色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

原作の話しにはほぼ関わらずにのほほんばっかしとる。


飛翔せんとする少女

 

 

 

 一番目と二番目―――特に一番目の男性起動者たる織斑一夏があまりにも有名になりすぎたせいで、二番目はまだともかくとして三番目の起動者に関してはニュース報道すら殆どなかったせいでかなり影が薄く、実の所一学年の者達はそもそもの存在を忘れている者の方が多い程だったりする。

 

 しかしながら先日その三番目の起動者が一夏――というよりは借りっぱなしだったボールペンをただ返すつもりで二番目の起動者である神崎マコトの元へと現れたという情報が牛の交尾よりも早く一学年の女子達の間に広がってしまう。

 

 

「本当に居たんだね、三番目の人」

 

「織斑君と神崎ちゃんのお部屋に来たって何人かの目撃情報もあるみたいだし、ガセではないね間違いなく」

 

「あー、惜しい事したなぁ。

どういう人か見たことなかったし気になっちゃうね!」

 

 

 地味に存在そのものが忘れられかけていた三番目の起動者の噂でクラスは持ちきりである中、同じく先日その存在を初めて知った一夏の機嫌は珍しいまでに悪い。

 

 

「…………」

 

「本当にその三番目の起動者とやらが部屋に来たのか?」

 

「学年が違うという話はチラリと聞いたことはありましたが……」

 

 

 微妙に不機嫌な一夏は何も語らないので、同部屋であるマコトに話を聞いてみるセシリアと箒にマコトは曖昧にうなずいていると、本当に珍しい事に話を聞いていた一夏がギロリとセシリアと箒を見やりながら口を開く。

 

 

「マコトにその話をさせるのはやめてくれないか? 聞いてるだけでムカムカしてくる」

 

「い、一夏さん?」

 

「ど、どうしたんだお前? 朝からずっとそんな感じだが……」

 

 

 流石に戸惑う箒とセシリアにふんと鼻を鳴らす一夏はそれ以上は何も語らずムスッとした表情に戻り、マコトはただただ困った顔をする。

 

 

「マコト、今度からはあの人に一人で会いに行くのはやめたほうが良いぞ」

 

「な、何で?」

 

「俺の勘が言ってるんだ。

マコトとあの人を二人にしたらマコトの貞操が危な――」

 

「そんな事があるわけないだろ!?」

 

 

 本人がもし目の前で聞いていたら、さぞ『養豚場の豚でも見るような顔』でもしそうな事を真面目くさった顔で言う一夏にマコトは心底自分の姿に嫌悪感を募らせていくのだった。

 

 

「あーらら、いーくんも大変だー?」

 

 

 

 そんな様子を遠くから見ていた本音に気づかずに。

 

 

 

 

 凄まじく要らぬ不信感を持たれているとは全く知らない影の薄い三番目の起動者ことイッセーはといえば、割りとノリは良いクラスメート達のお陰でそこそこ順応していたり。

 それには理由があり、イッセー自身が学生という経験がなこともあってか、受ける授業の全てを生真面目に受けているのと、なによりも同クラスでもある生徒会長こと更識楯無とのやり取りが――こう、気色悪いレベルで一々近いのだ。

 

 

「もー! 一年生の男子君達と初対談するんだったら私に一声かけてくれたら記事にできたのにー!」

 

「単に借りてたものを返しに行っただけだからな……」

 

「それに取材してたらしてたで、記事にできないような事実だけ知る羽目になってたと思うわよ?」

 

「む、たっちゃんはそうやってなんでもかんでも聞けるから良いけど、ジャーナリストを目指す身としては気になっちゃうのよ」

 

 

 同クラスの黛薫子から不満そうな声を貰っているイッセーは、隣の席でもある刀奈と共にある程度の事は話しておく。

 そうでなければ、あること無いことを書かれそうで怖いので。

 

 

「まあ、その件はその内また起こるでしょうから後にするにして、今私が書こうと思う記事なアナタ達のその――なんかもう逆に腹立ってくるくらいの距離感の近さの秘密についてね」

 

「え、距離感が近いって、そう思えるのかしら?」

 

「男子経験が殆どないような人たちばっかりなこのIS学園では、アナタ達のその――なんかもうコーヒー豆をそのまま噛りたくなりそうなやり取りは貴重だし不思議なのよ」

 

