色々なIF集   作:超人類DX

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ゼロの三馬鹿使い魔

 

 

 

  

 しょうもない理由で世界から弾き出された三人の少年が辿り着いた世界は、魔法を操る貴族が横行する世界だった。

 

 そんな世界で生きる貴族の娘の使い魔的な立ち位置へとなった三人の少年は、持ち前のマイペースさで意外な程その少女の使い魔をやりつつちょっとした騒ぎを引き起こしたり――と、まあまあ上手いこと過ごしているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 三馬鹿の一人である一誠は果てしなく女性にだらしのない少年だった。

 いや、だらしがないというか彼の場合は理想とする女性が全て年上かムチムチボディの女の子に極振りされているだけであるのかもしれないが、基本的に三人の中ではだらしない。

 

 故に親友であり兄弟分である二人の少年ことヴァーリと曹操――の子孫である神牙に女の子の影がチラつくとズルいとばかりに悔しがるのだけど、あまり人のことは言えないわけで。

 

 

 

「やっぱすげーなご主人様の魔法って」

 

「………ただ普通に失敗しただけなんだけど、これのどこが凄いのよ?」

 

「いやいや、ものの見方の問題だろ。

だってあんな巨人を一撃で吹っ飛ばしたんだぜ? 殲滅力とかスゲーっての」

 

 

 そんな少年Bこと一誠は最近、どんな魔法を詠唱しても爆発という結果しか生まず、そのことから周囲から『ゼロのルイズ』と揶揄されてしまっている所謂落ちこぼれな召喚主の持つ『こちら可能性』を引き出す為の特訓を夜な夜な繰り広げていた。

 

 どんな魔法を使っても爆発という現象しか生み出さないせいで落ちこぼれ扱いされてきたルイズにしてみればただの嫌味にしか聞こえないようだが、一誠達からすれば軽い魔力行使のみでこるだけの規模の破壊力を生み出すルイズの潜在能力は一級品であると本気で思っている。

 

 今だって、特訓中に突如出現し、学院の宝物庫を襲撃している土かなにかでできている謎の巨大生物を相手に、『的としてはちょうど良い』と、出現自体に全く慌てる訳でも驚くわけでもなくルイズの爆発魔法を試させたのだが、結果とするならその巨大ゴーレムは一撃で爆裂し、なんなら固定化なる魔法がかかっていた宝物庫の外壁を損傷までさせるという結果にただただ素直に関心している。

 

 ルイズ本人は炎の塊を出現させる魔法なのに爆発オチになってしまうことが不満そうだが。

 

 

「後は精密さだな。

あの巨大な……ゴーレムだっけ? あれだけを爆破させるつもりが、建物まで巻き込んじまってるから、それを上手くコントロールすべきだと思うぜ?」

 

「私、普通に魔法が使いたいんだけど……」

 

「それは追々で良いだろ」

 

「というか、普通に私達、ヤバイ現場を見ちゃってる気がするんだけど。

だって今のゴーレム、明らかに学院の宝物庫を狙ってた気が……」

 

「だとしても先生方がなんとかすんべ? ほれ、それより次は『こっち』のトレーニングだ」

 

「………」

 

 

 土くれのゴーレムを一撃粉砕しても尚ケロッとしながらトレーニングを続けられるルイズの精神的な意味でのタフさは、一誠、ヴァーリ、神牙にとっては『類をみない才能』なのである。

 

 

「ヴァーリと神牙のアホ二人をビビらせてやろうぜ?」

 

「それは良いけど、ずーっとタバサが見ているから気が散るんだけど……」

 

「あー……まあ、なんか色々あるみたいだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 ルイズが召喚した三人の平民の使い魔は、平民でもなければメイジとしての領域から飛び出した怪物で間違いない。

 故に力を求めるタバサはその力を知ろうとここ最近は常にルイズのトレーニングの現場に来てはじーっと観察する訳だが、以前使い魔の一人であるイッセーに言われた言葉がずっとタバサの心に残り続けている。

 

 

『残念だけど、キミにはこっち側の才能はないな』

 

 

 ルイズにはあって自分にはない。

 求める領域には到達できないという現実はタバサに少なくはない挫折を刻まれる事になったけど、それでもタバサは力を求めなければならないのだ。

 故に魔法関連とは真逆に、イッセー達の教えをスポンジのように吸収していくルイズを見ながら、タバサはこれまで一切ルイズには思ってもなかった『劣等感』を感じるのだ。

 

