色々なIF集   作:超人類DX

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変身シーンだなんだというお約束だろうがぶちかまして勝つべし。

フェニックス家の家訓のひとつなり


再燃翔

 

 

 俺がオレでなくなったあの日、俺は初めて宿っている龍が居たことを知った。

 

 その龍は宿主である俺にまだ死ぬことを許さず、奪い取られたままで良いのかと右も左も全然わからない俺にそう激を飛ばした。

 龍の望みは対となる白い龍との宿命を終わらせる事。

 

 その為には宿主である俺に死なれては困るし、強くなって貰わなければならなかった。

 だから俺を生かそうとあれこれ言ってきたのだけど、本当に子供でしかなかった当時の俺からしたらはた迷惑な話でしかなく、強くなる気も生き続ける気もその時の俺には無かった。

 

 そしていよいよ飢餓で動けなくなり、死ぬ寸前となった時に俺を拾ったのが、一家で人間界へ旅行中だったレイヴェルだった訳で。

 

 思えば運が良かった、あそでレイヴェルに見つけて貰えなかったら俺はそのまま死んでいただろうし、心も折れたままだった。

 

 お陰で今の俺になれたし、ドライグやレイヴェルが腑抜けてヘタレな俺のケツをひっぱたいてくれたから上を見上げるようになれた。

 

 どん底まで堕ちたのなら、後は上しか行く道はない。

 どん底から見える景色ってのは決して真っ暗なんかじゃない。

 地に足つけて上を見上げれば、希望という光が見える。

 

 そうレイヴェルやフェニックス家の皆――そして相棒のドライグに教えてもらえたからこそ今の俺が居る。

 

 そして現在――俺はある意味これまでの人生の集大成であり、本当の意味でのスタートラインに立つことができた。

 ゴールでもあり、スタートでもあるあの男とのイザコザを終わらせるんだ。

 

 

「調子に乗るなよっ!! お前がどれだけ原作とは違う力の付け方をしようが、俺は――ガブァッ!?」

 

「悪いがこれでも結構必死だぜ?」

 

 

 かつてライザーの兄貴も俺と同じような体験をしたらしい。

 といっても兄貴の場合は兄貴の成り代わりではないようだが。

 とにかくライザーは言っていた。

 

 

『俺達の生きるこの世界は、奴等にとっては物語の一つらしい。

だから奴等は俺達の事をその物語の『知識』として把握している。

つまり奴等への対抗には奴等の知識にはない力を付けなければならない』

 

 

 俺達が力を付けたところで、知識として知る奴等には弱点を把握されてしまう可能性がある。

 だから奴等の知識を越えた力を獲なければならない。

 そう教えられた俺は、ドライグと散々話し合った結果、歴代の赤龍帝が体得してきた――例えば禁手の鎧だとか覇龍といった力を全て棄て、二人で0から塗り替える事にした。

 

 基本となる籠手状態はそのままに、俺とドライグはそこから全く新しい力の引き出し方を模索していく。

 

 

『あのカスを八つ裂きにできるのなら、オレは今までの力を棄てる。

そもそも今までは白いのと妙に被る事が多かったし、ちょうど良い』

 

 

 ドライグ本人はとにかく奴をぶちのめしたくて仕方なく、その為ならそれまで培ったノウハウをも棄てると宣言し、俺に力を貸してくれた。

 そして俺もまたドライグから力を貸して貰うだけではない――俺だけの力を模索していく。

 

 

『本来の道から外れた平行世界のキミは無神臓か幻実逃否をスキルとして持つようになったけど、キミはどうやら違うみたいだ。

文字通りあらゆる概念を作り替えるスキル。それがキミの異常って奴だ』

 

 

 なんかよくわからん女の子に夢の中で説明された事で自覚した俺だけのオリジナル。

 色々なものや概念を作り替えるスキル……そのスキルによって俺はドライグと共に作り替えていった。

 

 その成果のひとつが、かつて白い龍と殺し合った罰的な理由で神器にされたドライグを神器という柵から完全に解放させ、100%俺とシンクロできるようにしたり。

 

 その応用でドライグと融合するという、新たな禁手化的な力に到達することができた。

 まあ、普段この融合モードをドライグが嫌がるし時間制限もあるから俺も進んで使う気にもならないけど、黒歌と初めて出会った時以来、ドライグの方から融合を持ち掛けてくれた。

 

 

『融合するぞ一誠』

 

(……え?)

