色々なIF集   作:超人類DX

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孤独だったままなベリーハードの別話的な

舞台は……あれ


孤独なベリーハードからの話
孤独なベリーハード(別話)


 

 

 

 復讐を果たす為に親代わりでもあった相棒の龍と共に地獄のような世界を爪を研ぎながら生き抜いてきた少年は、自分の運命すらも変える出会いがなかったせいか、戦いに敗れて死ぬ定めのはずであった。

 

 

『ウォォラァァァッ!!!』

 

『ギャアッ!?』 

 

『くっ、増援を急がせろ!!』

 

 

 それでも少年は諦めることなく内に宿す龍と共に運命に抗い続けた。

 ギラギラとした目をして。

 深い憎悪と殺意を剥き出しにして。

 

 

『ちまちまと増えやがって……! そんなんじゃ俺は止まらねぇぞオラァァァッ!!!』

 

『こ、こいつ……完全に頭がおかしくなっている……!』

 

『い、いい加減にしておけよ人間風情が……!』

 

 

 人ならざる存在を支配する存在への復讐の炎を燃やすその姿。

 

 

『お前等雑魚共の首なんて数に入らないんだ……!

とっとと退きやがれ―――このボケがァァァッ!!!』

 

 

 威嚇する野良犬のように殺意の咆哮をあげる少年は傷だらけとなりながらも戦い続けた。

 それがどんなに無謀であっても、少年は自分の人生を取り戻す為に、その元凶への復讐を果たそうと走り続けた。

 

 

『はは、しつこいなぁ。

無駄だってまだわからないのかよ?』

 

 

 そしてたどり着く復讐すべき相手。

 自分の人生と愛する者を奪った存在。

 

 

『お前だけは、もう何があってもこの手で殺さなきゃ収まらないんだ……!

そうでなければ、お前に殺された父さんと母さんに顔向けができない…!』

 

『あの時点でお前の方がくたばってれば世界は平和だったんだがなぁ。

まあ? そのお陰で俺がこの世界の主人公になれた訳だし? こうやって皆と楽しく過ごしてるんだよ。

いい加減邪魔しないでくれるか? え?』

 

『このっ、ゲスがっ……!!

やるぞイッセー! このようなゲスに話す舌なぞ不要だ……!』

 

『ああ……地獄の底まで引きずり込んでやる―――■■■■!!!!』

 

 

 薄ら笑いを浮かべるその男を殺す為に、少年は龍と共に戦いを挑む。

 そしてその戦いの果てに待ち受けていたのは、どこかの世界の中庭ではなく―――

 

 

 

 

「―――――つまり、アンタの説明をそっくりそのまま信じるとするなら、俺は無様にあのクソ野郎に負けて塵ひとつ残さず消し飛ばされたって訳だ?」

 

「そうよ。

アナタもその直前くらいまでは覚えているんじゃないの?」

 

「…………まぁ、ね」

 

 

 この世でもあの世でも無い場所。

 

 刺し違えて致命傷を負わせたと同時に体力が底を尽きてしまった少年はそのまま肉体を砕かれ、死を迎えた。

 そして目覚めてみれば右も左も無い謎の空間で、目の前には全く見知らぬ女性。

 

 

「それで? アンタは女神とやらを自称――まぁ良いや、女神であるとして、俺をどうするんだ? というか、俺がこのままアンタを殺しに来るってのは考えなかったのかよ?」

 

 

 女神を名乗るその女性は、ほんのりと女性に向けて殺意を放つ深めの茶髪の少年に、少年が死んだ事、そして死んだ理由等を教える。

 死の詳細を女神と自称する女性に聞いた時の少年の表情は苦いものだったのは言うまでもない。

 

 

「現に俺は殺る気満々になってきてるわけだしなぁ?」

 

「…………」

 

 

 ただ、普通なら目の前の女神を自称する女性の存在含めて信じられるわけもないのだが、死の詳細や何故そうなったかの理由を含めた自分と相棒のドラゴンしか知らない話までも知っていたせいで――なにより今居るこの場所の事もあってか信じるしかないのだ。

