織斑一夏と神崎マコトのクラスに転校生が二人も来た。
しかも片方は男子だった……という話を本音から聞いたイッセーは、その後部屋割りの変更の為に一年生の教室に行ってみたところ、確かに転校生と思われる金髪の外国人の生徒は男子の格好をしていた。
しかしどうやらこの生徒も訳ありだというのが、マコトとの会話の中に感じられたものの、イッセー本人は取り敢えず学年も違うし、関わることも薄いだろうと考えていた。
「すいませんねぇ、わざわざご足労頂いて?
まあ正直不満はちょいとありますけど、マコトは俺と同室のままなのでー?」
「あ、おう……。そりゃあよかった……な?」
「やめろっての一夏! す、すいません先輩……」
(その不満って僕の事……?)
自分の目標はあくまでも、白龍皇へのリベンジなのだから。
維持ではなく、進化の為のトレーニングを再開することになったイッセーだが、様々な障害は多い。
まずIS学園では全力でのトレーニングが行えない。
イッセーにとっての全力とはドライグ――つまり赤龍帝と己の気質を一体化させた領域による戦闘スタイルである為、この学園でそのスタイルを解放してしまうと嫌でも一般人に見られてドン引きされるし、なにより全力状態で自分と張り合える知り合いが居ないのだ。
元の世界の場合はある意味トレーニング相手は向こうから殺しに来る的な意味合いで困らなかったが、この世界には存在しない。
それは良いことではあるのだが、進化の壁を乗り越えるともなれば地味に困るものでもあった。
故に断腸の思いではあったが、イッセーはある事を胸に結局は同室のままであった刀奈にある事を頼む。
「俺は確かにある程度は『こっち側』の領域を教えたこともあった。
だけどここから先に進むとなれば……人であることを辞める領域に進むことになってしまう」
ここから先へは一人――否、自分とドライグだけでは到達することができない領域になる。
故に共に高め合う真のパートナーが必要だと。
「それは人という種そのものの在り方に逆らうことになるし、世界の在り方にも中指を突き立てることになる。
そして一度進んだら最期――もう二度と普通には戻ることなんてできない。
それを俺は分かっている。けど分かった上で頼みたい――いや、来て欲しい」
人の限界を越えた存在になることを。
普通ではいられなくなることを。
今までぼかされていたイッセーから始めて求められた刀奈は、もっと早くに言ってくれてても返事は変わらなかったのにと、少し不満げに言うが、断る等はあり得なかった。
これで漸く、同じ場所に立てるのだから。
更識簪は実にもどかしい気分ばかりである。
人の領域を超越した少年の存在を知った今、自分が過去に抱えていたコンプレックスはどこかに吹いて消し飛んだ事で、大人しそうな見た目を裏切るように色々とハジけた性格へとなっていった彼女は、とにかく実の姉と人を越えてる少年のヘタレっぷりが実にもどかしい。
「そっか、遂に『全部』をお姉ちゃんと共有することにしたんだね?」
「ああ、だけどそれは人であること――いや、普通に生きることを辞めてしまう事になってしまう。
それを言った上でもあの子は構わないと言ってくれたよ」
「そりゃそうでしょ。
で? 分かってると思うけど、私達にも教えてくれるんでしょうね?」
「は?」
「は? じゃないでしょうが。
なに二人だけで勝手にもっと先に行こうとしてるわけ? 言っとくけど、私達もついていくつもりだから」
もどかしいからこそ、放っておくと何時までも進展しないのは目に見えていたので、簪は二人のヘタレの尻をひっぱたいてやる事にした。
その為には二人が立つ領域に立たなければならない。立たなければ近くでニヤニヤとおちょくりながら見ることなんてできない。
「妹の私がお姉ちゃんよりも早く老けて死ぬなんて嫌だし、ドライグに老けた私なんて見せたくないもん」
『あ? なんだそれは? 何故俺……?』
「その内ドライグを自由にしてやりたいとイッセーが前に言っていたでしょ? その話には私達は賛成だし、やっぱり実物のドライグを見たいじゃない? で、もしドライグが自由になれたらめっちゃ『よしよし』とかしてあげたいし」
