ただそれだけ
誰でも無い。
誰にもなりたくもなくない。
何の為に生きているのか。
誰の為に生きているのか。
その全てがわからなくなった。
かつてはあった筈の燃えたぎるような気持ちをも失い、残ったものはただの燃えカス。
不様に、虚しく、それでも尚みっともなく生き続けているだけという拷問。
自分や愛した悪魔の少女から奪い取った存在への復讐に関しては今でも全くの後悔はない。
正しいとか、正しくはないとか関係なく、奴を消さなければ自分達は永遠に奴の存在に隠れながら生きなければならなかったし、完全に息の根を止めたその瞬間こそ、俺達が奪われた自由を取り戻し、止まり続けていた時間を動かすことができたのだから。
でもその過程において俺はあまりにも多くのものを得て、その全てを喪ってしまった。
何度も言うが、復讐を果たした事には欠片の後悔なんてない。
けれど今の自分は一体何の為に生き続けているのか。
自分で自分を終わらせられる事もできなくなってしう所まで進化をしてしまった現実はきっと『代償』なのかもしれない。
共に生きて戦い続けた相棒も失い。
肩を並べた同志も失い。
愛した女をも喪った。
それなのに自分だけはこうして醜く生きている。
取り戻す為の戦いを制した男が受けた代償と末路は、永遠の喪失という虚しきものであった。
そんな――燃え尽きてしまって躁鬱状態でも生き続けてきた俺はその内意識を閉じ込めることで無理矢理寝続ける事を選んだ。
死ぬことができないのなら目覚めることの無い眠りにつくしか今の俺に残された手段なんてなかったから。
そして誰にも起こされることのない眠りについた筈の俺は――
「本当に人生ってのは儘ならないな……」
全然知らない場所で、全然知らん人間の奇異な物でも見るような視線に囲まれながらたたき起こされてしまうのだ。
何としてでも進級試験をパスする為に、必死になって使い魔の召喚儀式を行った魔法学院の生徒である少女は生まれて初めての成功に喜んだのも束の間、ほんの少しの爆発による煙が晴れた先に居たのは状況を理解できていない様子の顔をした年の近そうな少年だった。
「アンタ誰よ……?」
「は? え……?」
それがルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと平賀才人の出会いであり、そこから物語が始まるのだ。
だがしかし、時を同じくして進級試験を行っていたとある生徒がほんの何かの入れ違いのような状況を前に絶句をしていた。
「…………………………」
「ミス・タバサ……その、これはどういった状況でしょうか?」
ゼロのルイズ等と馬鹿にされまくる生徒がどこからどう見ても平民である少年を何故か召喚してしまっていた頃、魔法に関してはむしろ優等生の部類である筈であるタバサという名の少女は、あり得ぬ自体に傍で見ていた頭頂部が寂しいことになっている教師の質問に答えられずにただただ目の前の結果に顔には出さずとも動揺をしていた。
使い魔の儀式を行った結果、確かに成功した。
召喚のゲートを出現させた結果現れたのはメスの風韻竜。
全長は6メイル程で他の生徒達の召喚した使い魔と比較をしても群を抜いた存在感を放っているのかもしれない。
そこまでは良い。
だが問題はその竜のすぐ真横に立っていた年若い、出で立ちからして平民と思われる青年だ。
身長は180サント過ぎ程の、茶髪の青年はどこからどう見てもただの平民にしか見えない。
向こうの方で『ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!』と大騒ぎしている他の生徒達の嘲笑う声が聞こえる中、眠たげな――されど不機嫌さも入っている顔をした青年はただ一言。
「最悪の目覚めをどうもありがとうよ、お嬢さん」
これがタバサが内に秘める野望である『復讐と自由』を既に果たしたことを後に知る『人から龍人へと至り、そして空っぽとなった青年』との出会いであったという。
「使い魔? 召喚の儀式? ………へぇ、そこのちっこいお嬢ちゃんがその儀式とやらでこの子供の竜と俺を同時召喚したと? なるほど、寝てた俺の耳元で喧しかったのはそれだったわけか。
やってくれたね……いやホント、嫌味じゃなくてよ」
お互いの第一印象は割りと最悪に。
予定外な召喚の儀式となってしまったけど、一応平民だけを召喚したルイズとは違ってメスの風韻竜を召喚していたタバサは、イレギュラーではあるとはいえ試験をパスすることができた。
しかし問題はその事ではなく、予定外の召喚をしてしまった青年の事だ。
風韻竜とコントラクトサーヴァントを済ませたタバサが見たのはその青年にも契約の証が連動して左腕の甲に刻まれたのだが……その契約の証が刻まれた瞬間、それまで覇気のない顔だった青年が突如として豹変し………。
「契約主への反逆を防ぐつもりの『洗脳』かこれは? ………なめんなよ?」
「!?」
「使い魔の紋様が……消えた!?」
どす黒い殺意をむき出しにしながら刻まれた使い魔の証を、まるでねじ伏せるように消したのだ。
これには使い魔の証をスケッチしようと見ていた教師も、タバサ自身も驚きつつ、話し合う必要性が生まれたので、若干敵意と殺意と警戒心を放つ青年と対話することになった。
