元ネタは―――割りとマイナーなのか?
遠い未来かもしれない。
遠い過去かもしれない。
それとも遥か彼方のどこぞの世界での事なのかもしれない。
とにもかくにもどこぞの世界にて美味いものを好きなだけ食って、好きな事をして、自由気ままにその日を楽しく生きる為―――つまり自由の為に生きてきた三人の少年が居たそうな。
あまりにも自由で、あまりにも強いその少年達の行動は他の者から見たらエキセントリックの極みにあるのかもしれない。
されど少年達はそれでもフリーダムに生きた。
それもこれも、偶然孤児となった少年達を拾った堕天使の男が元凶だったりもするし、そうではないのかもしれない。
とにかくそんな少年三人と不良堕天使が世界のどこかに住んでいて、あまりの非常識極まりない自由さに匙を投げつけたどこぞの誰かが追い出すように約四名を世界から追放した時、色々な運命の歯車的なそれがぶち壊れる事になる―――そんな話だ。
ここはどこかの人間界のとある県、とある町のとある学舎。
かつて霊山なんて言われていた山中にひっそり気味に建てられる私立高校には、とある一般人には知られない秘密があったりする。
そんな秘密が眠っている学校の正門前に佇む、この学校の受験に落ちたとある少年が居るのだが、それは今はまるで無関係であり、場所はその学校の校長室から始まる。
「今年の本校への入学者は、昨今の少子化も伴って去年よりも更に減ってしまいました。
つきましては、予てより打診していた『夜間部』との合併の話をする為に、貴方に足を運んで頂きました」
学校の校長室の椅子に座る老婆は、普段も穏やかであるし腰も割りと低い性格なのだが、今日に限れば通常よりもかなり気を使った様子で、ソファに腰掛けながらグデーっとしている後ろが黒髪で前が金髪である男性に視線を向ける。
「良いんじゃねーの?
「…………」
そう言いながら無遠慮にお茶を啜る男性に老婆はこくりと頷く。
見た目の年齢こそ自分の方が年上だが、実の所老婆がまだ可憐な少女の頃から彼は教師だったし、その当時かり現在と一切変わらぬ見た目だった。
「当然合併後はお前が校長なんだろう? そろそろ俺も引退したかったし、是非そうしてくれ」
「貴方が引退をして隠居を決め込むにはまだ早いように思えますがね。
では承認を得たということこちらで手続きをさせて頂きます。
所で……合併に辺り、彼等を通わせてはどうでしょうか?」
「アイツ等をだと?」
「ええ、彼等は学校を通った事が無かったと記憶していますし……年齢的にもちょうど良いかと」
「本人達に通う意思があれば別に良いとは思うが……」
そんなちょいワル風な男性が初恋の相手だったりする老婆は、本当に今でも変わらぬその姿に生物としての違いという意味もあり、密かなる寂しさを感じるのだった。
それぞれ血の繋がりは無いが、保護者だったし育ての親だった者からいきなり呼び出されたかと思えば、『生徒手帳代わりにもなるそれ』を渡しながら『明日から通え』と言われた三人の少年は、個人的には着ててもあんまり似合ってない気がしてならない学生服姿で、実は学校の創設に当たってバックアップをしていたりする義父に言われるがままに、その高校の正門前に立っていた。
「今更学校に通う意味ってあると思うか?」
「無いとは思うが、アザゼルに言われてしまったのだし、通ってみる価値はあるんじゃあないか?」
「聞けばこの学校で提供される飯は美味いらしいからな」
暗めの茶髪の少年。
暗い銀髪の少年。
漆黒の黒髪の少年。
合わせて三馬鹿と呼ばれた事もあった三人の少年は、案内の教師が来るまでは正門の前で待機しろという言葉に従い、適当にくっちゃべりながら待っていた。
「お前の事だから、現役女子高生と仲良くなれると大喜びすると思ったが一誠?」
「いやー、ガキの頃はそうだったかもだけど、同年代になっちまった今じゃ魅力をあんま感じないんだよなぁ。
それよりヴァーリはどうなんだよ? 授業なんて退屈でしかねーぞ?」
「それくらいは我慢できるさ。
寧ろ俺はこの学校に通う女に神牙がやらかさないかが微妙に心配だ」
「ふっ、俺がそんな事をする訳がないだろう? 俺が求めるものはひとつ! この学校の学食を腹一杯食うことだ!」
一誠と呼ばれし茶髪の少年、ヴァーリと呼ばれし銀髪の少年、神牙と呼ばれし黒髪の少年はヘラヘラと他愛のない話をしていると、出迎えの教師がやって来た。
「…………。やはり夢ではなかったし、校長の冗談でもなかったのか」
その教師は三人で駄弁っている三馬鹿をみるなり、いきなり嫌そうな顔をしており、少なくともそんな顔をする程度には三人を知っている様子である。
「あれ、柊のおっさんじゃん」
「そういえば柊は教師だったな」
「つまり、案内役は柊がやるのか。
相変わらずの仏頂面でなによりだ」
「…………………」
その嫌そうな顔をする男性教師にたいして、三人の少年は一切物怖じもせず、寧ろ面白い玩具がやって来たとばかりにニタニタと、年長者への敬意の欠片も見当たらない、舐め腐った態度をするので柊と呼ばれし男性教師はその時点でキレかけた。
「呼び捨てにするな! 今日から全日制の生徒になる以上、今より俺をきちんと先生と呼べ!!」
「すぐキレると頭痛くなんぜ柊センセ?」
「アンタも若くはないんだからな、血圧も高めなんだろう柊センセ?」
「だから眉間の皺が取れなくなるんだぞ柊センセ?」
「こ、この凶悪小僧共が……!」
知り合ってからこの方、何をしてもヘラヘラして敬意のひとつと払われた事がない柊は噴火寸前となる。
しかし、校長には『丁寧にご案内してください』と言われたのもあるし、腹は立つがこの三馬鹿共は柊もかつて世話になった恩師の子達なのだ。
まあ、その恩師からは『生意気言ったらひっぱいてと良い』と言われてたりするのだが、ここですぐに手を出しては教師としても大人としてもますますナメられる。
「とにかく校長室まで案内する……!