 とはいえ、全部は言ってないものの、イッセーに対して力を求めなければならない事情があると言った日から、人が良いのかルイズの後というか形ではあるもののちゃんとトレーニングに付き合ってはくれたりするわけで。

 

 

「今日はこのくらいにしようぜ。

明日の朝早いだろうし」

 

「早いどころか大騒ぎになってそうな気しかしないわよ……」

 

「大丈夫だっての、ああいう騒ぎは大人がなんとかするだろうしな」

 

 

 どこまでも楽観的に言いながらルイズの小さな背中を押すイッセーだが、『たぶんそうでもない』と内心思うタバサなのだった。

 

 そして案の定、どこで知られたのか前夜の騒ぎの目撃者として学院長のオールド・オスマンに呼び出されてしまうルイズとタバサとイッセーなのだった。

 

 

「君たちに集まってもらったのは他でもない、『土くれのフーケ』による学院襲撃の件についてじゃ。

犯行の現場を見たのは君たちと言うわけでここに来てもらったと言うわけじゃが、犯行を見た時の事を説明してもらおうとするかの」

 

「単にトレーニングしてたらデカい――えー、ゴーレム? そんなのが出てきたのを見たってだけなんですがね……。

ねぇご主人様?」

 

「は、はい」

 

「………」

 

 

 少々語弊があるものの、一応そのままの事を話すイッセーにルイズは微妙に気まずそうな顔をしながらも頷き、タバサも無言で頷く。

 するとオスマンはある程度見抜いている上で敢えてそこには触れずに言う。

 

 

「皆が知っての通りあの宝物庫には強力な固定化がかかっていた。

ところが、一部の場所に原因不明の亀裂があっての、そこだけなぜか固定化がかかっていない状態だったらしく、そこをフーケにねらわれたんじゃろうのぉ……」

 

 

 その言葉を聞きルイズがビクッと反応しつつイッセーを見ると、イッセーもほんの一瞬ながら『やっべ……』と言いそうな顔をしていた。

 つまり昨日のトレーニングであのゴーレムを自分達が的にしたせいで物が盗まれたわけで……。

 

 これは流石に正直に白状すべきかとルイズが悩み始めていると、部屋の入り口の扉が開き、オスマンの秘書をしているロングビルが入室する。

 

 

「ミス・ロングビル! どこ行ってたんですか! 大事件なのですぞ!?」

 

「申し訳ありません、昨晩から急いで調査しておりましたので……」

 

 

 ロングビルが言うには近くの森の廃屋がフーケの隠れ家ではないかということらしい。

 学院に起きた一大事、王宮への報告と王室衛士隊の手配を進言したが、その間にフーケに逃げられてしまう可能性と自身の問題は自分たちで解決するというオスマンの意向で却下されてしまう。

 そのためすぐに捜索隊を結成することになったが誰も自ら行こうとしない。

 その中で静かにルイズが杖を掲げる。

 

 

「え、えっと私が行きます!」

 

 

 半分は自分達のせいでこうなった事もあるし、なによりさっきから入室してきたロングビルに鼻の下を盛大に伸ばしているイッセーにイラっとした勢いでは断じてない。

 そう自分に言い聞かせつつバレないように後ろからイッセーのふくらはぎにローキックをしながら名乗り上げるルイズに続くようにタバサも名乗り上げた。

 

 

「タバサ? なんでアンタまで……」

 

「私も目撃していた。

それに、経験になるから」

 

 

 驚くルイズにタバサはそう答えると、『マジかよ、やっぱこの学院長って良い趣味してんなぁ……デへヘヘ』と密かにローキックされながらも尚ロングビルに鼻の下をだるんだるんに伸ばしまくるイッセーを見つめ――その視線がロングビルに一直線になってる状況にちょっとムッとなる。

 

 するとそれを聞いていたオスマンがうむと頷く。

 

 

「うむ、では彼女等に頼む事としよう」

 

 

 その言葉に、自分達は名乗りでなかったものの流石に生徒だけにやらせるのは危険ではないかと言う教師陣だがオスマンはタバサを見やりながら言う。

 

「何よりもミス・タバサは、若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いている」

 

 

 タバサは返事もせず黙ったままだ。教師達は驚いたようにタバサを見つめた。

 

 

「本当なの? タバサ」

 

 

 ルイズもその称号の意味を知っているからこそ驚き、イッセーは――まだロングビルをガン見していて殆ど聞いちゃいない。

 