それにより一応こちらの意図しない召喚であったことや、青年の言う『洗脳』の意思はないという事だけは理解して貰えた。
そしてそちらの意思を無視して召喚をしてしまい、元の場所へと戻す方法が今のところ存在しないので、暫くタバサの使い魔をしてほしいという交渉をする事で、一応御互いに落とし所を上手くつけられた。
それによりルイズと同じく平民を召喚したと暫く馬鹿にされる日々を送るはめになったのだが、ルイズとは違って風韻竜を召喚していたこともあったのか、その声もすぐに消えた。
ほっとするタバサは、シルフィードと名付けた竜とイッセーと名乗る平民の青年を使い魔にした学院生活を開始したのだが……。
「きゅいきゅい~!」
「あのな、だから俺は厳密には本物の龍じゃないんだよ。
キミが俺かは感じてる気配の元は確かに龍だったし俺の相棒だった、つまり意識は別だったんだよ。
…………訳あってその力を俺に全部渡して先に逝ってしまったんだけどさ」
「きゅい……」
「まぁな。
まさか全然違う世界に呼びつけられるとは俺も驚きだぜ」
一応名目上は主である自分とはほぼ機械的な受け答えな癖に、使い魔のシルフィードとは実に穏やかなやり取りをしているし、寧ろシルフィード自体が彼に懐いている。
しかもどんな会話をしてたのかを後でシルフィードに聞いてみたら、彼の正体が信じられないそれであると知るわけで……。
「アナタが人から龍になったって聞いた……」
「あぁ、イル(シルフィードの真名であるイルククゥの愛称)が喋ったのか? ……本人にも言ってるけど、それは語弊がある。
人から龍になった訳じゃなくて、俺は元々生まれた時から龍の意識を宿していて、一緒に戦ってきたんだ。
その相棒である龍に全ての力を『死』を代償に託されたってだけなんだよ。
だから俺はキミ等の言うただの平民だ」
「……………」
あまりにも荒唐無稽すぎる話だが、シルフィードの懐きっぷりを考えたらありえなくもなく、また時折彼が見せる先住魔法のような力を考えたら、龍の力持つ人間と言われてもなっとくしてしまうものがある。
しかしそれなら何故話さなかったのかとタバサは疑問に思うと。
「イルがキミの使い魔であって、俺は契約を強引に切っただけの存在だろ? 今はキミの教師が元の世界に戻す方法を探すから、それまでは使い魔の体で居てくれと交渉されたから小間使いのような真似をしているけどね」
話すことでもなければ、別に使い魔じゃないからとハッキリ言うイッセーにタバサは微妙な気分にさせられる。
「俺が自分の命を捨ててでも守りたかったのはキミじゃない」
「……………」
それはタバサを主とは認めない。
そして自分の力はタバサではない他の誰かの為にあると言われたも同義であり、ここには存在しない誰かを思い出すような寂しそうな表情で言われたタバサなにも言えなかった。
そしてその後は時を同じくして、ルイズと平賀サイトが大喧嘩をしている中タバサが全く知らぬ所でタバサの友人である女子生徒の使い魔である火蜥蜴の使い魔にすら懐かれていたり。
「最近……」
「んぁ?」
「キュルケとなにしてるの? よく二人ではなしてる……」
「え? あぁ、あの子の使い魔のフレイムってのと遊んでたら知り合ってな。
まあ、なんだ? ただの世間話かな」
「………そう」
本当にただそれだけの事だと話しながら犬のようにスリスリとしてくるシルフィードを撫でるイッセーにタバサはなんとも言えない気分だった。
何故なら……。
「タバサとは上手くやれているの? ルイズとは違ってあの子は大人しいから喧嘩にはならないでしょうけど」
「可も無く不可も無くで上手くやれてるつもりかな。
まあ、あのピンク髪の子みたいに犬呼ばわりもされんし」
「ルイズはねぇ……」
「……………」
何時からお前らそんなに仲良くなったんだと言わんばかりに世間話を楽しんでいるし、その後のとある男子生徒とルイズの使い魔の決闘話に、何故かその場に居合わせただけで巻き込まれたイッセーの行動のせいで余計変な意味での距離感が近くなっていくわけで。
「アナタって強かったのね……。
フレイムがスゴく懐いていることも含めて改めて少し驚いちゃったわ」
「何で完全無関係な俺が巻き込まれたのかは未だにわからないけどね。
流石にわざと負けたらあの子に恥かかせるかなーと思って一応勝ちを拾ったけど失敗だったかなー……。
ピンク髪の使い魔君の……平賀君だっけ? あれから絡んでくるし」
「………………」
だから近い。なんでそんなに近い? 意味がわからない。
自分に対しては相当なドライなのにと、段々と納得できなくなっていくタバサだったり。
「龍拳・爆撃」
『』
その後龍へと至った人間の放つ一撃で敵を消し飛ばすパワーを見て絶句したり。
「いやその……キミじゃなくてな? キミを見てるとキミに似た髪の色をした子の事を思い出してな。
……それ以外は全く似てないんだけど、なんとなく危ないと思ったら勝手に動いてたわ」
その理由に余計納得できない気分にさせられたり。
「………」
「べ、別にそんな顔しなくてもイッセーに変な事なんてしないわよ?」
「でもイッセーはキュルケと話しをしている時が楽しそう……」
「そ、そう? それを言われると結構嬉し―――だから違うわよ!?