 信じるからこそ、神である時点で殺意が沸いてくる少年はその左腕に赤い龍の籠手を纏いながらバキバキと指を鳴らしていると……。

 

 

「私を殺したいのなら好きにして構わないわ。

それだけの事を私は――いいえ、私達はアナタ達に強いてしまったのだから」

 

「は?」

 

 

 神という存在は傲慢なそれだと思い込んでいた少年は、ただただ普通に謝ってきた女神を自称する女性に少しだけ面を喰らってしまう。

 

 

「アナタ達には私が何を言っても言い訳にしかならないのはわかっているわ。

でもアナタに復讐の道を歩ませたあの転生者は我々とは別系統の神が、理のバランスを考慮せずアナタの世界に転生させた。

故に私達が気づいた頃にはあの転生者は私達の干渉を不可能にさせる程に増長してしまったのよ」

 

「…………」

 

『つまり、奴は貴様等から見てもイレギュラーだったと?』

 

「ええ、まさか私達の干渉をはね除ける程に力を別系統の神が与えるとは思わなかったのよ。

お陰であの世界――つまりアナタ達の世界は完全に我々の管理から外れた無法地帯に……」

 

 

 思わず声を出して尋ねる相棒の龍に頷く女神の女性は己の力不足を恥じるように目線を下げた。

 

 

「俺達は最初から勝ち目なんてなかったのかよ……」

 

「ごめんなさい。

でもまさかアナタが彼等にあそこまで抗える程の力を持つとは思わなかったわ。

干渉こそ不可能だったけど、時々観ることは出来たし、観ている内に実は我々の中にアナタのファンができたり、ファンクラブなんかもできちゃったり……」

 

「……………………なんだそれ」

 

『凄まじく微妙だな……』

 

 

 最初から勝ち目なんてなかったという現実に心が折れそうになっている少年を見て、慌てて女神が自分達の間ではファンになる者だとかファンクラブができているのだと教えるが、内に宿る龍が呟いた通り、少年にとっては気休めにもならない言葉だった。

 

 

「それにアナタ達がしてきたことはまるっきり無意味なものではなかったわ。

アナタが死力を尽くしてあの転生者と世界に大ダメージを与えてくれたお陰で、やっと我々女神があの世界に干渉できるようになれたもの」

 

「なんだって?」

 

『それはつまり?』

 

「…………。アナタ達にとっては気持ちの良い話ではないでしょうけど、ああも暴走した世界は完全に消滅させることになったのよ。

あのまま肥大化されたら他の世界にも影響がでてきてしまうかもしれなかったしね」

 

『………』

 

 

 自分達の世界が消滅の道を辿ると女神から聞いた少年と龍はショックこそ受けなかったものの、この手で仇を取れなかった事が純粋に悔しかった。

 

 

「話はわかった。

けどアンタは女神とやらを自称――まぁ良いや、女神であるとして、俺達をどうするんだ? 奴を殺す為に散々他人をぶっ殺してきたからって理由で、地獄にでも叩き落とすつもりか?」

 

 

 結局なにも成し遂げることはできず、無駄死にも同然に死んだのだけが現実だとある程度受け入れざるをえなかった少年は、どこか自虐的な笑みを浮かべる。

 あらゆる手を尽くして進化をし続けた己の生前の行いを考えれば、あの女神とやらは間違いなく自分達に地獄行きの切符でも渡しに来たのだろう………そう思っていた。

 

 

「結局俺は負け犬で終わったんだ。

今更ジタバタするつもりもないし、大人しくしてやるさ。

あの先に地獄に堕ちてりゃあ、あのゲス野郎もその内堕ちてくるだろうからな……」

 

『オレはお前から離れんぞ。

お前を最後の宿主と決めていたのだからな』

 

「……。ああ、ありがとうな」

 

 

 ヘラヘラと相棒の龍と共に地獄へと堕ちる覚悟をする中、罪悪感の表情と共に少年を見つめていた女神が口を開く。

 

 