「…………」

 

 

 ざわつく周囲だがタバサは最早こんな称号なんぞなんの意味など無いと思っている。

 何故なら、そんな称号を含めた全てを平等に『力』で粉砕できる領域を知ってしまったのだから。

 

 

「アナタには負けない……」

 

「へ?」

 

 

 その領域に到達できる可能性と才能を持つルイズを羨むからこそ、タバサは名乗り出たのだ。

 こうして土くれのフーケなる盗人を取っ捕まえ隊が厳かに結成されるのだが……。

 

 

「え、マジでか!? ロングビルさんも同行すんの!? うっひょー!」

 

「「………」」

 

「彼、その内後ろから刺されたりしないか微妙に心配になってきたわ」

 

「心配するな。いつも通りだ」

 

「刺されたところでアイツは変わらん」

 

 

 話を聞き付けたキュルケやら、ルイズの使い魔ということで同行することになったヴァーリと神牙のせいでオーバーキル部隊になってしまったことはまだ誰も知らない。

 

 

 

 こうしてロングビルの得た情報を頼りにフーケの隠れ家があるとされるとある森の中を馬車を使って向かうのだが……。

 

 

「て、テメー神牙のバカやろう!! あんなムチムチしてそうなメイドのおんにゃのこに飯作って貰ってんのかゴラァ!!」

 

「いだだだだ!? し、シエスタが親切でやってくれるというからだ!」

 

「うるさいな、これじゃあうたた寝ができないんだが……」

 

「んだとヴァーリこの野郎! オメーはオメーでなにナチュラルにツェルプストーさんに膝枕されてんだボケゴラ!」

 

「知らん。寝ようとしたらキュルケがやってきただけだ」

 

「いやー、最近モンモランシーにダーリンが取られ気味だからつい……」

 

「ついじゃないわよこのバカ犬二人!!! 人が苦労しているってのに呑気に――キーッ! それをやめなさいってばキュルケ!!」

 

「そーだそーだ! もっと言ってやれご主人様!!」

 

 

 なんかハシャイでいる高校生の修学旅行のバスの中のノリで一切の緊張感がゼロだった。

 

 

「つーかなんだよダーリンって!?」

 

「んー……だってダーリンって可愛いじゃない? それにイザという時はキリッとしててかっこいいし。

だから私の微熱がウズいちゃって……」

 

「モンモランシーもだけど人の使い魔になにしてんのよ!!」

 

 

 最近は使い魔の中ではイッセーと接する比率が多くなりつつありつい見落としていたが、知らぬ間に神牙もヴァーリも他所の女と宜しくしていた事はルイズ的には由々しき自体であった為、嘘みたいに息ピッタリにイッセーと憤慨するも、本人達はケロッとしているので通用せず。

 

 

「ぐぐ、後で地獄の九所封じのフルコースの刑に処してやるぜ……」

 

 

 イッセーは二人が其々ムチムチしてそうな女の子と楽しくやってる事に嫉妬爆発だ。

 

 

(……コイツ等バカなのかい?)

 

 

 そんなアホなノリが割りと大きめな馬車で繰り広げられているのを、馬を操作しているロングビル――というかぶっちゃけロングビルとして学院に潜伏していた土くれのフーケは、緊張感の欠片もないルイズ達のやり取りに呆れつつも、こんな馬鹿共なら上手く逃げられそうだと確信する。

 

 

(ヴァリエールの小娘の使い魔三人の力は警戒すべきだけど、オツムが残念だし、簡単に撒けそうだね)

 

 

 勿論、ルイズが召喚した三人の使い魔の異質なパワーについては警戒しているものの、あの単純さなら上手いこと騙して逃げおおせる自信もあるフーケはおしとやかな皮を装いながらほくそ笑むのだった。

 

 

(ただ上手く撒いた後、戻れたらアイツに色々と聞かないといけないかもしれないねぇ……)

 

 

 

 

 

 はしゃいでる高校生みたいなノリが続く中、ただ一人静かにしていたタバサはと言えば、我関せずを貫いて読書をしている――――ように見せかけてずっとイッセーを見ていた。

 

 

「ぐ、ご主人様よ、今は取り敢えず我慢しようぜ。

なんたらのブーケの件をとっとと終らせて学院に戻ったら処刑してやるからよ……」

 

「土くれのフーケよ。

ただ、わかったわ……。それより今回の件であの二人へのお仕置きの意味も予て目的地までで良いから少し私に教えてちょうだい」

 