『俺は犬やら猫じゃないんだぞ……』
何より、声は渋い癖に下手な人間より人間臭い龍の姿をこの目で見るまで、そして向かい合う為。
「だってしょーがないじゃーん、声は渋いのになーんかマダオっぽいし、そのギャップがたまんないんだよねぇ?」
『…………』
「よかったなドライグ、ちょいと変わってるけど懐かれてるぞ?」
『素直に喜べるかこんなの……。しかもコイツは最期に出会したメスのガキの姿だったオーフィスに声が似すぎていて複雑すぎる』
「む、私を脱落した雑魚龍と一緒にしないで頂きたいねドライグ? なんなら今この籠手状態でなでなでしちゃうよ?」
『ヤメロ』
振り切った更識簪はあらゆる意味で誰よりも自由奔放なのかもしれない。
織斑一夏は主人公である。
が、勿論本人にそのような自覚はなく、偶々男なのにIS動かしてしまったが為に女子だらけの学校に入学することになったとか、土下座してまで同じ高校を受験して貰った親友と離れ離れになるのが嫌すぎて、またしても土下座をしてその親友にISに触れて貰ったら動かせたので一緒に入学することになれてハッピーハッピーになれたりと、彼はそこそこの幸運に守られている自覚は、当たり前だけどない。
あるのはただ、とにかく親友と楽しく学校生活さえ送れたらそれで良いし、それ以外なぞ不要………というある意味清々しい思考回路だけである。
「ボーデヴィッヒさんは、あれからずっと親の仇の様な目で一夏さんを睨んでいますわね」
「あんな真似をされたというのに、お前は何も言い返さないのか?」
「何がだ? 別にどうでも良いだろ。
聞けば千冬姉フリークらしいし、千冬姉が有名になるにつれて何度もそういった事はあったんだ。
一々そんなものを気にしてたら織斑千冬の弟なんてやってられないっての」
だから新たな転校生二人(片方は男子)が来たその日、もう片方の銀髪眼帯の少女にビンタされた挙げ句、『私は認めない』的な発言をされても一夏は一切動じなかったばかりか、既に過去の事だと水に流している。
「俺は俺の人生に関係のない奴に構ってやる程暇じゃない」
「「…………」」
己の歩く道の邪魔をするのならとことん排除するが、そうでなければわざわざ相手にはしない。
「一夏。お前……」
「ん、なんだよ箒?」
「………いや」
皮肉な事にその考え方は、幼馴染みである箒が今も複雑な感情を持つ『姉』に似通っていた。
その姉も自分にとって『そう』であるか『無い』かで判断し、無いと判断する存在への関心がとことん無い。
自分以上にあの姉と会っていなかった筈なのに、どこか姉のような雰囲気を醸し出す想い人に、箒は一抹の不安を感じるのだった。
「さてと、鈴にも後で言うが、今日も放課後になったらトレーニングに付き合ってくれよな箒、セシリア?」
「あ、ああ……」
「最近は張り切っていますわね……?」
「……。あの無人機――いや、ISかどうかもわからない白い奴に何もできず、空から現れた赤い奴とどこかに行ってしまったのをただ見ているしかできなかった俺は間違いなく弱い。
何故だかわからないけど、俺はあの白いのと赤いのにもう一度会う気がするんだ。
その時また何もできずに見ているだけなんて嫌だからな……」
「「……」」
だが同時に先日出現した赤い鎧騎士と白い鎧騎士の戦いをほんの少しだけ見た一夏の精神は変わりつつある。
その精神によって若干二名程近くで聞いていた女子のハートをキュンキュンさせている自覚は全くない一夏は、再び遭遇する気がする二体の鎧騎士に負けたくないという感情を胸に、自身を高める決意をするのだ。
「ふふふ、ダサい姿なんてマコトに見せたくないしな?」
「「………」」
キュンキュンさせた直後の発言で台無しになっている自覚もなく……。
「……その神崎さんは最近二年の兵藤先輩さんと何やらコソコソしているようですがね?」
「……………………………………あ?」
「う!? あ、いや……コソコソというのは語弊がありましたわ。
ご、ごめんなさい……」