お前達、事前に渡しておいたプレートは持っているだろうな?」
「「「うぃー」」」
怒りを噛み殺しながら、この学園の敷居を跨げる条件であるプレートなるものの有無を確認する柊に、三馬鹿達は間抜けな返事をしながらポケットからそれぞれプラ板のようなものを見せると、柊は『ではついてこい悪ガキ共』と三馬鹿の引率をするのだった。
「そういや娘さんは元気か?」
「ああ……」
「この学校に入れたんだろ? 別に聞いてもないのに何度も入れたって連絡されまくったぞ」
「……………。娘に近づいたら殺すぞ」
「それはアンタの娘に言ってくれないか? 多分顔見られたら犬みたいに寄ってくる……」
「それでもだ!! お前らみたいな悪ガキ共と関わって娘が非行に走るかもしれんのだぞ!!」
「いやぁ、あの天然娘はそうはならないんじゃないかな?」
高校生の娘も居る歳になるというのに、相変わらず狂犬じみてる……。
と、三人の義息子達を怒鳴り散らす教え子の声を聞きながらぼんやり思う青年アザゼル。
「ご苦労様です柊先生」
「ぜぇ、ぜぇ……!
こ、この悪ガキ共の相手をするだけで疲れますよ……」
「なんつーか、お疲れだな……」
「お見苦しいところをお見せしてすいません、アザゼル先生……」
並大抵の器がなければこの三人を制御するなど不可能に近いと思っているアザゼルは、既に疲れきった柊に労いの言葉をかける。
「さて、兵藤一誠君、ヴァーリ・ルシファー君、道外神牙君。
こうして会うのは暫く振りですね?」
「どうも」
「アザゼルから聞いたが、アンタが俺達を学校の生徒として入れようと提案したんだって?」
「ええ、このままではプータローになってしまうのではと心配になりましたので。
アザゼル先生はご自身のお子さん達は完全放任主義ですし……」
「自立できる程度の生活力は教え込んだつもりだぜ?」
フリーダムが服着て歩いてるような悪ガキ達に穏やかに言う校長。
こうして三馬鹿はかつてアザゼルが到達し、以降は出入りするようになった全く違う世界にて学生をすることになるのだった。
そして……時を同じくしてこの学校に落ちたとある少年が正門前に出没し、それを察知した柊の勘違いにより――色々と始まる事になるまで後少し。
「えっ!? う、嘘!? ヴァーリくん? それに一誠くんと神牙くんも……!? どうして学校に!?」
「ん? アイカか……」
「それが将来ニートにならないようにって無理矢理入れられたんだよ」
「ニートではなく冒険家になるつもりなのにな」
「そ、そうだったんだ? 驚いちゃったよ………って、何で三人とも私から離れようとするの?」
「キミの親父さんに近づいたらぶっ殺す言われたから」
イジリ甲斐のあるおっさんの娘と再会したり。
「他校の生徒が侵入したから、捕まえろだと?」
「捕まえた者はプレートのランクアップ? なんの事だ?」
「え、アンタ等そんな事も知らないでこの学校に入ったの?」
「一応特殊な学校だってのはアザゼルから聞いたが……」
「アザゼル? その名前って確かこの学校の創設者だったような……」
そのおっさんからの校内放送を聞いて目の色を変える生徒達に首を傾げたり。
「お、お父さんを……許さない!!」
「ちょ――まっ……!?」
流れで知り合った子達と探してたら、その侵入者が割りと暴れまわっており、父を傷つけたと激怒した娘が『魔法』でぶちのめしたり……。
そしてその他校の生徒が連行されたと思いきや、何故か生徒として転校してきたり、その生徒が教師クラスのプレート持ちで騒がれたおかげで自分達の事は刹那で忘れられたりと……色々あった。
「い、いきなり抱きつかれてつい……」
「一誠と実に話が合いそうだな彼は」
「あ、やっぱりアンタそういうタイプだったわけ?」
「否定はしない。
しかしっ! 少なくとも高校生なんてお子様には興味はねぇな。
