色々なIF集   作:超人類DX

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まあ、ヘンリーさんが普通にラインハットに帰還してるし、大后さんもこの時点で脱落しとるし、進軍される謂われもないわけで。

てか、されたら間違いなくラインハットががが……


壊滅しないサンタローズでの少年期

 

 

 

 コンビニもゲームセンターもデパートもない生活をするようになって早13年。

 今頃俺から『兵藤一誠』の全てを奪った奴がどうなっているのか………という事も考えなくなってきた。

 

 結局は弱いから奪われたのだし、何故俺だったのかについても今更わかったところで意味も無い。

 俺が一誠という名の男であった事は共に今も居てくれるドライグが知っている――それだけで一誠として生きた証として残る………それで充分だ。

 

 

 それに今の俺は父さん――パパスの子であるリュカだ。

 

 実は父さんがグランバニアという国の王様で、俺も王家的な存在だったと10歳の誕生日に聞いた時は流石に驚いたりもしたけど、俺が誰かの上に立つような器ではないし、父さんには弟――つまり俺にとっての叔父が居て、叔父には娘―――だから従兄妹がいると聞いている。

 

 だからつまり俺は間違いなく王様にはならないしなれない。

 

 俺って信じられない程に『カリスマ性』ってのがないからねぇ。

 俺の取り柄は誰かをぶちのめしてやること。

 

 

 つまり――『兵士』なんだ。

 

 

 

 旅をしながら周期的にサンタローズの村へと帰還する父と息子。

 本来の時空軸ではパパスのと奴隷となったラインハットの王子により権力を増大させた大后によって進軍され、サンタローズは滅びる事になるのだが、この物語に関して言えばそんな気配はなく、小さくとも活気のある村は健在だった。

 

 

「よーし、リュカ! 今度はそっちに運んでくれ!」

 

「うっす!」

 

 

 そんな村で13才となったリュカは背も伸びた事で少しは大人へと近づいた。

 そして10才を過ぎた頃から村の仕事をパパスと共に手伝っていた。

 

 旅を経て更なる成長を果たしたリュカの力は村の大人全員分以上のものであり、巨大な丸太運びなんかも軽々と運ぶ。

 

 

「お疲れリュカ。ほれ、お駄賃だ」

 

「別にそういうつもりで手伝ってた訳じゃあ……」

 

「いいっていいって! パパスさんもリュカも今まで何度も助けてくれたんだ。

これでも少なすぎるくらいだ。ほら、なんか好きなものでも買いな?」

 

「うっす……」

 

 

 自主的な手伝いを経て村人達からお駄賃を貰うようになったリュカは、当初全力で断っていたのだが、毎度毎度パパスやリュカにタダで手伝って貰っていたというのもあってか、村人達は少ないながらもお駄賃として渡すようになった。

 

 精悍ながらも渋みを増したパパスはそんな村人達の好意に対して『ありがたく受け取りなさい』と言うので受けとるようにはなったのだが、正味貰っても使い道がないので地味に貯まる。

 

 何故ならリュカは武具といった装備を一切持たないのだ。

 あってもゲレゲレやおやぶんゴーストの防具を買ってみる程度なのだが、その武具も大概武者修行のさいに戦う魔物が落とすもので賄えてしまうのだ。

 

 その装備にしても、最近拾った『おうじゃのマント』と『ドラゴンのつえ』のスペックが割りと高いことに気付いたので、ますます使い道を失うことになる訳で……。

 

 

「坊っちゃん、やはりこの杖とマントは坊っちゃんが装備した方が良いんじゃないかと……」

 

「なんで?」

 

「いえ、確かにこのマントは不思議な程頑丈ですし、杖の方もあっしの呪文の力が跳ね上がりはしやすが、どうも分不相応と言いますか……」

 

「分相応か不相応かは俺が決める。

ゲレゲレと俺とお前の中じゃお前が一番魔法使いっぽいナリだし、呪文の精度も今じゃあお前が一番だからな」

 

「はぁ……」

 

 

 本来の時空軸ではリュカ専用となる装備だが、このリュカは魔法使いというよりは武道家なので、そういった装備を拾っても仲間にしている魔物に全部与えてしまう。

 最近拾った王者のマントしかり、ドラゴンの杖も、数年という歳月をゲレゲレとリュカとの鬼畜修行を経て壁を越えたおやぶんゴーストが装備しているのだが、渡された本人は確かに強力な装備ではあるもののしっくり来ないらしい。

 

 

「なんだ? この前ぶちのめした顎割れ野郎(ゲマ)に馬鹿にされたからか?」

 

「ま、まあ……低級魔族には過ぎたものだと言われやしました」

 