「一夏お前な……アイツは男なんだぞ? それにあの兵藤とかいう先輩も聞いている限りはそんなに悪い人ではないようだし、何を疑っているのかは知らんが――」
「見てりゃあわかるよ! マコトがあの先輩に懐いてるのもな! だけど……だけどな! マコトの一番の親友は俺なんだ! マコトとお風呂入るのも親友の俺だけだし! マコトに肩叩きしてあげるのも俺だけだ!!」
「わ、わかりましたからそんな大声を出さないでください!」
「それであの、イッセー先輩に伝えて欲しいことが……」
「それは構わないけど、さっきからおりむーが大騒ぎしちゃってるから早くなんとかしてあげて欲しいかなー?」
「う、うん。ごめん……」
転校生の片割れことラウラ・ボーデヴィッヒは凄まじくイライラしていた。
敬愛する教官こと千冬を再び己が所属する部隊に呼び戻す為に転校してきた学校の温い環境もそうだが、何より一番に気にくわないのは千冬の弟である一夏の態度だ。
認めないと言ってやったのに『それがなんだ?』とまるで自分なぞ眼中にない態度を崩さず、殺気を飛ばしても無反応。
自分が否定したい存在から相手にされないものほど屈辱的なものなどなく、ラウラは日増しに苛立ちを増幅させていく。
「クソ……!」
苛立ちがまるで収まらない。
すっかり毎日がストレスとなっていたラウラは、とてもではないが訓練をする気にもならず、無意味に校舎の外を歩く。
何か憂さ晴らしが出きるものが無いかと、いっそのこと一夏の訓練の場に割り込んで力の差でも教えてやるべきかと。
そんな事を悶々としながら考えるラウラだったが、何かに気づいて足を止め、目を凝らして見る。
「………?」
普段は人通りも少ない人工に植えられた木々に覆われた地区に見える数人の人影。
こんな場所で一体何をしているのかと、ラウラはよーく見てみれば……。
「ぬぅん!!」
「あぶなっ――ぎょへー!?」
「ウォラ!!」
「ちょ、待っ――ぎへ!?」
それは生身同士の戦闘――というよりは喧嘩のようなそれだった。
「ぐぐ……相変わらず鬼畜だけどまだまだ……!」
「少しはタフさを身に付けたようだ……な!」
「ギエピー!?」
「なんだあれは?」
ちょっとした訓練か? と最初はラウラも思った。
しかし訓練というにはちょっと荒々しすぎるし、見覚えのない男子生徒が、水色髪のこれまた見覚えのない生徒に向かって、引っこ抜いたと思われる巨木をぶん投げている様はギャグがなにかにしか見えないし、それを真正面から受けても立ち上がる方も意味がわからないし、まるでそこだけ別世界のような光景にラウラは思わず立ち尽くしながら見つめていた。
『イッセー、カンザシ』
「わかってる。だけどただ身体動かしてるだけだから怪しまれる要素はないだろ?」
「いてて……お姉ちゃんが虚さんに怒られて生徒会の業務をさせられている合間にトレーニングを頼んだのは私だけど、一年半前の私だったら死んでたよ……」
固そうな木の棒で顔面をホームランでも打つかのようなフルスイングで殴打されて吹っ飛ばされても、ちょっと鼻血を出すだけで起き上がる簪のタフというか異常さを見られていると、ドライグに言われても続行するイッセー。
そのドライグの存在に気づかず、起き上がっては分身でもする勢いの速度でイッセーに殴りかかっては返り討ちに遭う簪を見ているラウラ。
「つーか誰だあの子? 簪のクラスメートか?」
「いや、本音が言ってた転校生の片割れなんじゃないの? 聞いた話じゃ織斑千冬が教官をしていた隊に所属していたとかなんとか……」
「へー……っと、そろそろ時間だな」
「ちぇ、結局一発も当てられなかったか……。あー、頭クラクラする~」
結局途中から最後までずっと見ていたラウラは、頭からヤバイ量の血を流してもヘラヘラしている簪にドン引きしつつも、異次元の光景に目を奪われてしまっていた。
「せっかくお姉ちゃんとイッセーの戦闘スタイルを見て閃いたスタイルだったんだけどなぁ?」
「いや、良い感じだと思ったぞ? 結構ヒヤッとした所もあったし」
「あ、ホント? それならもう少し模索してみようかな」
(っ!? あ、あの女……。頭の傷が塞がって出血が止まっているのか!?)
