パパスさんはぬわー! しません。
となれば後は…的な話をダイジェストっぽく
本来の人生を失った少年は、皮肉な事に別世界における歴史を知らず知らずの内に変えた。
その人生の果てにあるものが何なのかは神であろうとも解らない。
ただ確実に解る事は――
「良いかゲレゲレ、お前は多分でっかい虎に成長する。
だがでっかくなるだけじゃあダメだ。でっかくて強い虎になれ」
「にゃー」
「と、いう訳で今日もトレーニングだぞゲレゲレ。
…………つー訳で今からゲレゲレの相手をしろ」
「ぼ、ぼぼ、坊っちゃん、勘弁してください! そのキラーパンサーの子供は明らかに異常でさあ! 普通に戦ったらあっしが食い殺されてしまいますぅ!」
「だったら今この場で俺にぶち殺されるか、ゲレゲレの修行相手になるかを選べや?」
「うっ!? ま、魔王より魔王してるぞこの人間のガキ――ひでぶっ!?」
「よーし、良いぞゲレゲレ。
そうやって素早く敵の急所を食いちぎれ!」
「ふしゃー!!!」
「HEEEEYYY!! あァァァんまりだァァアァ~!!
AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!! おおおおおおれェェェェェのォォォォォうでェェェェェ
がァァァァァ~~~~!!」
個を一度は失った少年が、ある意味『生きる意味』を見つけて、その心を燃やしまくっている。
「今日はここまでにしておいてやる。
心配しなくてもちゃんと回復させてやるし、相手になってくれた礼もする」
「い、生きてて良かった……」
ラインハットの国での一件後、父を失う事もなく奴隷にもならなかったリュカはサンタローズの村へと帰還し、次の旅の準備期間の間を使ってレヌール城の一件から引き取る事になったベビーパンサーことゲレゲレに、己の戦闘技術を叩き込んでいた。
といっても、元々のスペックが良いのかラインハットの王子が誘拐された事件の際の初陣営の時点で豚と馬の魔物に対して致命傷を負わせるだけの攻撃力を兼ね備えていたようで、それを見ていたリュカは本格的にゲレゲレを鍛えてみる事にした。
そしてその実戦修行の相手がレヌール城の件でパシりになる代わりに見逃してやったおやぶんゴーストであり、どこに逃げても捕まってはゲレゲレの修行相手になっていた。
「ほれ、ベホイミだ」
「うぅ……もう少し優しくしてくれてもバチは当たらないと思うのですがね坊っちゃん?」
「これでも優しくしてやってる方だ。
それに、ゲレゲレの相手になってるお前も前より強くなってるだろ?」
「ま、まあそれを言われたら確かに最近はメラゾーマを唱えられたりはしますがね……」
「それに飯も食わせてやってるし、金も渡してるだろ?」
キラーパンサーの子供の修行相手になれと言われた当初は舐めてかかっていたおやぶんゴーストなのだが、そのベビーパンサーの強さが明らかに異常であり、何度も何度も一撃で死にかけていたおやぶんゴースト。
当然そんな目にあわされているのだから、リュカに反発するのもしかたないと思われがちだが、意外な事におやぶんゴーストは不満を口にすることはあれど、こうして応じている。
理由はひとつ、人間の子供とは思えぬ暴君さに怯えたりはするものの、言われた事をこなせばそれ相応の報酬をリュカが与えてくれるし、何なら最近はゲレゲレと同じように鍛えてくれたりすらしてくれので、レヌール城でお山の大将をしていた頃よりかなり強くなっている。
「リュカ坊っちゃん~ そろそろ食事の時間ですよ~!」
「おっと、もうそんな時間か……」
「その様で。
ではあっしはこの辺で……」
「は? なに言ってんだお前は? お前も食っていけよ? サンチョのおっちゃんにはお前の分の飯も作ってくれって頼んでんだからよ?」
「へ?」
加えてこのリュカは、暴君だし鬼畜だし容赦しない悪魔じみた子供なのは間違いないのだが、逆を言えば魔物である自分に対しても偏見の無い態度だった。
「い、良いんですかい? あっしは……」