やっぱ時代は女子大生とかOLのお姉さんだぜ! ヌハハハッ!!」
娘の方がどういう訳かセクハラを受け、割りとマジでショックを受けるので天然同士で気の合うヴァーリが、そこら辺に生えてたタンポポを引っこ抜いて渡してあげたりと微妙に学生として溶け込めてたり。
「聞いても良いか? その、単なる興味本位なんだけど、柊とヴァーリってどういう仲なんだ?」
「ド天然同士で波長が合うっぽいんだよ。
会った時からあんな感じだったっけ」
「ま、マジか……」
ハッタリと体術でギリギリの学園生活をしている主人公少年が落ち込んだり。
「お、お前っ! 女子大生の姉ちゃんを紹介してくれるって約束はどうなってんだ!? その約束の代わりに俺はわざわざお前のサポートをしてたってのに!」
「い、いやだからその目の前のが俺の姉貴――」
「嘘だ!!! 嘘だ! こんなチビが女子大生な訳がねぇ!! どう見ても小学生だろうがっ!? 俺を騙しやがって! 貴様は地獄の九所封じの刑に処して――」
「ばっ!? 姉貴の前でその言葉は禁句だ!!!」
逆に主人公と微妙に波長が合う年上フェチは、その主人公の姉の見た目に絶望して禁句を連発しまくったり……。
「う、うっそだろ……? 姉ちゃんの空手が通用しない奴が居るなんて……」
「俺の夢は儚く散った。
ぐすっ……マジで泣きてぇ……」
見た目に反して強かったりする主人公(姉)を秒で黙らせてしまったり。
「う、嘘は言ってないだろ? 姉ちゃんの歳だって19だし」
「ぐぐ……エロ本の表紙に騙された気分とはまさにこの事だな」
「誰がエロ本よ!?」
「うっせーわこの合法ロリが!! 俺はもっとムチムチしてる人が良いんじゃい!!」
こうして三馬鹿達の変な青春は続いていくのだ。
「お、おいイッセー……頼むからこれ以上姉ちゃんを強化するのはやめてくれ。
お前と喧嘩する度に、信じられないパワーアップを繰り返してるし、負ける度に俺がリベンジの実験台にされるんだ……」
「ゴリラと結婚しとけ合法ロリめが……とでも言っとけよ。
つーかあの合法ロリ、俺に喧嘩吹っ掛ける為だけにこっちに来る頻度が多くなってるんだが……」
「真正面から負かしてくる男なんて今まで居なかったから、相当悔しいみたいなんだよ」
「ほー……?」
「こ、この……!」
「まだわからないようだからこの際ハッキリ言ってやろうか合法ロリ? 無駄なんだよ無駄、俺に勝とうだなんてな」
「と、年下の癖に生意気にー!!」
「ほれほれどうした? 合法ロリ相手なんぞ指一本で十分だぜ……!」
「だぁぁっ!? だから何で煽るんだよっ!?」
「ありゃダメだ、一誠の中で完全にスイッチが入ってしまってる」
「簡単に言えば柊の親父さんに対するそれに近いな、お前の姉さんへの対応は……」
「そ、それで負ける度に俺が地獄を見るってのに……」
「今までは強引に押し込める相手としか戦わなかったからわからないんだろうがな。
重要なのは相手の気配の強さから動きを掴む事だ。
アンタは目で追おうとするだけだから俺についてこられないんだよ」
「ぐっ……」
「ば、バカヤロー!! そういうアドバイスが余計に強化させちまうってのに!!」
「諦めろ」
「少しはマシになったのかと思ったがね。
そろそろ俺に出させてくれよ本気を? なぁ、おねえさん?」
「む、ムカつく……やってやるわよ!」
終了
補足
エムゼロってなんか気づいたら連載終わってたような気がする。
実は割りと好きだったんだよなぁ。
ダブル・アーツとか
その2
お察しの通り、主人公の姉(合法ロリ19歳)と土手で決闘するようなハートフル青春を送る的な話で、その横で主人公がハラハラしたり、天然達に振り回されたりする……感じ。
その3
本気出したら確実に心をへし折っちゃうので、そこは加減してます。
それでも余裕で返り討ち可能だし、なんならその分物凄い煽りまくる。