まータイトル通りといいますか、『人妻キラー・一誠くん』の設定を一部継承してます。
人妻&年上キラー・一誠くんと元士郎くん
燃え尽き症候群……とでも言うべきなのか。
人生に於いて定めた目標を完了してしまえばこうもなるのかもしれない。
だからニートにでもなりたいとぼんやり思う様にもなるし、雑草に生まれ変わりたいと考える事があったり無かったりだ。
少なくとも俺はそう思ってたんだけどねー……。
「最近どーよ?」
「昨日も聞いたんだけど、その台詞」
「あー……そうだっけ?」
俺って人間は友達というものを上手に作れるタイプじゃない――って現実を知ったのは中1の頃だったか。
なので高校生になった今でも、まともに遊ぶ友達は皆無に近いののだけど、例外は居る。
それが今屋上で昼飯食ってる俺の横で、学食のパンをかじりながら、俺に倣ってボーッと雲が浮かぶ空を見上げてる男だ。
「結局悪魔人生ってどうなん?」
「結構楽しいぜ?
てか、自分から頼んで転生して貰ったんだから、楽しくないなんて思うわけ無いじゃん?」
「あー……そらそうだな。お前の同居人の身を守るためにだっけ?」
「そうそう、お前みたいに俺は強くねーからさ」
緩やかな風が俺と、隣に座る男の髪を靡かせる。
持ち込んだ昼飯も食べ終われば、何時もこうして予鈴が鳴るまでボーッとしている。
そして何時の間にやらつるむ様になった隣のコイツとの話の内容は極々普通なものだったりする。
「お前のこそどうなんだよ?
確か離婚したメイドさんと最近一緒に住んでるんだろ?」
「は?」
こんな腑抜けも良いとこになっちゃったというのに、何でコイツは前と変わらずこんな所で俺と飯なんて食ってんだろ? という野暮な事は聞くつもりは無く、ただただボーッとボーッとボーーーーーっとしながら今夜の飯って何だろ……とか考えていた俺に、隣に座る男は視線を空に向けながら俺にそう問うて来た。
一瞬、思わず視線を隣の男に向けそうになったが、考えてみたら悪魔なんて、普通聞いたらバカだと思われそうな種族に他人の為に転生した男の持つ情報ルートを考えたら納得出来たので、向けかけた視線を空に戻しながら、今も貧乏一人暮らしの俺かま住むオンボロ狭しなアパートでやらなくても良いのにせっせと家事をしてくれるメイドさんの事を考えながら口を開く。
「あの人は……まー……此方側でさ。
何でも元々外面だけで実の所互いに嫌ってたみたいなんだわ」
「え? あの人……じゃなくてあの方が?」
「うん、その証拠に子供が居ないだろ? そういう事だ」
メイドさんは悪魔達の間でもかなり名の通ったというか、ぶっちゃけ悪魔の長の一人の嫁さんだった。
故に、下っぱ転生悪魔のコイツからしたら名前と姿を見ただけでも驚きであり、更に言えば大恋愛の末結ばれましたという悪魔の根城界隈では常識的話なのが実は単なるプロパガンダだったとも聞けば、悪魔に転生してからまだまだ日の浅いコイツでも流石に驚く事実だったらしく、珍しく驚いた顔をしているが横目で伺うと見える。
「マジかー……。
ウチんとこの主さんから聞いた話と真逆だらけなんだけど」
「仲良しですとでも宣えば、良い宣伝文句にもなるとでも思ったんじゃねーの? あの人ってお前と一緒に居る人と同じで元々旧派だったらしいし」
「それは聞いたことあったわ。
そっかー……何だか微妙にショックなんだけど」
「まあ、所詮人間も悪魔も現実はそんなもんだろうさ……クソだぜクソ」
「だなー……ハァ」
鳥が鳴きながら三羽に固まって飛んでるのを何となく目だけで追いつつ、ちょっと口悪く言うと、男は自分の事じゃないのにがっくりと肩を落としていた。
コイツのこういう所は嫌いじゃない。
ド級のお人好しで、他人の為に命を平然と張れる。
口ではそう宣う奴は多いかもしれないが、実際本当に行動できる奴なんて人間じゃ殆ど居やしない。
それをコイツは、まだ悪魔に転生する前の人間だった頃から出来ていた。
根性はホントに大したもんだと俺は思っているし、だからこそこうして飯とか一緒に食ったり、時間があったら買い食いしながら帰ったりもする位の仲にもなれたんだ。
「あ、予鈴鳴ったぜ」
「だなー……くぁ……午後はお眠だわ」
そうこうしている内に昼休みの終了を告げる予鈴が校内に鳴り響き、まったりと手すりに背を預けながら座り込んでいて凝り固まった身体を万歳しながら解し、午後の授業は睡眠学習に費やそうと予定を立てる。
「俺は一応生徒会の役員になっちまったから睡眠学習してると何かと煩いんだよな……羨まし」
