色々なIF集   作:超人類DX

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ネタ系の最後。

最後はこの二つ


TS編かマイナス編

 

 

 

 自分で自分を終わらせた一誠(オトコ)マコト(オンナ)へと生まれ変わった時から、オレの役目は終わったのだと思っていた。

 

 誰もオレ達の価値も危険性も知らない世界で、両親に育てられながら成長していくという当たり前が享受できるこの世界はとても充実していたし、友達とも出会えた。

 

 そんな当たり前の日々から一転し、(イッセー)であった頃に近い世界へと飛ばされてしまった訳だけど、やることは変わらない。

 必ず元の場所へと戻る……。

 

 ただ、それだけの事なんだ。

 

 

 

 

 きっと自分はこの世のカスなんだと思っていた日々に光を与えてくれたのは、そこら辺の男なんかよりも余程やんちゃな女の子だった。

 

 屈折していた精神を真っ直ぐにしてくれた。

 弱い自分に戦う術を教えてくれた。

 

 周りからどんな悪意を向けられても、彼女は決して変わらずに自分の傍に居てくれた。

 

 だから強く在りたいと思うようになった。

 常人からしたら正しく異常者と言えるだろうあの子と対等の目線に立つ領域を目指して。

 そして、これからも変わらず肩を並べながら先を歩むために。

 

 

 異世界での経験ではなく、幼少期の出会いと経験により心身共に進化をしている少年の淡い想いは今も変わらない。

 

 

 

 

 

 揺れぬ想いを持つがゆえに、ストーカーじみた執着を抱くクラスメートを明確に拒否した少年こと南雲ハジメは、共に旅立つ幼馴染みの少女こと兵藤命と『心配だから』という理由でついてきた社会科教師の畑山愛子。

 

 そこにこの世界の生物の特徴と技能を再現する形でマコトに宿っていた龍が実体化して物理的な意味で旅に加わったとか、オルクスの治下深くに長年封じられていた吸血鬼の少女ことユエだったりかが付いてくる事に。

 

 

「3 8 2 1」

 

『Jet Sliger. Come Closer』

 

 

 マコトとドライグが存在しない本来の世界ならば、生き残る執念により人格から髪の色まで変化させた南雲ハジメとは違い、その人格も髪の色も変わること無く、更に錬金というこの世界に召喚された際に宿った天職をフルに駆使することで、明らかに世界観にそぐわないオーバーテクノロジーめいた武器を作成していた。

 

 

「出力系統にちょっと苦戦したけど、満足の行く領域にまではなんとか完成させたよ」

 

「おー……デケーな」

 

「ミサイルも発射できるんだよ。

ちなみに最高速度はおおよそ1300㎞」

 

 

 元々凝り性な性格なせいか、作る物が一々世界観に合わないものばかりなのだが、あまりにも楽しそうに見せてくるのでマコトは大体褒めている。

 とはいえ、このジェットスライガーなるホバーバイク的な乗り物に何十発も発射可能なミサイルポットを装備させるのはどうなのかと思う。

 

 

「それここで発射したらどうなるんだよ?」

 

「うーん…樹海の半分は焼け野原くらいにはなるんじゃないかな?」

 

「おー……」

 

 

 南雲ハジメの錬成スキルは既におかしな領域に到達しているのであった。

 

 

 

 

 

 人に宿る龍の帝王。

 聞けば異界を宿主たるマコトと共に生きてきたとの事らしく、その性格は口調こそ不遜めいたものがあるものの基本的にそこら辺の人間や亜人なんかよりは余程穏やかだ。

 永年封じ込められてきたユエにとって、ドライグの傍はまさしく居心地の良い場所なのである。

 

 

「なに? 旅について来たいだと?」

 

「は、はい! だ、ダメですか?」

 

 

 声は渋いけど妙に愛嬌を感じる。

 多少の我が儘を言っても聞いてくれる。

 

 ルーツを失っているユエにとってすればドライグという存在は己の存在意義を確かめられる拠り所にも近い。

 ただひとつ不満があるとするならば、ドライグ自身が一番に優先するのが宿主であり永年共に在り続けたマコトである事か。

 

 

「何故俺に聞く。

この旅の舵は基本的にそこで機械弄りをしているハジメの小僧かマコトに一任させているのであって、俺はあくまでマコトの一部でしかない」

 