そもそもイッセーって他に好きな人が居るし……」
「…………そんな話だって私にしない」
「へ? あ、そうなの? じゃあなんで私には話したのかしら?」
「……………………」
なんか日増しにやり取りと距離感が無自覚に近くなる使い魔と親友に顔を曇らせていくタバサなのだった。
「俺にはもう何も残っていない。
守りたかったものも、好きだった子も、一緒に戦ってくれた相棒も」
そして灰のように精神が燃え尽きていた青年の精神が再燃した時。
「それでも俺は二度と間違えたくない……。
だから見せてやる――」
『オレは赤い龍でもイッセーでもない。オレは貴様を倒す者だ……!』
龍門を昇り、本物の龍へと至る。
『「地獄で会おうぜ……!!
ファイナルビッグバン・ドラゴン波ァァァッ!!!!!」』
「お兄さまは、もっとおねえさまに構うべきなの」
「構うと言われてもな……。キャッチボールでも誘うか?」
「そうじゃないのね……。
なんというか、お兄さまは鈍いのね」
「鈍いねぇ……」
「人に変化してるシルフィードがイッセーにひっついてる……」
「それどころかフレイムまで……。
タバサが変な事を言うから妙に意識しちゃって上手く話せなくなっちゃったし……」
雪風と微熱と赤き龍帝――始まらない。
「はぁ……前にイッセーが描いた絵の通りだったから、リアス・グレモリーって人に勝てる要素がまるで見当たらないわね」
「キュルケらしくない……」
「らしくなくさせられちゃったのよ……。
それを言ったらタバサもでしょう?」
「…………まあ」
『赤き龍帝の系譜』または『進化の壁を超えし者』カテゴリの気力+5 ATK DEF200%UP
『不滅の繋がり』カテゴリを含む場合は更にATK DEF50%up
パッシブ『無神臓』
ターン開始時に自身のATK DEF200%UPダメージを40%カット。
必ず5回攻撃を行い、高確率で必殺技に変化。
攻撃を受ける度にATK,DEFを5%UP(無限)
同じチームに『リアス・グレモリー』が居る場合、一度だけ戦闘不能となってもHPを80%回復して復活する。
更に『ドライグ』が居る場合、ATK,DEF100%UP。
必殺技『龍拳・爆撃』
1ターンATK,DEFを大幅上昇させ、敵に極大ダメージを与える。
超必殺技・『消滅魔力・ドラゴン波』
1ターンATK,DEFを超大幅上昇させ、敵に全属性効果抜群で超極大ダメージを与える。
アクティブスキル『再起』
10ターン経過、もしくは10回攻撃を受けた時に発動可能。
効果・進化する
再燃せし情熱(イッセー)
パッシブ『再燃翔』
ターン開始時に自身のATK DEF200%UPダメージを60%カット。
必ず5回攻撃を行い、超高確率で必殺技に変化。
攻撃を受ける度にATK,DEFを5%UP(無限)
一度敵の必殺技を受けると、その以降敵の必殺技のダメージ無効化し、更に高確率で反撃を行う。
本当に始まらない
補足
原作の主人公とヒロインがあれこれしてる裏で、のんべんだらりとやってるような感じ。
たまーに、スイッチが入ってドラゴン波ぶっぱなすけど