色々なIF集   作:超人類DX

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……的なそんな話


ファンキーな簪ちゃん

 

 

 

 時折夢を見る。

 まだ私達と出会う前の頃のイッセーくんの夢を。

 

 

 夢の中のイッセーくんはドライグ君だけが心の拠り所であった。

 

 そして二人だけで戦い続けた。

 

 

 

『ウォォラァァァッ!!!』

 

『ごはっ!?』

 

『くっ、増援を急がせろ!!』

 

 

 ギラギラとした目をして。

 深い憎悪と殺意を剥き出しに。

 

 

『ちまちまと増えやがって……! そんなんじゃ俺は止まらねぇぞオラァァァッ!!!』

 

『こ、こいつ……完全に頭がおかしくなっている……!』

 

『い、いい加減にしておけよ人間風情が……!』

 

 

 人ならざる存在を支配する存在への復讐の炎を燃やすその姿。

 

 

 

『お前等したっぱの首なんて数に入らないんだよ……!

さっさと退け―――このボケがァァァッ!!!』

 

 

 

 私達と出会ってからは見せたことのない、決して懐かない狂犬のような形相で敵を殺めていく――そんな夢。

 でも私はその夢の結果を知らない。

 

 何故なら何時もその夢は――

 

 

『はは、しつこいなぁ。

無駄だってまだわからないのかよ?』

 

 

 軽薄な、でも悪意の塊のようないやらしい笑みを浮かべながら、何人もの女と事をしている男と相対する所で途切れて目が覚めてしまうからだ。

 

 

『お前だけは、もう何があってもこの手で殺さなきゃ収まらないんだ……!

そうでなければ、お前に殺された父さんと母さんに顔向けができない…!』

 

『あの時点でお前の方がくたばってれば世界は平和だったんだがなぁ。

まあ? そのお陰で俺がこの世界の主人公になれた訳だし? こうやって皆と楽しく過ごしてるんだよ。

いい加減邪魔しないでくれるか? え?』

 

『このっ、ゲスがっ……!!

やるぞイッセー! このようなゲスに話す舌なぞ不要だ……!』

 

『ああ……地獄の底まで引きずり込んでやる―――■■■■!!!!』

 

 

 あの日の夜の出会いの直前の夢は……。

 

 きっと前にドライグ君から聞いた、私とイッセー君の間で育まれている目に見えない繋がりが、私にこんな夢を見せるのかな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自身の壁を乗り越える為の修行も大事だが、IS学園の生徒である以上、ISに関する勉学も忘れてはならない。

 

 

 

「そろそろ学年別のトーナメントが始まるけど、兵藤君は出場するの?」

 

「一応は。

ただ、今回の試合って2on2で試合するからペアとなる人を探すんだろ?」

 

「そうね。

最早兵藤君の人生のパートナーでもありそうなたっちゃんは他の生徒たちとの実力差の関係で出場できないし、誰か他の子を探さないといけないわね」

 

「やーねー黛ちゃんったら~! 人生のパートナーだなんて、そんな正直に言われると照れちゃうわ~」

 

「……軽い皮肉のつもりで言ったんだけどね」

 

 

 近々行われる学年別で開催されるタッグトーナメントに関する質問を、すっかり親しくなっていた薫子に問われたイッセーは、その薫子の軽い皮肉混じりの言葉に照れながらパシパシと隣に座っているイッセーの肩付近を叩く刀奈の頭をナチュラルに撫でつつ出場するつもりではあると話す。

 

 

「黛さんは出ないのか? 出るなら俺と組んで欲しいんだけど」

 

「私は出ないわよ? 取材あるし」

 

「だよなぁ……。

実はこの前から『楯無』が出ないと分かってたからクラスメートの人達に声はかけてみたんだけど……」

 

「断られたと?」

 

「そうなんだよ。

まあ、オマケみたいな感じで入ってきたよく知りもしない男となんて組みたくはないだろうから、仕方ないとは思うが……」

 

『………』

 

「いや、理由はそこじゃないと思うわよ?」

 

「へ?」

 

「~♪」

 

 