「…………」

 

 

 マコトに関しては仕方ないとユエは思っている。

 何故なら見た限りではドライグとマコトが互いに思う感情は親子の情に近いものだから。

 だがもうひとつの不満は――このドライグ、己の真の姿がドラゴン故なのか、長いこと人という器に封じられてきたから自覚が極端に薄いが……割とモテる。

 

 

「よしっ! 完成だ!! これでイクシードチャージの反動に耐えられるよ!」

 

「樹海でかき集めた素材が役に立ったんだな?」

 

「うん! このツールの名を『デルタ』にしよう!」

 

 

 すぐ近くで、不思議な力を放つ銃型ツールを完成させたと喜ぶハジメを顎で指すドライグに対して、今回の旅の際に知り合った兎人族の少女ことシアは『うげっ』といった顔になる。

 

 

「は、ハジメさんは特に何も言わない気はしますけど、マコトさんは……」

 

「ドライグにベタベタしていたシアが悪い」

 

「ま、まあまあ……ちゃんとお願いすればダメだなんて言いませんから」

 

 

 その道中、シアがあまりにもドライグに懐いたせいでマコトには特に敵視されてしまっており、シアはマコトが割と苦手だった。

 しかしそこに関してはユエもマコト側であり、少し言い方が冷たく、愛子がなんとか間に入ってくれているおかげで崩壊は免れている。

 

 そういう意味では地味にバランスが取れたパーティではあるのかもしれない。

 そもそもハジメはマコトしか眼中にないので。

 

 

 

 あまりにも心配なので強引に旅に同行した教師こと畑山愛子は、自分よりも見た目という意味も含めた大人に属する男性(正体は龍)を見ながら、自分も大人なのだからと肩に力を入れている事が多い。

 

 

「人間には得意不得意がある。

ましてやどいつもこいつも我の強い連中を纏めようなんて誰にもできる訳ではない。

流せる所は敢えて流す術を覚えるべきだな」

 

「それで大丈夫なのでしょうか……?」

 

「あいつ等だって物の名もわからんガキではない。

………貴様は少々過保護が過ぎるんだよ」

 

「………………」

 

 

 ほっとくと誰も彼も我が道をいこうとする面子の間に挟まれて気苦労が多い愛子を見ていたドライグが少し前からこうしたアドバイスするようになった。

 それを受ける事で少しだけ肩の力を抜く事を覚え始めた愛子も最近は困った事が起きたらドライグに頼る事も増えた。

 

 

「本当にドラゴンなのですか? 下手な人間よりドライグさんの方が余程人間らしいと思います」

 

「長いこと人間の中に宿っていたせいだな。

まあ、一番はマコトと色々な経験をしたお陰だが」

 

「大人ですね……」

 

 

 見た目と容姿のせいで子供に間違われる事の方が多い愛子にしてみれば、ドライグの精神的な構えかたはまさに理想の大人像だった。

 

 

「いや、俺は所詮宿主がマコトの代になってやっと学んだだけに過ぎぬ無能だ。

それに、綺麗事を抜かしていても、俺が優先するのはマコトだ。

恐らく、お前達の誰かの命が危険に晒されてもな……」

 

「………」

 

「つまりだ、そこまでお前が気負う必要なぞない。

アイツ等もお前も、俺からしたら餓鬼だからな」

 

「が、餓鬼って言わないでくださいよぉ……」

 

「はっ! そうやって反応する内はお前もまだ餓鬼だよ。

ま、フィーリングで誤魔化せ」

 

「………」

 

 

 クスクスと笑いながらドライグに背中を軽く叩かれる愛子にとってドライグとはまさにそんな存在だ。

 

 

「む、ドライグ……アイコと何を話してるの?」

 

「あ? 大人同士の話だ。

ガキには関係ない」

 

「私だって大人……」

 

「大人だったら無遠慮に背中にしがみついては来ないんだよ……まあ、300年しか生きてないのならやはりガキだ」

 

「むむ……ドライグはたまに意地悪」

 

 

 

