色々なIF集   作:超人類DX

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前のネタのネタ。


前のネタの続きっぽいもの
コミュ障執事と猛虎さん達


 

 

 筋肉モリモリの見た目から喋り方に至る全てが受け付けられない謎の褌一丁の変態により、こちらの了承もなく過去―――それも明らかにパラレルワールドとしか思えない世界へと飛ばされてしまった悪魔の執事の少年。

 

 聞く耳持たないと見越してなのか、それとも単なる偶然なのか、ご丁寧に本来のパワーを削がれてしまい、無理矢理元の時代にすら戻れなくなってしまったコミュ障の執事は、胃潰瘍待ったなしな精神状態を拗らせる嵌めとなり、こんな目に逢わせた例の変態への徹底的な報復を誓いながら、飛ばされた直後のイザコザを経て今現在世話になっている者達と色々ありながらも、少しずつ削がれた力を取り戻そうとするのだった。

 

 何と無く、元の時代において世話になっている悪魔の家族達と程度というかレベルが似てる気がしないでもない者達と……。

 

 

 

 

 

 後の歴史にて陽人の戦いと呼ばれる古代の戦争から一応帰還した執事とパーソナルカラーが赤っぽい後の歴史に名を刻む事になる名を持つ女性達は、今回の戦争にて良い意味でも悪い意味でも『目立って』しまった。

 

 特に燕尾服という、戦場では逆に浮いて目立つ格好をしていた悪魔の執事こと日之影一誠と、その一誠と共にひたすら敵兵をなぎ倒した孫家の家長である孫堅こと炎蓮は他の同盟軍達からドン引きされる程度の暴れっぷりだった。

 

 ましてや一誠に至っては実用レベルまでやっと取り戻せた悪魔の魔力をフル稼働させていたせいで、妖怪の類いではなかろうかと思われている始末。

 

 しかし本人達はその手の風評を一々気にしてなく、炎蓮的には寧ろ周囲への牽制―――特に一誠と同じ場所から来たと思われる曹操の軍に居た青年を遠ざけられればそれで良かったとすら思っている。

 

 下手にあの北郷一刀なる男と一誠が接触してしまい、もしそれにより一誠が未来へと戻る方法を知ってしまったら……。

 

 最早困るどころではない程に、一誠という変人だが己の渇きを常に潤してくれる男の存在は自分――いや自分達にとって必要な存在へとなっているのだから。

 

 皇帝が倒れた今、世は群雄割拠の時代へと突入することになるけど、そんな事は炎蓮達には興味はない。

 どうにかして彼をこの場所に――自分達の傍に永遠に繋ぎ止める事なのだ。

 

 

「クククッ……! 己の閃きが恐ろしいくらいだ! これでオレはまた強くなれたァ!!」

 

「チッ! テメーの年考えやがれクソババァが!!」

 

 

 

 

 

 最初は碌に話もできなかったけど、根気強く少しずつ話しかけていく内に会話ができるようになった。

 そして普通に話をしてみれば一誠は乱暴な言い方が多いけど年相応さを感じる。

 

 もっとも、会話自体がまだ不可能な者の方がまだまだ多いのだけど。

 私達三姉妹の母はそういう意味で相当特殊だったのでしょうね……一誠からしてみたら。

 

 

「冥琳と私と小蓮とはこうやって普通に話せるようになったくせに、どうして蓮華とは未だに話せないのよ?」

 

「知るか。俺も向こうも興味がないからだろう」

 

「そうでもないと思うがな……」

 

「別に良いだろ。それで困った事になった訳じゃあないんだ」

 

 

 どんな雑用だろうと律儀にこなす一誠はこの日、母との日課である鍛練という名の殴り合いを済ませた後、冥琳のお仕事のお手伝いをする為、執務のお部屋に来ていた。

 

 その為、普段は面倒というか苦手なので理由をつけては逃げていた私も一緒になって作業をしながら雑談をしている。

 内容としては、母や私達といった一部の者以外とは口を未だに聞こうとしない一誠についてであり、私と一番下の妹である小蓮とは話が出来るくせに真ん中である蓮華とは全く話そうとしないのよね。

 

