色々なIF集   作:超人類DX

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これもある意味でゲームオーバー的な


風紀委員長だった者

 

 

 

 少年は守ると決めた少女との関係に対してどこか逃げ続けた。

 のらりくらりと逃げ続け――破綻した。 

 

 

 少年はこの日より少女の前から姿を消した。

 

 

 その腕に付けた風紀の腕章と共に……。

 

 

 

 最早自分は不必要……。もう自分の役割は終わったのだからと。

 

 その気持ちを抱き始めた頃から、少年の持つ燃えるような精神という名の個性も、少女を守りきれたという満足感により徐々にその性質を失っていく。

 

 

 その性質と、『死を常に覚悟し続けた鍛練』によって持つことになった、守るべきだった少女と不器用だったその父と同じ雷鳴の力―――赤き雷撃の力以外は……。

 

 

 

 

 

 

 

 その後の少年の行方は最早誰にも掴めない。

 

 誰も彼も、そして彼をよく知る少女達ですら、去っていった少年の消息はそれから掴めなかった。

 

 まるで最初から存在していなかったかの様に――されど少年が確かに居たという思い出の記憶だけは後悔と共に強く残って……。

 

 どれだけ探しても見つかりはしない。

 

 

 何故なら少年はもうこの世には居ないのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はっきり言ってしまえば性格は決して良いものではないのかもしれない。

 わざわざ相手を徹底的に煽り散らしてからニタニタと叩きのめしたりとかなんて日常茶飯事だし、敵と断定した者への攻撃性は周りがドン引きする程に苛烈。

 

 本人も言っていることなのだけど、総合的に見ればまぎれもないチンピラ気質――それが僕の知るあの人。

 

 心を許した相手であろうと、あの人が死ぬ思いで守り通した相手にですらそういったチンピラ気質で虚勢を張り続け、弱さだけは見せたがらなかった強がる野良犬のような人。

 

 だから最後の最後で先輩は先輩が守ると誓った女性にフラれた。

 

 そして――居なくなってしまった。

 

 

 そこからの人生は思い出したくもない。

 弱虫で、臆病者だった僕に手をさしのべてくれたあの人の事は僕だって大好きだった。

 そんな先輩を失ったその後の人生なんて無意味で無価値だったのだから。

 

 でもある日唐突に起きた『奇跡』は僕の無意味で無価値と化した人生に再び火が灯った。

 何故なら、僕達の前から姿を消した先輩を見つけられたのだから。

 

 ………先輩が先輩となる原因となる――確か先輩のお姉さんを自称していた人が存在しない過去といえる場所に先輩は確かに居た。

 

 ………名前も顔も違うものになっていたけど、そんなものは些細な事でしかない。

 燃えカスのように小さくなっていたとしても、その精神根だけはまだ完全に腐っていなかったのだから。

 

 何故過去の時期へと遡っているのかなんてこの時点でどうでも良かった。

 色々と事情が変わっている僕の仲間の悪魔の人達も、ただ普通に生きている中身は違う先輩の事も正味二の次だ。

 

 僕はやっと捕まえられたんだ。

 朱乃先輩との関係を破綻させたことで完璧に腑抜け、しかも別人の姿となって過去の時間で生きていたイッセー先輩を。

 

 もう昔のように風紀委員長ではないけど、間違いなく僕にとってのイッセー先輩を。

 

 朱乃先輩がイッセー先輩を拒絶した時から僕はもう遠慮をする気なんてなくなっていた。

 この時期は臆病者な引きこもりである筈の僕を見て驚くイッセー先輩を見た時から僕は決めていたんだ。

 

 何があってもこの人を独りにはしないと。

 

 それが僕の今の生きる意味なのだ。

 

 

 

 

 

 何故こうなったのかなんてのはわからない。

 どうしてここに居るのかもわからない。

 

 ただ確実に言える事は、自分は最早兵藤一誠でもなければ風紀委員長でもない、ただの一般人だということ。

 

 だから姫島朱乃とは面識もない。そして今後とも関わることもなく、無意味に生きて無意味に死ぬと思っていた。

 