 元の世界に戻る為には、確定要素ではないにせよこの世界各地にある迷宮の奥深くに眠るなにかを解き明かす必要がある―――と、シア達兎人族の案内によりたどり着いた亜人の国に面する迷宮で知り得たハジメ御一考は、結局付いてくる事になったシアを新たに加えて別の迷宮を目指す為にオックスの町に来ていた。

 

 そして取り敢えず一泊しようという事で宿を取ることになるのだが……一悶着がそこで発生。

 

 

「だから私とドライグ、ハジメとマコト、アイコとシアで別々の部屋にすれば万事解決」

 

「ハジメと同じは何時も通りだから良いが、ドライグがオメーと同じとは言うじゃねぇかこんガキァ……。

やはり一度思い知らせてやる必要があるぜ……?」

 

「そうですよ!」

 

「……僕はそれでも全然良いんだけどなぁ」

 

「チッ……やはりガキじゃないか」

 

「あはは……」

 

 

 誰がドライグと同室になるかでさんざん揉める事になり、案の定ユエとマコトとシアが一触即発となって睨み合っていた。

 

 

「チッ、おい。宿代の節約もしたいから俺はマコトの中に戻るつもりだ」

 

「「えー!?」」

 

「それだ! ナイスだぜドライグ! はぁい残念でしたぁ! オレとドライグとハジメで残りはオメー等で決定でーっす! ひゃひゃひゃっ!」

 

「「ぐ、ぐぬぬ……!」」

 

 

 あっさりマコト側についたドライグの一言により、あっさり部屋は決まってしまうのだが……。

 

 

「ハジメ、交換して」

 

「ユエさんとアイコさんに囲まれて眠れますよ? 悪くないですよね?」

 

 

 今度はハジメが狙われてしまい、部屋を交換してくれとユエとシアに詰め寄られる。

 

 

「え、それは無理」

 

 

 しかしマコトにしか眼中がないハジメは当然あっさりと断る。

 結局ユエとシアは負け犬ヒロインのような敗北感を味わうようになるのだった。

 

 

「フハハハ! 年季がちげーだよ年季が! この負け犬共め!」

 

「「………」」

 

「ぬおっ!? な、なにしやがる――ひょえ!? や、やめろ!? オレの胸に――ひぇ!?」

 

 

 ただ、煽りすぎたせいでシアに後ろから羽交い締めにされ、ユエに最近また育ってしまった胸をめちゃくちゃにされるという、誰も得にならなそうなサービスシーンが展開されることになるのだが……。

 

 

 

終了

 

 

 

 

 揺れぬ精神により、求める領域に到達する為にあらゆる手段を講じる南雲ハジメにとってすれば、他人からどう思われようが知ったことではないのだ。

 

 

「すべてが許せない。

香織を傷つけた事も、お前という害悪のそんざいも……!」

 

「前者に関しては勝手に彼女が自爆しただけだろう? そんなに気にくわないなら僕等の事なんて放っておけば良かったのさ」

 

「黙れ!!」

 

 

 その我を貫く為に立ちはだかる障害も……。

 

 

「小僧、少しだけ力を貸してやる――――融合するぞ『ハジメ』」

 

「え?」

 

「俺とマコトが到達した領域で、マコト以外とは嫌だったが、気が変わった。

貴様になら少しだけ体験させてやっても良いとな――さっさと準備しろ」

 

「……………はは」

 

「あ? 何が可笑しい?」

 

「いや、可笑しいんじゃない、嬉しいんだ。

マコトのお父さんみたいなドライグに少しは認めて貰えたような気がしてさ……」

 

「…………くだらん。

それにお前ではまだマコトを守るには実力不足だ」

 

「わかってるよ―――けど、ありがとうドライグ」

 

 

 

 5 5 5 Standing by…

 

 

 

「何時か僕自身の力で絶対にそこに辿り着く」

 

 

 Awakening……

 

 

「ふん、期待せずに待っててやる」

 

 

 Welsh Dragon Fusion

 

 

 ハジメが作り上げた赤き閃光。

 ドライグが培ってきた赤き閃光がマコトという少女への想いによりひとつへと重なる。

 

 

「な、なんだ……その姿は……!?」

 

『悪いが、答えている暇はない。

……一瞬で終わらせる」

 

 

 コードネーム555

 ブラスター・ドラゴンフォーム

 

 

『Exceed Charge』

 