「任せろ。あの馬鹿二人がムチムチのおんにゃのこと羨ましい事をして遊んでる間にぶっ飛ばせるところまでなってやろうぜご主人様よ……!」

 

 

「………!」

 

 

 ヴァーリと神牙がマイペースにやらかしたせいなのか、明らかに二人の息がぴったりになっていると察したタバサは暫く読書のフリをしてイッセーを見ていたが、目的地までの間もトレーニングをすると言い出したルイズに頷くのを見てからぴくんと反応する。

 

 

「自分を知って、それが自分にとって嫌な自分であろうとも受け入れる事が大切だってのは覚えてるよな?」

 

「ええ、だけどそこまでは――正直時間は掛かっているけどなんとなく理解はしているわ。

だけどその先――そうね、例えるなら大きな鋼鉄の扉のようなものに阻まれてしまっているというか、それのせいで先がわからないのが現状だわ」

 

「……マジか、そこまで既に来てるならもう少しだぜ。

やっぱりキミって――」

 

「……そのご主人様ってのはやめて。

確かに私はアンタ達のご主人様だけど、今この時を限れば私はアンタに教えられてる立場。

だからルイズで良いわ」

 

「おう、わかったよルイズ。

本当、ルイズって俺達よりも飲み込みが早くて一々驚かされるぜ」

 

「……本当はちゃんと魔法が使えるようになりたいんだけどね」

 

 

「……………………」

 

 

 

 ナチュラルに肩と肩なんかを触れ合いながら、タバサにとっては抽象的過ぎて殆ど理解できない言葉のやり取りをしているばかりか、イッセーに名前で呼ばせて始めているとルイズに表情こそだしてないものの焦りの気持ちを抱くタバサは、つい読書の手を止めてひそひそとしている二人に近寄る。

 

 その様子をぐーすか眠り始めたヴァーリを膝枕してあげながらニヤニヤと見ているキュルケの視線には気づかずに。

 

 

 

「そこまで来ているのなら後は切っ掛けだな。

一番手っ取り早いのは『のっぴきならない状況』に追い込まれることで生存本能が爆発すればその扉を開放できる可能性があるが……」

 

「うーん……」

 

「……………」

 

 

 二人して集中しているのか、接近にぜんぜん気づいていないのを良いことにもう少し声が聞こえる距離まで近づこうとするタバサは気づけば目を閉じて難しそうに唸っているルイズをじーっと間近で見ている一誠の真横にちょこんと座っていた。

 

 

「ダメだわ、まだ押しても引いてもびくともしないって感覚ね」

 

「こんな短期間でそこまで行けた時点で充分スゲーよ。

まあ、ここからは焦らずじっくり開けていけば良いさ――――あれ?」

 

「……………」

 

 

 自分を知り、そして受け入れると大きな見えない扉が目の前にある。

 そしてその扉を完全に開けば、新たな領域へと到達できる。

 

 

 タバサも何度かその事をイッセーに教えては貰い、自分なりに実践してみたが未だに扉などは見えない。

 だがルイズは教えられてから短期間でその扉を出現させたばかりか目の前に立ち、後は開けるだけの所まで到達している。

 

 ルイズが今までの人生で何度も打ちのめされた魔法における『才能』に関する挫折とはまさにこの事なのだと魔法に関してはエリートレベルであるタバサは思い知るのと同時に、やはりイッセーを驚かせるルイズの才能に嫉妬のような気持ちが出てくるし、ずーっとそのイッセーに見て貰えてるのも何故か気にくわない。

 

 

「どした?」

 

「……別に気にしなくて良い、座りやすそうだったから」

 

「? あっそう……」

 

 

 仮に自分が檻に囚われた犬であるなら、きっとイッセー達はかつて檻に囚われていた犬だったのだと思う。

 そして自分とは違い、その檻を力で破壊して飛び出し自由になれた。

 

 檻に囚われ続けているタバサにとって、檻を破壊して飛び出したイッセー達の自由さはとても羨ましい。

 強く、自由で、メイジも平民も王家も―――理不尽ですら押並べて平等にねじ伏せて我が道を行くその奔放さはタバサの心に秘める悲願そのものなのだ。

 だから少しずつ……誰よりも楽しく、誰よりも狂った―――そして自由な生き方を特に体現しているイッセーに……。

 

 

「……………」

 

「え、なに? マジでどうした? バス酔い――じゃなくて馬車酔いか?」

 

「………わからない。なんとなく」

 