 だが思わぬ再会のせいで、そして自分が消え失せた後色々の吹っ切ったせいか妙にアグレッシブとなっていたかつての『後継者』のせいで別人として過去を生きる少年は再び悪魔達と関わる事になっていくのだった。

 

 

「やっぱり先輩はその格好が一番ですぅ!」

 

「…………………お、おう。

やっぱりお前、変わったな……?」

 

 

 かつて兵藤一誠であり、とある学園の風紀委員長として活動した少年は、自分をある意味でよく知るただ一人の存在との不意なる再会により、かつて自分がそうだったように、今度は引っ張り出される形で再びとある学園の生徒となっていた。

 

 

「僕より先輩の方がその腕章が似合いますよ。

後は正式に風紀委員会の座を手に入れられれば……」

 

「……」

 

 

 何でこうなった……? 予期せぬ再会から、間髪いれずに拉致同然に近寄りたくはなかった町へと連れてこられ、なんの裏技を使ったのか最早無関係でしかなかったかつて通っていた学園へと転入させられ、かつては自ら選んだ道のひとつである風紀委員長の格好をさせられている。

 それもこれも、妙に主張が強くなっていた後輩にてかつての自分の後継者である『少女』のせいだったりするのだが、その本人は再び後輩として傍に居られる事が余程嬉しいのか、とってもニコニコと『風紀委員専用制服』を着ている少年を見つめていた。

 

 

「あのなギャスパー……突っ込む暇もなく俺をまたここに引きずり込んだのもそうだけど、俺はもう見ての通りお前の先輩でもなければ委員長でもないんだ」

 

 

 その特殊過ぎる生まれにより、性別までもがあやふやだった後輩ハーフ吸血鬼は自身の力をほぼ制御することに成功したせいなのか、周期的に変わってしまう性別を完全に女に固定している。

 名をギャスパーというこの実はハーフな吸血鬼の金髪赤目の少女は、今は顔も名前も別人である少年の無気力な声に対して気分を害した様子もなければ寧ろ何故か嬉しそうな反応だ。

 

 

「知ってますよ。

先輩は確かに今はイッセー先輩じゃないです。だって兵藤一誠という名の人は部長の兵士としてここに居ますからね」

 

「………」

 

「でもそんなのは僕には関係ないことなんですよ。

名前も姿も違ったところで僕にとっての先輩であり委員長はアナタだけなんです」

 

「………………」

 

 

 そう、つまり僕だけの……と妙に怖い台詞をにこやかに吐くギャスパーにかつて姫島朱乃とその家族によって再起した兵藤一誠だった少年は困った顔だ。

 

 

「今更俺に何を期待したところで、期待通りにはなれないんだぞ」

 

「別にそれでも良いです。

僕はただ、もう先輩の傍から離れたくないだけなんですから……。

それに、ふふ……ここでは副部長ともなんの関わりも関係もない。

あはは♪ じゃあもう遠慮もいらないでしょう?」

 

「お、おい……」

 

 

 懐いた犬のように身を寄せてくるギャスパーにかつて一誠だった少年は引き続き困った顔だ。

 自分がかつて皆の前から消えた後の事は知らなかったが、再会から今現在に至るギャスパーの妙なアグレッシブさを見るに、変な方向に突っ切らせてしまったのだとわかるのだ。

 

 

「この時代では兵藤先輩のお姉さんらしき人が居ないせいか、普通の家庭で育っていました。

だから副部長との関わりも薄かったみたいです」

 

「そうらしいな。

それを聞くと、やっぱり俺の人生はイレギュラーだったんだろうよ――安心院なじみの言っていた通りだよ」

 

「でも少しずつ副部長や部長――それと先輩からしたらびっくりでしょうけど、あの小猫ちゃんも兵藤先輩に好意を持ち始めてます」

 

「………あ、そう」

 

 

 どうもこの時代のギャスパーは引きこもりではないらしく、今の時点で部長と呼ぶ存在である悪魔の眷属として活動をしているらしい。

 それを最初に聞いた時は、『あのビビりのギャスパーも成長したんだなぁ』と思ったが、先述の通りおかしな方向に吹っ切れてしまっている。

 

 

「お前が俺を拉致同然にここまで引きずり込んだせいで、向こう側からは不審者みたいな目で見られるんだが……」

 