「『ハァァァァ…………ダァァァァッ!!!!」』

 

 

 

 

 

「え、オレは!? オレとフュージョンは!?」

 

 

 

 超ブースト・クリムゾン・D・スマッシュ

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 混沌から這い戻るマイナス達の場合。

 

 

 その行動や吐く言葉によって引きずり落とすマイナスは、南雲ハジメを綺麗に腐らせてしまった。

 そこには本来あるべきであった彼の精神は消え去り、あるのはただ、無責任で無気力で無関心の極致に達した新たな、そして生まれるはずのない過負荷(マイナス)だった。

 

 

「つまり、お前達は気が付いたらオルクスの迷宮の下層地点に居たと言いたいんだな?」

 

「ええ、いやぁ、ビックリしましたよ。

センパイと遊んでたらあんな暗くてジメジメした鍾乳洞みたいな所に立ってましたし」

 

「暫く二人でフラフラしていたら、ハジメ君が上から落ちて来ましてね。

彼から色々と話は聞きましたよ」

 

「そう、か……」

 

 

 その元凶であるマイナスコンビは、悪びれもせずち地上へと戻ってハジメをクラスメート達の元へと送り届けた後の事情聴取に応じるのだが、どんな生物よりも純粋に終わっている存在を前に異世界組の教育係りをしている騎士団長は吐き気を催していた。

 

 そして無事に生還したハジメはといえば……。

 

 

「イッセー君とソーナちゃん……あ、二人とも僕達より先輩なんだけど、あの二人が僕を助けてくれたのさ。

それで色々と教えて貰ったよ……お陰で吹っ切れることができた」

 

「そうなんだ……。それじゃあ戻ってきたらあの二人にお礼を言わないと」

 

『……………』

 

 

 落ちる前と生還した後の『あまりにも違う』ハジメの存在感に、生還をただただ喜ぶ香織以外の者達は薄気味悪いものを感じていた。

 

 

「香織、ちょっと良い?」

 

「? なぁに雫ちゃん? ごめんね南雲君、ちょっとだけ待ってて?」

 

「うん」

 

 

 そんなハジメを本能的に危険と察知した香織の幼馴染みにて親友である八重樫雫が香織を呼び、ぬぼーっとしながら前を見ているハジメには聞こえないようにと香織と話す。

 

 

「南雲君の様子がおかしいとは思わない……?」

 

「?? おかしいって何が?」

 

「言葉では上手く表せないけど、明らかに行方不明となる前の南雲君とは違う気がするのよ……」

 

「私はそうは思わないけど……」

 

 

 そう言いながら香織と一緒にチャンスだとばかりに近づいてきた檜山一派に向かってニコリと笑い、その瞬間死人のような顔色になってその場で胃の中のものを盛大に吐く檜山達を見てゾッとなる雫だけど、それでも香織には何時ものハジメにしか見えないらしい。

 

「檜山達に何をした!?」

 

「何もしちゃいないよ。

嫌だなぁ? 檜山達にタコ殴りにされてる時はそうやってしゃしゃり出てなんて来なかったくせに――――――急に良い子ぶるなよ?」

 

「しゃしゃり出て……!? 俺はそんなつもりじゃ……」

 

 

 

 

 

 

「………あれを見ても?」

 

「だから何も変わらないって。

変な雫ちゃん……」

 

「…………」

 

 

 檜山達の様を見て光輝が介入しても、平然と今までなら言わなかったであろう言葉を吐くハジメを見ても何時ものハジメだと断言する香織に雫はただただ心配になってしまう。

 結局、異次元の気味の悪さを搭載したヘラヘラ顔のハジメを前に光輝もまた吐き気を催し、逃げるように退散した頃、恐らくはハジメをこうしたと思われる全ての元凶であり、本当の話なら自分達とは別の場所かはこの地へとやって来た別の学校の制服を着た男子と女子が姿を現す。

 

 

「イッセー君! ソーナちゃん!」

 

 

 ハジメよりも明確に生物としての嫌悪感を感じる茶髪の男子と黒髪に眼鏡をかけた女子の出現は、今まで体感したことなどある訳もなかった普通(ノーマル)の生徒達に絶大なる恐怖を与える事になるのだが、そんなことなと自覚してすら居なかったイッセーとソーナは、こちらへと転びながらも走ってきたハジメと話始めた。