「あーらら、ですってよイッセー君? 困っちゃうねー?」

 

「やっぱり近いのか俺等の距離感。

いやその……人との距離感の詰め方が微妙にわかんないままここまできちゃってたもんだからこれが普通だと思ってたが……」

 

「近いどころか、デキてると言われた所でアナタ達のやり取りを知ってる人たちからしたら寧ろ納得しかないわね」

 

「まーまー、実際は当たらずも遠からずだしー?」

 

 

 誰に対してのものなのか、ドヤァとした顔をする刀奈に、改めて一年生の頃からクラスメートだった生徒達は驚く。

 確かに一年生の頃から更識楯無とは人を喰ったような性格をしていたのだが、時折彼女は捨てられた子犬のような寂しそうな表情を浮かべることもあったわけで。

 

 

「あーあー、今日の取材はやめだわやめ。

胸焼けが酷くてやってらんないわ」

 

 

 今現在それが全く無いところを察するに、その理由が彼にあるのだというのは黛薫子だけではなくクラスメート達もわかってしまうくらい、今の更識楯無は絶好調にみえるのだった。

 

 

 

 

 

 クラス代表戦があるとかないとか、一夏とマコトの隣のクラスに知り合いの転校生がやって来ていた等などというお話とはまるで無縁の位置で、学生生活を営んでいたイッセーは最近放課後になると転生者であるマコトと頻繁に極秘会談を行う事が多いからという理由で、役員ではないのに生徒会室に放課後連れていかれてしまう。

 

 今現在刀奈が会長を勤めるIS学園の生徒会は、刀奈の身内によって役員構成がなされており、実は地味に数人程役員が足りていない。

 今年になってその生徒会に本音―――そして本来はこの時点で姉妹仲が半壊している筈の簪までもが加入しているので、一応最低限の役員は揃えられていたりする。

 

 

「いくら旦那様の目が届かぬとはいえ、少しお嬢様を甘やかし過ぎではないかしら?」

 

「何時も通りのつもりなんだけど……」

 

「それはイッセーが自覚していないだけ。

確実に今のお姉ちゃんはダメ人間化している」

 

「かんちゃんとお姉ちゃんに同意かなー」

 

 

 そんな生徒会室に連れてこられたイッセーは、顔見知りの者達から、学園に入ってからずっと刀奈を甘やかしているという指摘を貰ってしまう。

 

 

「まあ、アナタの『性格』を考えたら本当にそんな意図はないのでしょうけど……」

 

 

 一応年齢的にも先輩にあたるものの、普段は互いにタメ口で話す布仏虚のその一言に、年下で後輩だが普通にタメ口で話してくる布仏本音と更識簪も頷きながら同意すると、会長席でグデーっと液体みたいにだらけていた刀奈が心外だと言わんばかりに反論する。

 

 

「修行の時は鬼畜だし、逆にイッセー君を甘やかしてあげてる時もあるわよー」

 

 

 その気になれば生身で世界征服でも可能な異次元のパワーを待つイッセーとの修行を二年半前から行っている刀奈としては、その時の過酷さは言葉には表せないレベルであるらしく、また甘やかされるばかりではなく逆に甘やかしている時だってあるのだからイーブンだと言いたいらしい。

 

 

「修行なのですから当たり前です。

まあ、旦那様には上手く言っておきますが、あまり他の方々のご迷惑にならないようにしてくださいよ?」

 

「そこまで盛っちゃいないから大丈夫よ虚ちゃーん」

 

「どこまでがセーフなのかが微妙にわからん」

 

 

 

 

「わーい、ドラちゃん~!」

 

『誰が22世紀のタヌキ型ロボットだ! 俺の名を略すな!』

 

「じゃあマダオなら良い?」

 

『俺はまるでダメなおっさんドラゴンじゃない! ぐ、最後に見た時のオーフィスとそっくりな声をしてるだけあって、奴に煽られている気分で実に腹が立つ……!』

 

「無限の龍神だっけ? ドライグより上位のドラゴンの……」

 

『はんっ! 今の俺はあんなカス野郎の言いなりに成り下がったオーフィスなぞより上の次元へと到達しているわ! それより俺を神器越しに突っつくんじゃあない!』

 