 

『俺もバカではない。

基本の状態であのカスを八つ裂きにできると自惚れるつもりもないし、先程奴に一発かませたのも不意を突けたからに過ぎん。

故にお前と融合をしてやるからさっさと準備をするんだ』

 

(……………はははっ!)

 

『なんだ、なにがおかしい?』

 

(いーや、可笑しいんじゃなくて嬉しいんだ。

俺と力を合わせなきゃ奴には勝てないからと一緒に戦ってくれるってドライグが言ってくれたことにさ)

 

『……。腑抜けたお前がここまで這い戻った事だけは認めてやろうと思ったまでだ』

 

(ああ……最高だぜドライグ)

 

 

 ちょっと短気なドライグの少しツンケンした言い方に笑みを溢しながら、俺はドライグに身を委ねた。

 制限時間は付くが、常に最高倍率――そしてそこから更に駆け上がる事のできる俺達の切り札のひとつ。

 それが―――

 

 

「…………フッ!」

 

「ぐはっ!?(ま、まただ! く、クソ……! 見えない衝撃波を飛ばしてくるのか!?」

 

 

 裏禁手化・融合だ。

 

 

 

 

 

 兵藤一誠の能力はあらゆる漫画やアニメで描写される能力の複合のようなものだ。

 

 例えばこの世に存在しない物質を組み合わせて未知の物質を生成するとか。

 

 ベクトルそのものを操作する能力だとか。

 

 とにかく彼の生前知識として得た能力の全てを再現可能にする――それが彼の力だ。

 

 つまり本気になれば彼はまさに無敵になれるだろうし、彼はその能力を十全に使いこなす訓練もしてきた。

 

 

「そらっ!!」

 

「ごはっ!?(ま、まただ! 俺の反射が何故か機能しない……!?)」

 

 

 だからこそその能力を突き抜けて来る存在はまさに予想外であり、未知なる力だ。

 普通なら己への向けられるあらゆる力の方向を操作することで一切のダメージを負わない筈の兵藤一誠は、知識として知る赤龍帝・兵藤一誠とは全く違う出で立ちとなった霧島一誠の見えない攻撃が防ぐことができず、何度も殴り飛ばされる。

 

 

(こ、こうなったら奴の周りにある空気を猛毒に――)

 

 

 それでもなんとか対処しようと別の力を駆使して動きを止めようとするが、吹き飛ばされたと同時に霧島一誠の姿を見失うせいで発動させるだけの隙がなく、吹き飛ばされたと同時に背後に回られた兵藤一誠は上空へと蹴りあげられる。

 

 

「ぐっ! いい加減に―――げばっ!?」

 

 

 上空へと蹴り上げられた兵藤一誠は今度こそと思って勢いを殺して体勢を立て直そうとするが、またしても更に上空へと先回りした一誠がジェット機を思わせる速度で兵藤一誠の後頭部目掛けて踏み潰すように蹴り落とす。

 

 

「ガァッ!?」

 

 

 強烈な一撃と共に運動場のど真ん中に叩き落とされた兵藤一誠はここで初めて恐怖をする。

 己の能力が何故効かないのか――それでも能力によって身体へのダメージを回復させようとした際、上を見上げてみれば朱色の頭髪をした霧島一誠が6人程に分身し……この世界ではドラゴン波と呼ばれているかめはめ波の構えしていることに。

 

 

「「「「「……………」」」」」

 

「ま、待て―――!!???」

 

 

 無意識に命乞いのような言葉を吐こうとした兵藤一誠だが、その次の瞬間には6人に分身した霧島一誠の放つ赤き光線により全身を焼かれる。

 ここで初めて兵藤一誠は完全な意味での死の恐怖を味わう事になるのだが…………。

 

 

「ガァァァァッ!!!!」

 

 

 こんな序盤の話で終わりたくはなかった兵藤一誠はここでやっと全力で力を解放し、破壊された傷を無理矢理修復しながらその背に天使とも堕天使にも見える灰色の翼を広げながら上空へと逃れた。

 

 

「………………………………………」

 