 

 

「大丈夫だった?」

 

「多分大丈夫なんじゃないの?」

 

「あのメルドとかいう男性から話を聞かれてる最中、その場に吐きながら発狂してしまったけどね」

 

「そうなんだ。

それじゃあ二人はこれからどうするの?」

 

「別世界に来てしまったなら、戻れる方法もあるだろうから、それを探そうかなって。

最悪、この世界に来たという現実そものもを否定してしまえば良いけど、それはあくまでも最終手段だな」

 

「否定するということはこの世界そのものが消えてなくなるものね」

 

「うーん、確かに無関係なこの世界人達を巻き込むのは僕も心苦しいかも……(嘘)」

 

 

 一見すれば普通の会話なのかもしれない。

 しかしその放たれる雰囲気はどこまでも最低で、どこまでもえげつなくて、どこまでも最悪だった。

 

 

「取り敢えず適当にフラフラしようかなって。

多分この国は出禁にされるだろうし」

 

「あー……メルドさんの様子的にそうなるかな?」

 

「まあ、私達は気楽にやるつもりだわ。アナタは?」

 

「クラスメートの人達はどうも僕が生きていた事がショックだったみたいでね。

ご覧の通りアウェイ感が凄いし、僕も近い内に殺されるか追い出されるかのどっちかかなぁ……。

だから二人がフラフラするってのなら僕も混ぜて欲しいんだけど……」

 

「それは別に構わないが良いのか? 折角再会できたんだろ?」

 

「それにアナタの世界と私達の世界は恐らく違うでしょうし……」

 

「んー……君達の世界の方がなんとなく居心地が良さそうだし、どさくさに紛れて君達に付いてきたいって思ってたり? ダメかな?」

 

「後悔しないんならそれでも良いぜ?」

 

 

 誰も彼もがハジメ、イッセー、ソーナに近づくことすらできず、中には精神的に甚大なるダメージを負わされる。

 その中には光輝や雫といった者も含まれている。

 

 

「あ、あの……」

 

 

 たが、そんなマイナス達に話し掛けるのが香織だった。

 ハジメを助けてくれたソーナとイッセーにはどうしてもお礼が言いたいし、他の者は何故か怯えているのだけど、この二人が怖いだの気持ち悪いだのとは思えないのだ。

 

 

「ん? キミは?」

 

「随分可愛らしい子だけど、ハジメのクラスメートの子よね?」

 

「は、はい! その……お二人が南雲君を助けてくれたと聞いたのでお礼を言いたくて……」

 

 

 そう頭を何度もペコペコと下げまくるという行動に、香織をクラスのアイドル的な存在と認識しているクラスメート達はショックと驚愕のアクションをしており、逆にイッセーとソーナは、自分達を前にそんな行動に出れる香織を興味深そうにしげしげと眺める。

 

 

「えっと……?」

 

「センパイ、この子……」

 

「よく視ないとわからないけど、その素養はありそうね。

不思議だわ、プラス側と思っていたけど……」

 

「え、白崎ちゃんが……? まさか」

 

 

 言葉の意味はほぼ香織にはわからない。

 けれどハジメが驚いているということは何かがあるのだとだけは感じた。

 

 

「女の子だし、センパイにお願いして良い?」

 

「ええ、白崎さん……だったわね? 少し向こうで私とお話をしてみない? 少しアナタに興味があるの」

 

「へ?」

 

 

 そう人の良さそうな笑みを溢すソーナに香織は少し戸惑いながらも頷こうとする。

 だがその瞬間……。

 

 

「ま、待て……! 香織になにをする気だ……!」

 

 

 それまで見ているだけしかできなかった者達の筆頭である光輝が、香織を庇うように間に入ってくる。

 

 

「アナタ達が南雲を助けてここまで連れてきてくれた事は素直に礼を言いたいとは思います。

ですが、俺の大事な幼馴染みにおかしな事を吹き込もうというのなら遠慮して頂きたい」

 

「ちょ、光輝君! そんな言い方……」

 

「香織は誰にでも優しくしてしまう。

だけどこの二人は危険だ……!」

 