なによりボコボコにされた簪の傷が時間と共に異質な速度で治癒されていく様は異質以外の何物でもない。
「先に戻っててよ。
ちょっと復習してから戻りたいから」
「んぉ、じゃああの眼帯っ娘ちゃんの事も頼めるか?」
「うん。
まあどうせ何言っても信じられる話じゃないから適当に煙に巻いておく」
温い空気だと思っていた学園の中に、明らかにおかしなのが存在していたと知ったラウラは、先に消えた男子を目で追いつつ、一人その場に残って型のような演舞をしている簪を見つめる。
「な、なんなんだアイツらは……」
何となく近づくのはやめるべきだし、なんなら今見た光景も忘れるべきなのかもしれないと思うラウラ。
しかし確実に自分の知らぬ未知の領域であると肌で感じてしまっているせいなのか、その場から立ち去ることができない。
「やっぱりISを神器に見立てて、自分の
うーん、となると最近サボり気味のIS開発を再開しようかなぁ……」
「……………」
ぶつぶつと何かを言いながら、イッセーが引っこ抜いて武器にしていた大木を元の場所に植え直して土をせっせと被せているという、あまりにもシュールすぎる光景にラウラは現実なのかとすら疑い始めたその時だった。
「で、アナタは何時まで覗き見してるのさ? あ、いや覗き見じゃなくてガン見してるの?」
「う……」
とうとうその女子生徒――というか簪と目が合ったラウラは特に威圧をされた訳でもないのに圧されるように半歩下がる。
「む……眼帯萌えでも狙ってるの? しかも体型もロリロリ……なんてこった、IS学園の生徒が属性増し増しだらけなせいで眼鏡っ娘属性なんて印象が薄すぎる」
「も、もえ?」
そんなラウラに対して簪は外していた眼鏡をかけ直しながら、ラウラの眼帯属性に対しての言及という、どこかズレている発言。
コンプレックスから解放された簪は、一々言動がハジけているのだ。
「そろそろ夕御飯の時間だし、アナタも戻ったらどう?」
「あ、いや……そ、それより貴様はさっきの男となにを?」
「なにって、修行だけど? 悟○だって最初は亀○人の所でクリ○ンと修行してたでしょ? あれと同じ」
「は? へ??」
「む、伝わらない?」
殆ど簪の言っている意味がわからないが、どうやら修行なのは間違いない。
しかしその中身がISのそれとはまるで無関係だし、なんでこんな所でチンピラの喧嘩みたいな事をしていたのかがラウラには理解ができない。
「今のはISの技術とは無関係にしか思えないのだが……」
あまりにも原始的なそれに対する質問に、簪はアメリカンなノリでわざとらしく肩をすくめる。
その仕草にラウラは若干イラッとなる。
「ISの技術とは無関係? まーったく、素人はこれだから困るんだよねー? まあ、キミの中ではそうなんだろうね? キミん中では?」
「な、なんだその言い方は? 私を素人呼ばわりするんじゃない!」
「はいはいはい、ワロスワロス。
思ってた通りに短気なんだねアナタは? でも私には威嚇してるチワワにしか思えないから怒るだけ疲れるよ? ほーらスマイルスマイルー」
「黙れ!」
完全におちょくってるとしか思えない簪の言動に、ぷっつんしてしまったラウラが掴み掛かろうとするが、簪はいともたやすく虚を切らせ、背後に回り込みながら手を叩く。
「き、貴様っ!」
「鬼さんこちら~♪ 手の鳴る方へ~♪」
「も、もう許さん!」
「なっはっはっはっ。
やはり時代は眼鏡萌えなのだよ。最近は『めぐ○ん』とかいうアニメキャラのせいで中二眼帯キャラに台頭されてるけど、所詮は眼鏡属性には叶わんのだ!」
「わ、わけのわからんことを……!!」
「いやぁ、ヘタレなお姉ちゃんやイッセーを煽るのも楽しいけど、キミみたいな直情型をおちょくるのも中々楽しいよ。
ほーらどうしたどうした? そんなスローじゃ永遠に私を殴れないよ?」
「うがー!!」