「死ね……! 死ね!! 死ね死ね死ね死ね死ね死ねシネェェェ!!!!!」

 

 

 兵藤一誠は全力を出した。

 だがそれまでの精神的なダメージの影響か、それとも全力に耐えうるだけの領域にはまだ至らなかったのか、どう見ても理性を失っている形相となり、あろうことか霧島一誠ではなくゲーム会場全体を巻き込むような光線を翼から生成し、無差別に放ち始めた。

 

 

「…………コロス!」

 

「…………」

 

 

 これによりゲーム会場が破壊されることになり、最早ゲームではなくなり、ゲームの進行役をやっていたグレイフィア等が慌てた声でゲームの中止を宣告しようとするのだが、その言葉が兵藤一誠には届いていない。

 

 そしてそんな兵藤一誠の暴走を止める仲間や助けになる仲間も今は居ない。

 

 

「………ハァッ!!」

 

 

 周囲が破壊されても冷静な目で自分を見据える敵のみ。

 そしてその敵である男が気合いと共に全身から輝く黄金の闘気を放った瞬間――

 

 

「ッッッ!?!?」

 

 

 霧島一誠は文字通り閃光となり、暴走している兵藤一誠の目の前に姿を現すと、その勢いそのままに顎を蹴りあげ、再び閃光の如し速度で追いかけ、地の底から天を貫くようなアッパーを兵藤一誠の腹部を貫き、更に上空へと吹き飛ばす。

 

 

「ウギャアッ!?!?」

 

 

 吹き飛ばした兵藤一誠をその場で見据える霧島一誠が胸元に両手からフェニックス家の者達の瞳のように青く輝く光弾を生成し、一度両手を大きく広げてから前に突き出し……。

 

 

「ビッグバン・ドラゴン波……!」

 

 

 兵藤一誠目掛けて巨大な蒼き光線を撃ち放ち、吹き飛ばされた兵藤一誠の全身を再び焼き尽くしたのだった。

 

 

「…………!」

 

 

 だがどうであれ神により力を得て転生せし存在。

 この一撃で終わらせるつもりが、どうやら足りなかったらしく、兵藤一誠は全身を破壊されながらも地上へと落下し、生存していた。

 

 

「ご……が……!」

 

「……驚いたな。

今のはマジの一発だったのに、それでも生きてるのか……」

 

 

 流石の霧島一誠もこのしぶとさには感嘆の声と共に立ち上がろうとする兵藤一誠の前へと着地する。

 

 

(やはり最初から全力で先手を打っておいて正解だったな、真正面からやりあってたから時間切れでオレが負けていたかもしれない……)

 

 

 表情にこそ出さなかったが、転生者と呼ばれる存在の異常さに内心戦慄を覚える霧島一誠は先手必勝が成功して良かったと安堵しつつ、今度は先程とは違って理性を取り戻した表情で背中から生成された白い翼を使って全身を覆って傷を癒そうとする兵藤一誠を見据える。

 

 

「思い……出した……」

 

「?」

 

 

 すると徐々に焼き焦げた傷を修復させていく兵藤一誠が徐に口を開く。

 

 

「その力……俺の生前見たアニメと同じものだ……!」

 

「………………………」

 

 

 どうやらオリジナルと思っていたこの技術すら兵藤一誠の生前の世界では知られているものだったらしい。

 

 

「その状態で居られる時間は限られている……そうだろう?」

 

「………………」

 

 

 焼き焦げた顔の修復を終え始めた兵藤一誠が勝ち誇るように嗤うが、一誠とドライグは無言を貫く。

 それは確かに図星といえば図星だし、精々あと3分程しかこの姿を維持することは今はできない。

 

 だが一々それを教えてやる訳もないので黙って腕を組ながら見据えていると、兵藤一誠は鼻で笑う。

 

 

「今のでも俺は殺せない。

ならその姿から戻るまでしのぎきれば俺の勝ちた。

そうなればお前は絶対に殺してやるし、殺した後はお前に関する記憶をこの世界から抹消してやる。

そうなれば俺は今度こそ『兵藤一誠』になれる……!」

 

「…………」

 

「対策はできた、解析もできた。

だからここからはお前は決して俺を傷つけることはできない……!