「危険だなんて……! 南雲君を助けてくれた人達なのに……」

 

 

 ある意味で光輝や今の言葉に同意した者達の推察は当たりだ。

 マイナス一誠とシトリーさんこと一誠とソーナは、文字通り世界そのものを――神や神によって転生した存在をも引きずり落として終わらせる事が可能な程の終わった存在だ。

 

 ましてやこの二人は、互いに抱く好意が本物かどうかを確かめる為だけに、互いの皮膚を剥がしあってるレベルなのだから。

 

 

「彼女はキミの恋人か?」

 

「幼馴染みだ……! だから幼馴染みとして香織は守る……!」

 

「守るも何も、別にその子に変な真似なんてしませんよ?」

 

「アンタ達は今の南雲と同じく信用できないんだ!」

 

 

 そう、吐き気を抑えながら言い切る光輝に対して、殆どの人間達は心の中で喝采した。

 

 

「ふむ、では仕方ないわね」

 

「信用できないなんて当たり前だしなぁ」

 

「………」

 

 

 そんな光輝に対してソーナと一誠はあっさり引き下がる。

 こうして第一波は防ぐ事が出来た…………………と思い込みたかった光輝達は明日には後悔する。

 何故なら、思っていた以上に香織の行動力が高かったのと、ハジメの傍に居られるのなら文字通り手段を選ばなかったのだから。

 

 

「僕はこれまでの事も、今の事も、これからの事も全てを受け入れる。

それがどんなに理不尽であっても、どんな冤罪であろうとも、どんな言い掛かりであろうとも………全ての不運を愛しき恋人のように受け入れる。

そして受け入れながらも醜くヘラヘラしながら笑って生きてやるんだ。

それをこの二人に教えて貰えたからね」

 

「素敵……」

 

「………へ?」

 

「やっぱり南雲君は凄い。

どんな目に合っても生きようとするなんて……やっぱり強いんだね?」

 

「もしもーし? 僕の話聞いてたかい? 強いってのは天之河達辺りの事であって、僕は単に抗うのを棄てて開き直ってるだけなんだけどね?」

 

「それでも! そんな強さがあると私は思うの! それに今の南雲君の方が余程カッコいいもん……!」

 

「………………。ソーナちゃんにイッセーくん、白崎ちゃんってやっぱり変だった」

 

「私がまだイッセーくんと会ったばかりの頃の気持ちに似ているわ。

あの当時はまだ彼も自覚する前だったからウザがられていたけどね……」

 

 

 

 ハジメと同じく、混沌から引きずり落とすマイナスの極悪さを知らなすぎた。

 ましてや自らその混沌の沼に沈もうとする者なぞ、混沌を知ってしまった時点で遅すぎたのだから。

 

 

「南雲君! いえ、ハジメ君! 私……ずっと前からハジメ君が好き……」

 

「え……あぇ?」

 

「だから……傍に居させてください……!」

 

 

 王宮を追い出され、町外れの廃墟に住み着き始めたイッセーとソーナのもとへと毎晩光輝達の目を盗んで訪ねる香織に様々な事を教えてしまう。

 

 

「昔のアナタみたいなリアクションね、ハジメ君は……」

 

「そりゃあねぇ……」

 

 

 

 時にはこういった事も……。

 

 

 

「私はよく裸にYシャツ一枚だけ羽織ったりしながらイッセーにひっつくわ」

 

「そ、それでハジメくんも意識してくれるでしょうか?」

 

「そこはアナタの手腕ね……。

まー多分、優しくされると惚れやすいのは私達の特徴だし、アナタなら大丈夫よ」

 

 

 お陰で最近戸惑う事が多いハジメはイッセーに相談するのだが……。

 

 

「白崎ちゃんが裸Yシャツで僕の部屋で待ち構えてるんだけど、どうしたら良いと思う? 試されてるのかな?」

 

「センパイがそっち方面まで教え始めるなそれは……。

てかハジメ君はどう思うんだよ、彼女の事……」

 

「今の僕にですから変わらないというか、寧ろこっちがわになり始めてるって意味では実に魅力的ではあるけど……」

 

「それは果たして本当なのかを疑ってるってか? よし、それならあの子に聞いてみな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ香織ちゃん?」

 

「なぁにハジメくん?」

 

