み――否、依頼なのじゃが……」

 

「嫌な予感がしてきた……」

 

「うむ、あの子の様子を見に行って欲しいのじゃよ。

可能なら暫く傍についてくれると助かる」

 

「ほーら出た。

アンタな……元々俗めいたじーさんだとは思っていたが」

 

 

 一応滅多に来ない客人なので、それなりにもてなしていたのだが、持ち込んできた話のせいでいれたお茶の味が一気に不味くなってしまう。

 

 

「あの子はお主のことを覚えておる。

また会いたいともな」

 

「そう言われてもな。

アンタならわかっているだろう、あそこに行くにはただ飯を食いに行くだけであって、特定の個人に肩入れするつもりなんてないんだぞ」

 

「それもわかっておる。

お主はワシ等が『現役の頃』からそうじゃったからのぅ」

 

 

 農夫の格好をした老人は自身の過去をしみじみとした顔で思い返しながらお茶を飲むと、今度はしっかりと頭を下げた。

 

 

「無理を承知で頼みたい……あの子を見守って欲しい。

ワシは訳あってあの子には死んでいる事になっておる」

 

「…………………………。アンタ、今でこそそんな格好をしているが、そもそも何故『引退』した? アンタ等が散り散りになる原因だった黒い蜥蜴だってその後すぐに俺たちがぶちのめして黙らせたし、わざわざ引退するまでもなかっただろう?」

 

 

 目の前の老人の最盛期を知っているイッセーは、今だからこそ疑問に思った事を聞いてみると老人は朗らかに笑う。

 

 

「何時までも老いぼれがのさばると時代は停滞してしまうじゃろう? それに引退後の生活も決して悪いものではなかった。

お主と腹を割って話すことも出来たしの?」

 

『相変わらず喰えん老いぼれだ』

 

「照れるのぉ~?」

 

 

 ある意味悪魔の兵士として成り上がる人生を歩んだイッセーがたどり着きそうな存在そのものとも言えなくもない老人に、イッセーは微妙な顔になりつつもため息をひとつ吐く。

 

 

「わかったわかった。

無事かどうか様子を見に行けば良いんだろ? ったく、俺はパシりかってんだ」

 

「人聞きの悪い。

ワシも嫁もお主の事は『友人』じゃと思っとるよ」

 

「けっ!」

 

 

 目の前の老人と今この場に居ないその老人の『嫁』に友人と言われても素直に喜べないイッセーは残っていたお茶を一気に飲み干しながら顔を背ける。

 

 

「どうせとんでもねぇドスケベなガキに育ったんだろうぜ、その子は」

 

「まあ、色々と教え込んだことは否定出来ぬの……」

 

「ったく…」

 

「しかしお主もいい加減そいった相手を探してみたらどうじゃ? ………まあ、お主の場合、その気になれば即答してくれそうなおなごは沢山居そうじゃし、正直今も羨ましいぞい」

 

「冗談じゃねぇ。

そんなのには興味がない」

 

「過去のトラウマというやつか。

お主も難儀じゃのう……?」

 

「それもあるが、他人を好きになる意味がよくわかんねーんだよ」

 

 

 こうして再びオラリオへと赴く事になったイッセーだが、これがある意味止まり続けていた運命の歯車を再び動かす事になるとはこの時誰も思わなかった。

 

 

 

 

 

 こうして約半年振りにオラリオへとやって来たイッセーは、相変わらず様々な人種が闊歩して賑わう街に、暫く山奥生活をしていたのもあってか少々煩く感じてしまいつつ、古くからの知り合いの孫らしき少年を探す為に暫く街中を彷徨くことに。

 

 

「見た目に関しては特徴だらけだし、気配もちゃんと覚えているが……めんどくさいな」

 

『引き受けたのだからちゃんとやってやれ。

一応あの老いぼれにも借りはあるのだろう?』

 

「わかってるけど、取り敢えず腹減った」

 

『まったく……』

 

 

 復讐心が霧散したせいか、どうにもやる気が常に無い相棒――というよりは己の子に近いものを感じているドライグの呆れた声を聞きながら街の歓楽街へと足を運び、そしてオラリオに来たらほぼ間違いなく訪れる食事屋へと入るのだった。

 

 

「うちは夜からの開店―――イッセー?」

 