「もう既に父さんもサンチョのおっちゃんも、なんならこの村の人達もお前の事は知ってるんだから気にすることなんてねーよ。
そもそもゲレゲレの修行に付き合わせてるのはコッチだしな、ほれ行くぞ」
「にゃー! (オラ、黙って付いてこいや子分)」
「ぼ、坊っちゃん……!」
当然のように魔物である自分の分の食事も用意してくれているリュカに、おやぶんゴーストは鬼畜な命令だなんだという事を忘れて感激していた。
感激し過ぎて家出少年のようにグスグスと泣きながら小さな背中に付いていく。
(ぐぅ、このオレ様がこんなガキに……! で、でも悪くねぇ気分だ……ぐすっ)
世間ではそれを飴と鞭による調教と呼ぶのだが、リュカ本人にそんな自覚もなければおやぶんゴーストも気づいていない。
こうして少しずつおやぶんゴーストはゲレゲレに続くリュカの子分へと変わっていく――のかもしれない。
息子が最近ベビーパンサーに続いてまどうしのようや魔物を引き連れ出している光景に、パパスは魔界へと連れ去られた妻を思い出しながら、サンチョの用意した食事を食べつつ、リュカに次の旅についてを話す。
「準備が出来次第、次の旅へと出ようと思うのだが」
「何時でも良いぜ父さん?」
その身に龍を宿している息子の頼もしい言葉に、パパスは成長を感じながら満足そうに頷く。
「今度の旅も少し長くなりそうだ。
それと漸くお前を本当の故郷へと連れていく」
「? 本当の故郷?」
「ああ……お前は強くなった。
それでもまだわしにとっては子供だが、今のリュカになら……」
「??」
「………まあ、それは旅のお楽しみだな、ふふふ」
今のリュカになら本当の事を話せる。
出生、リュカの母について……そして旅の目的を。
こうして新たな旅が始まり、その旅の中でリュカは父の悲願を……そして母についてを船の中で知る。
「つまり、母さんは死んでなんていなくて、どこかで生きていると……」
「ああ、わしが旅をしていた理由はお前の母さん――マーサを探す為だった」
「そっか……」
やっと父の事を、母の事を知ることができたリュカはそんな父の子である意味をやっと掴む。
「言うまでもないよ父さん。
俺も母さんを探す手伝いをする」
一誠ではなく、リュカとしての生きる意味を。
「ちなみになんだけど、母さんってやっぱし美人?」
「当然だ」
「ほほー……? そりゃあ何が何でも探さないとねぇ?」
その生きる意味を掴んだ少年は世界を回りながら更なる次元へと突き進む。
「坊っちゃん! ここはあっしが……!」
おやぶんゴーストはバギクロスを唱えた!
「どうです坊っちゃん!?」
「少しはやるようになったな」
「でしょでしょ!?」
暴君な子供により鬼強化の道を歩むおやぶんゴーストだったり。
「ねぇそこのアンタ」
「んぁ? ……って、なんだ子供か」
「アンタだって子供だし、見たところ私より年下でしょう? そんな事よりそんな危なそうな魔物となにしてんのよ?」
旅先で出会う、早すぎる出会い。
「修行? つまんなそうな事してんのね……」
「そらお子様にはつまらん事だろうよ。
んな事よりさっさと家に帰んなよ? お父ちゃんとお母ちゃんが心配するぜ?」
「いーのよ私は。
パパとママは妹に構ってて忙しいだろうし。
それよりアンタ暇そうだし、ちょっと付き合いなさいよ?」
「え、嫌だ」
我の強そうな子供とのちょっとした時間。
「え、なんなのキミ? ひょっとして家が金持ちとかなのか?」
「そこら辺の家よりはお金持ちだと思うわ。
だからしょっちゅう変な連中に拐われそうになるし……。
でもアンタが蹴散らしてくれたから一応お礼は言っとくわ」
「うっわ……可愛くねーガキだな……」
ロリコンっぽい誘拐犯に拐われそうになったので、流れでぶちのめしてお助けしてあげたり。
「デボラ!! 一体今までどこに行っていたんだ! 心配したんだぞ!?」
「ごめんなさいパパ。
さっき拐われそうになったけど、この小魚のリュカが助けてくれたのよ」
「は? 小魚……?」
「た、助けた? む、キミはもしや先程見た旅の親子の……?」
「へぇ、どうも……」