やはり姉妹なのか、他人に対するおちょくり方が刀奈と凄まじく似ている簪は、突進してくるラウラを時には足をひっかけてわざと転ばしたり、背後に回って肩を叩き、振り向いた時に人差し指でほっぺを突いたりと、ラウラで遊ぶのだった。
「ぜぇ! ぜぇ! ぜぇ!! な、なんなんだお前は……!?」
「通りすがりの妹キャラだ、覚えておけ!」
皮肉な事に、感じていたストレスがラウラの中で今だけ消し飛んでいることに気づかず。
「おっと、こんな時間だしそろそろイッセーとお姉ちゃんの様子を見に行かないと……」
「逃がすか! 貴様は必ず一発殴らんと私の気が――」
「あ、それはまた今度にしてよ?」
「黙れぇ!!」
「おっと……。
しかたない、じゃあ特別にアナタも一緒に来て見なよ? ヘタレ同士のヘタレバトルが見られるよ?」
「なっ!? お、おい離せ!!」
簪ワールドに引きずり込まれていくのであった。
「かんちゃん、なんでウチのクラスの転校生と一緒なの?」
「それが聞くも涙、語るも涙の話せば長い物語で――」
「三行以内で」
「生徒会のお仕事をお姉ちゃんがやってる最中に、イッセーと修行してたら彼女が見てた。
適当に遊んでたらまだ帰りたくないって言われた。
だからつれてきた」
「……どこまでノリが軽くなるんですか簪お嬢様は」
「えーっとごめんねー? あまりかんちゃんの言動は真に受けない方が良いよ?」
「ぬ……い、いや私は。
それよりなにをしているんだ貴様らは?」
「え? だからイッセーとうちのお姉ちゃんの中学生の付き合いたてみたいなヘタレなやり取りを見守るんだけど」
「な、なんだそれは?」
「見てればわかるよ――」
『あー、虚ちゃんに見張られてたから久しぶりにちゃんと生徒会の業務をやったのだけど、肩とか腰が凝っちゃったわ……。
それでその……ちょっとマッサージをして貰いたいなぁと』
『へ? あ、おう……』
「よし! 第一関門突破! ナイスアシストだったよ虚さん!」
「生徒会業務が溜まっていたのは本当でしたからね……」
「大丈夫かなぁ……」
「な、なんでこんな盗撮じみたことを……」
『んっ……あっ……♪』
『………………』
「よしよし、わざとエロい声を出せと釘を刺しておいて正解だったね」
「しかしイッセー君はお嬢様が声を出す度に自分の脇腹を思いきり殴って煩悩を消そうとしています」
「生真面目だよねー、そういうとこ……」
「くだらん」
『あ、あの……もう少し腰の下の部分を……』
『は、はぁ!? い、いや……そこは……』
『べ、別に深い意味はないのよ? 本当に……』
『お、おう……』
「よーっし! よーし!! ヘタレなお姉ちゃんにしてはナイスだね! 後はイッセーの理性を完全に消し飛ばせればゴールインじゃあ!」
「それはどうなのでしょうか? どちらも空前絶後のヘタレですからね……」
「楽しそうだねかんちゃん……」
「………」
『お、終わったぞ』
『あ、ありがと……』
『『…………』』
「だからそこで互いに止まるなよ!? そこから発展させろや!?」
「ほらやっぱり――」
「ええい、なんだ貴様等!!? こっちは見たくもないものを見せられたと思ったらそれで終わりか!? つまらん! つまらんぞ!!」
「え、ボーデヴィッヒさん?」
「なんだろ、最近誰かに見られてる気がする……」
「私もそんな気がするわ……。
それでその……この前の夢の件だけど」
「い、いやいやいや……絶対無理だし刀奈とそんな事したら何をしでかすか俺でもわからないし……」
「でも一回は……」
「ま、まあその内な? あはは……」
終わり
補足
皮肉にも束さんに凄まじく思考回路が近い一夏くん。
しかも箒さんも千冬さんも知らないが、実は彼と束さんは――――
その2
コンプレックス乗り越えたら色々と軽くなりすぎたかんちゃん。
よくわからんメタ発言も平気でするらしい。