「よ、相変わらず元気してんのかミア?」

 

 

 オラリオの中で一番この女主人を含めて一番贔屓にしている店『豊饒の女主人』はまだ開店準備中であり、普通なら門前払いとなるのだが、イッセーの場合はどんな時間に来ても必ず入れて貰えるので、半年振りにやって来た客人に対して驚きつつも女主人のミアは迎え入れた。

 

 

「珍しいね、半年もしない内に来るなんて?」

 

「色々あってね……取り敢えずこの金で――」

「わかったわ。ちょっと待ってな」

 

 

 カウンター席に座るイッセーが大量の金を出した時点で色々と察したミアが調理に入る。

 その調理の間、ミアとイッセーは世間話をする。

 

 

「従業員はどうした?」

 

「休憩か買い出しとかに出てるよ。

もうすぐ帰って来るとは思うけど」

 

「あ、そ……」

 

「なんだい、嫌そうな顔しちゃって?」

 

「騒がしいからさあの子等。

ちょっと苦手っつーか……特にあのミャーミャー言っとる猫人が」

 

「あー……アーニャはね。

まあ、許してやっておくれよ? あの子なりにアンタに懐いてるだけなんだから」

 

「懐れる事なんて何一つしちゃいないから困るんだよ……」

 

 

 はははと笑うミアに対してイッセーは複雑そうな顔をする。

 

 

「それにしても、ミアも随分――」

 

「あ? なんだい、老けたとでも言う気かい? それとも太ったとでも?」

 

「そうじゃねぇよ、昔の頃より楽しそうだなって思っただけだよ」

 

「アンタに色々助けられてなかったら、今ごろふて腐れながら生きてただろうけどね」

 

「俺は別になんもしちゃいないぞ。

今のキミがあるのはキミ自身の意思を折らずに居たからだ」

 

「……………。ホント、アンタは変わらないわ」

 

「変われない死に損ない――といった方が正しいかな? ははは」

 

「そうだね。そうやって自分を常に卑下する辺りはずっと変わっちゃい無い」

 

 

 喋っていても手はきちんと動かすミアが、複雑そうな表情を浮かべつつも完成した一品をイッセーに出す。

 

 

「うん、美味い。

ホント毎日食べたいくらいだぜ」

 

「…………………」

 

「いっそこの店から俺の家まで一瞬で移動できる手段でも考えてみるか。

そうすりゃ毎日飯作って貰えるし……」

 

「…………………………………。そういう言い方は誤解されるから止しな」

 

「え? 誤解? なんの? 嘘じゃなくてミアの飯は毎日食いたいぞ?」

「…………アタシが若い頃、アンタのそういう言い方に勝手に舞い上がって、その後何度泣いたかわからないよ。

やっぱりとことん変わらないわイッセーは……」

 

「はい???」

 

 出会った時からずっと変わらぬ姿をしている――ミアにとっての『初恋相手』の自覚ゼロな言い方にジト目となる。

 人との繋がりを疑い、かといって困った時は手を貸してくれて――そして助けてくれた異界の英雄。

 

 

「まさかアンタ、他の女にもそんな台詞を吐いてないだろうね?」

 

「??? いいや?」

 

「なら良い。

多分今でもアンタがどこぞの女と宜しくしてるなんて聞いたら暴れてしまいそうだからね」

 

「なんだそりゃ?」

 

 

 それがミアにとってのイッセーという青年だった。

 そんな他愛の無い会話をしながらミアから出される食事を次々を完食している内に、外へと出払っていた従業員達が戻ってきた。

 

 そして戻ってみれば、主人ことミア母さんが開店前だというのに料理をしていて若い男性と喋っているのを目撃してしまい、そしてその男性が店唯一の顔パスお得意様である彼であったと二重の意味で驚くことになり……。

 

 

「あー! イッセーにゃー!!」

 

 

 その従業員の一人が視界に捉えるや否や、飛び付くように突撃するのだ。

 

 

「こんなに早くまた来てくれるなんて運命にゃ! 結婚―…」

 

「やかまかしい! 鬱陶しいぜ!!」

 

「……はぁい♪

へへへー……イッセーに睨まれながら怒鳴られちゃったにゃー……」

 

「はいはい」

 

「また何時もの発作が……」

 

 