「この件は神である私達がすべき事であったのに、何もできず、人間であるアナタが英雄的ともいえる働きをしてくれたお陰でやっと動くことが出来た。

だから私は――いえ、私達はアナタ達を決して地獄に落とさないわ。

アナタは人でありながら我々が手出しできなかった転生の神を自称する存在の力を弱らせてくれた。

知らないと思うしアナタ達からしたら嫌な話かもだけど、アナタの事は女神の間ではかなり有名なのよ? さっきも言った通り、軽いファンクラブも設立されたくらいだし」

 

「アンタ等に感謝される事なんてしちゃいないし、アンタ等の為なんかじゃねぇぞ」

 

「わかっているわ。

あの邪悪な存在が散々好き勝手やらかしてきたのを止められなかったのは我々に責任があるし、人間であるアナタが人間である事を辞めなければならなくなってしまったのも私達の責任。

だから私は、代表としてアナタの死後の道案内をするのよ」

 

「?」

 

『道案内だと……?』

 

 

 どうにも少年は神々の間ではちょっとした英雄らしい。

 水色髪の女神に言われた少年は、ここにきてかなり苦い顔をしながら嬉しくないと返しつつ、地獄行きでは無いのなら何なのだと女神の言葉を待つ。

 

 

 

「全くの異世界。

そこでアナタには生きて貰うわ」

 

「………………」

 

『…………』

 

 

 そして放たれた言葉は、少年にとっても龍にとってもあまり歓迎できないものであった。

 

 

「それはアレか、あのゲス野郎みたいに知らん世界で誰かを陥れて生活しろってのか?」

 

『俺達をおちょくっているつもりだとしたら笑えんぞ?』

 

 

 転生だなんだという話自体に嫌悪感を持つ少年と龍からしたら女神の話は受け入れがたいものだ。

 それならまだ地獄に堕ちた方がマシである。

 本気でそう思ってると顔を見て判断した女神は、とにかく違うと説明する。

 

 

「そうじゃないわ。

邪悪の神が敢えてイレギュラー化させた様な事はしないわよ。

アナタ達にこれから生きて欲しい世界は、他にも多くの転生者がそれなりに平和に生きてる世界だし」

 

「……」

『………』

 

 

 女神の説明に対して胡散臭い表情となる少年。

 

 

 

「言ったでしょう? 我々が負うべき責任をアナタが果たしてくれたのに、アナタが嫌がる真似なんて絶対にしない。

それは我が女神の名に誓うわ」

 

「…………」

 

 

 

 そうまで言う女神。

 しかし少年にしてみれば、確かに例の邪悪な神とやら転生者を弱体化させたのは別に目の前の女神共の為ではないただの個人的な復讐心を満たす為だ。

 それに結局は殺せずに負けた。それをこの女神だってわかっている筈………なのに何故そこまで自分にしようとするのかが解せない。

 

 

「もっと自由に生きて欲しいのよ……ただそれだけよ」

 

「ある意味で充分自由勝手に生きてきたつもりなんだけど」

 

 

 女神の言葉に疑ってかかる顔をするのを止めない少年。

 するといい加減疑われ続けるのは嫌だったのか、突然癇癪でも起こすように女神が吠え出す。

 

 

「そうじゃないわよ! もっと人並みに生きるべきだと言ってんのよ!!」

 

「……なんだよ急に?」

 

『この女神とやら、まさかこっちが素なのか?』

 

「そうよ文句あんの!? アナタをここに連れていく仕事を誰がやるかで他の女神達と散々大揉めし、必死こいてジャンケンして勝ち取ったわ! 私達の間では文句なく英雄(ヒーロー)と直接お話できるってなった時は本気で緊張したわよ!!」

 

「『……」』

 

 

 熱狂的アイドルファンみたいな感想を聞かされ、果てしなく微妙な気持ちにしかならない少年だが、女神は一人勝手に怒り出してしまってるまま、興奮した面持ちで少年をビシッと指差す。

 

 

「だからアンタは幸せになる権利がある! だからこその異世界転移よ!」 

 

「それこそ押し付けだろ……」

 

「かもね! けど、それでもなのっ! 良い? アンタは道こそ外されたけど間違いなく赤龍帝のイッセーで、私達の英雄なのよ!