 実に生真面目ながらもズレたことを言うイッセーに薫子は、機嫌止さそうに頭を撫でられる刀奈を一瞥しつつ自分の方に視線を向けながらその頭を撫で続けるイッセーに言うが本人は気づいてはいなさそうだ。

 

 

(毎日毎日露骨じゃないにせよナチュラルにイチャつくのを見ていれば、誰だってたっちゃんに遠慮しちゃうわよ)

 

 

 だからこそ取材のネタには困らないのだがと薫子は敢えて指摘はせず、暫く泳がせるつもりで言葉を濁すのだった。 

 

 そしてその考えはある意味正解であった訳で……。

 

 

「失礼する。

兵藤は居るか?」

 

 

 一年一組の担任教師がやって来てイッセーを呼び出した事で……。

 

 

 

 

 

 

 何故か千冬に呼び出されたイッセーは、別に悪いことはしていないが、二人で話ができるという理由で生徒指導室へと連れてこられていた。

 そしてその生徒指導室でこんな話を告げられた。

 

 

「学園長からの提案なのだが、兵藤、お前はISの知識が殆ど無いままの状態で二学年としてこの学園に転校した」

 

「はぁ」

 

「お前の授業態度はお前の担任の先生や他の先生方にも聞いている。

実に真面目に受けていて、この前の小テストもいい結果だったのだろう?」

 

「まあ、教えてくれる子がめちゃ頭良い子なんで……」

 

 

 急に呼び出されたかと思えば、学年も違うのでほぼ関わりの薄い教師に褒められるイッセーは、ちょっと背中が痒くなる。

 

 

「お前が周りのレベルについていこうとする努力はわかっているつもりだ。

しかし実践に関してはやはり一年の差というものを感じているのではないか?」

 

「そりゃあまあ……」

 

 

 千冬の言葉に頷く。

 二年生として転校した体であるイッセーは、周りの二年生と比較しても知識や実践のレベルに一年の差があるは否定しようのない事実だった。

 だからこそ刀奈達に協力をして貰っているのだが、何故今更そんな事を一年生の担任である千冬から言われているのかがイッセーにはよくわからなず、訝しげな顔をしていると、千冬はここからが本題だと口を開く。

 

 

「まず聞くが、今回のトーナメントに出場する気はあるのか?」

 

「ありますけど……」

 

「よし、ではパートナーは既に見つけているのか?」

 

「いえ、まだですけど……」

 

 

 頼めば組んでくれそうな刀奈は、実力差の関係で今回のタッグトーナメントには出場不可な為、今のところは居ないと返すと、千冬は今回呼出した理由を話すのだった。

 

 

 

 

 

 

 更識簪の性格はコンプレックスという名の壁を乗り越え、姉と同じ領域への道を歩み始めた辺りから、どこかファンキーな性格になっていた。

 

 が、それは身内に対してのみの話であり、一年四組のいち生徒としての簪は大人しい眼鏡っ娘キャラで通している――――――自称だけど。

 

 

「………」

 

 

 親友の本音が一組所属故に話す相手が居ない簪は、休み時間の度に自前の小説を広げて、外界を遮断するポーズを取る。

 それはあくまでポーズであり、こうすることによって『私は静寂を愛する文学少女なんですけど? この孤独は自ら欲したものなんですけど?』という無言のアピールを示すことが出来た。

 

 

(ふっ……無口な眼鏡っ娘キャラを演じるもの辛いね)

 

 

 そうすることで大人しいボッチ眼鏡キャラ属性をより強固なものにできると信じて……。

 だがそれはあくまで簪が勝手にそう思っているだけの事であり、実情は全く異なる。

 

 

 

「ねーねー更識ちゃん聞いた!?」

 

「…………なに?」

 

 

 例えば、こうして文学少女気取りで本を読んでいる簪に対して、クラスメートの子達は普通に気安く話しかけてくる。

 そんなクラスメートに対して、簪は黙認眼鏡っ娘キャラを貫く為に少々無愛想な態度を取るのだが、クラスメートの子は気にせず話す。

 

 

「今度の学年別のタッグトーナメントって特例で二年生で三番目に起動した男子の人が一学年のトーナメントに出るみたいなんだって!」

 

「……………なんだって?」

 

 