 イッセーが恐らく一番苦手としているこの猫人の従業員はアーニャといい、軽く殺気混じりに怒鳴られたというのに寧ろ嬉しそうににやけている程度にはメンタルが振りきれているらしく、でへへへと笑うアーニャを見て他の従業員やミアが『発作』だと呆れる。

 

 

「やっぱりこうなったね。気づいたらあの子の兄共々懐かれてたけど、なにかしたのかい?」

 

「知らん。兄貴の方は最初しつこく絡んできたから軽くひっぱたいて黙らせてやったからだと思う―――あ? 懐かれてる?」

 

「おや、知らなかったのかい? アレンはアンタの『戦い方』を真似るまでに懐いてるよ」

 

「…………あのチビ助がか? 流石に嘘だろそれは」

 

「んにゃ、本当だにゃー」

 

「わかんねぇ……」

 

 

 アーニャの兄であり、現在フレイヤ・ファミリアに所属するレベル6の冒険者であるアレン・フローメルが自身に懐いていると言われても一切信じられない様子のイッセー。

 それもその筈、何せ稀にオラリオに来て稀に出くわすと間違いなく襲い掛かって来るタイプであり、その度に張り倒してやっていたので寧ろ殺意しか持たれていないと思っていても仕方ない。

 

 だがミアだったりそのアレンの妹であるアーニャがそう言うのだから、イッセーからしたら余計訳がわからないわけで。

 

 

「まあ、あのチビ助の事はさておきで一応聞いておこうか」

 

「ん?」

 

「なになに? 何が聞きたいの? ミャーのスリーサイズかにゃー? それならイッセーにだけ寝室で直接……」

 

「人を探しているんだけど、この店に客として来たか? 特徴としては14・5くらいの白髪の赤目な男の子なんだけど……」

 

「うーん……多分見ちゃいないね」

 

 

 一々アーニャの相手をしていたら話が進まないので、適当に無視して人探しを開始するイッセーだが、どうやらここに来てはまだ無いらしい。

 

 

「知り合いかい?」

 

「向こうは覚えてはない……とは思うがね。

ま、時間はたっぷりあるし、ゆっくり探させて貰うさ」

 

 

 様子だけ見るだけのつもりであるイッセーは、最後の料理もきちんと完食すると席を立とうとしたその時、それまでただじーっとイッセーの様子を遠くからうかがう様に見ていた一人の従業員が静かに口を開く。

 

 

「今イッセーさんの仰有っていた特徴の男性なら今朝見ましたが……」

 

 

 その声に席を立ったイッセーがピタッと動きを止め、その従業員を一瞥する。

 

 

()()()がか?」

 

「ええ、間違いありません。一応名前も聞きましたわ――そう、ベル・クラネルと」

 

「…………………………」

 

 

 淡い青に近い髪の少女が口にしたその名前にイッセーの目線が急激に鋭くなり、反して少女――シル・フローヴァは見たこともない笑みを溢す。

 

 

「落とし物を拾ったという縁で、ダンジョンでの一仕事を終えたらこの店に来て貰う約束をしています。

ですので、このままイッセーさんがこの店で待っていたら会えるのではないかと」

 

「おお! ナイスな提案にゃシル!」

 

「どうする? アタシ達は別に構わないけど……」

 

「…………」

 

 何故か警戒するような顔をしているイッセーを察したのか、ミアが『気を使うよう』に訊ねる。

 すると暫くは『ニコニコ』と微笑んでいたシルを睨むように見据えていたイッセーはその視線を止めて大きくため息を吐きながら再び席に座る。

 

「もう暫く厄介になるよ。

ああ、これ迷惑料」

 

「イヨッシャァァァッ!!! イッセーと遊ぶにゃー!」

 

「ダメだよアーニャ! アンタは仕事があるんだよ!!」

 

 こうして待つことになったイッセーは、シルからの『覗かれるような視線に』鬱陶しさを感じながら待つのであった。

 

 

 

 

 かつて異世界にて抗い続けた伝説の赤き龍帝は言っていた。

 

 

『アンタ等は俺を――いや俺達を伝説だの英雄だのと言うが、伝説だ英雄だなんて大抵碌なものじゃない。

英雄と狂人は紙一重だ』

 

 