「安心しろ、お前の分までスヤスヤ寝てやるから、代わりに俺の分まで授業に励め……ケケケ」
「うっぜー顔すんなよ……ったく」
女子比率がまだまだ多いこの学園では、俺とコイツの二学年の代から共学化が始まったので、クラスも男子の数が女子比べて少ない。
故にボーッとしてても男子だからと変に群れる女子達に目を付けられる事も多くは無い。
まあ、俺のクラスの場合濃いキャラした男子二匹が居るお陰で平和そのものだったりするんだけど。
「あ、オカルト研究部の人達だわ!」
「キャー! リアス先輩よ!」
「姫島先輩に小猫ちゃん、それに木場くんもよ!」
それに一種の偶像みたいな存在も居るので、バンピーは空気になれるのもありがたい。
今も廊下の窓から大勢の女子やら男子が外から昇降口に向かって悠々と歩いてる集団に対して喚いてるし。
「おーおー、毎朝余計な仕事をくれるメンツが悠々と外歩いてんぜ」
「あー? ホントだ」
クラスが別々で、教室まで一緒に戻ってる最中に始まった何時ものイベントに、生徒会として何度も騒ぐミーハー共を取り締まってる身としてはウンザリするものがあるんだろう、窓の外に居るオカルト研究部の部員達に対して複雑な表情を浮かべている。
「綾瀬君もいるわ!」
「最近オカルト研究部に入ったって噂は本当だったのね」
「死ね和正!」
「非リアの敵だ!」
「あぁ、アレも最近入った奴か?」
「おう、何でも兵士の駒を全部使って転生したとか」
「ふーん」
歩く面子の最後尾に付く、色々と作りが間違えてる顔した、最近加入したとされる男子生徒を見ても女子は騒ぎ、男子は逆にブーイングをしているのを横目に、ますます面倒な仕事が増えたとウンザリしているコイツに内心『ごくろーさん』と労いつつ、騒ぐ塊を二人でスルーして通りすぎ、それぞれの教室の前で一旦別れる。
「今日も遊べねぇかも、生徒会の仕事絡みで」
「そっか……まぁ遊んでばかりも良くないし、良いんじゃねーの?」
「お前が言うと説得力に欠けるぜ、じゃな一誠」
「おーう、頑張れよ元士郎」
互いに軽口を叩き合いながら、俺は睡眠学習を。
コイツは面子があるせいでド真面目に授業を。
これが目的果たして燃え尽き症候群気味である俺、兵藤一誠と、昔の俺みたいと誰かに言われてる真っ直ぐ男、匙元士郎の昼休み風景だ。
彼女は今、これまでの不運だった人生をチャラにしてもお釣りが来るくらいの幸福に満ちていた。
数ある分身を蹴落とし、後継者と言われている人間の少年の傍でお世話をする。
これ程に満ち足りた人生は、種族としての長い生で一度も無かった。
故に、プロパガンダの的にされていた場所から堂々と消え、人間界の――それもみすぼらしいボロ家に住むことになろうとも彼女は全然よかった。
「ただいまーっす」
「おかえりなさいませ一誠様」
だってこの家には、彼が帰ってくるから。
過去の柵を全部片付け、ちょっとした燃え尽き症候群になってて死んだ魚みたいな目をしてようとも、彼女はそれがどうしたとばかりに、のそのそと靴を脱いで学生の制服の上着を脱ごうとする一誠のお手伝いをしながら、実に熱っぽい視線を送る。
「お夕飯になされますか? それともお風呂へ?」
「あー……じゃあ風呂入ります」
兵藤一誠。
無限に進化をし続けるという、とある人外と同じ領域に生息するイレギュラーにより覚醒した人外は、いそいそと制服をハンガーに掛けている彼女にそう告げ、のそのそと浴室へと入っていく。
「一誠様のYシャツ……」
それを見届けた銀髪の女性は、シャワーの水音を耳にして確かに一誠はお風呂タイムだなと確認すると、洗濯籠に放り込まれている、一誠が今さっきまで着ていた白いYシャツを失敬し、自身が着ている薄手のセーターの上から羽織って頬を紅潮させ始める。
「あは……あはは……♪」
とある人外の分身に位置する彼女は、分身では無く後継者と呼ばれる一誠少年を、彼がまだ幼き頃に一度拝見し、その時キュン死する事により執着し、同じく一誠の同年代とも云うべき人外分身ライバルを蹴散らし、晴れて従者として傍らに居れる権利を獲た。
一誠も当初は『いやアンタ旦那さん居るのに……』と傍らに置くことを拒否しようとしたが、その旦那が困ったことに奥さんである彼女を嫌い、逆にとある人外――つまり一誠の師である少女におかしなレベルで執着して蔑ろにしていたので、結局は傍らに居ることに同意した訳だが……。
「…………。俺のYシャツで何を……」
「あ……」
一誠という相手に無理矢理周りに言われて結婚させられても今日まで守ってきた純潔を捧げる……と歳にすればかなりの年下である一誠に対して大真面目に言った彼女は――傍らに居れるせいなのか、かなりもて余しており、最近はよく一誠の脱いだ服を失敬しては色々と発散しようとする始末だ。