くくく……お前に関する記憶をあのフェニックスから取り除いた後、ライザーを再起不能にしてやる。

それとお前の大事なレイヴェルは俺が代わりに――」

 

 

 代わりに――の後を言おうとしたその瞬間、一誠とドライグが組んでいた腕をほどくと、パンと一度手を大きく叩いた。

 

 

「???」

 

 

 その意図がわからなかった兵藤一誠は一瞬身体を硬直させると、無言であった融合戦士は一誠とドライグが重なるような声を放つ。

 

 

「その名前と人生とやらをそんなに送りたいのならくれてやる。

俺が本来送るであっただろう人生で出会う女とやらとナニをしたけりゃあ勝手にしてろ。

だがお前は今ほざいたな? レイヴェルがどうとかって……? …………させる訳がねーだろ」

 

 

 寧ろ色々と制約でもありそうな本来の自分に成り代わりたいのなら、その利用がどれだけ邪なものであろうとくれてやる気だった。

 しかし己の――霧島一誠となったあの日から培ってきた大切な繋がりすらも塗り替えたあげく奪うのなら――

 

 

「ギッ!? ぐぅっ!?」

 

「兵藤一誠の座はくれてやる。

ただし……そんな力は無しでだ」

 

「ギャァァァァッ!?!?!?」

 

 

 それまで傷を癒していた兵藤一誠が……。

 兵藤一誠が生成した翼が突如として砕け散ると、それまで負ったダメージの全てが一挙に襲いかかり、その場に悲鳴をあげながらのたうち回る。

 

 

「………………。だから俺は作り替えた。

貴様の力を―――手から死ぬほど不味いからあげを出すって能力にな」

 

「グギャァァァァッ!?!?!?」

 

「………って、聞こえてねーか」

 

 

 痛みでのたうち回ってそれどころではない兵藤一誠には、自分の力が作り替えられた事も、それが『手から死ぬほど不味いからあげを出すだけの能力』になっていることも聞こえていない。

 

 

「残り一分。

さぁてと、月並みだが俺達の必殺技ってやつを見せてやる……!」

 

 

 のたうち回ったままの兵藤一誠に向かって再び『ビッグバン・ドラゴン波』の構えをする。

 

 

『ライザー様とフォルテ様が王と女王を撃破されました! ゲームはこれにて終了です!』

 

 

 それと同時に進行役のメイドがなにやら言っていた気がしたが、フルパワーまで溜めている一誠とドライグには聞こえなかった。

 

 

「クソ不味いからあげ職人に転職しときな!

ウルトラビッグバン・ドラゴン波ァァァッーー!!!!』

 

 

 その一撃は兵藤一誠を飲み込み、ゲーム会場全土を一瞬で破壊するのだった。

 

 

 




補足

再燃翔

あらゆる概念を作り替えるスキル。
対転生チート能力によるメタというべきスキルなのですが、発動条件がかなり重いらしい。

具体的には相手の力を作り替えるには肉体的にも精神的にも折らなければならない。


その2
裏禁手化・融合

知識がある転生者の不意を突くには根本的に赤龍帝の力を作り替える必要があるという事で一誠とドライグが互い協力して編み出した禁手化。

制限時間があるが、二つの精神を融合させる。
制限時間内なら最初から全開倍加状態となり、そこから更に倍加を無制限に重ね続けることで白龍皇のように常にフルパワーで戦える。

ちなみに黒歌お姉さんと最初にやりあった時は出力を抑えて多少の長期戦に対応させる為のバージョン1

 今回はその時よりも力を増した事で可能にさせた『制限時間を犠牲にしてパワーを最大まで高める』バージョン2


融合ではなく合体というモードも存在するとか。

そちらはパワーを出力を抑えて完全な長期戦の為のモードとかなんとか。


その3
詰みをかけようと動き出した瞬間、フォルテのコスプレをした黒歌お姉さんに襲撃され……。

開幕エクスプロージョンのシューティングクロー
そしてゴスペルキャノンからのバニシングワールドで訳もわからずボロボロにされたかと思ったら、覇王的な覇気を搭載したライザーがやって来て大地震を引き起こし、そのまま瓦礫に埋もれてリタイアしたとか……。


 その4
超絶不味いからあげをを手から出す能力に作り替えられたけど……まあ、なんとかなるんじゃない?

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