 自分は決してお前達が勝手に抱いているような英雄でも伝説でもない。

 ただ気にくわないかなら殺そうと暴れまわった狂人でしかないと。

 

 確かにそうなのかもしれない。

 英雄と呼ばれる存在の殆どは後の時代にそう呼ばれるようになるのが殆どであり、彼の場合は端から見れば世界を破壊しようとした狂人にしか見えない。

 しかしそれでも、神の意思に反抗し、そして意地を通し続けたという行動は他の神々の意識や考え方を変えさせる偉業だった。

 

 

「『これで全てが変わる。この世界の未来。俺の未来。、そして、お前の未来も……!!」』

 

「こ、の……! 死に損ないの虫けらガァァァッ!!!」

 

「『先にあの世で待ってろや……! ファイナル・ビッグバンドラゴン―――』」

 

 

 本来歩むべき未来を奪われ。

 生きる権利を奪われたちっぽけな子供が、その尽きぬ報復心と、奪われた事で覚醒した『永遠に進化し続ける異常性』によって強引に神々の領域へと到達した。

 

 それは間違いなく偉業でもあり、そして許されざる狂気の行為だった。

 だがそれにより、最早どうにもならぬ程に汚染された世界に風穴を空け、他の神々の干渉する隙を与えた。

 

 まさに英雄的な行為。

 

 別系統の神が置いていった転生者との戦いに後一歩及ばずに敗北し、そして殺されたのだとしても神々にすら出来ぬ偉業であることに変わりはない。

 故に神々はこの英雄的な行動をした赤き龍帝に祝福を差し出す事になった。

 

 復讐とは違う、今度こそ穏やかな生を願いながら。

 

 

 そして様々な――所謂彼の『ファン』となった神々との小競り合いに、それまで反目し合っていた女神同士で徒党を組み、彼が自分達の管轄する世界で生きられるように導く権利を得た時から、彼女は密かに動いたのだ。

 

 

『ふざけろ、負け犬を英雄呼ばわりするんじゃねぇ。

それに俺は余所の世界で生きるつもりなんてない』

 

 

 説得にはかなりの時間を要した。

 だが最終的に渋々頷いてくれた。

 

 後はどう上手く彼を傍に――否、彼の傍に居られるような立場となれるか。

 

 

『俺は強い奴の言うことなら聞いてやれる。

俺に命令したいんだったら―――俺に勝ってから命令しろや!!』

 

 

 余計な真似をしてくれた他の女神達のせいで、元から神々への不信感を持っていた彼が余計壁を作ってしまったりもしたので、慎重に立ち回った。

 なのに何故か自分に対して胡散臭いものを見るような顔をされた時は実に解せない気分だったけど。

 こうして永い年月を経て慎重に慎重に立ち回ってきたとある女神は現在――

 

 

「部下も無しに単独とはね」

 

「アナタと会う時は一人でと決めているのよ。

そうでもしないとアナタはまともに会ってくれないもの」

 

 

 実は狂信レベルのファンとして、異世界の英雄との直接的な対話を何よりも楽しみにしているのだった。

 

 

「それで? 本当にベルを見たんだな?」

 

「ええ、間違いないわ。

ふふ、彼の落とし物を拾ってあげてよかったと今程思った日はないわね。

アナタに辿り着けたのだし?」

 

 

 美の女神――フレイヤにとって。

 

 

「…………。それで、見返りはなんだ?」

 

「見返り? そんなものは要らないわ。

今回の事はただの偶然だもの」

 

「……………………」

 

「………昔からそうだけど、私ってそんなに胡散臭い?」

 

「少なくともあらゆる意味であの貧乳女神よりはね」

 

「それはかなり心外ね……」

 

 

 豊饒の女主人の店の裏にて、オラリオの最大クラスの勢力を持つファミリアの主神と対等に会話をしているイッセー。

 これがもし彼女の眷属――特に彼女を強く崇拝している者に見られでもしたら思いきり殺しに掛かられそうなものだが、本人達はまるで気にせず会話を続けている。

 

 

「あのベルという子供は――」

 

「お察しの通りだと思うぞ。

はっ、そういう類が好みなんだろうアンタは? もしまだどこにも所属していないのなら勧誘でもしたらどうだ?」

 

「いいえ、そういう事はしないし、彼はもう眷属になっている筈よ。

確かそう――ヘスティアの所にね」

 