「じゃあその低級魔族のお前に秒で八つ裂きにされたあの顎割れはミジンコ以下の虫けらだ。

そんな雑魚の戯言なんぞ無視しろ無視、あんまり褒めるのもアレだが、お前は魔法に関しては俺達の中では抜きん出てるんだ。

もっと胸張れや? な?」

 

「ぼ、坊っちゃん……」

 

 

 しかしリュカはそんなおやぶんゴーストのネガティブ発言に対して気にするなと、引き続き杖とマントを装備するように命じる。

 本物のリュカとは別ベクトルに魔物に対する適応力というべきか、カリスマ性を無自覚で持っているのかもしれない。

 

 

「ぐすっ……最初は奴隷のようにコキ使われると思っていたのに、ゲレゲレのようにあっしの事も強くしてくれて……修行は鬼畜だけど」

 

「あーあー、泣くな泣くな。

お前って割りと涙脆いよな……」

 

「うう、この杖とマントに恥じない坊っちゃんの手下になってみせますぅ……ぐすっ」

 

「おー、期待してんぜ?」

 

「にゃー!(ま、ご主人様の一の子分は俺だけどなっ!)」

 

 

 

 おやぶんゴーストの進化はまだ終わらない。

 

 

 

 

 

 

 8歳の頃、当時6歳であったリュカと共にゲレゲレを助ける為にレヌール城での冒険をした宿屋の娘であるビアンカは、15歳となった現在、パパスと共に旅をする為に村を留守にしがちな幼馴染み(ビアンカがそう思っている)の姿を、しょっちゅうアルカパの町を抜け出してはサンタローズの村の影から覗くようになった。

 

 

『あーぁ、肝試しなら大人のムチムチしてるお姉さんとしたいのに、なんでこんなチンチクリンなんぞと……あーめんどくせー』

 

 

 6歳のリュカに言われたその一言。

 そしてレヌール城での冒険にて、本当は怖くて怖くてたまらなかった自分の前を年下なのに歩いて、襲い掛かる魔物達をちぎっては投げまくるその小さな背中に少しずつ惹かれていった。

 

 だからこそビアンカは誓ったのだ。

 リュカの言う、ナイスバディな大人のお姉さんになってやると。

 

 その為の努力はしまくった。

 町に住む大人のお姉さんにどうしたら成長できるかを聞いて実践もした。

 その結果、まだ幼さが残りつつも立派なレディへと成長する兆しが今のビアンカだった。

 

 子供っぽいツインテールから髪を伸ばして落ち着きのある大人を思わせるサイドテールに変えてみた。

 そんな美女への進化を予想させる美少女へとなっていくビアンカだが、同時にちょっとだけ変な行動も多くなった。

 例えば今のようにゲレゲレやおやぶんゴーストと戯れているリュカを物陰からひたすらジーッと見ていたり。

 

 

「おや、キミはアルカパの宿屋の娘さんのビアンカちゃんじゃないか? こんなところで――」

 

「リュカ……リュカ……リュカ………」

 

「Oh……」

 

 

 聞こる訳もない声量でひたすらリュカの名を連呼しまくったり。

 酷い時は寝ているリュカの枕元に立って『はぁはぁ』としたりと……どうしてこうなってしまったのかわからないレベルの残念な美少女へとなってしまった。

 

 そんなビアンカの奇行を両親や村の住人、サンチョやパパスといった大人達は知っているのだが、その対象となるリュカもリュカで割りと酷いので敢えて見守っていた――いやスルーをした。

 

 8歳になった頃にリュカとパパスが村へと帰還した際、ビアンカに旅の話をしたのだが、その時リュカが考えもなしにデボラとフローラの話をめんどくさそうにしてしまったせいなのだから。

 しかもそんな二人とは違って、ポワンなる女性の話をした際のリュカの態度のせいで余計拗らせたのだから。

 

 

「あのリュカ君?」

 

「あ、酒場のお姉さん。なにか? ………ま、まさか俺のチェリーを!? だ、ダメですよ! 俺のチェリーはポワン様にあげると決めてるので――」

 

「そうじゃなくて、向こうからビアンカちゃんが見てるわよ?」

 

「へ? ……あ、そっすか。

なんだビアンカかよ……ちぇ」

 

 

 だが流石にそんなビアンカの奇行を見てられなくなっていたお節介な村人のお姉さんが、助け船を出すつもりでリュカにビアンカが居ると教えてあげる。

 年上好きが徹底してるせいか、同年代以下に対しての態度がわりと適当を極めてしまっているリュカは、村の入り口の柱からじーっとこっちを見ていた金髪碧眼少女に気づき、めんどくさそうな顔をしてしまう。