 その理由について一誠は『別に興味もないし話す理由なんて無いから』との事だけど……。

 まあ確かに私や小蓮と比べたら蓮華は自己主張が少ない方だから互いに理由でもなければ会話なんてしないのも納得はできるのだけど……。

 

 

「そういった理由がその内できる事を祈るにして、話は変わるが一誠よ?」

 

「あ?」

 

 

 それにしても冥琳と一誠って口は動いていてもちゃんと手も動かしてる辺り、器用というか似た者同士というか……変に生真面目だから気も合うのかしらね? なんて思いながら二人に比べなくても大分手の進みの遅い私はこっそりサボろうと手を止め、これまたこっそり持ち込んでいた甘露を口に入れようとしていると……。

 

 

「ただの興味というか、気になっただけの話なのだが、お前が酒の勢いを使わずに誰かと閨に入っても良いと思う者は居たりしないのか?」

 

 

 実に冥琳らしくないことをいきなり一誠に問うものだから、私は口に放り込んでいた甘露を詰まらせそうになってしまう。

 

 

「なんだその下らなすぎる質問は?」

 

「げほげほ!?」

 

「いや、本当に気になったものでな。

なんというか、お前はその手の欲があまりにも薄いように見えて仕方ないんだよ。

しかし完全な不能ではないのは知ってる訳だし……」

 

 

 冥琳がこの手の話を切り出すなんて本当に珍しいけどそれは確かに気になるわ……。

 一誠って確かに他の男と比べて極端にその手の欲が薄いけど、完全に興味がないわけでもないのはなんとなく察せられるのよ。

 

 

「お前の時代である『未来』の者達は除外し、我等の内、強いて言うなら『コイツとなら別に構わない』と思う者はいるのか?」

 

「けほけほ、確かに気になるかも……」

 

「くっだらねぇな……。そんなの居る訳ねーだろ」

 

 

 でも一誠は馬鹿馬鹿しいと一蹴する。

 その言葉に冥琳はじーっと一誠を見てるし……私も私でちょっと寂しいなと思うし……。

 

 

「そうか……。

では忠告だけはしておくぞ一誠?」

 

「は?」

 

「実はな、炎蓮様に聞いてこいと命じられてな。

それでもし一誠が『居ない』と答えたら炎蓮様が直々にお前を――」

 

「お前だ! お前で良い! てかお前が良い! そうあのババァに言っとけ!」

 

「お前とは誰の事だ?」

 

「冥琳だよ! 取り合えず話を合わせろ! じょ、冗談じゃねぇ……あ、あのババァに喰われたら洒落にならねぇ……!」

 

 

 その一言を引き出す為にわざと話したのかと思うと、なんというか思ってた以上に冥琳って一誠を気に入っているのね……と思うわけで。

 

 

「しかしただ言うだけでなぁ。

あの方の勘は鋭いし、嘘だとわかれば余計――」

 

「ぐ! じゃあそれっぽく見せとけば良いんだろ!?」

 

 

 すっごい出し抜かれた感があるわ……。

 

 

「ど、どうすりゃああのババァを誤魔化せるんだよ?」

 

「常にくっついてるとか? ああ、私一人だけだと恐らく炎蓮様は『じゃああの五、六人入っても関係ねーだろ』とでも言うだろうから……」

 

「なっ!? ぐ、お、おいお前……てかもういいや、雪蓮も手伝えや……? た、頼む」

 

「へ? わ、私?」

 

「あのババァがその手の話に飽きるまでの間でいいから頼む……!」

 

「えーっと……」

 

「………………………」

 

 

 冥琳が私に頭を下げる一誠の後ろからちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべているのが見えたし、その時点でそういう意味なのだと理解した私は即座に了承した。

 

 

 

 

 

 下手を打てば色々な意味で炎蓮に喰われるという情報を獲た一誠は必死に逃れようと、考えもなく冥琳の話に乗ってしまった。

 とにかく仲良くしているのだと示せば良い……そう考えるのだが、未だにまともに話せる相手が冥琳、雪蓮、小蓮、炎蓮と微妙に少なすぎる。

 

 

「それもこれもとっとと俺がフルパワーに戻れないからだ……ちくしょうめ」

 

 