「敢えて聞くけど、本当に僕の事が好きなんだよね?」

 

「うん……こうして居られることが他の何よりも最低に最高だよ?」

 

「……そう。でも僕はどうしてもキミ程の美少女に好かれてるなんて信じられないんだ。

だから――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――キミの全身をバラバラの肉片にしたいんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

「――――え?」

 

 

 

 

 

「バラバラになったキミの残骸を見ても果たして僕はキミが好きになれるのか。

そして反対にバラバラになった僕を見てもキミは好きなのか………前にソーナちゃんとイッセー君は互いの皮膚の皮を剥がして確かめ合ったんだって。

だからさ、僕はキミをバラバラにする。そしてキミも僕の事をバラバラにして確かめたいんだけど……」

 

 

 

 

 

 

「…………………」

 

 

 

 

 

 

「あ、やっぱり嫌だよね? まあ、それが普通って感覚だし――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「違うよハジメくん。

ナイスアイデアだと思っただけ。

実は私も少しだけ悩んだの。

私はひょっとしてハジメ君の見た目だけが好きなだけなのかもしれないって。

でももしハジメくんをバラバラにしてみて、その物言わない肉片だけになっても好きだと思えるのなら、私はもっと堂々とハジメくんを愛せる……」

 

 

 

 相談相手がそもそも間違いすぎて、最悪の展開へと発展。

 その結果、まずは既に行為自体に疑問すら持たなくなっていた香織が、手斧を使ってハジメをバラバラに血塗れになりながら解体する。

 

 

 

「ハジメ君の血。

ハジメくんの身体の一部。

ああ……ハジメくんの眼……あはっ、あっはははは……♪ 全然変わらないや。全部、全部が好き……♪」

 

 

 香織もまた急激に堕ちていく。

 それからイッセーの幻実逃否によりこの世に戻ったハジメもまた香織を………。

 

 

「そっか、これが好きって意味なんだね……。わかったよ、どうやら思ってた以上に僕はキミが好きになってたみたいだ」

 

「ふふ、嬉しいなぁ。

本当に私達って気が合うね?」

 

「うん……。

でも心臓に悪いというか、その内自重が効かなくなりそうだから、裸Yシャツで突撃するのは遠慮してほしいかも……」

 

「やーだ♪」

 

 

 

 こうして史上最低最悪のカップルが誕生してしまう。

 

 

「自覚はしてなかったけど、元からお互いに相性が良かったから加速的にそうなったに過ぎない」

 

「私達はあくまでも切欠よ? 行動に踏み切ったのはあくまで二人の意思」

 

「だから俺は――」

 

「私は―――」

 

 

 

 

 

「「悪くない。」」

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう。君たちが僕を苛めてくれた結果、僕はやっと気づけた。

これは皮肉でもなんでもない、正真正銘のお礼――」

 

「私も同じ。

皆のお陰で私はたどり着けた」

 

「だからキミ達は――」

 

「「何も悪くない。」」

 

 

 神をも引きずり落とすマイナスへと。

 

 

「わ、私が前から目を付けていたのに、この女ァ…!!」

 

「そんな事言われても、クラスが一緒でもキミと話なんてしたことないじゃないか……」

 

「ごめんね? ハジメ君は渡せないの」

 

 

 

 密かに同類意識を持っていたとあるクラスメートの女子が居るのかもしれない……。

 

 

「あの子、イリナに近いわね」

 

「あー……イリナちゃんねぇ」

 

「ちなみにだけど、カオリの友人は……ロスヴァイセね」

 

「そういえばハジメ君が事故ってその子を押し倒した時に、急に『責任取って結婚しなさい!!』って騒いでたっけ……? じゃあゼノヴィアちゃんは……」

 

「アレは単なる泣き虫なだけよ」

 

「………本人が聞いたらまた泣きそうだねぇ」

 

 

 本来の出会いすら壊れた世界の行く末は最早誰にもわからない。




補足

TS編は基本的にハジメがオーバーテクノロジーをポンポンと開発してしまい、ドライグはパパドラゴン。

そしてモテ期入る。




マイナス編は――最早根本的に話が混沌化してしまう。

恐らくはベリーハード二天龍と同じく香織さんがぶち抜いてきます。

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