「昔の先輩もある意味そんな認識をされてたじゃないですか? ……主にセクハラ関連で」

 

「ぐぅの音も出ねーなオイ」

 

 

 名も姿も別人となり、本当なら誰にも関わる事なくひっそりと生きていくつもりだった少年は、かつての後継者によって引っ張り出され再び駆け上がるのか。

 

 

「えへへ、他人の血なんて生臭くて吸いたいなんて全く思わないけど、先輩のは別です。

顔は違ってもこの血の味は昔と変わらない……」

 

「くっ!? お、お前な……! 勝手に吸うなや……!」

 

 

 ギャスパーとしての今の『仲間達』が見たら驚くであろう、妙に艶かしい表情で顔をしかめる少年の首筋に歯を突き立てて吸血される今の段階ではまだわからない。

 

 

「お前のせいでこの世界の自分自身に敵意持たれてるっつーのに……ぐっ」

 

「ちゅ……んっ……! 僕が固定で女の子だからですよ多分……はむ……!」

 

「お、おいギャスパー? お前は何時まで吸うつもりだよ……?」

 

「もうちょっと……もうちょっとですぅ……」

 

 

 ただひとつ言える事は、今現在彼は悪魔としてのギャスパーの主と仲間達から完全に警戒されまくっているという点だった。

 基本的に必要な理由がなければ引きこもった生活ばかりの筈の彼女が何故か見知らぬ男を連れてきて、犬のように懐いているのだから当たり前だし、なんなら吸血を嫌うで認識されているギャスパーが彼の血だけはねだるように吸血するのだ。

 

 

「部長、またギャスパーがこの前連れてきて転校させて欲しいと頼んできた奴と二人で空き教室に居ました……」

 

「そう……その顔からしてなにをしてたのかは想像つくけど……」

 

「あ、あの野郎にギャスパーが妙にエロい顔と声で……!! クソォォォッ!!」

 

「やっぱり。

あのギャスパーがあそこまで食い下がってこの学園に転生させてくれと言うくらい、何故か彼に執心してるようだけど、いったい何時どこで知り合ったのかしらね……」

 

 

 腑抜けた元委員長とぶち抜きハーフ吸血鬼元副委員長。

 

 

 

 東雲誠一(元風紀委員長・一誠)

 

 無神臓(腑抜け)

 雷の力(静電気レベル)

 

備考

 根で己の好意を疑い続けた事で守ると誓った少女との関係が破綻し、その後姿を消して腑抜け続けた元風紀委員長。

 

名も顔も全てが違う存在となって過去へと戻り、腑抜けた生活を続けていたら、自分を真の意味で知る者の一人であるギャスパーとどこぞの駄菓子屋でバッタリ再会。

 

 一瞬で見抜かれた挙げ句うもはも言う暇もなく拉致同然に引っ張られ、あれよあれよと再び駒王学園に通うことになってしまった。

 

家族は存在せず、その日暮らしで生きていた模様。

 

腑抜けすぎて無神臓は貧弱化しているし、かつて堕天使の父娘を見て自力で会得した雷の力も静電気レベルにまで落ちている。

 

故に、アグレッシブ化しているギャスパーに今現在は力でも負けている。

 

 一切姫島朱乃との関わりもなく、ギャスパーのせいで寧ろ得体の知れない変質者みたいに思われている模様。

 

 

 

 最近の悩み。

 アグレッシブになってる後輩がエロい声と顔しながら容赦なく吸血してくる。

 

 

 

 

 

 

 始まらない。




補足

自称姉とのイザコザは終わらせています(物理で)

その後色々あって盛大にフラれた後、腑抜けとなってしまった的な。


その2
最早誰の遠慮も要らないせいか、アグレッシブなギャー君。

風紀委員長シリーズの設定として、不安定な肉体故に定期的に性別がころころ変わる体質なのですが、その性質を完全に制御するまでに到達したアグレッシブなギャー君は現在完全に女子で固定させたらしい。

理由は――まあお察しで。

最近隙あらばちゅーちゅーしようとするらしいのですが、吸血鬼的に吸血行為とはつまり……………

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