そんな男がしょぼくれたまんまじゃカッコが付かないし、私達が見てられなくなるのよ! わかった!?」

 

「あ、あぁ……?」

 

『イヤに俗な理由な気がするんだが……』

 

 

 

 女神がイッセーと呼ぶ少年は珍しく圧されてしまい、段々と口調が酷くなってないか? そんな事を思いつつ、つい勢いに圧されて頷いてしまう。

  こうして圧されるがままに異世界でその人生を生き直す事になってしまうのであった。

 

 

「ふー、転移という事で納得して貰って早速だけど、一応他の連中みたいに異世界を生きる為の特典について説明するわ」

 

「特典……?」

 

 

「そ、例えば力だったり武器だったりね。

ただ、アンタの場合はこれは無しよ。

他人から与えられた力なんて必要ないだろうしね」

 

「まあ……」

 

『こうしてあのゲスのようなモンスターが現れたのだと思うと、あまり聞きたくはなかった話だな』

 

「アレは例外中の例外で、あれ程までの力は本来与えられないわ。

話を戻すけど、その特典がない代わり――いえ、これは私を含めた全女神達からアナタ達への謝罪とお礼として、アナタの肉体を生前と一切変わらないレベルで再構築させるわ」

 

「?」

 

「自覚してないようだけど、アナタ達は生前の時点――あの転生者と戦う直前で既に神の領域を越えかけていた。

つまり私達の力を上回っていたのよ。本来それだけの力を持つ者の肉体の再構築は不可能だけど、他ならぬヒーローの平穏な暮らしの為という訳で全女神の力を合わせてアナタ達を生前と変わらぬ領域で復活させてみせるわ」

 

『そこまでする程なのか……? 限界は越えていたとはいえ人間とドラゴンだというのに』

 

 

 全女神の力を掛け合わせての再構築というピンとしない話にイッセーも相棒のドライグも、そこまでされる謂れがやはり無いので逆に少し疑り深くなる。

 しかし女神は約束した通り、イッセーを生前と同じ肉体レベルで蘇生させてみせたのだ。

 

 そして一誠はあの世では無く別のこの世へと渡る事になる。

 

 

 

「……………………………ここが異なる世界、か」

 

『確かに連中共とは違う気配を感じる……』

 

「なるべくアナタ達が戸惑わない――されどアナタ達にとって多少は新鮮に感じる世界を選んだつもりよ」

 

「へぇ?」

 

『人間とは違う気配を感じたのは気のせいではないという訳か……』

 

「そういうこと。

さぁ、まずは人里に向かうわよ。

場所はわかるから私が案内するわ」

 

「ああ―――

 

『わかっ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『はっ!?』」

 

「え、なぁに?」

 

 

 何故か当たり前な顔して前を歩く女神と共に。

 

 

 

「ちょ、待て! 何でアンタがここに居る?」

 

『しかも貴様、先程まで感じていた神気が一切感じられないぞ……』

 

「いや~、他の女神と私の力をフルで使ったらイッセーの肉体を完全に再構築できると踏んだのだけど、途中で足りなくなっちゃったから私自身の神としての力を全部捨てる勢いで捻り出さなくちゃいけなくなっちゃって。

いやー、お陰で神としての力が無くなりはしてないけど極限まで弱っちゃったわ」

 

「………」

 

 

 小銭を落としたかのように軽く力を失ったと苦笑いしながら話す元・女神にイッセーとドライグは絶句する。

 しかし本人は寧ろ幸運だと言うのだ。

 

 

「神の力を殆ど失ったお陰でこうしてイッセーと同じ世界に来れたのは偶然の幸運だったわ。

ふふーん、今頃私の後輩女神や同僚女神達は私を羨ましがっているでしょうねー?」

 

「アンタ、そんな簡単に言うが――

 

「アクア」

 

「―――あ?」

 

「私はアンタじゃなくて、アクアよ。

これから結構長いことアナタの傍に居座るつもりだし、お互いに名前で呼び合いたいじゃない?」

 