なんと、この私が好きともうすか!? のおじさんと出会したり……。
「いや、本当にお礼とか要りませんので……」
「なに遠慮してんのよ? 一応私を助けたんだから相応の返しをしないと私のプライドが許さないわ」
「えぇ……? それならポワン様によしよしとかして貰いたいし……」
「は? 誰よそれ?」
流れで強引にお礼をされたり。
「この子が私の妹よ。名前はフローラ」
「こ、こんにちは……」
「はぁ、どーも」
「キミのお父さんにはさっき話をしておいたから、今日は存分に楽しんでも良いんだよ?」
「………。(あれ、あの壁に飾ってある盾ってもしかして父さんの言ってた天空の盾ってやつじゃあ……)」
その最中、発見してしまう早すぎる母を救う鍵のひとつ。
「ぽー……」
「えっと……なに?」
「はっ!? な、なんでもありませんわ……!」
「??」
「どうしたのよフローラ? やけに大人しいじゃない?」
「ほ、ほんとうになんでもないの! う、うぅ……」
なぜがフローラなる少女にガン見されて……。
「ねぇ、リュカってリュカのパパと旅をしてるんでしょう? この町にはどれくらい居るの?」
「へ? あー……それは父さんに聞かないとわかんないけど、多分もうしばらくは……」
「!!? そ、それでしたらリュカさん! 明日も――」
「それならちょうど良いわ。
明日から私もアンタの修行ってやつに付き合うわ」
「えぇ? ただの親切心でいうけど、今のキミじゃ普通に死ぬぞ?」
「今日みたいな事にまたなったら面倒だし、自分の身は自分で守りたいのよ。
アンタは小魚なんだから私の言うこと聞けば良いのよ、返事は『yes』か『はい』か『よろこんで』だけよ」
「………………可愛くねーガキだなお前」
微妙に懐かれてうざがったり。
「………? なによフローラ?」
「……ねえさんのいじわる」
「へ?」
「?」
なんか拗ねる妹だったり。
「わ、私もしゅぎょーしてほしいです……!」
「なんだこの姉妹……? 微妙にうぜぇ」
『……まあ、子供だし大目に見てやればいいだろ』
自己主張しないと思いきや意外と食い下がってきたり。
こうして旅先でしばし滞在することになった町で、変な姉妹との時間が過ぎていく。
「い、痛い痛い痛い!? あ、アンタもう少しレディには優しくしなさいよ!?」
「へちゃむくれの小娘をオレはレディとは呼ばねぇ主義だ。
それに修行とはこんなもんなんだよ」
「りゅ、リュカさん! 見てください!『イオナズン!!』」
「ほら、温室育ち気味の妹の方が根性座ってるんじゃねーの?」
「こ、小魚のくせに……や、やってやるわよ!!」
なんだかんだ自分も子供なのに子供には割りと甘いので自衛手段(過剰)を叩き込んであげたり……。
「は? アンタ好きな人が居るの?」
「だ、だれなんですか!?」
「ポワン様っていう人だよ。
ふっ、君たちのようなお子様とは雲泥の差以上の素敵なお姉さんさ……ふひひっ!」
こうして父を失い、奴隷となる運命から抜けた物語は色々と前倒していく――のかもしれない。
「や、やりましたぜ坊っちゃん! ゲレゲレとの修行の末に坊っちゃんの言う『壁』を乗り越えることができやした! これがその成果です………『ビッグバン』!!」
名前負けしなくなりつつあるゴーストの運命とかもある意味……。
「ポワン様に膝枕して貰いてぇ……」
「………うー」
「チッ、またその女の話を……。
今は私たちと遊んでるんだから他の女の話ばかりしないでくれない?」
「良いだろ別に……はぁ……会いたいなぁ……」
「「………」」
少年期・中盤編
補足
ラインハット兵によるサンタローズ村の破壊フラグは消えました。
そしておやぶんゴーストはゲレゲレの後に仲間化しました。
そしてゲレゲレの修行相手にさせられてるせいで地味にパワーアップしていきます。
その2
奴隷じゃないしぬわー! でもないので、旅が続行され、ロリなデボラさんとロリなフローラさんと出会したりもするかも。
んで、なんか微妙に懐かれたりね。
その3
そんな二人に対してポワン様のことばっか話すから、ちょっとムカッとされてる