 

 

 左腕に出現させていた神器・赤龍帝の籠手を簪と本音の二人が指で楽しそうにツンツンと突っつくのを、神器に宿りし赤き龍ことドライグが『俺は玩具じゃないからやめろ小娘共』と言っている変なやり取りを横に、のほほんとした生徒会の時間は過ぎるのだった。

 

 

 

 

 

 

 二組の転校生が一夏の幼馴染みであり、マコトとも面識のある女子ということで、特に一夏関連の意味合いでセシリアと箒がモヤモヤさせられていたり、その転校生も転校生で一夏がなんでもかんでもマコトを優先するのでマコトに再び嫉妬の炎をメラメラ燃やしたり、燃やされたマコトは逃げ出したい気分になるけど一夏が何時にもまして逃がしてくれないと――中々にカオスな状況となっている最中、のほほんとした生徒会業務を終えた刀奈とイッセーいえば……。

 

 

「ぐぬぬ……ここまでね」

 

「へへん、年季の違いって奴だよ」

 

 

 二年半前からスタートした個人的な修行を行っており、人が寄り付かないIS試合用のアリーナをこっそり借りて生身での攻防を繰り広げていた。

 

 

「そこまで強いのに、元の世界では負けて追い出されたなんて、イッセー君の世界ってどんな人外魔境なのよ……」

 

「悪魔だ堕天使だ妖怪だ天使だドラゴンだ神だのが跳梁跋扈してるのに加えて、例のゲス野郎のせいで余計わけわからん事になっちまった世界――って俺は聞いたから、まあ多分普通じゃあない世界だな」

 

「それも聞いたことあるけど……はぁ、自信なくしちゃうわ」

 

 

 暗部の当主・楯無としての教育を施されてきた刀奈はその才能に恵まれていて、次期当主としてふさわしいまでのレベルに到達していたが、イッセーという異常なる世界を生きた異常者を知ったことで、自分は所詮才能はある『特別』止まりの人間だということを思い知らされた。

 

 そんな異常者に少しずつ惹かれたことで、何時しか同じ領域に立つことを夢見た刀奈は二年半前からこうしてイッセーによる『扉』の解放を為の修行を行うようになり、今現在の刀奈はその領域に一歩踏み込んだばかりの所まで到達している。

 

 

「いや、俺でも5年はコントロールできなかったスキルを二年半で発現させたばかりかコントロールまで出来てる刀奈はかなり凄いと思うぞ?」

 

「コントロールできてもアナタに肉薄できなければ出来ていないと同義よ」

 

「そこは単に経験の差だろうぜ? それに俺も正直驚いてるんぞ?

刀奈のスキルと俺のスキルは互いに足りない部分を補い合えるところがあるってな」

 

 

 正直不可能だとイッセーは最初思っていたが、見事にたった数ヵ月でスキルを発現させた時は元の世界でも見なかった初めての『同類』に心の底から嬉しいと思った。

 

 

「それにお前の本領はそのISとの併用だろ? それは俺にはない技術だし、今の俺でもIS持ち出された刀奈には手加減する余裕はなくなる」

 

「イッセー君がドライグちゃんと一緒に戦い始めたらあっという間に押さえ込まれちゃうし、差の開きはあまり縮まってはいないもの」

 

 

 疲れたようにその場に座り込んでいる刀奈に手を差し伸べ、その手を取った彼女をゆっくりと立たせてあげたイッセーは、少し拗ねた様子の刀奈の頭にぽんぽんと手を伸せながらヘラヘラと笑う。

 

 

「それでもよくここまで来たと俺は本気で思う。

あんま恥ずかしくて言えないことだけど、俺はそんな刀奈が好きだぞ?」

 

 

 更識家に拾われる前はドライグとしか繋がりが無く、そして繋がりに餓えていたせいか、平気でこんな台詞をぽんぽんと言ってくるイッセーに刀奈思わず俯いてしまう。

 

 

「お願いだから、そういう台詞を他の女の子に言っちゃ嫌よ?」

 

「当たり前だろ、俺は思ってない事は言わない。

嫌いなものは嫌いだと言うし、好きなものは好きだって言う」

 

 