 頭を抱えながら部屋を出た一誠は、ブツブツと言いながら廊下を歩く。

 その際、孫家の次女こと蓮華とその忠心である思春とすれ違ったのだが、一誠と鉢合わせして『あ……』と言いつつなにか声を掛けなければという様子だった蓮華にたいして、下を向きながらブツブツと言っていた一誠は気づくことなくスルーのような形でそのまますれ違うことに。

 

 

「やっぱり私って地味すぎて視界にすら入らないのかしら……」

 

「奴の目が腐っているだけです!」

 

「でも姉妹の中では私だけ未だにまともに話もできていない……」

 

 

 意図せず傷つけている事に気づかず困り果てながら歩き続けていると、再び誰かとすれ違う。

 だが今度は自分の名を呼ぶその声に覚えがあるせいか、足を止める。

 

 

「独り言を漏らしながらどうした一誠よ?」

 

「…………」

 

 

 それは一誠にババァ2号と呼ばれたのが会話の始まりとなり、気づけば妙に一誠にたいして過保護となった雷火という女性だった。

 雷火が覗くようにこちらを見上げてくるのにたいして一誠はといえばそういえばこのババァも会話が多い奴だった………と一瞬先程の話をしつつ頼んでみようかと考えたが、必死に首を横に降ってその考えを捨てる。

 

 

「な、なんでもない……」

 

「なんでもなくはない顔じゃろう?

なにか困りごとか? お前さんはなんでもかんでも独力で解決しようとする。

儂が手を貸せることなら貸してやるぞ?」

 

 

 どんな雑用だろうが律儀にこなす姿を知るせいか、それとも一誠の性格を把握して自分なりに受け止めたせいなのか、他の者からすれば嘘みたいに優しく聞いてくる雷火が手を伸ばし、一誠の頭を撫でる。

 

 

「ふむ、儂に言いたくないのか? それならば何があったのかは聞かぬよ。

だからと言って一人で気負うでない、お前さんはよくやってくれている」

 

 

 本人に一切の自覚なないが、ここに来て見た目とは真逆過ぎる強大な母性を覚醒させていたりする雷火はそのまま一誠の手を引いて場所を移動する。

 

 

「よし、ここなら陽もよく当たるし、うたた寝をするのにちょうど良い。

ほれ、膝を貸してやるから一眠りするが良い」

 

「い、いやしねーよ、別に眠くは――」

 

「ほれ!」

 

「ぅ……」

 

 

 いやがる一誠に無理矢理膝枕をした雷火は、寧ろ雷火を知るものが見たら恐怖を覚えるだろう母性にな満ち足りまくった笑みを浮かべながらなんとも言えない顔をして雷火の顔を見ていた一誠の頭を撫でる。

 

 

「まことに不思議な男じゃ一誠は。

こうしているととても満ちた気分になる」

 

「……」

 

 

 忘れかけていた情熱を思い出させる不思議な少年との一時を雷火は楽しむのだった。

 

 

「……………」

 

「む、眠ったか……。やはり疲れていたのじゃな。

まったく、なんでもかんでも独りでやろうとしおって……」

 

「……………」

 

「せ、せっかくだしちと試してみようかのぅ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、あんな場所で雷火らしくもなくナニをしてたんだよ?」

 

「ち、違う! い、いや違わないかもしれんがそうじゃない!! 儂はただ疲れていた一誠に膝を貸していただけじゃ!」

 

「貸しただけでああはならないでしょう?」

 

「だ、だって無防備な顔で眠るものだからつい儂もうとうとと……」

 

「うとうとしながら素っ裸になるのかのぅ?」

 

「ひ、人肌が一誠にとって心地良いと思っただけじゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーの浮気者! 雷火にシャオのイッセーが取られたぁ~!!」

 

「本当になにもないのか?」

 

「ねーよ……」

 

「無いって事はないでしょうに。

そうでなければ雷火の首だの胸だのなんだのがあんな虫に刺されたような痕だらけには――」

 

「本当に知らねーよ!」

 

 

 外の堀が少しずつ埋められる虎達との一日。

 

 

 

 

 




補足

イケイケドンドンな方々ばっかりなのでコミュ障が一部消し飛ばされている。そんな話だった。

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