「ヘスティア……? へぇ、良いとこに入ったんだなあの子は」

 

「へぇ、相変わらずヘスティアには妙に甘いのね?」

 

 

 フレイヤからもたらされる情報に、どうやらしょうもない神の眷属ではないと笑みを溢すイッセーに対して、昔から微妙にヘスティアに対して他の女神達とは違う態度であると、ジト目になるフレイヤ。

 

 恐らくは眷属達ですら見たことのないフレイヤの別の側面であり、美の女神である彼女のそういった仕種ひとつひとつだけで常人ならコロッと墜ちそうなものだが、生憎向けている相手は尋常ではない精神力を持つイッセーであり、そんなフレイヤに対して鼻で笑う。

 

 

「俺が誰にどういう態度を取ろうが俺の勝手だろ?」

 

「そうでしょうけど、解せないというか納得がいかないというか……。

なんとなく私ってロキどころかイシュタルよりも雑な対応をされている気がしてね……」

 

「そう思うんならそうなんだろう、アンタの中ではな」

 

「………ほら、やっぱり雑よ」

 

 

 むすっと子供みたいに頬を膨らませる今のフレイヤを見たら、常人ならそれだけで狂信者にでもなりかねない破壊力があるのだが、やはり相手が相手なせいか、寧ろかったるそうな顔をするだけだ。

 

 

「あのうり坊(オッタル)が居なくて良かったよ。

まーたかったるいことになりそうだった」

 

「あー……確かにそうだけど良い子よ?」

 

「そりゃあアンタの為に他をぶちのめす駒みてーなもんなんだから、アンタにとっちゃあ良い子なんだろうぜ」

 

「………辛辣ね、私達の作り上げた『システム』に」

 

「良い思い出が無いだけで否定はしないさ……」

 

 

 神の眷属という概念に否定的なものを持つイッセーにとって、一種の崇拝者の気持ちはまるで理解できない。

 

 

「とにかく礼は言うよ。

それと今回の借りは必ず返す」

 

「……。やはりアナタらしいわ」

 

「他人に貸しも借りも作りたくはないんだよ」

 

 

 他の為に命を懸ける意味も意義も……。

 

 

「それなら今度あの子達の相手になって貰えるかしら?」

 

「ああ。へっ、暫くチビ助とうり坊とは会っちゃいないが、少しは強くなったのかねぇ」

 

「少しでもアナタに本気を出されたら一瞬で負けるでしょうけど、少しずつ強くはなっているのは保証できるわ」

 

「そうかい」

 

「それとその……」

 

「あ?」

 

「こ、こうして直接お話できる機会が今度は何時になるかわからないし、握手して貰えたらなと……」

 

「………………………。今のアンタを見たら、部下どもに殺されそうだな―――俺が」

 

「だ、だめ?」

 

「ほらよ。まったく、どいつもこいつもこれの何が良いんだ?」

 

「………………………」

 

「いや黙って俯くなよ? 美の女神とか呼ばれる癖に思春期かアンタは……」

 

「ちゃんと暖かい。

それに……とても逞しい」

 

「聞いてねーし……はぁ」

 

 

 相棒の龍しか信じずに孤独に戦い続けた異世界の英雄にはまだ……。

 

 

「もう良いだろ?」

 

「え? あ、いや……も、もう少しお願いします……」

 

「本当に部下共は居ないんだろうな? ………若干心配になってきたぞ」

 

『こんな光景をあのガキ共に見られたら大騒ぎするだろうからな』

 

「あの……差し支えなければ横抱きに抱えて欲しかったり……」

 

「…………………はいよ!! ま、マジめんどくせぇぞ」

 

「お、おっふ……」

 

『おい、ヤバイ薬にでも手を出したようなツラになってるぞこの女神……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………なにしてんだいあの人は」

 

「ふ、普通にフレイヤ様が居るし、なんか抱っこされてるし。

うぐぐ……良いにゃー……」

 

 

終わり

 

 

 

 

 過去に英雄となった青年と、英雄となる兆しを見せる少年との再会により、止まり続けた過去の英雄の時間は少しずつ動き始めていく。

 

 

「おじいちゃんに聞いたんだ! イッセーがオラリオに居るって。

だから会いに――」

 