 『親の愛情すら失った事もあるが、コイツは少々重いぞ?』と以前イッセーが眠っている間にドライグから言われた事を思い出す刀奈だが、嫌な気分も無いし重さも感じない。

 

「…………って、ごめん、言っててちょっと恥ずかしくなってきたかも、はははは」

 

「言われた私はもっと恥ずかしいわよ……おバカ」

 

「ごめんごめん。ほら、歩けるか?」

 

「歩けないわよ……色んな意味で」

 

「ん、わかった。ほら乗りな?」

 

 

 暗部の当主として感情を殺さなければならない時もあった自分に『自分自身に戻れる自由』を教えてくれた。

 自分自身に戻れた時は何時だってこうやってもたれ掛かっても受け止めてくれたり背負ってくれる。

 

 

「本当は思ってはいけないことだし、思った時点であのゲス野郎と同じになってしまう。

でもやっぱり思っちゃうんだよなぁ……。世界から追い出されたけど、刀奈と会えたからそれで良かったってな」

 

「う、うん……私も一緒の事をおもってる……」

 

 

 本人達は知らないし、知りえないが、もう少し復讐の決行が遅かったらこの出会いは無く、イッセーが出会ったのは転生者によって自由を奪われた赤髪の悪魔の少女だったのかもしれない。

 

 そしてイッセーは他の誰よりもその少女の為に生きようとしたのかもしれない。

 

 

「同じ穴の狢って奴だよなこれじゃあ……」

「そういう言い方はして欲しくないわ……」

 

「わかってるけどちょっとは思ってしまうんだよ。

あの神崎くんから色々と聞いてしまうとね……」

 

「……」

 

「おっと誤解すんなよ? 別に彼から変な事を吹き込まれてる訳じゃないぞ? 若干迷走はしかけたけど、やっぱりどうしても俺ってキミが好きで嫌われたくねーって思ってしまうし……」

 

「……。なら浮気しないでよね?」

 

「そんな根性俺には無いっての。はっはっはっ」

 

 

 だけどその歯車がズレたからこその今となっている。

 その事を誰も知らないまま二人の精神は互いの足りない部分を補い合うように研ぎ澄まされていくのだ。

 

 

おわり

 

 

 

 

 その領域に到達し、並んでその先を歩み続ける為に更識でなくただの刀奈は飛翔する。

 

 

「悪いけどお嬢さん方? 私をただの生徒会長だとかそこら辺の国家代表だとは思わないことね。 これでも私―――そこそこ強いのよ?」

 

 

 神器と異常性を融和させ、新たな領域に到達したイッセーがそうであったように、刀奈もまた独自の領域への道を切り開いていく。

 

 

 

『更識刀奈・style switch』

 

 

『楯無』

更識家次期当主として鍛えれた刀奈の基本スタイル。

暗部としての技術により敵を迅速に無力化する。

 

 

『舞刀』

ありふれた物を武器にして戦うイッセーを見て閃きしスタイル。

武芸百般、あらゆる武器を駆使して敵を叩きのめす。

 

 

『静水』

あらゆる力を受け流し、倍にて返すカウンタースタイル。

 

 

『伝説・???』

 

 

 

「た、楯無さんのあの異様な強さってもしかして先輩が……?」

 

「俺と同じ領域に辿り着いてみせたし、なにより……多分俺自身が同じなって欲しいと思ったからな……」

 

「一夏達を相手に一人であんな簡単に……」

 

「ほんと、大したもんだよあの子は……」

 

 

 

 『兵藤イッセー・style switch』

 

 

『ヤンキー』

 基本となる戦闘スタイル。

 とにかく殴って蹴ってとヤンキーの喧嘩ファイトのように制圧する。

 

『ウェポン』

ありふれた物を武器にして戦うスタイル。

 

『赤龍帝』

現イッセーの全力のスタイル。

ドラゴン波等といった広域殲滅スタイル。

 

 

 

伝説・更識の狂龍

詳細不明

 




補足

本人知らぬ所で勝手に警戒されるの巻。

それにより会合が難しくなるの巻。


……行こうとするとマジで止められるので。


その2
この時点で最早この世界のたっちゃんに寧ろ勝てる子なんて存在しないという。

 ……リアスさんと出会わずにを経てるので余計にね。

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