『こいつ、本当に神なのか?』

 

 

 ただ一人の人間を復活させる為に自分の力を棄てたと、そしてなんの後悔もしていないと言い切る元・女神のアクアは、ドライグ以外にここまで誰かになにかをして貰えた事が無かったこともあってか、完全に戸惑ってしまうイッセーの手を取りながら平原を歩く。

 

 

「元々女神としての仕事も飽きてたし、気にしなくて良いわよ。

あ、でも折角だから生のドラゴン波が見たいわ」

 

「あ、ああ……」

 

『わからん……』

 

 

 これは出会いが違った孤独なベリーハード人生を歩んだ赤龍帝の別話。

 

 

「手っ取り早くお金を稼ぐにはああしてギルドという所に登録して、クエストをすれば良いのよ」

 

「なるほど……ゲームだなまるで」

 

 

 取り敢えず金が欲しいのでアクアに教えられながらやってみたギルド。

 

 所謂ステータス鑑定において異次元レベルの身体能力に驚かれつつ運の無さを言われて微妙に納得しつつ加入完了し、いざ出陣。

 

 

「ビッグバン・ドラゴン波ァァァッ!!!」

 

「きゃー! 本物よ! 生ビッグバン・ドラゴン波だわー!!」

 

「………や、やり辛い」

 

『女神とやらはああも俗なのか?』

 

 

 確かに生前とまるで変わらない身体能力を駆使するだけでアクアにキャーキャー言われて微妙に戸惑ってしまったり。

 

 

「きゃー!?」

 

「なっ!? あ、アイツ、デカい蛙に呑まれた……!?」

 

『本当に神としての力を失っているのだな……』

 

 

 アクアの力が人以下になってしまったのを目の当たりにしてしまったり。

 

 

「うぇぇん……! 生臭いよぉ……!」

 

「お前、本来のパワーがあったらこんな事にならなかったろうが。

何でわざわざ棄てる真似なんて……」

 

「ぐすん、危なくなってもイッセーが助けてくれると思ったから……」

 

「結果そうなってるが……クソ、神に借り作るなんて考えもしなかったぜ」

 

 

 どうも殺意が沸いてこない元女神との珍道中はこうして始まり……。

 

 

「い、イッセーさん……! さ、サインしてください!!」

 

「お、おいエリス? どうしたんだよ?」

 

「ちょ、アナタは黙っててくださいカズマさん!

あ、握手もしてください! ファンなんです! ずっと見てました!」

 

「み、見てましたって……」

 

「……………………」

 

 

 ギルドの受付で揉めていたなぞの二人組の片割れから突然握手だサインだをねだられてしまったり。

 

 

「つまり、アクアとは別の理由で女神としてのパワーを失ってこの世界に飛ばされたと……」

 

「え、ええ、この方に道連れにされる形で……」

 

「お、オレは悪くねえぞ! 元を辿ればエリスがオレの事を雑に扱うから……」

 

「当たり前です! イッセーさんを導く役を先輩に奪われてやる気がなくなったばかりか、その先輩が力を棄ててまであのイッセーさんと毎日毎日異世界で楽しい生活をしているのを見せつけられていればやる気なんて出るわけないですよ!」

 

「仕方ないじゃない。

イッセーの肉体の再構築にはアンタ含めた他の女神の力だけじゃ足りなくて私自身のの全ての力を全部注ぎ込まないとダメだったし」

 

「そうだとしても、イッセーさんに一々引っ付くのはルール違反ですよ! だ、大体お金に困ってない癖に宿の部屋を一緒にするなんてハレンチです! ずるいです!!!」

 

 

 

 

 

「アンタ、何者だよ……? 話の節々にすげぇ話が……」

 

「ただの負け犬」

 

 

 その二人組が悪知恵が働く青年とその青年のせいで力を失ったアクアの後輩の元女神だったり。

 

 

「そこのキミ! 女神様に失礼だろう!? というかなんだその距離の近さは!? ハレンチだ!」 

 