この時も時間を忘れて失敬したYシャツでハァハァとしていた彼女は、何とも言えない顔した風呂上がりの一誠に見られてしまい、微妙に気まずい気持ちに――
「申し訳ございません、ちょっと魔が刺しました」
「あ、はい」
という事も特に無く、妙にキリッとした表情でそれだけを言うと、一誠の為に用意した夕飯を出そうとYシャツを羽織ったままいそいそと台所へと入るのだった。
「ニートになりそう……」
結局自身が風呂に入るまで一誠のYシャツを羽織ったままだった彼女ことグレイフィアと夕飯を済ませた後、流石に寝るにはまだ時間じゃないこともあって居間でダラダラとしながら社会不適合者バリバリの台詞を口にしていた。
この時点で人としてダメすぎるのだが、そんな一誠の台詞とだらけた態度にもグレイフィアは笑みを溢すと、ゴロゴロとする一誠の傍に座り、ポンポンと自身の膝を叩きながら口を開く。
「どうぞ一誠様」
膝枕をして差し上げましょう……というアクションであり、ポンポンと膝を叩きながら微笑むグレイフィアに対して一誠も『断ると泣きそうな顔するかならなー……』と、どうであれまだ人様の嫁さんだという事もあって微妙に遠慮する気持ちを孕みつつも、ゴロゴロと転がりながらグレイフィアの膝に頭を乗せる。
「どうですか、一誠様?」
「あー……うー……柔っこいっすね」
そこ道行けばほぼ間違いなく振り向かれる程の美しい容姿と女性として文句無い身体つきをするグレイフィアに膝枕をされる一誠は、彼女からの質問にボーッとした顔で目を合わせながら答える。
すると案の定というか、最初の再会と傍らに居ることで決定したその日から、色々なタガでも外れてしまったのか、一誠に対して異常な情念を向けまくるグレイフィアは、今の言葉に対して感極まりでもしたのか、間髪いれずに膝枕していた体勢から、一誠を押し倒す様な体勢へと変更し、覚えたての中学生カップル宜しくに一誠の唇を貪るように重ねてはちょっと離すを繰り返し始める。
「ちょ……!? んむぐ……!」
「ハァ……♪ はしたない駄目下僕で申し訳ございません一誠様……! ああ……一誠様……!」
燃え尽き症候群でヘロヘロになったから何だ。
どんな状況だろうと自分は彼の為に……。
人外、安心院なじみの分身でもある前に持て余しの人妻メイドであるグレイフィアは、年下の少年を愛しそうにただただ襲うのであった。
ちなみに……。
「今日一誠から聞いたんすけど、やっぱりグレイフィア様だったみたいっす」
「やっぱりそうだったのね。
アレだけサーゼクスを嫌悪してたのに結婚する事になったと昔聞いた時から変だとは思ってましたが……」
「プロパガンダにされたって事っすね。
ちょっとガッカリしましたわ」
「まあもう……今の私は旧派も現派も関係ない部外者にだし、気にするつもりはないですけど……」
一誠が住むのとほぼ同グレードのとあるアパートの一室では、とある原因で両親を喪った一誠の友達の元士郎少年が住んでおり、そこには金髪で褐色肌の女性が元士郎少年を膝枕をしながら会話をしていた。
「部外者だけど監視はしっかり付く。
カテレアさんも難儀っすよね」
「ええ……まあでも、元士郎と暮らすのは楽しいですし、全然気にしませんけどね……ふふっ」
「わーい、ドキっとしちゃったぜー」
偶然の出会いにより、両親を喪った元士郎が何よりも優先して守ると誓った……旧魔王の血族者と共に居る。
これが元士郎が悪魔に転生する事になった理由であった。
「元士郎……何時もありがとう」
「やめてくださいよ、別に俺が好きでやってる事ですから」
匙元士郎。
駒王学園生徒会役員・シトリー眷属兵士
備考……身勝手な存在に両親を奪われ、その後出会った人外の後継者と傷付いた旧魔王の血族者との絆により覚醒した男。
「それでもよ。
……。良い歳してアナタの言葉に本気にしちゃってるけど」
「俺はそのつもりで言ったんですけどね……やっぱまだまだ餓鬼っすかね俺?」
「いえ……アナタの事は大好きよ」
備考……守りし者の心を持つ暗黒騎士
補足
まあ、人妻ムラムラメイドさんはこんな感じとして……。
匙きゅんは……まあ、最近の本編展開を引っ張った感じです。
その2
目的が達成したのでちょっとばかり燃え尽き症候群となってる一誠くん。
そして両親を喪った匙きゅんもまた男だからと、一誠を陥れた奴にやられました。
まあ、もう仇は覚醒してから一緒になって討ちましたけどね。