「??? まあなんでも良いけど」

 

 

 うぬぬと唸りながら目を閉じて精神統一をしているルイズを見ているイッセーの背中に寄り掛かりながら、本を読むタバサの希望の光への道はまだ険しくて遠いものだった。

 

 

 

 

 

 

「あら~……タバサったらあんな大胆な。あの子がねぇ……」

 

「アイツ、好みから外れてる女に対してはアホな言動やら顔が消えるし、そいつが困ってると割と真面目に手助けしたりするからなぁ……」

 

「そうみたいね。

最近ルイズの後とかに色々と見て貰ってるみたいだし。

この前なんて冗談で彼の事でからかったら、怒るじゃなくて俯いてもじもじしちゃったから『まさか』とは思っていたけど……」

 

「ああいうタイプには好かれやすいからなイッセーは……」

 

「だからロリコンなんて呼ばれるんだが、自覚がないからな」

 

 

 

 そんなタバサを生暖かい目で見ているキュルケ達に気づくことなく、馬車はゆっくりと目的地へと近づくのだった。

 

 

終わり

 

 

 

 オマケ。言い逃れ不可能な赤龍帝

 

 

 何故妙にタバサがイッセーを意識しているのか。

 それは全てではないが、力を求める必要あると話した時から彼なりに傾向と対策を考えてくれている事が大きいのかもしれない。

 

 そしてある朝に事件が起きたのだ。

 

 

「どういう事か説明できるんでしょうね……?」

 

「いやごめん、俺にもさっぱり訳がわからなくてよ……」

 

「確かに私はアンタ達使い魔にも床とはいえ私の部屋で寝ることを許可しているわよ? でもだからといって好き勝手にしろとは言ってないわ……!」

 

「ま、待て落ち着けっての! 昨日ちゃんと俺が一人で寝てたのはルイズだって見てたろ!? それが朝になって起きたらこんな事になってたんだから説明のしようがないんだってば!」

 

「黙りなさい! 状況からしてアンタがやらかしたとしか思えないのよ!」

 

 

 朝っぱらから言い争うイッセーとルイズを半笑いで見ているヴァーリと神牙。

 一体全体何が起こっているのか? それは――さっきからルイズに詰められてタジタジなイッセーの着ている服の袖をぎゅっと掴み掴みながら熱でもあるのではと顔を紅潮させているタバサに原因がある。

 

 

「ちょ、キミからも言えよ!? そもそもなんでキミが俺の寝てた布団に居たんだよ!?」

 

「…………」

 

「そうよ! どういうつもりよタバサ!!?」

 

 

 本人からしたら朝起きたら妙に抱き心地のいい温い何かがあって、よく見てみたら見慣れた水色の髪の少女でしたなんて驚くにも程があるし、完全に覚えも無いのだから当然本人に聞くしかないわけなのだが……。

 

 

「夜が明ける前に起きてしまったから、少しイッセーに鍛練を見て貰おうとルイズの部屋を訪ねた。

でもルイズを起こすのは悪いと思ったからこっそり入って、イッセーだけを起こそうとしたら………そ、そのままイッセーに引きずり込まれて……」

 

「なっ!? か、勝手に入ってきたの!?」

 

「か、顔に似合わずなんちゅーバイタリティーだ……」

 

「そ、それでその……あの……起こそうとはしたけど、ぎゅってされて起こせなくて……。

そ、その後首筋が跡になるまで吸われたり、ふ、服の中に顔を入れて、む、胸もちゅーって………」

 

「イッセェェェェッ!!!!」

 

「ギョヘー!?!? ち、違う!! 俺は潔白だぁぁっー!!」

 

 

 思っていた以上のやらかしに爆破したルイズがイッセーに殴り掛かる。

 

 

「この変態! 変態変態変態変態変態!!!」

 

「いだだだだ!?」

 

「あの、そこまで怒らなくて大丈夫だから。

…………仕方ないし、別に嫌じゃなかった……」

 

「イッセーぇぇぇえぇあっ!!!?」

 

「ギョエー!?!? そ、それ火にガソリンぶちまけてるってのぉぉっ!!」

 

 

 こうしてますますつるぺたフェチ呼ばわりされる最後の赤龍帝なのだった。

 




補足

三馬鹿話だと決まってつるぺたとばかり仲良くなってしまうイッセー。

そしてルイズちゃまがどんどん人外の領域に……。

更にタバサちゃまにやらかしてやべぇ事に……

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