「あーわかったわかった。

にしても大きくなったなベル? もう15か?」

 

「うん。それでねイッセー! 僕は今ヘスティア様の眷属なんだよ!」

 

「おう、聞いた聞いた。

良い神と会えたみたいでちょっと安心したよ」

 

 

 過去に会い、そして成長した子供との再会。

 

 

「へへ、見てよイッセー! 昔よくイッセーの修行を見てた事で僕なりに閃いたスタイルだよ!」

 

「ほー……」

 

『我流でそれなりに成長させていたか』

 

 

 過去の英雄とのほんの少しだけの日々という本来とは違う歴史によって若干逞しくなっていたベルだったり。

 

 

「ひひっ! ヒ~ヒッヒヒヒ!! ヒャアッ!!!」

 

「ね、ねぇ。ベル君って昔からああなの? 普段は良い子なのに戦う時になると何時も奇声発しながらナイフで切りかかったり、目がガンキマリしてるし……」

 

「いや……」

 

『イッセーが敵をぶちのめす時の目がああだからな。

さながら狂龍というべきか。まあ、あの小僧は狂犬というべきだろうがな』

 

 

 逞しくなりすぎてナイフ片手に血まみれになってモンスターを切り刻む姿にドン引きしていたらヘスティアだったり。

 

 

「ディィッ!!」

 

「ゴファッ!?」

 

「べ、ベートォォォッ!?」

 

「おー、躊躇いのない追撃か……ベルも成長したなぁ。

ちっさいときは可哀想だからってできなかったのに……」

 

「ちょ!? と、止めてくれないんですか!? べ、ベートが……」

 

「喧嘩を売ったのはあの犬小僧なんだろ? まあ、殺しはしないだろ」

 

 

 狂犬ならぬ狂兎は狂龍の領域を目指して走り抜けるのだ。

 

 

 

 ベル・クラネル

 

 

所属派閥︰ヘスティア・ファミリア

 

 Lv.1

 

 

二つ名︰【女神の狂兎】

 

 

力:精神依存により不明

 

耐久:精神依存により不明

 

器用:精神依存により不明

 

敏捷:精神依存により不明

 

魔力∶精神依存により不明

 

 

魔法(?)

 

【ヒートアクション】

 

精神を高揚させ、あらゆる無茶アクションを可能にさせる。

 

 

【龍拳・爆撃】

拳から黄金の龍を放ち、実態の無い敵を捕まえて消滅させる。

 

 

【ドラゴン波】

 

両手に溜めた魔力を打ち出す。

 

 

 

スキル

 

【情景一途(ver無神臓)】

 

 抱いた者の特性を再現し、少しずつ進化させていく。

 

 

【狂兎】

 スキルというよりはバトルスタイル。

 赤き龍帝のバトルスタイルを見た事で閃いた、新たな伝説の幕開けとなるスキル。

このスキルを解放した場合、俊敏と器用と力のステイタスが急上昇する。

 

 

その他のスキルは現状不明。

 

 

「ハーレム王に、僕はなる!!」

 

「あ、あのジジイのせいでこんな子に……」

 

「ま、まあ欲に素直な子だと思えば良いんじゃないのかな? ………道行く女の人に下手くそなナンパをするのはどうかと思うけど」

 

『しかし何故かは知らぬがあの小僧の言動は妙に落ち着く気がする……』

 

 

 

終わり




補足

結局猫には懐かれやすいのは変わらない。

そして大体思春期になるリアス――とそっくりボイスの神様。

しかし残念な事に彼はリアスさんとは出会えなかった歴史を歩んだのであまり意味がない。

てか出会ってたら一筋イッセー化するんで結局無意味という。

その2
どこぞの嶋野の狂犬化してしまっていたベルきゅん。

初期ステイタスの時点でヤバイ事になっていて、ドス(ナイフ)を持たせたら人格が豹変するらしい。
 そして本来のイッセーにとても近い性格らしく、アイズさんにも血まみれになってナンパもしたし、なんなら出くわすと女の子全員をナンパしまくる模様。

 で、アイズさんにナンパしてたのを犬君に見られて喧嘩売られたので狂犬の極み・ドス流しのようなアクロバットアクションで大変なことに……。


その3
ちなみに、性癖は見事におっぱいドラゴン――ならぬおっぱいウサギに……。

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