「……………」

 

 

 アクアを妙に崇拝してる青年にその距離感故に絡まれたり……。

 

 

「失礼なのはおどれじゃあぁぁっ!!」

 

「なっ!? 女神――ざばっ!?」

 

「この木っ端小僧めがっ!! 何も知らないくせにイッセーに! イッセーにっ!!」

 

 

 その瞬間、スイッチが切り替わったアクアがマウント取ってその青年をボコボコに殴りまくったり……。

 

 

「ぺっ! 二度とそのツラ見せんじゃないわよ! ……………大丈夫イッセー? あんな奴の言うことなんて気にしちゃ駄目よ?」

 

「いや元から気にしてないし、彼の言い分もわかるぞ……。

お前、確かに近いわ……色々と」

 

「こ、これが普通なのよ! 良いから気にしないこと! わかった!?」

 

「………」

 

 

 流石に引いてたイッセーには即座にニコニコしてるせいで余計ドン引きされるアクアだったり……。 

 しかしイッセーとドライグにとっては確かに騒がしくも穏やかな日々だった。

 故に――

 

 

「神は嫌いだ。呪った事はあるが祈った事なんて一度もありはしない。

けどだ、コイツは最初出会った時からよくわからねぇし神らしさもねぇ。

だから……俺以上に今を失ってるコイツに守られるのは俺のプライドが許さない」

 

 

 

 赤き龍帝は復讐とは違う理由で初めて力を開放する。

 

 

『どうせそこで間抜けな顔をしている女神共は知っているだろうが―――融合するぞイッセー』

 

「え、なんで……」

 

『所謂サービスってやつだ。

それに、俺ももう一度あの時の領域を体感したくてな』

 

「……はは。

ホント……最高だぜドライグ」

 

 

 本来の道から外れたからこそ掴んだ領域を。

 

 

「『オレはイッセーでもドライグでもない。

オレは――貴様等をぶちのめす者だ!」』

 

「ゆ、融合モード! あの最後の戦いの時に転生者を後一歩まで追い詰めた最強形態だわ!」

 

「め、目の前で見られるなんて! きゃ、キャメラを――カメラは!?」

 

「お、落ち着けよ駄女神二人……」

 

 

 

 

 

 

 

「『これであの世に送ってやる! ウルトラビッグバン・ドラゴン波ァァァッ!!!」』

 

 

 ミーハー女神達の前でみせるのだ。

 

 

「借りっぱなしは嫌なんで必ず返す。

まずはアクアの力を取り戻させるからな――ていうかそれしか責任の取り方がわからない」

 

「せ、責任!? そ、それはつまり――わ、わかったわ! 仕方ないから取らせてあげるわ! ……………す、末永くお願いします……!」

 

「末永く……? まあ良いや、それとエリスも――」

 

「うえっ!? そ、そんな……イッセーさんはとても欲張りさんなのですね……? あ、でもそれはそれでアリな気が……」

 

「は? なにもじもじして――」

 

「早速浮気!? 流石にふざけるんじゃないわよー!」

 

「いでっ!? な、なんだよ!? いでででで!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何時見ても気持ち悪いくらい仲が良いですねあの人たち……」

 

「うぅむ、独り身には入り込めないものを感じるぞ…」

 

「色々あるんだよ……色々と」

 

 

 女神の英雄に祝福が!? ……始まらない。

 

 

 




補足

本人達からしたら凄まじく微妙でしかないけど、とある界隈の女神達からはアイドル扱いされてた模様。


その2
全ステマックスどころか無限進化の余地があり。

大体ワンパンで敵を粉砕。

なんなら新たな魔王になれる。

それくらいのポテンシャルの男がずーっと始まりの町でのんきやってるらしい。


その3
駄女神一号が出し抜いたせいで二号が生成され、その二号が本主人公に道連れにされてしまったらしい。

だが本人は生で英雄さんと会えたので結果オーライとのこと。

……当然胸の『仕掛け』は初見で見抜かれたとか、それを聞いてた先輩に鼻で笑われて、取っ組み合いになったとかなんとか……

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