 しつこいようだが、あくまでクールな眼鏡っ娘キャラを貫こうとしていた簪も、このクラスメートからもたらされた情報には、思わず揺らしたら速攻剥がれ落ちそうなクール眼鏡っ娘キャラの仮面がポロっと落としてしまう。

 

 

「その人って更識ちゃんのお姉さんの彼氏さんなんでしょう? だから更識ちゃんにも教えないとって思ってね!」

 

「なんと」

 

 

 実に屈託のない笑顔のクラスメートに、簪は何故かは知らないが自分の若干汚れていた心が浄化されていく気分になる。

 

 

「だからその人とタッグを組んで出場してみたら? 更識ちゃんってISに乗るの上手だし」

 

「NTRは私の趣味じゃない」

 

「はぇ?」

 

「……!? お、おほん! な、なんでもない。

か、考えておくよ……うん」

 

「???」

 

 

 うっかり仮面を落としていた仮面を慌てて付け直す簪。

 しかし四組の生徒さん達は皆知っているのだ。

 

 簪の性格が割りとファンキーだということを。

 そしてそこには触れずに、保護者な気分で生暖かくみていてあげていることを……。

 

 

(本音と一緒にドライグの籠手をペロペロてきるっていうのならアリだけど、流石に試合ではドライグの力を併用させるわけにはいかないだろうからなぁ。

あ、やべ、想像したらドライグをペロペロしたくなってきた……あー、早くドライグも実体化しないかなぁ……)

 

 

 様々な赤色の龍のイラストを書いていはニタニタしているドラゴンフェチなのも含めて、クラスメート達にはバレバレなのだ。

 

 

(あ、そう言えばあの眼帯属性さんはどうしてるかな? 後で本音に聞いてみよ)

 

 

 

 

 

 

 マコト絡みもあり、不必要な警戒心をイッセーに抱く一夏はその話を聞いた時から戦意を燃やした。

 

 

「つまり兵藤先輩と戦えるかもしれないって訳だな?」

 

「情報が本当だったらだけど……」

 

 

 ただの先輩としてなら悪い人ではないというのは一夏も承知しているものの、マコトと妙に仲が良いのだけは許容できないと常日頃から思っている故か、試合で戦えるかもしれないという話は実に一夏の持つ異常なまでの『向上心』を刺激し、思わず不敵な笑みを浮かべてしまう。

 

 

「ふっふっふ……」

 

「…………」

 

「二年生の兵藤さんは実際どの程度なのでしょうか?」

 

「一年分の経験差の関係で一年に混ざって試合に出る辺り、大した実力ではなさそうだが……専用機も無いと聞いたしな」

 

 

 不敵な笑みを浮かべる一夏と、その近くでイッセーの実力を考察し、話の内容からしてあまり高くはないと判断するセシリアや箒。

 

 事実その通りであり、イッセーのISの搭乗技術は決して高いとは言えない程度のレベルなのは間違いない。

 ただ、意外な程生真面目に練習はしていたりするので、全く動かせないという訳ではなく、相当加減されているとはいえ刀奈と数時間はやりあえる程度は動けたりはする。

 

 

(兵藤? 確かあのふざけた言動をする四組の更識と生身で訓練をしていた男の事か?)

 

 

 そんな一夏達の会話が耳に入った眼帯娘ことラウラは、兵藤なる者が誰なのかを思い出す。

 生身でIS同士の試合のような攻防をしていた男であると。

 

 

(……いや、私には関係ない。

いくら生身で少しはやれたとしてもISの技術は素人でしかも専用機もないからな。

それよりも織斑一夏をどうコテンパンにのしてやるかだ)

 

 

 しかし取るに足らないという判断をしたラウラは、とにかく棲ました態度の一夏をぶちのめしてやろうかと悶々と考えていると……。

 

 

「ん?」

 

 

 突然背後から肩を何者かに叩かれる。

 色々あってこのクラスでは軽くボッチ状態だったラウラは少し驚いてしまいつつ叩かれた方へと振り向き―――

 

 

「……………ふみゅ」

 

 むにっと人指し指がラウラの頬を突いていた。

 そして肩を叩いてきた人物は――

 

 

「やーい、また引っ掛かってくれて私は語尾に草が生えまくりだよ?」

 