 

 

「余計なお世話かもしれないけど、あの子も寂しいんだと思うの。

だから少しは優しくしてあげて?」

 

「えー? ……まあ、お姉さんがそういうなら」

 

 

 これで徹底的な塩対応ならビアンカもかかわり合いを持とうとは思わなかっただろう。

 だがリュカの場合、同年代以下の者への態度が適当なだけで、困ったことがあると悪態をつきつつもしっかりと助けてくれる。

 

 

「おーい、ぽんこつビアンカー? 普通に見えてるんだけどー?」

 

「はぇ!? あ、や……ぐ、偶然ね!? ちょ、ちょっと通りかかったらあなたが居たから……! おほほほほ!」

 

(これが所謂『拗らせたニンゲン』という奴ですかい………)

 

(にゃー。『ビアンカお嬢も不憫にゃー』)

 

 

 ビアンカの困った思春期はまだまだ続きそうだった。

 

 

「そ、そうだわ! 最近新しい呪文を覚えたの! ほら見て! メラガイ―――ふみゅ!?」

 

「ポンコツかお前は。

そんな呪文をここでぶっぱなしたら村が壊滅しちまうだろうが」

 

(あ、私今リュカに押さえ込まれてる…………あは♪)

 

 

 遠くから覗くといった奇行に走るビアンカだが、本人が目の前に居るととたんにテンパる。

 テンパりすぎてつい最近会得した呪文を村の中でぶっぱなそうとしてしまい、リュカに口を塞がれながら組伏せられてしまうのだが、年下に思いきり力負けしているというシチュエーションにちょっとした悦を感じてしまう。

 

 

「ご、ごめんなさい。

褒めてくれると思って……」

 

「この前もメラゾーマを何十連発して近くの山をぶっ飛ばしちまったんだから気を付けろよ?」

 

「うん……」

 

 

 解放されたビアンカはしゅんとするが、別にリュカは怒っている訳ではない。

 何故か4年くらい前から『私も修行を一緒にしたい』なんてデボラとフローラみたいな事を言い出したのでやらせてみた所、デボラやフローラのように少し時間は掛かったが彼女もまた壁を乗り越えた領域に一歩進んだ。

 

 まあ、流石にデボラのように徒手空拳にも対応できる領域とまではいかなかったが、それでも並の相手なら一人で対応できるだけのレベルではあるとリュカは思う。

 

 

 

「パパスさんとサンチョさんは?」

 

「父さんは洞窟に隠した天空のつるぎの様子を見に行った。

サンチョのおっちゃんは飯作ってる」

 

「そっか、じゃ、じゃあリュカは? 時間とかある?」

 

「んー、ゲレゲレとゴーストとの修行も今日は終わってるし、後は最近手に入れたポワン様写真集を眺めるからひまでは――」

 

「じゃあ暇ね!? そうでしょう!?」

 

「だから暇じゃな――」

 

「暇ったら暇ね!? 絶対に! ねっ!?」

 

「あ、あぁ?」

 

 

 ここ最近、既に閉じてしまっていた妖精の村からベラがやって来て、『ポワン様ポワン様うっさいからこれで我慢しろ』と渡されたポワン様写真集に大満足中であるリュカの暇じゃない発言を言わせない勢いで、ビアンカはがっつりとリュカの腕を握る。

 

 

「絵本読んであげる! 膝にのせてもあげるわ! ねっ! ねっ!?」

 

「目がこえーよ。

つか体格の差的に無理がありすぎるし、別に今更絵本なんて……」

 

 

 目を血走らせるビアンカにちょっと引いてしまうリュカは嫌だと言うのだが、嫌だと拒否すればするほどリュカの腕からミシミシと嫌な音が聞こえてくる。

 

 

「うー! 読むの! 読むったら読むの!!」

 

「め、めんどくせ、また始まった……」

 

「坊っちゃん……。

言うとおりにしてあげたらどうですかい?」

 

「そうにゃー、ご主人様が応じてあげたらお嬢もおとなしくなるにゃー」

 

「えぇ……だってポワン様の写真集読みたい――――あ? おいゲレゲレ? 今お前喋ってなかったか?」

 

「にゃー?」

 

「あれ気のせいか? チッ、わかったよ……ったく。

これだからガキは……」

 

「えへへ……♪」

 

 

 わりと普通に喋った気がしたゲレゲレとおやぶんゴーストに言われて嫌々頷くリュカは、その前に何がそんなに嬉しいのか、はにかんでるビアンカに村の外へ出ろと言う。

 

 

「本を読んで貰う前に、少し相手になってくれ。

さっき唱えかけたじゅもんも気になるしな」

 