 

 悪夢の眼鏡女……とラウラが内心呼び捨てていた四組の簪だった。

 

 

「き、貴様! な、何故ここに!?」

 

「お昼休みだから?」

 

 

 思わず飛び退く勢いで席を立つラウラに、周りの生徒が簪の存在を含めて何事だ? と視線を向ける中、簪は呑気な顔で答える。

 

 

 

「ひ、昼休みだからといって別のクラスの貴様が来る理由なぞ無いだろうが!?」

 

「理由ならあるんだなー?」

 

「な、ど、どんな理由だ!」

 

「どうせボッチ拗らせて孤高気取ってるという、私とキャラ被りも甚だしいアナタで遊ぼうと思ってさ?」

 

 

 ニコッと無駄に可愛らしい笑顔で言い切った簪に、先日散々おちょくられた挙げ句、盗撮の共犯にさせられた恨みがあったラウラは我を忘れて簪に飛びかかった。

 

 

 

「貴様ー!! 最初からキテレツな性格だと思っていたがもう許さん!」

 

 

 顔を真っ赤にしながら飛びかかるラウラだが、その拳は空振ってしまう。

 

 

「残念、それは残像だ」

 

「なっ!?」

 

 

 何故なら、一瞬の内にラウラの背後へと移動することでかわしたのだ。

 まるで瞬間移動のような速度にラウラのみならず、何となくみていた他の生徒達――一夏達を含めて驚く。

 

 しかし、そんな視線なぞまるで気にしていない簪はといえば、微妙な顔をしながら敢えて見ているだけの本音の視線を背に、背後を取ったラウラに手を伸ばし――

 

 

「ひゃ!? にゃ、にゃにを……!? や、やめ……あははは!! や、やめろ!?」

 

「眼帯属性VS眼鏡属性の戦いは終わらんのだよ……そーらこちょこちょー」

 

「あははははははー!! き、きしゃま! 本当に――はははははは!!」

 

 

 何時かドライグと対面した時に、本音と一緒にやってやろうと鍛えていた擽りテクでラウラを悶絶させるのだった。

 

 

「や、やめろぉ!! な、なんか変にだから! こ、これ以上は変になりゅから!」

 

「やめられない止まらない~ かーっぱえ◯せん♪」

 

「わ、わかった! わ、わたしの敗けで良いから……ほ、ほんとうに―――あぁっ!?!?!?」

 

『!?』

 

 

 そして悶絶させすぎた結果、何故かラウラは公衆の面前では出してはいけないような声を出しつつ、全身をびくびくと痙攣させ……。

 

 

「………あれ?」

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

『………………』

 

 昼休みの一組の教室内は一瞬にして非常に気まずい空気が流れるのであった。

 

 

「ぁ……ぅぅ……こ、これはなんだ……? 初めての感覚が……うぅ……お腹が熱い……」

 

「あのさ、かんちゃん……」

 

「わたし、また何かやっちゃいました?」

 

『………………』

 

 

 やらかした本人はすっとぼけた態度のまま。

 

 

 

「あ、そうそうボーデヴィッヒさん。

今度のトーナメントに出るつもりでまだ相手が見つかってないんだったら私と組まない? 噂によるとイッセーが一学年のトーナメントに出るらしいから、試合したいんだよね?」

 

「う、うん。わかった……」

 

「??? やけに素直だけどどうしたのさ?」

 

「そ、そんなことは……あう……その、私の顔を見ないでくれ……」

 

「????」

 

 

 

終わり

 

 

 

 

「すぴー……」

 

「………一応聞くけど、兵藤君は寝る時常にたっちゃんにそうしてるとか?」

 

「え、えーっと……」

 

「……。学園生徒会長、白昼堂々彼氏に抱き枕にされる……で今度の見出しは決定ね」

 

 

終わりったら終わり

 




補足

こうしてイッセーが参戦しましたとさ。
それにより一夏くんのやる気もある意味爆上がり。

マコト君、ハラハラ


その2
ボッチ眼鏡っ娘を気取ろうにも既にファンキーさがクラスメートにバレまくりなかんちゃん。

そしてそのファンキーさのせいで、いたいけな黒い兎さんが……。

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