 

 そして村から数キロは離れた平野にて首の関節を鳴らしながらビアンカに組手の相手になれと言うと、何故か目を見開きながら驚くビアンカはキョロキョロと辺りを恥ずかしそうに見渡しながら俯く。

 

 

「え、そ、それってお外で……? しかもこんな何もない平野で相手って……。

い、良いけど、ちょっと恥ずかしいわ……」

 

「は?」

 

 

 遂にはもじもじとするビアンカにリュカは『なんだコイツ?』と変なものでもみるような顔だ。

 すると突然俯いてもじもじとしていたビアンカが意を決したような顔をするや否や、来ていた緑色の質素なドレスローブのような服を脱ごうとし始める。

 

 

「…………お前なにしてんの?」

 

「え?」

 

「いや『え?』じゃなしに」

 

「だ、だってここでその……リュカの相手をするんでしょう?」

 

「そうだけど、なんで脱ごうとしてんの?」

 

「え?」

 

「え?」

 

 

 当たり前のように普通に止めたリュカだが、さっきからビアンカと微妙に話が噛み合わない。

 

 

「え、だ、だってお父さんが本棚の奥に隠してる本には、そういう方法で大人なことをするって……」

 

「……………………。本棚の奥に隠してる本ってお前、それまさか」

 

「ほ、本の内容だと凄いその……激しいのだけど、私、初めてだから優しく――」

 

「ちげーわポンコツ!? 組手の相手をしろって言ってんの!」

 

「はぇ?」

 

 

 そういう意味ではないと言われたビアンカは、当初ポカンとなるが、徐々に勝手に誤解していたのだと理解するとみるみると顔が茹で蛸のように真っ赤になる。

 

 

「そ、そうだったの!? わ、私てっきり……! ち、違うのよ!? そんなはしたない訳じゃないのよ!?」

 

「つーか普通に考えろよ。俺がそんな事をお前に言うと思うか?」

 

「だ、だって……」

 

「何が悲しくてお前みたいなむっつり残念お子様にそんな真似せにゃいかんのだ。

俺の初めてはポワン様とだって決まってんだよアホめが―――」

 

「………め、メラガイアー!!!」

 

「ぬぉわっ!?」

 

「リュカのばか! リュカの鈍感! リュカの年増好きィィッ!!! メラガイアー(30連発)!!」

 

「す、すげぇ! あのメラガイアーって呪文、あきらかにメラゾーマ以上でさぁ! しかも苦もなく連発してる!」

 

「にゃー(殆ど今のはお嬢の勘違いなんだけどなぁ)」

 

 

 この日、サンタローズから数キロ離れた平野に大規模な破壊跡が残る事になる。

 

 

「ギラグレイドー!!」

 

「!? あの時デボラが使った奴を……! そうか、ビアンカめ、聞いただけで独自に扱えるようにしたのか!

ははは、ちょっとはやるようになったな? よーし、燃えてきたァ! 行くぜドライグ!!」

 

『あのデボラだフローラとかいう小娘達もそうだが、このビアンカと言う小娘も不憫な……』

 

 

 

 こうしてある意味忘れられない思い出は積み重なっていく。

 

 

 

 

 

 

 そして……。

 

 

 

「メラガイアー!」

 

「イオグランデ!!」

 

「ギラグレイド!!」

 

 

 

「ぎょぇぇぇっ!? な、なんだこの小娘共は!? あ、あのリュカとかいうガキに続いてコイツらも異常だ!?」

 

「ひぃぃっ!? 逃げましょうゲマ様!!」

 

「こ、このままでは死んでしまいますぅ!?」

 

「ぐ、あの低級魔族共といいとことん私を苛つかせ―――あ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファイナル―――――

 

「奥義・ギガクロス―――

 

 

「「「あ、おわた………」」」

 

 

 

「ドラゴン波ァァァッ!!」

 

「ブレイクッ!!!」

 

 

 

「「「ギエピー!!?」」」

 

 

 シリアスの権化だった例の三人衆の未来はお笑いぽんこつ組になるのかもしれない。




補足

帰還してはその旅の話にデボラさんだフローラさんだポワン様だ連呼されてたらこうなりました。

対抗意識燃やしたらめっさパワフルになりました(ぽんこつ度も上がった)


この時点ではまだ山奥の村には引っ越してません。

おかみさんもダンカンさんも元気だし

その2

おやぶんゴースト、何故か5最強クラスの装備を貰ってしまう。

……この時点でおやぶんゴーストは単独でゲマをぶちのめるようになってます。

ゲレゲレ? 通常攻撃が平均で400越えるようになったよ。


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